2021年にプレスリリース発信文化の普及と発展を目的として始まった「プレスリリースアワード」。2024年10月28日に、2481件のエントリーの中から10部門の賞に決定した11社を讃え、授賞式が開催されました。
本記事では、トレンドを取り入れながら世の中の課題解消を目指す2社の受賞プレスリリースをピックアップ。株式会社永谷園ホールディングスの淡路大介さんと株式会社ヤッホーブルーイングの渡部翔一さんに、プレスリリースを配信した背景や目的、受賞に対する想いや周囲の反響などを伺いました。
株式会社永谷園ホールディングス:思わず試してみたくなる」をプレスリリースに
「お茶づけ海苔」や「松茸の味お吸いもの」「あさげ」「麻婆春雨」など数々のロングセラー商品を持つ、株式会社永谷園ホールディングス。「味ひとすじ」を企業理念に掲げ、「世界になくてはならない会社」を目指して家庭用食品事業、業務用食品事業、海外事業など多彩な事業を展開しています。
今年6月にはSNSを通じて、「冷やし茶漬けに合いそうな冷たい飲みもの」を募集し、850名以上から集まった60種類以上の飲みものが、実際に冷やし茶漬けに合うのかを社員自ら検証する企画を実施。その結果を伝えるプレスリリースは、「誰が読んでもクスッと笑ってしまう内容」が審査員の心をつかみ、各部門賞にはあてはまらないが表彰したいプレスリリースや発表者の行動を讃える「特別賞」を受賞しました。
【受賞プレスリリース】永谷園がお客様に代わって試してみました!その数 60 種類以上! 「冷やし茶漬けにピッタリな冷たい飲み物」セレクション
参考:永谷園がお客様に代わって試してみました!その数60種類以上!「冷やし茶漬けにピッタリな冷たい飲み物」セレクション
【受賞理由】
恐らく誰が読んでもクスッと笑ってしまう、楽しいリリースでした。60種類の飲み物を「実際に試してみた」という企画自体にも驚きがありますが、リリースとしても非常に優れていると思いました。タイトルの付け方、全体の構成、適度な分量、デザイン、写真の配置、カラーや太字を駆使したテキストなど、広報部の熱意とセンスが溢れています。顔写真入りの担当者のコメントで締めるなど、最後まで飽きさせずに読ませる工夫が盛り込まれていて、他の企業にも参考になるリリースだと思いました。余談ですが、読んだ後、我慢ができなくなり、お茶漬け海苔を買いに行って、冷蔵庫にあった豆乳をぶっかけて食べてみました。そして、すっかりハマってしまいました。特別賞、おめでとうございます!(審査員:小林 史憲 テレビ東京 報道局「テレ東BIZ」編集長)
株式会社永谷園ホールディングス 広報部
1994年に株式会社永谷園に入社。商品開発部門に配属され、トースト専用ふりかけ「トーストにトッピー」開発を担当。その後もお茶づけ、ふりかけ、みそ汁、そうざいの素など多くの商品開発に携わる。40歳で通販部門に移り、フリーズドライ食品の開発-販売に従事。その後、経営部門・人事部門を経て、2024年3月広報部に配属。商品・サービスに留まらず「社員の顔が見える広報」を目指して活動中。
──60種類以上の飲み物を「実際に試してみる」という斬新な企画が好評でしたが、どのような背景や目的でプレスリリースを配信したのでしょうか。
夏場におけるお茶漬け食習慣「冷やし茶漬け」の浸透を目的としてプレスリリースを配信しました。「冷やし茶漬け」のご提案はもともと弊社が20年前から実施していましたが、なかなか広まっていかない状況でした。しかし、近年の猛暑続きによって、一部のお客さまに冷やし茶漬けの浸透の兆しが見えてきたのです。
それを踏まえ、弊社から一方的に冷やし茶漬けをご提案するのではなく、お客さまと弊社の双方向での取り組みができないかと考え、マーケティング部門と広報部で「冷やし茶漬け試し隊」を結成し、企画・運営からプレスリリースの配信まで一気通貫でつなげました。
──配信後、どのような反響がありましたか。
テレビ局の取材が2件とWebメディアの取材が2件ありました。また、弊社ホームページのアレンジレシピサイトで紹介されている「冷やし茶漬けの基本の作り方」のPV数が2024年7月の1ヵ月間で40,000PVに到達し、「お茶漬け関連レシピ」における年間PV数第1位になるなど、反響は大きかったと思います。
──タイトルや全体の構成・分量、デザイン、写真の配置、カラーや太字を駆使したテキストなどに「広報部の熱意とセンスが感じられる」と審査員からも好評でした。プレスリリースを作成するにあたってこだわった点について教えてください。
弊社ではこれまでも、候補部門・事業部門だけでなく横断でプロジェクト化したり、「朝ごはんにお茶漬け」を推奨・普及する活動「ママプロジェクト」を実施したりするなど、お客さまを交えた取り組みを行って来ました。
今回の「冷やし茶漬けにピッタリな冷たい飲み物」の企画では、「お客さまと弊社でどのようなやりとりをしたのか」「社員自らが汗をかく様子」を読み手にわかりやすく伝えることにこだわり、文字数をできるだけ減らし写真を多用するなど工夫してプレスリリースを作成しました。
──最後に、受賞が決まってからの想いや周りの反応をお聞かせください。
今回の選考資料を拝見し、多くのプレスリリースの中から選んでいただいたことに驚きましたし、部内のメンバーも受賞を喜んでくれて、士気が上がりました。また、今回の取り組みを一緒に推進した事業部のメンバーとの一体感がさらに強まっています。
株式会社ヤッホーブルーイング:ゆっくり飲みを推奨する「飲みづらいグラス」のPR
次に紹介するのは、日本を代表する人気クラフトビール「よなよなエール」をはじめ、「水曜日のネコ」「インドの青鬼」「正気のサタン」など、スタイリッシュでインパクトのあるクラフトビールを手がける、株式会社ヤッホーブルーイング。「ビールに味を!人生に幸せを!」をミッションに掲げ、品質にこだわった個性的で味わい豊かなクラフトビールを次々に展開しています。
今年7月に同社が配信した適正飲酒を実現する「飲みづらい」グラス、「ゆっくりビアグラス」の開発を伝えるプレスリリースは、発信と活用により社内外へもっとも広く好意的な影響をもたらしたプレスリリースに贈られる「インフルエンス賞」を受賞。昨年同賞を受賞した「卒乳祝い」のプレスリリースに続き、プレスリリースアワード初の連続受賞企業です。「ゆっくりビアグラス」の開発の背景、広報PRの進め方について渡部さんに伺いました。
【受賞プレスリリース】【飲み過ぎの原因は飲むペース】適正飲酒を実現する“飲みづらい”グラス「ゆっくりビアグラス」開発
【受賞理由】
適正飲酒の啓発のために“飲みづらい”グラスを開発した、という取り組み自体も素晴らしいが、根拠となる意識調査のデータや、グラスの開発プロセス・こだわり、有識者のコメントによる期待効果など必要な情報が十分盛り込まれている。加えて、クラフトビール事業者である自社があえてこの取り組みを推進する理由や、これまでも一貫して適正飲酒の啓発に取り組んできた活動実績等もしっかり盛り込まれており、単なる表面的な話題作りのための打ち上げ花火施策ではない、企業としての本気度を感じた。(審査員:矢嶋 聡 株式会社はね 代表取締役)
株式会社ヤッホーブルーイング ヤッホー広め隊(広報) ユニットディレクター
東京農工大学大学院農学府修士課程を修了後、2017年ヤッホーブルーイングに新卒で入社。プロモーションユニットでPR起点の動画プロモーション「チーム”ビール”ディング」や、SNSを活用した製品プロモーションを担当。19年に広報ユニット(ヤッホー広め隊)に異動し、22年にユニットディレクターに就任。「隠れ節目祝い by よなよなエール」「ゆっくりビアグラス」などのPR領域を担当。
──講評では、審査員から「単なる表面的な話題作りのための打ち上げ花火的な施策ではなく、企業としての本気度を感じた」点を評価されていました。今回のプレスリリースはどのような背景や目的で配信したのでしょうか。
今年2月に厚生労働省が「飲酒ガイドライン」を発表するなど、「適正飲酒」への関心が高まるなか、「お酒をゆっくり飲むこと」を推奨するためにプレスリリースを発信しました。
それに伴い、全国の20~60代男女1,099人を対象に「適正飲酒に関する意識調査」を実施したところ、普段からお酒を飲用する層の35.2%が「飲酒量を減らしたい」と思っている一方で、飲みすぎてしまう理由の上位に「飲むペースが上がってしまう」といった回答が挙がってきたのです。
企業として真っ当に適正飲酒に関して取り組むことは大前提とし、「ゆっくり飲むこと」をユーモラスに啓発するためにあえて「飲みづらいグラス」を開発しました。弊社が製造するエールビールは少しぬるいくらいがおいしいこともあり、「ゆっくり飲むこと」を私たちが発信する意義があると考えています。
──受賞プレスリリースを配信後、多くの反響があったと伺いました。
転載も含めると合計328件(テレビ11番組、新聞18件、Web299件)の報道がありました。テレビ朝日のTikTokでは200万回再生、日本テレビのYouTube投稿で約8,000いいねを獲得するなど、Web上でも大きな反応をいただいています。
また、アメリカやドイツなど7ヵ国の海外メディアでも合計18件報道され、世界的にも関心が寄せられました。プレスリリースでは「飲みづらいグラス」を10個限定で抽選販売することも紹介しましたが、最終的には2,750件のご応募をいただきました。
──今回のプレスリリースは、取り組みのすばらしさはもちろん、根拠となる意識調査のデータやグラスの開発プロセス・こだわり、有識者のコメントなど必要な情報が十分に盛り込まれている点も受賞につながるポイントでした。実際にプレスリリースを作成する際には、どのようなことを意識したのでしょうか。
グラスを通じて「適正飲酒」をユーモラスに啓発するだけでなく、「ゆっくり飲むこと」の必要性と効用を明確にすることにこだわりました。
必要性の観点では、適正飲酒に関する意識調査で「飲みすぎてしまう理由が飲むペースであること」を明確にしましたし、効用の観点では肝臓専門医の尾形哲先生に「ゆっくり飲むことで肝臓へのダメージを軽減する」というコメントをいただいた点も重視したポイントです。
──最後に、受賞が決まってからの思いや今後の展望についてお聞かせください。
まさか2年連続でインフルエンス賞をいただけるとは思わず、プロジェクトメンバーみんなで大変驚きましたし、社内からも喜びの声が上がってきています。
すでに各所からも反響をいただいておりますが、まだまだ「飲みづらいグラス」を体験された方は限定的です。「飲みづらいグラス」を通して「お酒をゆっくり飲むって大事かも」と多くの方に思ってもらうためにも、定常販売の検討や忘年会に向けた企画など、本件に関する活動をさらに強化していきたいと思っています。
「プレスリリースアワード2023」において、インフルエンス賞を受賞した「隠れ節目祝い by よなよなエール」についての取材はこちらからご覧ください。
まとめ:トレンドをとらえ、「自社ならではの視点」で課題解消を
トレンドを取り入れながら社会課題の解消を目指す、株式会社ヤッホーブルーイングの渡部翔一さんと株式会社永谷園ホールディングスの淡路大介さんにお話しを伺いました。
- 世の中で話題になっていることや季節ごとのトレンドを適切なタイミングで捉え、自社の強みを活かした施策で課題の解消を提案する
- 有識者のコメントや信頼できるデータを活用し、プレスリリースで配信する情報の価値を高める
- ユーモアや独自の視点を取り入れたプレスリリースの構成で、読み手の興味・関心を集める
会社としての取り組み、企画を考えるとき、そして情報を発信していく際の学びがあるプレスリリースです。業種業態を問わずさまざまな企業にとって参考になる事例ではないでしょうか。
記事内の受賞理由は、プレスリリースより引用しています。
引用:過去最高2481件の応募から11件の受賞プレスリリースが決定。プレスリリースアワード2024受賞企業とBest101を発表
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