工場はＩＴアレルギー？！現場と会話ができるIT屋として製造業をもっと元気に。

創業エピソード

2021年7月1日 15時00分株式会社アイキューブデジタル

―創業から１年にあたって、改めて創業の背景・経緯について聞かせてください。

2020年7月に発足した私たちアイキューブデジタルは、産業用ロボットで有名な株式会社安川電機とAIやIoTによるシステム開発に強い株式会社YE DIGITALの合弁会社として設立されました。

スマートファクトリー事業の前身にあたるYE DIGITALのIoTソリューション事業部門は長らく、工場内で稼働するメカトロニクス製品向けの組み込みソフトなどで実績を積み重ねてきました。

ドイツで発表されたインダストリー4.0の概念が日本にも徐々に浸透し、生産データを蓄積し活用していこうという動きが活発化している頃で、創業以来、製造現場の最前線で培ってきたノウハウと経験から、工場向けの生産管理パッケージにチャンスがあると考え、約2年間テストマーケティングを実施していました。

効率化を望む多くの工場は既存工場で、新工場や新ラインは多くありません。今使っている設備を活かしながらシステムを導入したいという要望が多かったのです。また工場ごとや各ラインで必要な機能が異なり、標準機能が充実した高額なシステムでは、使われない無駄な機能が出てくることもわかりました。

そこで必要な機能だけを選べるような構造にしたのですが、それだけでは事はうまくは運びませんでした。

―必要な機能なだけ選べる柔軟なシステム構成はとても響きがいいように思うのですが、なぜうまくいかなかったのですか？

一番は、温度差ですね。昨今多くのメディアで取り上げられている、製造業の「DX」。デジタル技術を活用して、働き方に変え業務効率化を進めようという動きですが、実は製造業の”現場”=いわゆる工場内の技術者とITエンジニアとの間にはかなり温度差があってなかなか進んでいないのが現状です。

工場内で働く技術者にとっては「毎日同じ品質で効率維持」が鉄則です。

当社のお客さまには、工業製品の組立加工工場の他に、食品工場も多くあるのですが、食品製造の現場では、気温・気候の変化に応じて加熱温度や冷却温度などの設備設定やレシピを変更・調整する必要があり、これらの微妙な調整は熟練の技術者・熟練工が担当しているケースが多いです。

熟練工ともなると、高齢な方もいらっしゃり、そうするとITと聞いただけで「あー、システムはいいよ。」という、いわゆるITアレルギーを起こしてしまう場合があります。

どんなによいシステムパッケージができたとしても、現場の理解が得られないシステムは導入が難しいという生産管理者側の声も多く耳にしました。

―なるほど。それで合弁会社ということですか。

アイキューブデジタルには、製造現場に近いところで働いた経験を持つメンバーも多数在籍しています。安川電機は工場を持っていますからね。

データの収集といったシステム面の提案はもちろんですが、このケースでは製品を壊さないように柔らかくつかむロボットの導入もセットで必要だ、といった装置についても具体的な提案ができるIT企業は多くありません。

我々は生産ラインに並ぶ装置のこと、作業の手順やタクトタイム、使う人の作業の内容まで考えたシステムを、コンサルから保守まで一括して提案が可能です。

―今後の展望についてもお聞かせください。

先日、安川電機と共同で「FOOMA JAPAN(国際食品工業展)」に出展しました。個体差の大きい食品検査には、AIがマッチしているということもあり、AI画像判定ソリューション「Y’s-Eye」による、外観検査自動化ソリューションは、大変好評をいただきました。検査はもちろんですが、HACCP方式の義務化に伴い、生産実績の収集という点でも食品製造業からのニーズが多く、相談を多数いただいています。

実際に作業する人がより楽になるために、システムや自動化技術をうまく使ってもらって、製造業をもっと元気にしたいですね。