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インタビュアーは人と社会の翻訳者。広報PRに役立つ魅力を伝えるメソッド|PR TIMESカレッジVol.10~第三部~

インタビュアーは人と社会の翻訳者。広報PRに役立つ魅力を伝えるメソッド|PR TIMESカレッジVol.10~第三部~

社内報や採用サイト、プレスリリースなどでコメントを載せる際、「相手からおもしろい話が引き出せない」「たくさん話してもらえない」など、インタビューの難しさを感じている方は多いのではないでしょうか。

株式会社PR TIMESは、2025年10月21日に学びとつながりの広報・PR担当者向けコミュニティイベント「PR TIMESカレッジVol.10」を全国5都市およびオンラインで開催。第三部は、インタビュアーやライター・編集者として活躍する塚原沙耶さんをお迎えし、「魅力を伝えるインタビュー」をテーマにお話いただきました。

インタビューの事前準備から当日の心構えまで、インタビューのプロである塚原さんの視点から「聞くこと」「伝えること」について学びます。

インタビュアー

塚原 沙耶(Tsukahara Saya)

インタビュアー、ライター、編集者、ドキュメンタリー制作者。東京大学経済学部卒業後、中央公論新社に入社。雑誌編集などに携わった後、ヤフー(現・LINEヤフー)へ。現在は「Yahoo!ニュース オリジナル 特集」「Yahoo!ニュース ドキュメンタリー」の制作、「RED Chair」のインタビューなどを担当。

インタビューの質を高める情報整理と質問づくり

丁寧な事前準備が、語られる内容の深さや記事全体の説得力を大きく左右するインタビュー。まずは、塚原さんが実践されている「取材を充実させるカギ」となる事前準備の6つのポイントを紹介します。

1.資料収集
まずは、情収集の方法と目的が語られました。

    情報収集の方法

    • ネット検索:ホームページ、ブログ、SNS、Wikipediaなどを確認し、取材相手が世の中でどのように語られているかを整理
    • AIで情報整理:経歴の要点整理や切り口の候補出しをして壁打ちをすることも。ただし質問案作成は依頼せず、あくまで下調べの効率化にとどめる
    • 関連作品やコンテンツを幅広く視聴:書籍や雑誌、テレビやYouTubeなどの映像コンテンツも確認し、取材相手の理解を深める。同時に大宅壮一文庫や日経テレコン過去記事もチェックし、年代を遡りながら人物の歩みや言動の変遷を追う

    情報収集の目的

    • 定番エピソードとNG領域を把握:繰り返し語られる話題、避けられがちな話題の傾向をつかみ、何を取り上げるべきかをメディアの種類や読者層など特性を踏まえて判断
    • 話しぶりの傾向を推測:寡黙か饒舌か、短く答えるタイプか、深掘りしやすいタイプかなどを推測

    2.イメージトレーニング

      情報収集と並行して、取材相手の世界観を理解するためのイメージトレーニングも実施するそうです。例えば、ボクサーにインタビューする場合は、『あしたのジョー』や『ロッキー』などを見て競技の空気感や心理状態を想像。自身が経験していない領域だからこそ、資料を通して「試合前の緊張」「試合中の集中」「試合後の高揚や落胆」といった感情の動きを追体験し、問いの角度を考える材料に。また、ファンがどのような思いを寄せているのかを想像したり、読者が何を知りたいのかを念頭に置いたりすることで、取材の深度や質問の方向性がより明確になります。

      3.年表作成

        収集した情報をもとに、時系列で人物の歩みを整理した年表を作成。その出来事が起きた時期の社会背景もあわせて確認することで、当時の文脈を踏まえた理解につながります。

        4.年表でシミュレーション

          年表が完成したら、その人の感情が動いたポイントを想像してみます。例えば「初勝利の直前に経験した敗戦にどんな感情があったのか」など、書籍や過去記事には触れられていないものの、本人にとって大きな意味を持っていそうな出来事を推測します。こうした想像を複数持って取材に臨むことで、これまでに語られてこなかった言葉が自然と出てくることも。

          5.質問案作成

            質問案を作成する際には、メディアの特性や想定読者、掲載のタイミングなどの前提条件を再確認し、取材の目的がぶれないよう軸を固めます。そのうえで、取材相手をどのようなレイヤーで掘り下げるかは、次の4つの視点を参考に。

            • 表の表:プレスリリース、舞台挨拶など、公の場で語られるパブリックな姿
            • 表の裏:ドキュメンタリーで語られるような「制作秘話」や「素顔」など、公的な姿の裏側にあるストーリー
            • 裏の表:SNSでふと漏れた本音など、意図せず表に出た一面。狙って引き出すのは難しく、扱いには慎重さが必要
            • 裏の裏:週刊誌の暴露のような、表に出る前提のない領域。通常のインタビューではほぼ語られない

            質問の構成は、大きく3つほどの項目に分け、相手が話しやすく自分も聞きやすい流れを設計。その際、「はい/いいえ」ではなく「語って答えられる形式」に整え、自然に言葉が広がるようにします。

            6. 質問案推敲

              最後は「内容を膨らませる」「短く整える」「声に出して確認する」という3段階で質問案を推敲します。

              また、以下の4つのポイントを押さえ、不要な部分を削ぎ落としたシンプルな質問に仕上げていくそうです。

              • シンプルで理解しやすい
              • 耳で聞いてすぐ意味を理解できる
              • 相手が負担なく答えられる
              • 答えが魅力的な方向へ広がる
              PR TIMESカレッジ Vol.10~第三部~01

              インタビュイーの言葉を引き出す3つのポイント

              インタビューを深めるためには、質問内容だけでなく、相手が安心して話せる環境づくりや聞き手の姿勢が欠かせません。塚原さんが普段意識している、相手の話を聞くポイントを紹介します。

              話しやすい環境を整える

              もっとも大切なのは、「心理的安全性の確保」。インタビューを始める際には、「答えにくいことがあれば、無理に答えなくて大丈夫です」ということを事前に伝えておくことで、相手が構えすぎず、自分のペースで話せる雰囲気づくりを意識しているそうです。また、以下のポイントも確認したうえで、話しやすい環境を整えておきましょう。

              脱線も沈黙も味方にする

              相手が話しやすくするために、塚原さんは次のようなポイントを大切にされているそうです。

              • 聞き手が話しすぎない:質問を重ねすぎると本人から話題が出にくくなるため、沈黙を恐れずに待つことも大切。余白によって過去の出来事や深いエピソードを思い出すことも
              • 控えめなリアクション:オーバーなリアクションで相手の話の邪魔をしないように注意。言葉で遮ってしまうのではなく、相槌と姿勢で興味を示すのがポイント。少し前のめりの姿勢や視線で「興味があります」ということを伝える
              • テンポと声量を相手に合わせる:話し方の速度や声の大きさを相手に合わせることで安心感を醸成。手元の資料に集中しすぎず、できるだけ相手の目を見て話を聞く
              • 脱線を歓迎する:話が外れてしまっても話の腰を折ったりせず、脱線を楽しむ。脱線中の話にその人らしさが宿ることも。時間の関係で話を戻したいときは、水を飲む瞬間や息継ぎなど自然な「間」で話題を切り替える
              • 感想や解釈は控えめに:相手の話に対する感想や解釈は、認識がズレたときに相手との距離感が生じてしまうため、押し付けないように。また、文脈の違いや記憶の差異などもあるため、過去の記事への言及も控えめに
              • インタビュー終了時に確認を入れる:「話し切った」という達成感を持ってもらうため、最後に時間をとって、話しそびれたことがないかを確認。追加質問が必要な場合に備え、後日メールなどで質問をしてもいいかどうかを確認する

              手応えに左右されず常に冷静に

              手応えの良し悪しに振り回されずに進める姿勢も必要です。大切なのは、「どんな状況でも常に冷静さを保つこと」と塚原さんは言います。インタビュー中に違和感を覚えたときこそ冷静さを保ち、語気を柔らかくしながら企画趣旨をさりげなく伝え直したり、短く具体的な質問で流れを立て直したりする。相手が疲れている様子なら小休憩を挟むなど、場の空気を整える工夫も有効です。

              十分に聞けなかったときは、取材後にメールでの追加質問や周辺取材などで不足部分を補ったり、協力者を見つけて「当日伺えなかったのですが」と相談したりすることで、必要な情報を集めることもあります。

              PR TIMESカレッジ Vol.10~第三部~02

              インタビュー実践「魅力を伝える企画設計と質問づくり」

              ここからは、「歴史上の人物『ジョルジュ・ビゴー』にインタビューして記事を作る」という設定での実践例です。

              インタビュー対象についての情報を集める

              まず、ジョルジュ・ビゴーに関する書籍や図録、作品資料をもとに人物像を整理。このような背景を踏まえつつ、企画設計や質問づくりを進めていきます。

              • 明治期に来日したフランス出身の風刺画家で、日清戦争前後の政治・社会を描いた作品でよく知られる
              • 11歳の時、パリ・コミューンの崩壊を描いたことが創作の原点に
              • ジャポニスムの影響を受けて来日。日本で17年間活動するも、外国人居留地の廃止によって出版活動が制限され帰国を決意
              • ​​34歳で17歳の日本人女性と結婚するが、フランスへの帰国時に離婚
              • 帰国後フランス人女性と再婚し、67歳で生涯を終える

              メディアの特性に合わせて「興味の入り口」をつくる

              同じ人物でも、メディアによって読者が惹かれる「興味の入り口」は異なります。各メディアに適した切り口を整理しながら、どこから人生を伝えていくのかを考えましょう。

              • ニュースや新聞・総合メディア:来日から帰国までの17年間を、「外国人を取り巻く制度」や「社会状況の変化」と重ね合わせ、「日本社会と外国人」という切り口で紹介(表の裏)
              • カルチャーメディア:ビゴーが描いた「働く人々」を手がかりに、明治期に生まれたさまざまな職業や日本の仕事の変遷をたどる(表の表)
              • 女性向けメディア:ビゴーの作品に登場する女性像を通して、明治期の結婚観や仕事、生活環境など「女性の生き方」を読み解く(表の表)
              • アート系メディア:ジャポニスムの影響や欧米での日本美術の受容を軸に、ビゴーが風刺画へ至るまでの背景を深掘り(表の表)
              • 週刊誌:恋愛遍歴や結婚・離婚といった私生活の一面に踏み込み、ビゴーの人物像から興味を喚起する(裏の表)

              質問づくりのポイントは「具体化」と「細分化」

              質問づくりは、具体的な切り口へ細分化していくことが大切と語る塚原さん。「なぜ日本に来たのですか」ではなく、「フランスを離れるときの気持ち」「どうやって来日したのか」「どんな荷物を持ってきたのか」「住まいはどんな環境だったのか」など、情景や感情が引き出されるよう展開。「日本に来て最初に描いたのはどんな絵ですか」「モデルにしたいと思ったのは、どんな人ですか」というように、仕事や生活からふくらませてディテールまで話を聞いていくのも方法のひとつだそうです。

              また、「自由に絵を発表できなくなったのはいつごろからですか」「周囲の日本人からの視線は変わりましたか」「帰国すると、フランスはどう変わっていましたか」というように、「自分だったらどう感じるか」という部分を質問に落とし込むのがポイント。広報PR活動を行う際にも参考になる、また「ここまで具体化する」ということがわかりやすい実践例でした。

              塚原さんの投影資料
              塚原さん投影資料より

              【質疑応答】参加者からの質問に、塚原沙耶さんが回答

              ここからは、参加者から塚原さんへ寄せられた質問への回答をご紹介します。当日は回答いただけなかった質問に対しても追加でお答えいただいています。

              ──インタビューの現場では想定外のこともよく起こると思います。それでもすてきなコメントを最大限に引き出すための思考法があれば教えてください。

              想定外のことにも対応できるよう、事前にしっかり準備をして「引き出し」を多く持っておくことを大切にしています。現場で突発的に思いついたことを聞くというよりは、状況に合わせて引き出しの中から最適な質問を取り出すことが多いです。

              想定外の展開が起きると焦ってしまいがちですが、そんなときほど場を静かにして待つ。沈黙の時間が相手の本音を引き出すきっかけになることもあると思っています。

              ──声のトーンがすごく落ち着いていて素敵です。声の出し方で意識されていることはありますか。

              ありがとうございます。声のトーンは個性が大きいと思っていて、自分に合わない声を無理に作るより、自分の声や雰囲気にあった聞き方をすることが大切だと思います。動画のインタビューなどで質問する際には、読み上げたときに言いづらいところや聞き取りにくい箇所がないかを確認するために「ひとりリハーサル」をしています。

              ──インタビュー相手のことはできるだけ調べ尽くすのか、それともあえて余白を残すようにしているのかどちらでしょうか。

              どちらが正解ということはありませんが、私は不安なのでできる限り調べておきたいという気持ちはあります。とはいえ、すべてを調べ尽くすことは現実的には不可能で、私たちが知ることのできるのはあくまで世に出ている情報だけです。どれだけ調べても必ず余白は残るものだと思っています。

              ──インタビュー後、原稿をまとめているときに聞きたいことが出てきた場合、追加で質問をされますか。それとも聞くことができた範囲でまとめるのでしょうか。

              理想を言えば、その場で聞いた内容だけで原稿をまとめるのが一番だと思います。先方もそのインタビューのためにスケジュールを確保しているので、後から追加で多くの質問が届くと「もっときちんと準備してほしい」と思われてしまうかもしれません。

              ただ、相手のコンディションや相性などが重なって、どうしても十分に話を引き出せなかったと感じるケースもあります。よりよい原稿にするために書面で追加質問をお願いすることがありますが、その際には、できるだけ少ない質問数で負担を減らすことが大切だと思っています。また、相手がどの程度協力できる状況なのかを確認するために、窓口の方などと相談しながら慎重に進めるようにしています。

              ──BtoB事業で導入事例のインタビューをよくします。インタビューに慣れていない方が多く、相手から聞きたいことを引き出すための工夫があれば教えていただきたいです。

              インタビューに慣れていない方には、事前に質問を共有して心の準備をしていただくのも有効だと思います。また、当日は短く具体的な質問を重ねることを意識しています。

              自分が相手の立場だったらどんな行動をしているかを想像し、その行動ベースで細かい質問をいくつも用意しておきます。慣れていない方ほどイエス・ノーや「そうですね」といった短い返答になりがちなので、少しでも話しやすいよう、答えやすい具体的な問いを積み重ねるのがいいかなと思っています。

              ──役員や従業員のインタビューに同行する際、準備していても当日うまく意図した流れで答えてもらえず、校正が大きく修正になることがあります。双方が不快にならず、情報を俯瞰して整えるコツはありますか。

              事前に方向性をすり合わせておくのが有効だと思います。企業の導入事例やインタビューは、伝えたい内容や着地点がある程度明確なケースが多いので、「どんな記事にしたいのか」「どういう意図の企画なのか」「記事構成はどう考えているのか」といった点を、インタビューされる方とも共有しておくことが大切です。

              ──相手が答えたくない質問や質問しづらいことは、どのように判断して質問しているのでしょうか。

              まず、自分がその取材でどんな役割を求められているのかを確認します。「聞きにくいことも踏み込んでほしい」という前提なのか、「その話題は避けて進めてほしい」という立場なのかで、質問の仕方は大きく変わるからです。

              聞きにくいテーマに触れる必要がある場合は、当日いきなり切り込むのではなく、事前に流れや順番を細かく組み立てておきます。この順番なら自然かな、という「プラン」を準備しておくことで、相手になるべく負担をかけずに聞くようにしています。

              ──インタビューの途中でテーマがずれてしまうことがあります。先ほどお話されていた「水を飲む瞬間に質問を変える」以外に、話題を軌道修正するコツはありますか。

              企画の趣旨から大きく外れてしまったときは、少し場を和ませながら「少し企画の趣旨とずれてきてしまっていて」と率直に伝えていますね。「とてもおもしろいのですが、企画のテーマに戻したいです」と丁寧に言えば、ほとんどの方が自然に話題を戻してくれます。

              どうしても聞きたいことがある場合ほど、婉曲な表現にしすぎず、はっきりと優しく意図を伝えることが大切だと思います。

              ──【追加質問】「相手が答えたくない質問や質問しづらいこと」に対して、自然な流れを準備されているというお話がありました。どの程度のシナリオを準備していますでしょうか。

              どの話題の後ならば話しやすいか、どんな聞き方なら角が立たないか、の二つを軸に考えていることが多いかなと思います。あまりガチガチなシナリオは考えず、想定質問案だけは多めに考えておくという感じでしょうか。ただ、あくまでも自分が不安にならないように準備していて、実際は想定したものを使わない結果になることが多い気がしています。現場でその方の表情をちゃんと見て、思いをくみとることが大事だと思います。

              ──【追加質問】社員インタビューする機会が多いのですが、間を繋ぐためにオウムガエシという名の要約をしてしまいがちだったと振り返っております。間をつなぐテクニックなどはありますでしょうか。

              言われてみると、「間をつなぐ」ということをあまり意識したことがないかもしれません。「興味を持って聞いている」ことさえ伝われば、間やテクニックはさほど意識しなくてもいいのではないかと思います。役に立つ回答にならず申し訳ないのですが、普段の生活だと、相手が楽しそうに話を聞いてくれると、もっと話したくなるのではないでしょうか。そういう方の仕草やリアクションを観察すると、アイデアが得られるかもしれません。

              ──【追加質問】プレスリリースでは、担当部署から共有された情報をまとめるだけでなく、深掘りが必要と言われます。メディア、その先の読者にとってどのようなことが興味関心になるのか、その切り口はどのように見つけるとよいと思いますか。

              情報を載せたいメディアを具体的にピックアップし、読んでみるとよいと思います。そのメディアがどういう読者層で、どんな連載や企画があって、何を重視しているのかをチェックして、企画の切り口を考えるとよさそうです。読者層がわかれば、その層がどんなことに悩んでいるか、最近どんなことを話題にしていたかなどを考え、届けたい情報との接点を探すといいのかなと思います。

              ──【追加質問】取材の際、記事にする流れではなく、お話していただきやすい順番で質問をするとのことでしたが、映像などでそれが叶わない場合があると思います。その際、どのように質問を設計していますか。

              どのようなアウトプットになるか、映像でも記事でも事前におおまかなイメージをして設計しています。そのため、「最初に聞いたことを後半に入れて編集する」など、ある程度織り込み済みだったりします。

              そのうえで、現場では編集を意識しながら、お相手の答えに応じて、準備した質問の入れ替え、アレンジを行っています。お話を伺いながら「こういう聞き方にアレンジして戻れば、切り出してさっきのあそこに組み込むこともできるかな……」などと考えるので、けっこう頭の中は忙しいです。ほかによい方法があれば知りたいですが……。

              わかりづらく恐縮ですが、アウトプットを考慮しながら質問を設計し、現場ではとにかく集中してパズルのように入れ替えていく、という感じでしょうか。人によってさまざまな方法があると思うのですが、私は基本的に現場の流れを優先している気がします。

              ──【追加質問】映像で伝える場合とテキストで伝える場合、取材時、編集時にそれぞれ意識されていることを教えてください。

              取材時は、映像ではあまり自分の声が入らないようにしています。そのため「私の声が入らないように構成したいので、リアクションが少し薄くなるかもしれません」と事前にお伝えしたりする場合も。テキストでは、お相手やシチュエーションにあわせていかようにでも、と思っています。一問一答のようになるときもあれば、ざっくばらんな雑談になるときもあります。

              編集時は、映像の場合、「表情やリアクションなどが映像として魅力的なパート」をどう生かすか検討しています。テキストの場合、「とにかく話している内容が面白い、充実しているパート」を重視しています。また、ひとりの視聴者、読者としての自分を鑑みると、映像を見ているときはあまり情報過多だと頭に入ってきません。一方で記事を読むときは、情報の多さが理解の助けになったりします。そのため、映像では情報を絞ること、記事では情報をわかりやすく提示することを意識しているように思います。

              PR TIMESカレッジ Vol.10~第三部~03

              まとめ:相手の思いをともに探し、読者へ翻訳して届ける

              インタビューは、「その人が今まさに伝えたいと思っていること」と「メディアや読者、社会が求めているもの」の間を行き来しながら言葉を選び、形にしていく「翻訳」のような営みだと語る塚原さん。

              具体的な質問を重ねるなかで、本人がその場で自分の思いや価値観を再発見していく瞬間こそ、語りに厚みが生まれ、インタビューがもっとも盛り上がる場面。「自分はこんなことを考えていたのかもしれない」「本当はこういうことを伝えたかったのかもしれない」。そんな小さな気づきが言葉として立ち上がったとき、聞き手として「役に立った」と感じるのだそうです。

              相手の思いや背景を丁寧にすくい上げ、読者へと橋渡しする。そのプロセスは日々の広報PR活動にも通じるところがあります。今回の講演が、新たなアプローチのヒントとなれば幸いです。

              そして、来月より「PR TIMES MAGAZINE」で塚原さんとの新連載企画を実施します。

              ぜひ楽しみにしていてください。

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              『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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