株式会社京王エージェンシーは「すべての人を、最高のアイデアで、幸せにする。」という企業理念を掲げている総合広告会社です。その私たちは広告会社ながら、2023年8月1日から保育園に通園する子育て世帯向けの衣類・寝具のレンタルサブスク「かるがる登園Tefu-Tefu（てふてふ）」のテスト販売を開始しました。

保育園へお子様を通園させている保護者は、毎日の洗濯や登園のための準備、荷物の持ち運びといった負担が解消でき、手厚いサポートで保育園にも負担がかからない仕組みになっています。

このストーリーでは、広告とは違う領域の事業「かるがる登園Tefu-Tefu」誕生の背景とテスト販売開始に至るまでの開発秘話について、事業開発部の担当である秋山がお伝えします。

左から事業開発部　波多野・秋山・佐藤

コロナ禍を経て、主力の広告事業に次ぐ新たな柱が求められた。150案から絞り込みを重ね、1つのアイデアへ辿り着く。

コロナ禍の影響により、私たちが主力とする交通広告をはじめとした広告領域は大きな打撃を受けました。そこで、既存事業の延長線上ではなく全く新しい事業の柱を創るべく、私たちの所属する事業開発部が発足しました。

事業開発部が発足してまず着手したのが新規事業のビジョン設定です。メンバーそれぞれが新規事業にかける想いを出し合い、以下のビジョンを作成。いつでも原点に立ち戻れるように、打合せ中は常に掲示をしていました。

初めから「かるがる登園Tefu-Tefu」のアイデアがあり、取り組んできたわけではありません。ビジョンが決まった後、メンバー間で事業アイデアを様々な角度から150案ほど出していきました。

その中から、策定した評価指標を基準にアイデアを30案に絞り込み、さらに絞り込んだ事業アイデアに関して、どの程度の「顧客ニーズ」あるかをひたすらインタビューで確認します。そのプロセスを経て、10案に絞りました。

最終的に、ニーズの深さとその課題を解決する手段の実現可能性の高さが決め手となって辿り着いたのが、「かるがる登園Tefu-Tefu」の基となる事業アイデアでした。

発端は自身の原体験。子育ての中で、様々な余裕がなくなっていた。

事業アイデアの基は、私（秋山）自身の体験からです。現在も双子男児を子育て中ですが、事業アイデアを考えていた2021年7月ごろ、当時2歳の息子たちの登園準備全般にストレスを抱えていました。

泣いたりぐずったり、あちこち行ってしまう息子たちを見ながら教室で荷物の準備をすること。通勤電車の時間を気にしながらの作業で余計に焦ってしまうこと。週初め・週末は手提げ4つに息子2人を抱っこして移動しなければいけないこと。自転車に無理矢理荷物を乗せなければいけないこと。持ち帰ったエプロンからご飯粒がたくさん出てくること。毎日着替え枚数が違うので、いちいち翌日持参する着替え枚数をメモして準備しなければいけないこと。数えたらキリがないほどでした。

保育園用の荷物と登降園の様子

時間もこころも余裕がないことから子どもを急かしてしまったり、子どものサインに気づけなかったり、感情的になってしまうシーンもありました。この張り詰めた糸のような生活をどうにか改善したい、と思ったのがアイデアの発端です。

さらに、育休からの復帰前の入園準備期を思い返すと、衣類の洗い替えの大量購入やシーツ類の製作にかなり時間を取られ、これから始まる復職後の未知の日々に大きな不安を抱えていました。「かるがる登園Tefu-Tefu」のアイデアで、復職前の不安が和らぎ、復職後の忙しさも解消できるかもしれないと思い付きます。

実証実験から課題が見え始める。保護者だけでなく、関わる全ての方が受け入れやすい状況を作るための工夫。

2022年には3回の実証実験を行い、インタビューなどを通じて机上で検証してきた事実をさらにブラッシュアップしてきました。実証実験では、顧客満足度は想定通り獲得できたものの、保育士様へのオペレーション負荷という大きな課題が浮き彫りになりました。

通常業務もかなり多忙な保育士様にとって、「かるがる登園Tefu-Tefu」により付随業務が多く発生してしまうとサービスを受け入れてもらえないということが分かりました。

そこで、主に以下の点を改善しました。

①　レンタルアイテムをリサイクル品活用からオリジナル製造へ

当初はSDGｓの観点からもレンタルアイテムはリサイクル品を活用する想定をしていました。しかし、運用してみると様々なデザインバリエーションがあることから保育士様へのコーディネート負荷がかかること、同じサイズ標記でもメーカーによりサイズ感が異なることから着られなかったり、大きすぎたりするため保育士様に確認の負荷がかかることが明らかになりました。そこで、オリジナル品を製造することで改善を図りました。

② 納品は、集配員が保護者様に代わって収納まで

レンタルアイテムの納品方法について、初期は必要枚数をサイズ・アイテムごとに仕分けて玄関先でお渡しをしていました。しかし、それでは納品後に保育士様が園児ごとに仕分けをする手間が発生することが明らかになったため、「〇〇さん分」と園児ごとに仕分けをして納品する改善を行いました。ただ、それではまだ保育士様の収納する手間が残ってしまったため、集配員が収納まで行うようにオペレーションを改善しました。そうすることで、保護者様に代わって集配員が収納を行うことになり、保育士様は「かるがる登園Tefu-Tefu」の導入前後で通常業務をほとんど変更することなく行うことができるようになりました。

まだまだ改善した点は多数ありますが、主にこのような点を改善したことで保護者様だけでなく、保育園様・保育士様にとっても受け入れていただけるサービスになったと考えています。

初期にインタビューをした際に「大変そう」と懸念を抱かれていた保育園様から、1年後に再度訪問した際「格段に良くなった、これなら導入できる」という言葉を頂いたときは、本当に嬉しく感じたことを覚えています。

子どもに関わる大人の時間とこころの余裕を生み出したい。そんな環境づくりに向けて。

様々な検証・改善を経て「かるがる登園Tefu-Tefu」は、保育園生活で使用する園児の着替え・タオル・寝具などのアイテムを月額定額制で全てレンタルできるサービスとしてテスト販売開始に至りました。アイテムはTefu-Tefuが保育園に直接お届け・収納、使用済みのアイテムは保育園から直接回収。さらにお届け時には集配員が保護者に代わって各園児のロッカーまたは指定場所に収納まで行うため、保育園に負担はありません。また、レンタルアイテムは、活動しやすさ、素材、デザインにこだわったTefu-Tefuオリジナル品で製造しています。

共働きが当たり前になる中、仕事・家事・育児に追われ、負担を抱えている保護者は多くいると思います。「かるがる登園Tefu-Tefu」は「環境を整える」ことで、負担解消のための選択肢を増やし、必要な時に保護者の助けとなれるサービスを目指しています。

また、保育園生活では、保育士さんとの「お洋服汚してしまいましたのでお洗濯お願いします」「他の子のものと入れ替わってしまいました、申し訳ありません」「シャツがなかったので園のお洋服にお着替えしました」というコミュニケーションがあり、保育士さんには子どもの保育だけでなく、こんなところにまで気を遣って頂いているのかと申し訳なく思いました。保育士様も活動中に汚れを少なからず気にしたり、着替えのストック切れ案内や私物の取り間違え防止のためのダブルチェック業務に時間をかけたりと保育をしながら煩雑な業務が発生していると思います。「かるがる登園Tefu-Tefu」は保護者のみならず保育士様にも寄り添えるサービスを目指しています。

保護者や保育士さん、乳幼児期の子供の豊かな成長のために大切な人たちが少しでも時間とこころの余裕を持てますように。軽やかになれますように。そして、もっともっと笑顔で楽しく子どもと触れ合えますように。そんな思いで、これからもサービスを成長させていきたいです。