コロナ禍でも“調査会社としてできることを”新規リードを約1.5倍にしたリサーチャーの想い

コロナ禍における奮闘

2020年10月26日 16時00分株式会社クロス・マーケティング

株式会社クロス・マーケティングは、2020年3月より、新型コロナウイルスが消費者の行動や意識に与える影響を把握することを目的として、全国47都道府県に在住する20～69歳の男女2,500人を対象に「新型コロナウイルス生活影響度調査」を定期的に実施、結果を公開しています。この調査をきっかけに新規リードは約1.5倍（※）へと増加。この取組みの始まりには、ある一人のリサーチャーの想いがありました。

新型コロナウイルス生活影響度調査　レポート

https://www.cross-m.co.jp/report/health/

調査会社の使命

新型コロナウイルス感染症が拡大し、あらゆる業界が苦戦するなか、リサーチ事業を主体とする我々も、営業活動が制限されるなど、例外ではありませんでした。

そんななかリサーチャーの林はこのような時だからこそ「調査会社が社会に貢献できることは何か」を考え、その当時メディアで圧倒的に情報が不足していた“生活者の声や実情を届けたい”という想いに至りました。通常であれば調査には依頼主がいることでビジネスが成立します。しかし林は、自主調査として自由に設計し、生活者の変化を可能な限りリアルタイムに且つ継続的に調査し、世の中に伝えていくことが大切だと考えたのです。

株式会社クロス・マーケティング　リサーチプランニング本部　林直紀

社内の理解

2月、調査開始に当たり、林は社長や同僚に必要性を説きました。社内からは、「他社もやっていないということはニーズがないからではないか？」といった声も聞かれましたが、“未曽有の事態の中で正解なんて分からない、自分たちが「今できること」をやるだけだ”と、粘り強い交渉で調査実施が決まりました。

通常であれば調査から結果の発信までに約2週間かかるところ、今回は消費者の意識や行動の変化を速やかに届けるべく、1週間以内に発信するというスケジュールを組みました。リサーチャー、集計チーム、マーケティング部がタッグを組んで議論を交わしながら進めていきました。

そうしてできあがった調査結果を公開、そして営業部へとバトンが渡され、営業活動資料として活用されていきました。

社内会議の様子

4月、緊急事態宣言と人々の意識変化

4月初旬に緊急事態宣言が出されると人々の気持ちの変化が如実に表れました。企業活動も大きな変化を余儀なくされ、先が見えない中で、人々の意識・行動はどのように変わっていくのか、注目が集まります。そこで調査を開始した3月からおよそ1か月間の人々の変化を、これまでの結果から分析し公開しました。

その後も、状況が刻々と変わる中で様々な関心事が次から次へと出てくることに対し、消費者の反応をリアルタイムに調査し、発信し続けました。

反響①：新規リードから政府の会議資料まで

結果を公開すると、既存のお取引先だけでなく、これまでお取引のなかった企業・団体からも反響がありました。企業だけでなく、研究者の方の参考資料や、政府の会議資料に使われるなど、非常に多くのお問い合わせがありました。もちろんこれらのオーダーにも全て無料で調査レポートと集計表を提供しました。

社会全体が漠然とした不安を抱えるなかで、誰しもがその変化の中にいたためになんとなくの推測はできるものの、データを元にした資料は貴重だったということでしょうか。これをきっかけに新規リード獲得は例年の約1.5倍に増加しました。林の考える“調査会社の使命”は反響となって返ってきたのです。

反響②：社内で広がる“自分にもできることはないか”という意識

　調査を通じて社内の士気も高まりました。これまでは、自ら動くということにためらっていた社員も林の動きをみて、「自分にも何かできることはないか」と思い立ち、これまでの常識にとらわれずに手をあげたり、発言する社員が増えました。

　調査は当初4回だけの予定でしたが、反響が大きかったため、しばらく継続することも決まりました。

調査の構成は大きく分けて２つ

一つは、「直近1週間の不安度」や「外出頻度」など固定の調査項目。定点調査による比較を可能にし、人々の変化を追うためです。第3回（緊急事態宣言発令直後）でピークに達した不安度は、第11回（9月中旬）では調査開始以来最も低い結果に。継続的に実施していることで生活者の様子を捉えることができました。

もう一つは、そのときどきで話題にあがった事柄についての項目。「10万円給付金」、「9月入学制」などを生活者はどう捉えているのか、タイムリーに調査・結果を公開しました。

リサーチャーとしての想い

環境の変化が激しい中、この調査はスピード感が重要であり、設計や分析に普段と同じように時間を掛けることはできませんでしたが、継続したリアルタイムな情報発信というのも、普段とは異なる形で社会に貢献できる調査会社の役割であり価値だと実感しました。

新型コロナウイルスに限らず、時代の流れと共に人々は少しずつ変化しています。その変化を捉え、これからを計画するためのひとつの手段として調査があるのだと考えています。先行きの見えないなかでも生活者の意識・行動を追うことで、よりよい社会の実現に必要な次のヒントを見出していく、そういった役割をこれからも果たしていきたいと考えています。