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受賞企業から学ぶ。サービスや企業理念に込めたメッセージが「刺さる表現方法」|プレスリリースアワード2024

2021年にプレスリリース発信文化の普及と発展を目的として始まった「プレスリリースアワード」。2024年10月28日に、2481件のエントリーの中から10部門の賞に決定した11社を讃え、授賞式が開催されました。

本記事では、独自の表現方法で多くの共感を集め、話題となった2社の受賞プレスリリースをピックアップ。株式会社協和の古田嶋徹さんと株式会社オレンジの伊藤七海さん、大江洸樹さんに、プレスリリースを配信した背景や目的、プレスリリースを通してサービスや企業理念をどう伝えていったのかなどを伺いました。

株式会社協和:「子どもの成長」に対する優しい視点と共感を呼ぶ取り組みが光る

東京都千代田区に本社を構える株式会社協和は、1948年の創業以来ランドセルをはじめ、スーツケースやビジネスバッグ、カジュアルバッグなどの製造を行う老舗の鞄メーカーです。同社は世界で初めて人工皮革「クラリーノ」をランドセルの素材として採用。現在ではランドセル専門ブランド「ふわりぃ」を立ち上げ、全国に公式ショップが展開されています。

また、2003年には入学時に書いた手紙が1000日後に子どもたちのもとに届くサービス「未来つなぐタイムレター」をスタート。心温まるサービスとして話題になりました。同サービスを紹介したプレスリリースは、受け手の心を動かし共感を育むことでもっとも飛躍したプレスリリースに贈られる「エンパシー賞」を受賞しました。

【受賞プレスリリース】小学校へ入学したころの感動が時を越えて届く!「未来へつなぐタイムレター」ふわりぃランドセルの協和が続ける親と子の心をつなげるサービス

【受賞理由】
子どもの成長を優しく見守るかのようなサービスが狙いとともに紹介され、わかりやすい内容になっています。実際にこのタイムレターが絵本になったこともあり、サービスの枠組みを超えた広がりをみせています。(審査員:関根 和弘 朝日新聞GLOBE+編集長)

プレスリリース『小学校へ入学したころの感動が時を越えて届く!「未来へつなぐタイムレター」ふわりぃランドセルの協和が続ける親と子の心をつなげるサービス』より

株式会社協和 代表取締役社長

古田嶋 徹(Kotajima Toru)

埼玉県生まれ。1990年に鞄メーカー株式会社協和入社。経理部部長、常務取締役、副社長を歴任し2024年代表取締役社長に就任。長年培われてきた理念経営を受け継ぎ進める中、働きやすい職場環境づくり、健康経営に力を入れる。自身にとって「鞄」は、気持ちを元気にしてくれる源であり、共に頑張ってくれる人生の友という特別な存在。仕事の後や休日は趣味のランニングで汗を流し、健康づくりと気分転換をおこなう。

──まず、今回の受賞プレスリリースを配信した背景や目的をお聞かせいただけますでしょうか。

私たちは、ランドセルメーカーとして単に商品を売るだけにとどまらず、ランドセルを通じて「小学校のみなさまの心身の健やかな成長を応援したい」という想いがあります。その想いを形にしたのが「未来へつなぐタイムレター」です。

お子さんの入学時に親御さんからお子さんへ宛てられたお手紙が、時を超えて小学3年生の「ギャングエイジ期」といわれる多感な時期に返送されることで、親子のコミュニケーションを図り、豊かな心を育むお手伝いをする。その取り組みを紹介するために、プレスリリースを配信しました。

──実際にプレスリリースを配信後、どのような反響がありましたか。

多くの親御さんから反響をいただき、ご利用くださる方の人数も年々増えております。いただくお手紙の中には、「子どもに手紙を書くことは初めてなので、少し気恥ずかしい思いだったけれど良い機会をいただけてうれしい」「成長する子どもの未来にワクワクします」といったお礼のメッセージも多く添えられているんですよ。

──子どもの成長を優しく見守るかのような視点が評価されていました。プレスリリースを作成する際、どのような点を工夫したのでしょうか。

工夫したポイントは、「なぜランドセルメーカーがこの取り組みを行うのか」「なぜ小学3年生に向けてなのか」といった疑問に思われる点についてもしっかり伝えていくために、わかりやすく現実的な画像を採用したことです。

また、「未来へつなぐタイムレター」の実施にあたっては、教育機関関係者からのアドバイスをいただいています。サービス名についても、お子さんの「健やかな成長」を想起できるワードを用いるなど検討を重ねました。

──東日本大震災後には、「未来へつなぐタイムレター」がきっかけとなり、絵本が出版されるなど、サービスの枠組みを超えた広がりも評価のポイントのひとつでした。絵本の出版につながった経緯を教えてください。

2011年7月に、東日本大震災の被災地にお住まいのお子さんへタイムレターをお届けしました。差出人は震災で亡くなられたお母さんからです。そのことがメディアに取り上げられたことで、絵本出版社の株式会社金の星社さんから「未来へつなぐタイムレター」の実話を元にした絵本『かあさんのこもりうた』が制作・発行されたのです。

このときは、当社で金の星社さんから絵本を購入させていただき、被災地の幼稚園など約600軒に1冊ずつお配りしました。

──当初の目的から枠組みを超えての活動ですね。最後に、受賞が決まってからの想いや、今後の展望についてお聞かせください。

「未来へつなぐタイムレター」は、どちらかというとブランディング施策の要素が大きい取り組みです。その中でも、商品を売りっぱなしではなく「成長されるお子さんを見守りたい」「成長を支援したい」という気持ちで活動してきました。

今回の「エンパシー賞」の受賞は予想外のことで驚いておりますが、これからもPR TIMESを活用しながら、継続して当社の活動をしっかりと発信していきたいと思います。

株式会社オレンジ:資金調達のニュースをマンガという独創性の高い表現で軽快に発信

次に紹介するのは、株式会社オレンジのプレスリリースです。同社は「すべてのマンガを、すべての言語に」をミッションに掲げ、マンガ翻訳事業や電子マンガストア事業を展開。創業3年目となる今夏には、さまざまな作品を世界の人に広めるための電子マンガストア「emaqi(エマキ)」のサービス提供を北米からスタートしました。

資金調達を伝えるプレスリリースは、既成概念に縛られず表現や用途を最も拡大したプレスリリースに贈られる「イノベーティブ賞」を受賞。日本が世界に誇る「マンガ」という文化を通じた豊かなエンタメ体験を次世代に残すことを目指す同社ならではの、斬新でユニークな手法が光るプレスリリースが審査員の間でも話題となりました。

【受賞プレスリリース】オレンジ、総額29.2億円のプレシリーズA資金調達を実施

【受賞理由】
漫画関連の事業について発表するリリースを、漫画を用いて表現してているのがユニークであり、リリースで指摘されている課題がわかりやすかったです。漫画が縦長で描かれており、多くがスマホで読まれるだろうという配慮もよかったと思います。(審査員:関根 和弘 朝日新聞GLOBE+編集長)

プレスリリース「オレンジ、総額29.2億円のプレシリーズA資金調達を実施」より

株式会社オレンジ Marketer / FP&A

伊藤 七海( Ito Nanami)

監査法人トーマツ、UBS証券株式会社(投資銀行部門)、EQTパートナーズ(インフラ部門にてPE投資)を経て、2024年4月にオレンジに入社。EQTでは日本オフィスの立ち上げやシドニー赴任も経験。公認会計士。実家に北斗の拳、巨人の星、ドラえもん等少数ながらも名作が置かれており、幼少期からマンガに触れて育った。海外の知人と映画や音楽の話ができるように、マンガの話もできる世界になったら良いなと思い、オレンジに参画。

株式会社オレンジ License Management / General Affairs

大江 洸樹(Oe Koju)

多業種にわたるクライアント先で常駐型のファシリティマネジメント業務を経験後、オレンジに入社。大学時には音楽、社会人になってからは映画、近年はラジオといつもなんらかのエンタメにはまっているが、なかでもマンガは3歳の時に連れていかれたピアノ教室のグランドピアノ下に並べられていた「ドラえもん」と出会ってからずっと好き(ピアノは弾けない)。折に触れてマンガ家になりたいなどと供述することがある。

──御社にとって2本目となるプレスリリースが、今回「イノベーティブ賞」に選出されました。どのような目的でこのプレスリリースを配信されたのでしょうか。

伊藤さん(以下、敬称略):今回のプレスリリースは、プレシリーズAラウンドで約30億円の資金調達をしたことがメイントピックになっています。

日米で事業展開するうえでの関係者や投資家、マンガファンのみなさんに、私たちのミッションである「Creating a world where everyone enjoys manga(すべてのマンガを、すべての言語に)」の認知拡大と、マンガ作品の海外展開を取り巻く環境を知っていただき、私たちの活動を応援してくださる方を増やすことが主な目的でした。

「マンガ作品の世界展開」という注目度の高いテーマであり、なおかつ資金調達額も大きかったことから、日経新聞などのビジネス系のメディアでお取り上げいただき、その結果、ビジネスパートナーである出版社さまからの複数のお問い合わせにつながりました。

また、プレスリリースに「マンガ」という表現方法を用いたことに対して、SNSを中心に多くのポジティブな反応を目にすることができました

──「マンガ」という表現を用いた点も、今回審査員から高く評価されたポイントのひとつだったと思います。そこはやはりプレスリリースを作成する際に一番こだわった点なのでしょうか。

大江さん(以下、敬称略):そうですね。私たちが目指すミッション「すべてのマンガを、すべての言語に」やマンガ作品の海外展開を取り巻く環境を、マンガで表現することは特にこだわったポイントです。当社にはマンガ作品が大好きなスタッフが集まっており、作品や作者の方へのリスペクトを持って仕事をすることを「Value」に掲げています。

そんな私たちのマンガへの愛情が伝わる表現を模索し、「ねこに転生したおじさん」の作者であるやじま先生にマンガを描いていただきました。そのおかげで、堅苦しいことを楽しく読みやすい形で伝えられたと思います。

──最後に、今回の「イノベーティブ賞」受賞が決まってからの想いや今後の目標についてお聞かせください。

伊藤:私たちは、あくまで作品を翻訳して世界中にお届けしていく黒子で、主役はあくまでも作品と作者の方、そしてそれを楽しむ読者の方々です。そのような中で、今回「マンガ」という表現方法にこだわった点が評価されて「イノベーティブ賞」をいただけたことは大変光栄でした。

私たちのチャレンジは本当にまだまだ始まったばかりですので、今後もミッションである「すべてのマンガを、すべての言語に」に向かってさらに邁進していきたいと思います。

まとめ:企業理念や活動に込められたメッセージを主軸にした発信で多くの共感を集めることに成功

株式会社協和の古田嶋徹さんと株式会社オレンジの伊藤七海さん、大江洸樹さんに、受賞したプレスリリースの背景や目的、プレスリリースを通してサービスや企業理念をどう伝えていったのか、そして受賞につながったであろうこだわりについてお話しを伺いました。

両社の発信に共通する大切な3つのポイントは以下の通りです。

  • わかりやすさを重視した文章だけではない、視覚的な訴求力の高さ
  • 商品やサービスの背景にある活動に込められた想い、企業としてのメッセージ性の高さ
  • 既存の枠組みに捉われずユニークな表現方法や取り組みによる注目度を集める企画力の高さ

両社の広報PR施策は独自性の高さから、そのまま真似ることができるものではありません。しかし、商品やサービスを広く知ってもらうために自社らしさをいかに伝えるか、また、目的をぶらさずに一貫した会社の姿勢をどのように伝えるか、という点で示唆に富んだ内容でした。「自社の商品だったら」「自社のサービスだったら」どのようなことができるのか、参考にしてみてください。

記事内の受賞理由は、プレスリリースより引用しています。
引用:過去最高2481件の応募から11件の受賞プレスリリースが決定。プレスリリースアワード2024受賞企業とBest101を発表

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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