株式会社バルカーは、2023年4月に、製造業向け設備点検プラットフォーム 「MONiPLAT」（モニプラット）を リリースしました。MONiPLATは、スマホで設備の定期点検・状態監視を一元管理ができる、これまでになかった設備点検のクラウドシステムです。

96年にわたりシール材のパイオニアと呼ばれ、ハード製品のみを提供してきた老舗が、なぜSaaS型のデジタルサービスの開発に挑むことになったのか？

サービスをゼロから立ち上げた副社長の中澤と、開発に携わったメンバーの本居（ビジネスプロジェクトマネジャー）・三田（開発プロジェクトマネジャー）のインタビューで振り返ります。

右から　

取締役副社長　中澤剛太

ビジネスプロジェクトマネジャー　本居学

開発プロジェクトマネジャー　三田 悠輔

MONiPLATのTOPページと点検報告書作成画面

－副社長はバルカーに入社した経緯がユニークでしたね

＜中澤＞

入社前はFintechベンチャーの創業メンバーとしてゼロからの事業構築を担ってきましたが、バルカーから声を掛けて頂き、2021年に入社しました。バルカーでは、1996年から従来のハード(H)にソフト（S）を組み合わせる「H&Sへの変革」に取り組んでいました。バルカーは配管のつなぎ目から気体や流体を漏れないように封止する「シール材」のパイオニアとして96年の歴史がありますが、今後はデジタルサービスも併せて提供して会社そのものを変革しようとしているところでした。バルカーの製品は世の中のほとんどの製造業に入っている事を知り、自分のこれまでの知見をバルカーの96年間積み上げた信頼、品質、チャネルと組み合わせ「製造業の安心・安全」に関係したサービスを作るしかないなと。

瀧澤バルカー会長の熱意にも後押しされ、自分がその変革をリードしたいと思いました。

－MONiPLATを企画・開発した経緯を教えてください。

＜中澤＞

入社してCDO（Chief Digital Officer）として、当社の各生産子会社の拠点を視察しました。そこでメンテナンスの領域でデジタル化されてない部分がまだあることを実感しました。例えば1日20回、製造設備の温度チェックをし、紙に記録し、ファイルに保存する人がいる。アナログの象徴のようなオペレーションです。96年の歴史があるバルカーの生産子会社ですらこのような状況であれば、おそらく中小の製造業のデジタル化は全く進んでないのではないか、と思いました。その時に「バルカー×デジタル＝メンテナンスサービス」で何かできれば、日本の製造業全体をもっと効率的に進化させることができるのではないか、と考えました。

生産子会社の実際の点検作業と管理簿

そして、その製品のトップシェアとも言われているメンテナンスサービスをいくつか調べてみると、機能も多いが、費用も高い。これでは、中小企業の導入ハードルは高いのではないかな、と思い、例えばSlackのように個人でIDを登録して、手軽に法人利用につなげられる仕組みを作れないかな、と考えました。

－これまでの当社のカルチャーでは考えられない発想ですね！当時部下だったお2人はどう思われましたか？

＜本居＞

中澤さんのビジョンは「確かにそうだよね」とすっと入ってきました。ただ、MONiPLATと現在連携しているシステムは、当時は個々のシステムとして各部門が独自の設備管理システムを作り上げていたので、一元管理ができるプラットフォームに載せることになれば、当然UIや機能の作りこみをすることになるわけで、それを今から覆すことが出来るのかな、と思っていました。新しく入った副社長がガラッとコンセプトを変えてしまったので。不安になり、中澤さんに疑問を投げかけるのです。でもそんなとき、中澤さんは、

「お客さまに使ってもらうんだよね？」

「お客さまは研究者じゃないよね？」

「ユーザービリティって大事だよね？」

と逆に問いかけてくるのです。バルカーはニッチ製品を提供してきたので、一つひとつのモノづくりのこだわりには自負がありましたけど、開発者ファーストとなっていた面に気づかされました。ある種ひとりよがりに膨大な時間を使っていた。サービスは出してからお客様の声を聴いて作りこんでいくもの、開発者ファーストではなく、ユーザーファーストなのだと。

＜三田＞

僕が入社した時にはすでにサービスの構想まではできており、サービス・開発内容は理解できるのですが、あまりにスピード感がありすぎて、ちょっとストップかけたほうがいいと思っていました（笑）

デザインやビジネスサイドも含めた開発チームの体制を一から整え、進めなければならなかったため、そこの一体感には気を使いましたね。

＜本居＞

社内調整が思った以上に大変でしたね。なかなか関係部門との調整が進まず、中澤さんをやきもきさせてしまったことも。でも、中澤さんは一見怖いのですが、気配りを忘れない方で、個別に電話してフォローしたりしてくれたので、最終的には一致団結した感はありました。

－新たな一面でしたね

＜中澤＞

今までの積み上げてきた歴史があるわけですから、一朝一夕には文化・考え方は変わりません。

それでも2年をかけずにサービス提供まで持ってこられたのは、瀧澤会長に「単発の遠隔監視ソリューションを売るだけでは限界があるので、大きなユーザーベースを作るべき。ユーザーベースを広げ、日本製造業全体に安心安全を提供するために、まずすそ野を広げたい。Webを通じて顧客を獲得するサービスにしたい」と説明したら「面白い。安心・安全を広くあまねく提供することは国益にもかなう。やればいい」とすぐに理解してもらったことです。そこから組織全体にさらにギアが入った。

－今後の展望は？

＜中澤＞

サービスはリリースしてからが一番重要だと思います。リリース後は、営業がお客様の価値・要望を聞いてサービスを創っていくもの。営業側のメンバーがUI、パフォーマンス、機能追加などを進め、サービスを磨くことが楽しいじゃないですか。

お客様の対面になっている人が事業を創る、価値を創る。それを実現することが出来ます。

幸いにして、4月25日のリリースからは数百のお問い合わせやユーザー登録をいただきました。中には「今までの製造業向け製品とは発想が違う」というお褒めの言葉もありました。

自分たちが想定していた分野でない、食品や運輸、建設、農業などの業種からもお問い合わせをいただいています。まさにMONiPLATの価値はここで生まれると思います。

今後は、社内外のCBM（状態遠隔監視）ソリューションをMONiPLATに複数繋いでいき、点検作業を一元管理できる世界的なプラットフォームになることを目指します。

今秋には、スマートフォンカメラでメーターの写真を撮影するだけで、AIが数値を読み取り自動保存する機能の提供を開始する予定です。定期点検には非常に相性のよいAI機能です。また、お蔭様でCBMソリューションを展開する複数企業様から連携のお声がけをいただいています。

あと4年で100周年を迎えますから、モノ売りのバルカーからコト売りのバルカーとしてこれから成長していきたいですね。

MONiPLATのCMはこちらから

営業もお客様の声を聴いて毎日頑張っています。