グローバルで6千社以上の導入実績をもつプロダクト分析ツール「Mixpanel」のAPACマーケティング・リードとして、日々世界中のデジタル企業を支援しているセレーヌ・ホー氏に、最近のSaaS市場において感じるトレンドを聞きました。

ー数多くのグローバル企業と仕事をする中で、成功するため重要な要素だと感じているトレンドはありますか？

セールスとマーケティングの協力は、成功の鍵であると以前からよく言われてきました。同様に、デジタル化が飛躍的に進んだ現在では、プロダクトとマーケティングの協力も、重要な要素であると注目されるようになってきました。ユーザーと企業との間のコミュニケーションは、ユーザー獲得からコンバージョン、そしてリテンションに至るまで、デジタルプロダクト内のみで完結することが多くなっています。

プロダクトとマーケティングは、このようなデジタル上のユーザーと企業との関係性に、どのチームよりも直接的に関わるでしょう。この2つのチームの統合が不足すると支障をきたし、顧客体験（CX）の低下につながってしまいます。

プロダクト主導型の成長戦略（Product-led Growth／PLG）を採用する企業にとっては、この団結は特に重要です。プロダクト主導型の成長戦略では、アプリやWebサイト（または「プロダクト」）は重要な要素となり、ユーザーの獲得、コンバージョン、リテンションの促進には欠かせません。このような指標はビジネスの成長に欠かせないもので、プロダクトチーム、マーケティングチーム、あるいは両方のチームが追っていく数字です。プロダクトとマーケティングの世界は、かつてないほど緊密になってきたのです。

では、どうすればプロダクトとマーケティングの団結を促進し、結果につなげることができるのでしょうか。団結を促進させるための3つの要素をご紹介しましょう。

目標と指標を一致させる

団結の核となるのは、目標と指標です。もしもプロダクトとマーケティングが目指す方向が異なってしまうと、両チームはお互いに協力し合えません。ときには競争関係にまで発展してしまうでしょう。

例えば、プロダクトチームがプロダクト主導型の成長戦略に重点を置いている場合、できるだけプロダクトへアクセスしやすくすることに注力します。ユーザーにプロダクトを試してもらって価値を実感してもらい、最終的には販売に結びつけたいと考えています。これを達成するためには、マーケティングチームが団結し、無料トライアルやサインアップを最優先して促進していく必要があります。

マーケティングチームとプロダクトチームの団結において、ユーザー数の増加やリテンションの向上という目標に関しては連携できていることが多いようです。しかしながら、各チームにとって重要な指標が達成できるよう、お互いにサポートし合えるようになるには、まだまだ努力が必要です。

チーム同士がサポートし合う関係を実現するには、プロダクト分析ツールであるMixpanelのような、適切なメトリクス・フレームワークを使用することも１つの方法です。フレームワークなら、全チームで注力すべき目標と指標を共有できます。さらに各チームは独自の詳細な指標を設定して、それをより大きな目標に結びつけることができるのです。指標をビジュアル化することで、各チームの詳細な指標がどのように他のチームに影響したり、サポートしているかを理解できるようになるのです。

技術スタックを統合し、プロダクトとマーケティングを団結させる

プロダクトチームとマーケティングチームは、それぞれの業務で専門的なツールを使用しています。プロダクトチームは、プロダクト分析ツールを使って、ユーザーエンゲージメント、機能のアップデート、リテンションなどを常に分析しています。一方、マーケティングチームは、メッセージングツールを使ってユーザーにメッセージを送ったり、モバイル広告効果測定ツールを使ってモバイルユーザーの獲得状況を把握したりしています。各チームが異なるツールを使用していると、データのサイロ化が起こりやすくなってしまいます。そうなると各チームがデータを共有できず、ユーザーの行動や経験について、異なる理解をしてしまう可能性があるのです。

チーム間で統合できるツールを選択すれば、ツールを越えてデータを共有でき、より詳細なインサイトを得られるようになります。例えば、インドネシアのフィンテック企業LinkAjaでは、使用しているメッセージングツールからMixpanelへとデータを送信しています。 プロダクトチームは、Mixpanel内で統合データ、レポート、インサイトを閲覧できます。さらに、トラッキングされたユーザー行動に基づいてユーザーセグメントが作成され、メッセージングツールに共有されます。これに基づき、ターゲティングが可能なマーケティングメッセージを送信することが可能となっています。 ユーザーセグメントごとにターゲットを絞ったメッセージを送ることで、よりパーソナライズされたユーザーエクスペリエンスを作り出すことができるのです。

古き良きコミュニケーションを忘れずに

プロダクトチームとマーケティングチームが団結を維持するための3つめに重要なポイントは、昔ながらのコミュニケーションです。指標が共有され、技術スタックが統合されている場合でも、積極的なコミュニケーションは必要不可欠です。

共有された指標とデータは、会話を始めるきっかけにも最適です。頻繁にコミュニケーションが発生することで、お互いのチームの進捗や困っていることなどを把握することができます。昔ながらのミーティングも一つの方法ですが、Slackの共同チャンネルのような形式にとらわれない形でのコミュニケーションは、より気軽に情報交換ができ、とても有効です。

デジタルチャネルが顧客とのコミュニケーションの主要手段として成長し続ける中で、プロダクトとマーケティングがしっかりと団結できている企業は、決定的な競争力をつけていくでしょう。団結は一夜にして実現するものではないので、できるだけ早く取り組み始めることが重要です。