日本有数の情報発信地である渋谷。

　5月中旬、行き交う人の数が減少したことに比例するかのように、多くの広告枠で広告が掲載されていない、いわゆる“白地”が目立っていた。

　そんな中、『すしで、笑おう』というメッセージのもと、まるで渋谷をジャックすると言わんばかりに目を引く広告を展開している企業があった。

　回転すし業界におけるリーディングカンパニーのスシローだ。

『すしで、笑おう』に込めた思いとは？

　株式会社あきんどスシロー（本社：大阪府吹田市、代表取締役社長：堀江 陽）は「うまいすしを、腹一杯。うまいすしで、心も一杯。」という理念のもと、これまでにもこだわりのすしやスイーツを数多く提供している。

　広告展開も積極的に行っており、昨年の5月には都市出店強化を宣言した「山手線全駅出店プロジェクト」というプロジェクトのもと、山手線を回転すしのレーンに見立てたインパクトのある交通広告を展開しているが、今回はこんな状況下だからこそ、よりメッセージ性の強い広告展開を行った。

　「コロナ禍で先が見えず不安に苛まれている方、行動が制限されストレスをため込んでいる子供たち、子供の面倒を見ながらのリモートワークで通常時の何倍も大変な思いをした方、そして、感染の不安に怯えながらも世の中のために最前線で働き続けた方など、多くの方が様々な影響を受けている状況下で、スシローは何ができるのだろう？と考えました。

　その結果、私たちスシローにできることは唯一、うまいすしの持つチカラを信じ、どんな状況下でもうまいすしを届け続けることでした。

　日本の伝統食であり、老若男女問わず愛され、まさにソウルフードともいえるすし。祝い事の時はもちろん、普段の何気ない食事の時でさえ、「今日はおすしにしよう」の言葉で誰もが笑顔になる。うまいすしには、人を笑顔にするチカラがある。そう信じ、こんな状況だからこそ、おすしを届け、皆さんに笑顔になってもらおう、そして、少しでも元気を取り戻してもらおう。

　そんな思いを、今回のメッセージ『すしで、笑おう』には込めています。

　また個人的には、大々的にメッセージを発信することで、スシローだけが元気になるのではなく、世の中全体の風向きを変えたい。日本中、世界中が前を向くきっかけになってほしい、という思いもありました。」

　と、広告担当の松川は語る。

『すしで、笑おう』メッセージムービー：https://vimeo.com/417887209

　―では、なぜこのタイミングで渋谷への広告展開なのか？

　多くの報道にもあったように、今回のコロナの影響で渋谷も人が減り、人が減少したエリアの象徴かのように渋谷の街が毎日のように映し出されていました。普通に考えればOOHですので人が多く集まらないと広告としての効果は半減します。

　しかし、今回我々が『すしで、笑おう』のメッセージを発信した目的は、「うまいすしで、元気を取り戻してもらうこと」です。広告効果は半減しますが、一番元気を失った街と言っても過言ではない「渋谷」から発信することでメッセージの本気度を伝えたかった。つまり、単なる広告ではなく「企業としての行動」にしたかったという思いがありました。

　今回は昨年の山手線での広告展開のように、いかに話題が広がるようにするかといった戦略ではなく、この状況下で、回転すしのリーディングカンパニーであり、日本の伝統食を担う企業としての使命を果たし、日本全体を少しでも元気にするための戦略を優先した結果、渋谷でのOOH展開に至ったということになります。

＜サンプルムービー：https://vimeo.com/422333064＞

　では、『すしで、笑おう』という思いを込めた広告にはどんな工夫や仕掛けがあるのか？松川が考えた、クリエイティブ制作の観点からのポイントとは？

　―スシローらしさや、渋谷エリアだからこそ工夫した点はどういったところがあるのか？

　スシローでは、「回転レーン」＝「立ちすしの“ネタケース”」の役割を担っていると考えています。すし屋のカウンターで新鮮なネタを目にした際にワクワクするように、レーンに流れるすしを見てワクワクしてもらうことは、独自のエンタメ性と言えます。そしてそれは、何よりもスシローらしさの一つでもあります。

　今回の広告ではそれをコアに据えて、スクランブル交差点を中心に、まるでおすしがレーンを回転しているかのような360度・全包囲の広告展開を行いました。

　OOHのクリエイティブは短い接触時間で強くコミュニケーションすることが成功のポイントです。一瞬のコミュニケーションの中で印象的に「回転すしスシロー」を残すことで、結果としてメッセージを多くの方に伝えることができると考えています。実際の回転レーンのように皿が微妙に回転するなどリアリティを追求しつつ、媒体のサイズや接触する位置を考慮し、インパクトが最大化するよう皿やすしのサイズ、レーンのスピード感を調整しました。

　また、今回の広告で使用した歌舞伎の「見栄を切る」という表現も上手く使うことで、思わず目が行くような内容にしました。

　さらに、映像系のOOHにおいては「音」も重要なきっかけとなるので、5面シンクロをチョイスすることで「音」を有効的に使用することができました。

　動画の始まりをCMでもよく耳にする「スシロー！スシロー！」というフレーズにし、店舗で流れる商品の到着音を活用するなどスシローが持つコミュニケーション資産を最大限に活用することで、潜在的に刷り込まれているスシロートリガーを刺激し、メッセージへの気付き率を上げる工夫もしております。

　出稿媒体のチョイスに関しては、渋谷を訪ねた際の行き帰りはもちろん、渋谷のどこにいても導線のなかで何度かメッセージに接触できるよう、ドミナント的に出稿しました。

　実は、あまり気づかれていませんが、今回はスクランブル交差点をぐるっと一周回転レーンで囲う媒体を使用することで、スクランブル交差点をスシローの店舗に見立てております。

　また、「渋谷スクランブル交差点」を「スシロー渋谷スクランブル交差店」にしています。グラフィック中にある看板も「スシロー渋谷スクランブル交差店」にし、クスッと笑えるツッコミどころを設けているのですが、こちらに関しては今のところまだ話題にはなっていません。（笑）

　―広告の反響や効果は？

事前に広告やメッセージムービーで使用する“すしを囲んで楽しんでいる画像や映像”を募集したSNSキャンペーンでは、『すしで、笑おう』に共感いただいた皆様から想像以上に多くのご応募をいただきました。それら、一般の方のご協力もあり、とても共感性の高いステキなメッセージムービーを作り上げることができました。

　そういった一般のお客様とともに作り上げたメッセージムービーとともに渋谷の広告を展開したこともあり、想像していたよりも反響が大きく、多くの方がSNSで投稿をしてくださり、メディアにおいても複数取り上げていただきました。SNSにおいては広告を見て「元気になった」といった内容の投稿もあり、スシローが伝えたいメッセージがしっかりと届いていることに非常に嬉しく感じました。

　また、ご応募いただいた画像や映像、メッセージには我々もとても勇気づけられ、我々の使命を果たすためのとても大きなエネルギーとなりました。

　渋谷での広告展開は、生活者に向けた広告としての目的以外にも、インナーに向けたメッセージとしての側面もあり、その点においても高い効果が得られました。全国で働くアルバイト・パートの皆さんの中にはこの先のことを考えて不安になっていた方もいたとは思いますが、自分たちの仕事にどんな意義があるのか、自分たちはどんな思いでお客様と接するべきなのか、など同じ方向を向いて一丸となれたことは、働きがいやモチベーションアップに繋がったと考えています。

　私自身も、多くの反響をいただいたことで自分たちの取り組みで世の中を変えていけるんだ、という思いでこれからも仕事に取り組みたいと考えています。

　―今後の展望は？

　今後もお客さまに楽しんでいただけるような広告・キャンペーンはもちろん、これからも「うまいすしが持つチカラ」を信じ、スシローならではの価値を届け続けていく予定です。

　先にも述べた、『すしで、笑おう』というメッセージのもと7月5日（日）まで展開している『#すしで笑おう』投稿キャンペーン（http://www.akindo-sushiro.co.jp/sushi-de-waraou/）では、これまでのSNSキャンペーンと比べても反響が大きく、何よりもスシローの理念に共感して投稿してくださっている方が沢山いらっしゃるので、こういった取り組みは積極的に行っていきたいと考えています。

【『すしで、笑おう』特設サイトURL】

http://www.akindo-sushiro.co.jp/sushi-de-waraou/

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■スタッフリスト

【OOH関連】

企画制作　東急エージェンシー関西支社＋21インコーポレーション＋MOST VALUABLE PARTNER INC.＋Sherpa Creative Partner

ECD　望月和人（ＴＯＴＢ）

CD　森井聖浩

企画　山本北斗

コミュニケーション・プランナー　菅原拓也

AD　山口鉄兵（スチール）

D　神崎公三（スチール）、臼倉史（スチール）

C　わきたけん一

PR　篠田雄介（映像）、熊谷章（スチール）

PM　大島郁人

演出　山本北斗

撮影　橋本清明（映像）、上野山裕二（タレント・スチール）、直江竜也（商品・スチール）

照明　清水健一

編集　野口洋平

特殊効果　茅沼光明

CAS　塚原由貴

フードCRD　荷見綾

NA　坂東彦三郎

AE　土井一也、芳賀光将

出演　坂東彦三郎　

【メッセージムービー】

企画制作　TRUCK

演出・撮影・編集　打田武史（TRUCK）

編集　重藤友美（TRUCK）

撮影　高橋雄三（代官山スタジオ）

MA　伊藤哲郎（サウンドフォーラム）

【特設サイト】

制作　倉林楓（Vogaro株式会社）