東成瀬テックソリューションズ株式会社は、人口約2,450人の秋田県東成瀬村が出資する第三セクター方式の企業であり、社会課題をテクノロジーで解決することを経営目的としています。

当社は5年以内に従業員数を100名にすることを目標に掲げ、官民連携による「システム開発事業、ITコンサルティング事業、クリエイティブ制作事業、地方創生事業」に日々取り組んでいます。

創業者の近藤純光が、東成瀬テックソリューションズ株式会社を創業するまでの奮闘と、これから目指す未来についてのストーリーです。

左:システムエンジニア 阿部沙也香　右:代表取締役社長 近藤純光

「東京一極集中」による社会問題を解決するために、秋田県東成瀬村で第三セクターのIT企業を創業

秋田県東成瀬村の風景

大学卒業後にWeb広告代理店に勤務し、2年後にマーケティングコンサルタントとして独立しました。大手コンサルティングファームのアンダーや顧客からの直接オーダーで、新規事業開発、システム開発プロジェクトマネジメントやビジネスプロセスリエンジニアリング、組織コンサルティングなどの経験を8年間積みました。

日本には数多くの課題が存在しますが、私が特に貢献したいのは「東京一極集中」といういびつな状況です。最も子育てをしにくく、災害リスクの高い地域に、多くの人が集まっている現象です。この課題に取り組む過程で、他の社会課題解決にも良い影響が出ると考えています。

私は学生時代から10年間東京に住んでいましたが、マンションの家賃の異常な高さや、子育てのしにくさを目の前にして、多くの友人たちが結婚や出産を諦め、希望よりも現実を下方修正する様子を見てきました。「東京一極集中」による社会問題を解決するために、都市部から未経験の人材を採用して、ITプロフェッショナル人材に育成し、都市部の企業からリモートでの案件を受けることを目指していきます。都市から地方への人流を促進することで、東京一極集中を起因とする様々な社会課題に取り組みます。

2021年4月に秋田県東成瀬村に地域おこし協力隊として移住し、村に本事業の企画提案を持ち込んだところ、承認されて東成瀬テックソリューションズ株式会社を創業することとなりました。秋田県東成瀬村は、村長が強いリーダーシップと決断力を持っており、日本でも他に類を見ないスピード感のある自治体です。

今回の第三セクターの企画がこれほど早く実現できたのは、佐々木哲男前村長と備前博和現村長をはじめ、議会や自治体職員の皆様の柔軟性や実行力があってこそだと、ありがたく思っております。

創業時のエピソード

東成瀬村において、技術的な（Tech）課題解決策（Solutions）を提供することから社名を名づけ、親しみやすいように通称を「なるテック」としました。東成瀬村は自然が豊かで治安も良い環境であり、給与も支給されながら、最先端の技術を学びキャリアを築くことができます。さまざまな生き方を実現することも可能です。

一般的な第三セクターの設立には多くの手続きが必要になり、たくさんのプロセスを経ることになります。最初に企画を提案してから実際に設立するまで、私は3年ぐらいかかるだろうと予想していました。当然ですが新しい第三セクターを作るということは、村の財源を投入することになりますので、説明責任を果たすことが求められます。議会や村民に対して計画を理解してもらう必要があり、その企業自体が利益を追求する一方で、公益を追求する理念を持っているかどうかも重要なポイントです。

私は当時の村長や企画課長、総務課長に対して、事業計画と村にもたらされるメリットについて熱心に説明を行い、議会でも挨拶と詳細な説明をさせていただきました。さすがに3年はかかるだろうと思っていましたが、なるテックが設立されるまで、結果的にはわずか半年でした。考えてみれば、村の人々にとっては東京から若いIT企業の経営者がやってくるということは受け入れにくい側面もあったと思いますし、信頼しづらい部分もあったと思います。地域の方々に対して説明し、理解いただくのも簡単ではなかったと思います。ただ、そのリスクを取ってこの挑戦的な計画に勇気を持って決断してくださったことに、私はとても感謝しています。

解決したい日本の社会問題

東京の経営者たちから創業時に「近藤さん、ニアショアビジネスを始めたんですね」と言われました。個人的には、「ニアショア」はあまり好きな表現ではありません。それはなぜかというと、同じ能力なのに地方にいるから安く雇えるという地域格差を利用した考え方だからです。また、「そんな田舎でド素人ばっかり雇って、そんな面倒なことをして大丈夫なの？」とも言われました。余計なお世話ですよね。確かに東京の華やかな世界で活動していたところからみれば、泥臭い選択だと思います。

私の目標は、東成瀬村の生活を便利にし人々を豊かにすることで、日本の地方全ての暮らしを豊かに便利にすることです。東成瀬村は、日本で最も深刻な課題を抱える地域のうちの1つです。急速に進む少子高齢化、豪雪による建物の老朽化、脆弱なインフラ、後継者不足など課題の量と大きさは日本トップクラスです。このような地域で一定の課題解決の実績を積めば、その解決方法は他の地域でも応用できます。また、私たちのモデルに倣って地域課題解決の枠組みが各地で勃興すれば、日本全体の豊かさの総量は増加すると信じています。

そして、私が1番やりたいことは、日本の若者を豊かにすることです。日本の若者は、手に職がない人が多いのです。ワーキングプアが社会問題化して、新聞やメディアで頻繁に取り上げられています。20代や30代の若者が一生懸命働いても給料が上がらないという問題です。そして、この問題がどう悪いかというと、最大の悪影響は、少子化です。「子供が3人欲しいけどお金がないから1人も産めません」という声を周りでよく聞きませんか。この問題は、もはや当たり前のことになってしまっています。本来は、子供が3人欲しいならば望み通りに3人産み育てられる経済状況になっていく必要があります。私がやりたいのは、日本の若者を豊かにし、日本の将来を豊かにすることです。

そのためにはさまざまな選択肢が存在すると思いますが、教育や研修のビジネスを立ち上げて若者からお金を巻き上げるといった、そういう商売はしたくないと思っていました。あくまでやるべきことは、より若者の成長にコミットすること。すなわち20代30代の若者を先に雇用し、企業の負担で育成を行い、育成が完了した若者たちの力を借りて社会に大きな価値を提供し、売上と利益を生み出すという、より責任の重い選択をしたいと思いました。

私は東京でエンジニアの研修を行う会社を運営しているため、プログラミングスクール事業の受講生からお金をいただくというビジネスを立ち上げることは容易だったかもしれません。ただ、それだけでは受講生が単なる顧客になってしまい、目的が受講料の獲得に集中してしまうため、実務に耐えられるエンジニアに成長させられることにコミットできるかが私は疑問でした。そこで、現在のように未経験者を採用し雇用しながら研修を受けてもらい、プロフェッショナルに育成し、その上でともに大きな価値を世の中に届けていくというスタイルの会社を立ち上げました。

デジタル行政運営の核となる人材育成に期待する東成瀬村

左:備前博和村長　右:Webライター 松本萌

東成瀬村の佐々木哲男前村長と備前博和現村長も、なるテックに期待を寄せています。「地方自治におけるデジタル社会の進展により、法律や制度改正による財源需要が増加し、地方自治財政にも影響を与えています。デジタル行政運営には経験豊富な職員の確保が重要であり、村の行政でも新たな施策が求められています。東成瀬村では、東成瀬村応援団制度を導入して、村の振興発展に寄与する提案や意見を募集しています。現在2,600人以上が登録しており、密接な連携を進めているところです。村では東成瀬村テックソリューションズ株式会社の設立を支援し、人材育成やIT人材の活躍を期待しています。村の各種事業に従事あるいは大きく貢献してくださる人材募集をすることとしていることにも、期待しているところです」

IT未経験者を高度IT人材へ育成し、「ホンモノの地方創生」を実現する

2023年6月で総勢42名になった東成瀬テックソリューションズ株式会社

なるテックは、未経験者を採用し、高度IT人材に育成し、都心から仕事をリモートで受注することで成長していきます。当社がこの地で成長するということは、それは同時に都市部から地方への人口の流れを作ります。目指すのは、生活コストが安く、子育て支援の充実した地方に住みながら、都市部水準の仕事ができる状態を作ることです。そうすれば、結婚や出産を諦める人たちが減ると想定しており、その結果、日本の出生数の減少に歯止めをかけられると考えております。

私の住むこの東成瀬村で人材を雇用し、都心の企業の協力を得つつ成長産業のプロフェッショナルを育成します。研修で実力をつけ、東成瀬村の地域課題を解決する事業を創出したり、行政課題を解決支援したり、都心のクライアントへの価値提供を行ったりし、対価を頂きます。そうして事業規模を拡大させ、地方創生のモデルケースとなることで、全国的な地方活性化の流れに良い影響を与えていく事を決意しております。

秋田の小さな村から、日本全体へインパクトを与える「ホンモノの地方創生」を実現します。

【会社概要】

会社名　　：東成瀬テックソリューションズ株式会社

Higashinaruse Tech Solutions Co., Ltd

通称　　　：なるテック NARUTECH

事業体種別：株式会社（第三セクター方式）

資本金　　：500万円

本社所在地：〒019-0801 秋田県雄勝郡東成瀬村田子内仙人下30-1 東成瀬村山村開発センター内

代表者　　：代表取締役社長　近藤純光

主要株主　：近藤純光・東成瀬村（地方自治体）

設立　　　：令和3年10月

事業年度　：9月決算

代表電話　：050-6876-3046

事業内容　：

システム開発事業

ITコンサルティング事業

クリエイティブ制作事業

地方創生事業

URL　　　：https://www.narutech.co.jp/