PR TIMES MAGAZINE|広報PRのナレッジを発信するWebメディア
記事検索
title

会社に貢献できる広報担当者を目指すなら、まず社内の協力体制を構築すること。大切な理由と進め方を解説|鈴木恵美

突然ですが、質問です。広報担当者になったときに、まず何から取り掛かりますか。私は、社内の協力体制を構築することから着手します。

広報業務のほとんどが、何をやるにしてもひとりで完結できません。なぜなら、多くの人が関わり自分がコントロールできないことに向き合っているからです。

本記事では、どのように社内の協力体制を構築し企業に貢献するのかを筆者の経験を踏まえお伝えします。

ブックオフグループホールディングス株式会社 広報・SDGs推進室/アークランドサービスホールディングス株式会社 社長室 広報

鈴木 恵美(Suzuki Emi)

食に興味があり、学生時代に栄養士免許を取得。新卒で入社した弁当・惣菜チェーンでは、10年の店舗運営を経て社長秘書と能動的な広報の立ち上げを担う。2019年8月アークランドサービスホールディングスに入社し、プレスリリース配信やユーザー視点のウェブサイトリニューアルなど、企業やブランド認知向上に努める。これまで経験してきた食に関わる業界はもちろん、新たに広報として貢献できる場所を開拓するために2024年3月よりブックオフグループホールディングスの広報を、副業でアークランドサービスホールディングスの広報として世の中に必要とされる企業を目指し、ブランドロイヤルティを高める役割として奮闘中。

(この記事を読んでいただく方へ)
私は、お世話になっているパートさんやアルバイトさん、支えてくれている方々が「自信をもって人に話せるような職場にしたい」と考え、広報という職種を知り今に至ります。

想いを紡いだ文章が思わず人に言いたくなる情報となり、人の心を動かす可能性を秘めている。そんなプレスリリースの存在を知った時に「これだ!」と胸が高まりました。

それから、プレスリリースの活用で相手の立場になった「伝わる」コミュニケーションの実現を目指し、2022年よりプレスリリースエバンジェリストとして活動しています。

ただし、プレスリリースは選択肢のひとつです。あらゆる手段の中から最適を追求したコミュニケーションの選択で、会社に貢献できる存在を共に目指しましょう。

会社に貢献できる広報とは

まず初めに、企業に貢献できる広報とはなんでしょう。言われたことを言われた通りにやる人、ではないですよね。

広報とは、このように定義されています。

組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。

日本広報学会

目的達成や課題解決のためには、経営方針の理解や情報収集が欠かせません。冒頭で記載した通り、多くの人が関わり自分がコントロールできないことに向き合っていかなければならず、限られた時間で企業に貢献するには、情報収集の効率化が大きく影響します。

そこで、情報収集の効率化を目指し、これら3つを経営層に要望しました。

  1. 会議資料や議事録の閲覧権限
  2. 部門長会議の参加
  3. 商品を試作し決定する場の参加

この要望がすべて通るかは、広報に求められていること次第になります。実際に、3つの要望は求められていることの達成に必要だったのですべて承認されましたが、それは職位がマネジャーで、広報が1名体制だったからでしょう。

企業の組織体制によっては議事録をみる権限が与えられないこともあります。その場合は、まず求められていることに取り組みましょう。なぜなら、その範囲でできることに限りがあるとわかれば、経営層の判断も変わることが期待されるからです。

最初に要望を伝えておくと、そのときが来てからの会話もスムーズになりますし、経営層に広報としてどのような視野・視座・視点で取り組もうとしているのかを伝える機会にもなります。

広報に求められている役割を明確に

次に、広報に何を求めているのか。これを明確にしましょう。なぜなら、求めていることが人や部門によって異なると協力体制に影響があるからです。

では、広報に求められることを誰に確認すれば明確になるのでしょうか。私の実体験になりますが、まず方針を描く立場にある経営層にヒアリングしました。社長、管掌役員、部門長に時間をもらい広報に求めることを伺う時間をもらいます。

注意点は、目的を持って会話するという前提を持ち合わせている人だと認識してもらうこと。これは、今後ふとした会話をするのに抵抗を持たれにくくなるのが狙いです。

ヒアリングの場が相手の時間を搾取する印象になると、今後のコミュニケーションに支障をきたします。会話の始め方は、企業として経営層は何を目指しているのかをお伺いし、それから広報に期待することを伺います。

大きな話から小さな話にしていくと、話をする方の流れもスムーズになります

加えて、話をする順番も重要です。組織のトップから会話し、他の経営層へと続きます。途中で違和感が生じても、トップとの会話が前提にあると他のメンバーも道が整っているので横道に逸れたり、ひっくり返ったりした際に対処する時間が最小限で済みます。

ここで大事なことは、広報に求めることを経営層に確認した際に全員が同じじゃない現実を理解しておくことです。

経営層が求めることと、部門長が求めることは異なって当たり前で、理由は役割が異なるからです。それぞれが広報に求めることに、限られた時間で対応するにはヒアリングをもとに優先順位を判断しなければなりません。

そして私は、優先順位をつけていることを相手に伝えて行動します。協力体制を構築するには人としてのコミュニケーションが根底にあり、仕事だからで割り切れない感情が働くことを想定していることが理由です。

優先順位をつけられていることを伝えると、腹を立てる人もいるかもしれませんが腹を立てる人の相手はしません。経営方針の理解をしていない人に構う時間が無駄だからです。一方で、優先順位がわからないと言う人とは、お互い理解できるまで徹底的に会話します。それは、経営方針の理解につながり会社が目指す方向に進む人が増えるからです。

大きな声で言えば、圧力がかかれば、評価をちらつかせれば動く人だと思われたら、企業に貢献できる広報の道から逸れてしまいますし、その程度の存在だと見透かされてしまいます。常日頃から、その場しのぎの行動をしないよう心に留めています。

広報に情報が集まる体制を構築

広報に求めることが明確になったら、いよいよ社内の協力体制を構築します。役割を全うするのに重要なタイミング、これを逃さないようにするために、情報が必ず広報に集まってくるのを当たり前の状態にしましょう

情報を広報に集める手段は、会議体への参加や報告書の閲覧権限に加え、各部門の責任者を始め社内のメンバーと気軽に会話できる存在になり、情報を伝える必要があると認めてもらうことだと考えています。

そこで、社内の協力体制を構築するのに取り組んだ5つのことを紹介します。

  1. 話を聴く時間が9割
  2. 方針を共通認識にする
  3. なんでも自分でやらない
  4. 手段を指示されたら目的を確認する
  5. 相手の立場になり会話の対象者になる

1.話を聴く時間が9割

コミュニケーションを円滑に進めるために、まず話を聴きましょう。可能であれば社長の時間を、難しい場合は担当役員や所属長にお時間をいただきます。広報に期待することではなく「会社の現状」と「どのような状態を目指しているのか」これについてお話いただき、認識の齟齬がないよう質問をします。会話した内容から、目指す姿を共通認識にします。

社長や上長と最初に会話する際に、スライドや手書きの資料をいただくことがあります。それを繰り返し見直すことで方向性がずれないように、思い込みで物事を進めないように気をつけ、時には追記し更新しながら基準となるものさしにしていました。

自分から会話をするほうが能動的に感じるかもしれませんが、相手の考えを知らなければ歩み寄り理解し合うことが難しいので、まず聴くことに注力します。

2.方針を共通認識にする

お話を伺い、自分の考えも揃えてから、優先順位を決めて、何から着手するのか方針を共有します。目指す状態にするための3年計画を提案することが多いです。

ひとつの事例ですが、計画には自分の範疇を超える内容も記載しており、これはシステムで、これは商品部など社長から役割分担をお戻しいただきつつ部署を横断するような内容で計画の実行を承認していただくこともありました。

この段階で、視座を高く視点を定めて、視野が広い会話ができていると、相手の安心感につながり、以降のコミュニケーションがスムーズになると感じています。考え方は人それぞれかと思いますが、私は企業に務めるうえで全社全体最適を目指しているので、最初に会話した時間や日々のコミュニケーションから他部署が関わることも提案するようにしています。

3.なんでも自分でやらない

いよいよ、手段の選択や行動に移すタイミングになったときに大切にしているのは、なんでも自分でやらないことです。

正確には、自分でなんでもできるわけがないのですが、視野が狭いと、自分でやった方が早いと思って抱え込んでしまう場合があります。俯瞰でみれば、役割分担をして確認し合って進めたほうが確実で早いのですが、自分以外の人と仕事をする環境が整っていないと、自分でやったほうが……となってしまいます。

そうならないためにも、なんでも自分でやらずに明確な役割分担を習慣にします。そして、適切に進行しているか確認する立場になることを目指します。

役割分担は、できていない人を責めるためではなく、目的を達成するための手段です。そこがスムーズになるように、自分がやった方が早いと思うようなことも、担当者に声をかけて手を動かしてもらい、自分の役割だと習慣づくように物事を進めます。

目先の締め切りに迫られて、長期的な仕組みの構築がおろそかにならないように、先回りする計画性と辛抱強さが試される段階です。これをコツコツ継続すると、関わる方達に最初はやらされている感があったとしても、習慣になるとさまざまなことがスムーズになるので他部署の理解や協力を得やすくなります

4.手段を指示されたら目的を確認する

だんだんコミュニケーションが取れてくると、社内の方から、さらりと手段で指示をされるときがくるかもしれません。

信頼関係が構築されて、さまざまな取組みが浸透してきたからこそなのですが、そこで必ず目的を確認する会話ができる心の準備を常にしています。

なぜ、その手段を依頼してきたのかわからないと、言われたことを右から左に受け流すだけの存在になってしまい、結果的に相手の時間も奪いますし、自分自身の時間も適切につかえません。そうならないためにも、何を目的にこの手段を指示してきたのか質問をします。

こうして会話をすることによって、異なる手段を提案できると、依頼者の選択肢が増えますし、目的達成のために効率よく時間がつかえます。この繰り返しで、依頼者により効果的な手段の選択ができた経験が増えると、信頼関係を築く大きな一歩になります。

5.相手の立場になり会話の対象者になる

コミュニケーションを深めていく中で、目指しているのは、誰にでも気軽に話しかけてもらえる存在になることです。

では、どういう人なら気軽に話しかけてもらえるかというと

  • 自分の立場になってくれる人
  • 話しかけないでオーラを出していない人
  • 共感しつつ意見も言ってくれる人
  • 適度なところで会話を切り上げられる人

最低限この4つを満たせば、仕事の会話をしたい人になれると考えています。

こうして、5つのことに取り組んだ結果、広報専任者が不在だった企業でも、社内で協力してもらえる状態が整い、広報は情報を伝える必要がある存在と認識してもらえたと感じています。この状態が整ってはじめて、広報やPRとは何かを社内で共通認識にする会話をし始めました。

広報の役割を社内の共通認識に

企業に所属している私は、広報の役割=「選ばれる企業」にすることとしています。

そのために、自社の取り組みが世の中で必要としている人に伝わり正しく認識されている状態にするのが広報担当者の役割です。

経営層をはじめ、社内メンバーと会話をしていると、どうしても自社が中心になりがちです。それを、客観的に捉え世の中ごとと絡めようとすると「会社の人じゃないみたいに話すね」と言われることが少なくありません。

たしかに、会社の中の人なのに社外の人みたいな会話をしている自覚はあります。これは、広報として必要なものの見方が備わっていると解釈しつつ、社内の関係性が構築されていないと、相手によっては他人事のような印象を与えてしまうかもしれませんし、広報としての提案を聴いてもらうことが難しくなるでしょう。

しかし、経営層や社内メンバーと関係性を構築し、広報活動の目的を共通認識にできていれば、誤解を招くことがあったとしても理解を得るために要する時間が短縮できます。実際に、客観的に捉えた会話で誤解をされてもおかしくないシーンで、寄り添っていただいたことが何度もあります。

もうひとつ、広報の役割を共通認識にする際、気を付けていることがあります。それは、極力感情的にならず理路整然と会話をすることです。相手の熱量が高まっているときに、同じ熱量で返さないこともそうですし、こちらも熱量が高まりすぎて感情論にならないようにしています。そのようなやり取りは、何も生み出さずお互いの疲労感にしかつながらないからです。

協力の成果を可視化する情報共有

関係性の構築と維持するために、経営層や社内メンバーに広報活動の報告書を週に一度提出し情報を共有していました。

日頃から協力してもらっていることが何につながっているのか、下記の数値で表せるものを報告書にまとめています。

  • 公式アカウントのインプレッション、リーチ数
  • ブランドサイトのユーザー数
  • プレスリリースの配信数、PVとUU数
  • 掲載実績数

加えて、今後の予定を共有するために、プレスリリースの配信予定も共有しています。その他にも、毎回書いておかないと何のためにやっているのかわからなくなってしまうことは、報告書の冒頭に記載しています。

まとめ:経営層との関係性を構築し、社内メンバーを巻き込んだ会社に貢献する

広報とは、組織や個人が、目的達成や課題解決のために、多様なステークホルダーとの双方向コミュニケーションによって、社会的に望ましい関係を構築・維持する経営機能である。と日本広報学会が定義しています。

社会的に望ましい関係を構築・維持するには、まず経営層との関係構築や社内メンバーを巻き込み、情報の発信で終わらず世の中に伝わるコミュニケーションが求められています。

定義されているような広報の役割を果たし、必要とされる存在を目指す方にとって本記事がお役に立てれば幸いです。

PR TIMESのご利用を希望される方は、以下より企業登録申請をお願いいたします。登録申請方法料金プランをあわせてご確認ください。

PR TIMESの企業登録申請をするPR TIMESをご利用希望の方はこちら企業登録申請をする

この記事のライター

鈴木恵美

鈴木恵美

ブックオフグループホールディングス株式会社 広報・SDGs推進室/アークランドサービスホールディングス株式会社 社長室 広報。食に興味があり、学生時代に栄養士免許を取得。新卒で入社した弁当・惣菜チェーンでは、10年の店舗運営を経て社長秘書と能動的な広報の立ち上げを担う。2019年8月アークランドサービスホールディングスに入社し、プレスリリース配信やユーザー視点のウェブサイトリニューアルなど、企業やブランド認知向上に努める。これまで経験してきた食に関わる業界はもちろん、新たに広報として貢献できる場所を開拓するために2024年3月よりブックオフグループホールディングスの広報を、副業でアークランドサービスホールディングスの広報として世の中に必要とされる企業を目指し、ブランドロイヤルティを高める役割として奮闘中。

このライターの記事一覧へ