加盟店が主役のフランチャイズ商談会　誕生秘話（２）

フランチャイズ

#フランチャイズ #多角化 #誕生秘話

2021年1月15日 10時43分株式会社アセンティア・ホールディングス

「フランチャイズの提案は、案件提案であってはダメだ」

私が初めてフランチャイズの提案に関わったのは、1988年。ベンチャー・リンクの親会社であった日本LCAの中小企業向けの経営コンサルティングのフランチャイズを税理士や公認会計士に提案するという事業からだった。

大卒新卒1年目の若造が、形の無い、しかも無名な会社のフランチャイズ、加盟金等900万円だったので、色々な経験ができた。

ただ提案対象が税理士・会計士と明確であったので、飛び込み営業もした。町には税理士事務所は結構あるもので、東京23区内などでは一日に50軒くらいの飛び込み営業が出来た。

何と、飛び込み営業で1000万円のコンサルのフランチャイズが売れるんです。

無名で実績も乏しいフランチャイズであるものの、税理士事務所や公認会計士事務所の経営課題の解決につながると思うと加盟するんです。

税理士や会計士の将来の事業展望と重なると加盟するんです。

相手の経営課題の解決につながる＝だから加盟もしてくれる。

行きたい場所に行く手段だから関心を持つし、加盟もしてくれる。

相手の課題や夢、ウォンツを知ること

それがフランチャイズ提案の鉄則だと知ることになった。

フランチャイズの本場アメリカでは、アメリカンドリームを求めてサラリーマンが独立をする際にフランチャイズを検討する。いわば脱サラ個人が主流。

だから展示会形式でフランチャイズ提案するスタイルがアメリカでは主流。

来場者は自分の関心のあるブースに行って話を聞く。それでよい。

個人にしてみると、「好きなことが仕事になる」「興味関心のある仕事で生きていける」と何と幸せなことか。

アメリカのやり方が日本に入ってくる

スーパーマーケットが日本に入ってきたように、ビジネスのスーパーマーケットである展示会も日本に入ってくるようになり、フランチャイズを提案する展示会も

私自身、展示会は大好きで、日本の展示会にも海外の展示会にもよく足を運ぶ。そして展示会ではお金を掛けた派手なブースには立ち寄らず、地味でお金を掛けていない、展示会の中でも悪い立地に出展しているブースを選んで話を聞くようにしている。それは、まだ世の中に広まっていない情報がある可能性が高いからだ。

展示会の良いところは、隈なく見ることで新しい情報に接することが出来るのは非常に価値がある。新しい商品や事業をお披露目する機会として展示会を活用する企業が多いから、そんな情報と生で出会える展示会は本当に価値がある。

しかし展示会来場者が全て同じような思考ではない。忙しい経営者はどうか？自分の趣味関心のあるブースだけ見て終わってはいまいか？

もっと重要なのは、提案する側の力量だ。

初めての展示会出展で自社の商品やサービスをどのように提案すべきかのノウハウが固まっていないケースもある。展示会用に普段は経理をしている人が駆り出されていて十分話が出来なかったり、展示会用に臨時でブースに立っている人もいる。十二分な情報提供が出来ないケースがある。

実はそんなことから、企業経営者向けに事業を提案する機会としての展示会は、少々曲がり角にあったと感じていた。

折角の良い情報をどのように企業経営者に届けるべきか？である。

「フランチャイズは加盟店としても本部としても価値ある成長戦略だ」

私がフランチャイズビジネスへ傾注するきっかけになったのは、当時のベンチャー・リンク社長がセミナーの壇上で語ったこの言葉によるところが大きい。

フランチャイズはともすると本部ばかりが成長すると見られる傾向がある。確かに本部は上手にフランチャイズ展開すると瞬く間に成長する。

他方、加盟する側にとっても大変重要な成長戦略だということを忘れてはならない。

企業経営に必要な要素は「ヒト・モノ・カネ・情報」と言われる。

フランチャイズビジネスは、ヒトモノカネは無いが情報＝今後成長する可能性あるビジネスの情報を持つ企業がフランチャイズ本部として成長する可能性に溢れており、

ヒトモノカネはあるものの、情報＝今後成長するビジネス情報が無い中小企業にとっては、情報を得て自社のヒトモノカネを活かすことが出来る成長戦略になるのだと知った。

確かに、地方都市で先祖代々の事業を継承している優良企業には、ヒト・モノ・カネは十分ある。しかし、今後成長する事業分野を自社で研究開発することは中々難しいし、それが成長するかどうかも甚だ疑問である。しかし、他社が他の地域で既に成功を収めているビジネスを、地元で展開するのであれば成功確率は一気に上がる。フランチャイズとは、そのような価値があることになる。

ビジネスモデルやノウハウを一気に得られる。

人材採用や教育。開業に向けたもろもろの業務。開業時の支援。開業後の経営のツボ。一度経験を積むだけでも価値があるが、何度も経験を積んだ方の意見を参考に経営出来るのがフランチャイズのメリットである。

マルチフランチャイジー戦略

そんな中、当時のベンチャー・リンク社長が打ち出した戦略がこれだった。

「マルチフランチャイジー戦略」つまり、複数のフランチャイズに加盟して成長を目指す戦略だった。（フランチャイズ業界では、メガとかマルチという表現がされるが、フランチャイズに加盟して成長している企業を表している。）

フランチャイズは、確かに成長可能性を得る手段であるものの、そのビジネスには当然だがライフサイクルや寿命がある。決して永遠ではない。そこで、複数のフランチャイズに加盟することでライフサイクルの変化の波の平準化を図ろうというものだった。

またフランチャイズ本部毎にそれぞれ創業者の天才的なノウハウが業態に詰め込まれている。複数の天才的ノウハウを得ることにつながる。

実際に50店舗100店舗それ以上の加盟をしているマルチフランチャイジー企業が生まれている。

中小企業の支援がしたいと夢描いて就職する会社選びをしていた私としては、フランチャイズビジネスを地方の企業に提案して、成長戦略を描くというのは、まさに『天職』で、全国を駆け回って中小企業にフランチャイズによる成長戦略を、マルチフランチャイジー戦略を提案しまくっていた。

出張で全国47都道府県を制覇したのは、入社3年目の24歳の時だったことを覚えている。飛行機のチェックインの際に手荷物の総重量が26キロもあった。通信速度が2400bpsの時代に重たいノートパソコンを持って飛び回っていた。

1888年に入社し、1990年7月にサンマルクと出会い、1991年にサンマルク支援開始。日本で初めて（後に世界でも初めてだと分かる）「他社のフランチャイズを売る」というビジネスブローカリッジサービスを開始した。

新卒3年目4年目であったが我武者羅に動き回りサンマルク以外にもプラザクリエイト、TVパニック、KES工法など当時から様々な業界のフランチャイズを扱うようになったが、FC本部に出資までして支援したのはサンマルクが第1号で、第2号が中古車買い取りのガリバーだった。

1995年。1月に阪神淡路大震災のあった年だが3月にはベンチャー・リンクが株式公開を実現し12月にはサンマルクが同じく店頭市場に株式を公開した。これが証券市場や金融業界には衝撃的だったそうだ。設立5年の無名のサンマルクがフランチャイズで一気に株式公開を果たしたのだから。「この会社も支援してくれ」「うちも支援してくれ」といった依頼が舞い込むようになった。

実は私は、2003年に前述のベンチャー・リンクの3人目の社長に就任した。最後の社長という表現も出来る。

実は色々と大人の事情があり、東証一部上場企業であったものの2012年に民事再生法申請をすることとなってしまったのだ。

何故？については別の機会とするが、ベンチャー・リンクはマルチフランチャイジー戦略を全国の中堅中小企業に提案し、サンマルクから始まり女性フィットネスのカーブスまで先日計算すると約1800社が加盟し合計8,000店舗のフランチャイズ加盟店を生み出したことになる。

ベンチャー・リンクについては種々ご批判もあるが、地方の中小企業に成長のチャンスをフランチャイズとして提案出来たことは、多少のプラスとなっていると自負している。

2015年に現在のアセンティア・ホールディングスに合流した。

アセンティア・ホールディングスは土屋晃が創業した。彼は同志社大学時代からの友人で、サンマルクの加盟開発を始める際に無理言って転職してもらい、一緒にフランチャイズビジネスを成長させ、サンマルク上場後は加盟店として成長を目指すプライム・リンクを設立し創業社長を務め、こちらも上場させたのちに2006年に退任して設立したのが、このアセンティア・ホールディングスだ。

2010年からは日本のフランチャイズを海外企業に紹介する事業を立ち上げ、19カ国にまで広がっている。

そんなアセンティア・ホールディングスに合流することとなった際に土屋社長から聞いたのは、昔の加盟企業の社長と会うと口をそろえて、

「ベンチャー・リンクが無くなってから新規事業を探すのが大変だ」

「昔は毎週のようにベンチャー・リンクの営業マンが色んな事業を提案してくれて、そこから選べば良かった」と言うと。

インターネットがあるので色んな情報は検索できるが、自分で良い情報に出会うのは大変だという。確かにそうかもしれない。

アセンティア・ホールディングスとして活動を開始し、マルチフランチャイジー戦略を実践されている経営者にお会いすると、実際そのような声を多々耳にした。

「当時○○に加盟して以来、何もしていない」という企業が多いことを知った。

「うちの企業の成長戦略として」という提案をして欲しいと思うものの、誰もそれをしてくれないという。

加盟店が主役のフランチャイズ商談会という企画

海外に広めたいフランチャイズビジネスは、日本国内でも可能性がある場合が多い。そこで日本の昔のお客様にも提案したいと思っても、個々に提案しようとするとどうしても「案件売り」「案件提案」になりがちになってしまう。どうもお客様経営者の琴線に触れるのが難しい。悩んでいた際に企画したのが、加盟店を主役とした商談会の設定だった。

ベンチマークは、ベンチャー・リンクの社長時代に経験した某外資系証券会社のIRイベントだった。

当時、六本木のグランドハイアットの宴会場と1フロア上階の客室フロア1フロア全部を借り切って、海外の投資家を招へいし日本の上場企業と個別のIR面談をするイベントに招かれた。

宴会場ではセミナー形式で外資ファンドの紹介や各種セミナーがある一方で、日本の上場企業は1社毎に客室が割当られる。客室からはベッドなどが撤去され代わりに商談が出来る机とソファーが配置されていた。学校の時間割のように朝から晩まで1時間刻みでランチタイムも含めてびっしりIR面談が入り、それが3日間続くというものだった。

それをベンチマークすると決めた。

丁度日経新聞さんとの打合せで、日経フランチャイズショーとは違う趣向のイベントを企画したいという相談に対して、「逆」の商談会を提案し快諾いただき2019年11月29日に第1回の「加盟店が主役のフランチャイズ商談会」を日経さんの「法人向けフランチャイズ商談会」の一部として開催することとなった。

全国各地からマルチフランチャイジー7社を招へいし、日経本社の応接フロア―を一部借り切り、1社1部屋の応接間を朝から晩まで利用。FC本部が1時間毎に時間割の様に入れ代わり立ち代わり提案に訪れるというものだ。

終わった後、マルチフランチャイジー経営者と懇親会を開いたが一様に「良かった！」という声。

「凄く勉強になった」

「知らない業界の話が聞けて良かった」

「展示会では訪ねないようなFC本部の話も聞けた」

「一社一社真剣なので、こちらも真剣に対応したよ」

「プロが提案するのが良かった。展示会だと提案能力が低い人に説明されると魅力が理解できないから」

等々。

実際、想定外の業種のフランチャイズに関心を持ち、加盟されたマルチフランチャイジーもいた。