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ヒット商品を後押しする「メディア視点」。開発ストーリーからおもしろいを見いだす|株式会社ドウシシャ

生活家電や雑貨、ファッション、ギフトなど多彩なジャンルを展開し、生活者の潜在的ニーズを捉えた商品づくりを得意とする株式会社ドウシシャ。大ヒットした家庭用かき氷器「とろ雪かき氷器」や、ふくらはぎケア家電『ゴリラのひとつかみ』など、ニッチで思わずクスっと笑ってしまうような商品が人気を集めています。

メディアで目にする機会も多い同社の商品ですが、実は広報PRの歴史は浅く、社内初となる広報専任部署が新設されたのは今年2025年4月のこと。1974年の設立以来、流通業界で着実に存在感を示してきた同社が、広報PRに注力しようと思ったのはなぜなのでしょうか。

本記事では、同社第2広報部 ダイレクターの青木 響さんにインタビュー。広報PRに注力するようになった背景や、試行錯誤を重ねてきた過程、広報PR担当として大切にしていることなどを伺いました。

株式会社ドウシシャ(大阪府大阪市):最新プレスリリースはこちら

株式会社ドウシシャ 第2事業本部 第2広報部 ダイレクター

青木 響(Aoki Hibiki)

2006年大学卒業後、新卒でドウシシャへ入社し来年で20年目。入社後の配属先で、輸入食器や輸入調理器具の営業に携わる。その後、商品部へ異動し、自社商品の企画や開発を担当。同部署で販促業務を担ったことが現在の広報PR業務につながっている。2025年4月より現職。

試行錯誤を重ね手応えを感じるように

──本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、ドウシシャさんの広報PRの体制について教えてください。

はい、よろしくお願いいたします。当社では、9つある事業本部がそれぞれ広報PRにつながるような取り組みをしています。その中で、広報専任の部署を設置しているのが、私が所属する第2事業本部の「第2広報部」です。

メンバーは私を含めて4名で、プレスリリースの作成や取材対応、SNSの運用、インフルエンサーの方を起用した活動など、幅広く取り組んでいます。また、ほかの事業本部から依頼を受けた場合には、部署をまたいで私たちがプレスリリースを出すケースもあります。

──青木さんが広報PRを担うようになった経緯を伺えますか。

はい。私は新卒でドウシシャに入社し、入社当初は、海外から並行輸入した食器や調理器具を扱う部署で営業をしていました。その後「輸入だけに頼らず自分たちで商品を企画・開発していく」という新たな方針が掲げられたのを機に、私も商品企画に携わるようになったんです。もともと、学生時代から雑貨に関わる仕事を希望していたので、企画した商品がメディアに掲載されたり、売り切れが続出したりする状況にはとてもやりがいを感じていました。

一方で、「せっかく魅力的な商品ができても、売れるためのアプローチが十分ではない」という課題もありました。そういったタイミングで、店頭用POPの制作など販促を担当することになり、次第に自社ホームページのディレクションも任されるように。さまざまな形で商品の魅力を紹介する役割を担ってきました。

実はその時期に初めて、「プレスリリース」というものがあることを知り、見よう見まねで書き始めたんです。自分の仕事が「広報PR」業務と呼ばれるものだと知ったのも、その頃でした。まさに手探り状態からのスタートでしたね。

──営業、企画を経て、現在のお仕事に携わるようになったのですね。では、販促だけでなく、広報PR活動に注力していこうとなったのはいつ頃からでしょうか。

当社の広報PRの歴史はまだ浅く、社内で広報PRという考え方が浸透してきたのも、ここ最近ですね。自身が所属する第2広報部も、実は私から上司や社長に「広報PRの専門部署を新設してもらえないか」と相談し、社内でも広報PRの必要性を感じ始めていたタイミングと重なって今年4月に立ち上がったばかりなんです。

おかげさまで、すでにヒット商品もありましたが、商品をつくって店頭に並べたあとは、そこから新たな仕掛けがなく、そのままになってしまっていることもありました。店頭で手に取っていただくためには、「つくって終わり」ではなく、商品の魅力を伝える担当者が必要だと感じたんです。

当社はこれまで、広告もほとんど行っておらず、商品の多くは「口コミ」によって広まってきました。そのような中で、広報PRに注力したいと思うようになったのは、当社の商品には一つひとつに強い「ストーリー」があるからです。開発者の商品に対する思いや背景をしっかりと世の中に伝えることで、商品が売れるようになるだけでなく、「この会社っておもしろい」「この会社で働いてみたい」と感じる人が増えたらいいなと思っています。

株式会社ドウシシャさま01

開発者が気づかない「おもしろい」を「メディア視点」で

──御社では、毎月多数のプレスリリースを配信されていますが、配信機会や配信頻度はどのように決めていますか。

当社では、年間約50,000点ほどのアイテムを取り扱っており、新商品の発表を中心に、年間100本以上のプレスリリースを配信しています。

第2広報部から配信されるプレスリリースも主に新商品が中心で、「このタイミングでプレスリリースを出してほしい」と依頼されることもあれば、新商品の発売のスケジュールを見て、「そろそろプレスリリースを準備したいですね」「これは絶対にウケるからプレスリリースを配信しましょう」と提案することもあります。今年に入ってからは、「調査リリース」の配信にも新たに取り組み始めました。

──商品の魅力の伝え方で、青木さんが工夫されている点はありますか。

どんな写真を使うのかという点は、かなり気を遣うようになりましたね。最初の頃は白抜きの写真を並べていたのですが、ある時から、きちんとした「イメージ画像」に切り替えてみたんです。すると、メディアに取り上げていただく機会が明らかに増えました。

当時は私も広報初心者だったこともあり、メディアの方から連絡をいただいた際には、「なぜご連絡をくださったんですか?」と毎回お尋ねしていました。さまざまな反応がありましたが、その中で「かき氷の写真が、すごく美味しそうに見えたんだよね」とおっしゃっていた方がいたんです。やはり視覚的な印象が大切なのだと実感しましたね。

──写真で印象が大きくかわりますよね。そのほかにも、プレスリリースを作成する際に大切にされていることはありますか。

やはり、「商品のストーリーを伝える」ということでしょうか。当社の商品には、「ストーリー」があるものばかりです。プレスリリースの役割は、当社の商品と世の中をつなぐことだと思っていて、商品開発者の思いを受け取り、世の中にしっかり発信していくために、ストーリーを深掘りして文章にすることは特に大切にしています。

ありがたいことに、私たちは開発者との席が近いんです。同じフロアで仕事をしているので、開発者同士の議論が白熱している場面や、苦労や葛藤の様子も間近で感じています。そうした商品誕生の背景にあるストーリーをしっかり伝えていきたいと思っています。

──普段から開発の方と積極的にコミュニケーションを取られているんですか。

そうですね。たとえばコピー機に並んでいるタイミングで声をかけたり、かけられたり。コミュニケーションを重ねるうちに、開発の最初の段階で「今、こういう商品を考えていますが、何かアドバイスありますか」と広報PR視点での意見を求めてくれる方や、「今度こういう商品をつくるので一緒に打ち合わせしませんか」と声をかけてくれる方も増えてきました。そうした何気ないやり取りの中から、プレスリリースに盛り込むストーリーを見つけることも少なくありません。

──すてきな関係ですね。

ありがとうございます。あと、私も疑問に感じたことは些細なことであっても何でも聞きにいっています。それと、「自分が記者だったらどう書くか」という視点を持つことも大切にしていることのひとつです。開発者からすると開発過程での単なる失敗や企画に至った個人的なエピソードも、メディアにとっては関心を持つポイントになることもあるので、「こういう記事なら読まれるだろう」「世の中はこういう点が気になるかも」という点は特に意識して、深掘りポイントを常に探しながら会話しているかもしれません。

──そのようにして生まれたプレスリリースの中で、印象に残っているものをいくつか教えてていただけますか。

『俺たちの青春ラジカセ プロジェクト』は、特にストーリーが光ったプレスリリースのひとつだと思います。日本では1970〜80年代に「オーディオブーム」があり、多くの若者が夢中になりました。この企画開発担当者もそんな若者のひとりで、新卒時代に高額で手が届かなかった機能やデザインを思い出しながら、「音楽を本気で楽しむ」というコンセプトのもと、大人になった今だからこそ実現できるこだわりのオーディオ製品を開発したんです。

プレスリリース作成にあたり、当時62歳の企画開発担当者にヒアリングをしたところ、若かった頃の悔しさや憧れなど開発者自らのエピソードがたくさん出てきました。それをプレスリリースに丁寧に盛り込んだことで、同年代の方々に刺さったんだと思います。

プレスリリースで紹介された「開発の経緯」

1980年代に若者を夢中にしたオーディオブームの頃、オーディオに夢中だった企画開発担当者は高額で購入できず悔しい思いをしました。「ORION Bluetooth®機能搭載 CDステレオラジオカセット SCR-B9」は、音楽や青春時代の思い出がいっぱいつまった家にあるオリジナルテープを本気で楽しむために、かつての悔しさと憧れた機能や音質を思い出しながら企画した商品です。

あの頃のラジカセを再現するだけではなくCD、Bluetooth®やmicroSDカード、USBなどにも対応させることでラジカセを知らない世代の方にも、新たなオーディオガジェット・ファッションアイテムとして楽しんでいただけます。

参考:80年代に憧れたドデカCDラジカセ、俺たちの青春ラジカセ第3弾「ORION Bluetooth®機能搭載 CDステレオラジオカセット SCR-B9」一般販売開始

また、開発者自身が気づいていなくても、「世の中に伝えたほうがいいおもしろい話」は意外と多いんですよね。SNSでも話題となった「ゴリラのひとつかみ」のシリーズも印象的だったひとつですね。2025年5月に累計出荷数100万台を突破した「ゴリラのハイパワー」シリーズのスピンオフ企画として誕生したのが、重さ約2kgの超重量級ジョッキ「ゴリラのひとくち」。実はこれ、実際にダンベルを製造している工場でつくられた商品なんです。

「重たすぎて飲みにくくすることで、飲みすぎを防止する」商品をつくってくれる工場を探していたのですが、ステンレスのタンブラーをつくっている工場には軒並み断られてしまったそうなんです。それでも開発者はあきらめずに製造してくれる工場を探した結果、ダンベル工場が引き受けてくれることに。開発者本人は「何がおもしろいの?」という感じでしたが、記者発表会の際に、「ほぼダンベル」という言葉を使って商品を紹介したところメディアには大好評。多くのメディアが「ほぼダンベル」というキーワードで取り上げてくれました。

株式会社ドウシシャさまプレスリリースまるでダンベル!?超重量級ジョッキで飲みすぎ防止!!「ゴリラのひとくち」を3月上旬から発売

参考:まるでダンベル!?超重量級ジョッキで飲みすぎ防止!!「ゴリラのひとくち」を3月上旬から発売

売上拡大、従業員の活躍認知を実感

──御社では、プレスリリース以外にもさまざまな広報PRの取り組みをされていますよね。青木さんにとって特に思い入れの強い施策はありますか。

現在行っているものではありませんが、キッチンブランド「evercook」の施策は、印象に残っていますね。発売10年目のタイミングで、俳優の小宮璃央さんをスペシャルアンバサダーに迎え、特設YouTube番組「小宮璃央のevercookキッチン」を開設。毎週、「evercook」の魅力を伝えてきました。番組内では、小宮さんと声だけ出演するキャラクターが掛け合いをするのですが、その声は当社の従業員が担当していたんです。

この掛け合いが予想以上に大好評で、小宮さんだけでなく、キャラクターの声を担当した従業員にまでファンレターが届くほどでした。とても驚きましたし、従業員の活躍を応援してもらえているようでうれしかったですね。実際にYouTube番組がきっかけで商品が広く認知されるようになりました。「ほかの人にもおすすめしました」という声もいただくこともあり、実施してよかったと思います。

参考:10年目を迎えたキッチンブランド「evercook」スペシャルアンバサダーに小宮璃央さんが就任

メディアへの尊重が信頼関係を育む

──従業員の方へのメッセージもそうですし、お客さま自身が紹介してくれるというのはうれしいですね。当時、問い合わせをもらったメディアの方々に、関心を持ったポイントを聞いていたと伺いましたが、現在、メディアリレーションズを行う上で、どのようなことを大切にされていますか。

メディア側が希望することには、できる限りすべて応えたいと思っています。ちょうど昨日も「明日の撮影で〇〇がほしい」とリクエストをいただき、お届けしてきました。予備も含めて10キロくらいあったでしょうか。倉庫から送ると間に合わないことも多いので、手元にある商品をこうやって直接持っていくこともあるんです。

また、メディアの方は当社以外にもたくさんの企業とやり取りをしていると思うので、ご連絡いただいたときや原稿が送られてきたときには、1秒でも早くお返しするように心がけています。こちらから「この表現を使ってほしい」「こういうふうに書いてほしい」といったこちら側の希望を押すことはありません。メディアごとのコンセプトや考え方を尊重することを大切にしています。

当社の社訓のひとつに「顧客の身になって、仕事は早く正しく親切にやろう。」というものがあり、メディアの方への対応でも通じています。一つひとつの対応を大事にし、信頼関係を積み重ねていきたいです。

活躍人材が集まる「ENJOY」の精神

──とても大切ですね。最後に、これから注力したいことを教えてください。

当社では、「ニッチ戦略」をひとつの大きな軸として掲げていて、家庭用雑貨や家電などの分野では「ニッチナンバーワン」「オープンイノベーション」「コミュニケーション」「ENJOY」という4つのキーワードを大切にしてきました。これらをより深く掘り下げて、広報PR活動につなげていきたいと考えています。

中でも、特に力を入れたいのが「ENJOY」を伝えていくことです。これは、ものづくりの部門が最も大切にしている精神のひとつで、「ものづくり自体を楽しむ」「おもしろいは最高の評価である」という考え方に基づいて、社員の間では「E=ええやん(賛同)」「N=なんでやねん(動機)」「J=自分(敬意)」「O=おもろいやん(評価)」「Y=やったらええやん(挑戦)」と表現されています

当社は、生活者が本当にほしいと思う、まだ顕在化されていないニーズに応える商品づくりを得意としていますが、その根底には「おもしろくある」という価値観が強く根付いているんです。そして、最近は活躍する従業員の年齢層も広がり、女性の比率も増えています。「自分もおもしろいものをつくりたい」という思いを持った仲間が増えていく中、私たちが大切にしている価値観やものづくりに対する姿勢を広報PRとしてしっかりと発信し、「ドウシシャってやっぱりおもしろい会社だよね」「生活に本当に役立つものを提供しているよね」と多くの方に感じていただけたらうれしいですね。

株式会社ドウシシャさま02

まとめ:商品の魅力を掘り起こし、もっとも届く形で世の中に伝えていく

広報PRの歴史は浅いながらも、社内外に確かな成果を示している株式会社ドウシシャ。試行錯誤を重ねながらも、「ENJOY」の精神を旗印に、商品と生活者、企業と社会をつなげる取り組みを続けています。そんなドウシシャの広報PR活動は、いま確かな手応えを感じはじめているところです。

「広報PR担当と胸を張って言えるようになったのはごく最近」と語る、青木さん。しかし、開発者の思いに寄り添い、一つひとつの商品が持つストーリーを丁寧にすくい上げながら、情報を届ける。また、届ける先であるメディアの視点を意識して、もっとも伝わる形で届ける姿勢は、まさに広報PRの本質を体現していると感じました。

プレスリリースをはじめとした一つひとつの発信が、商品との出会いを生みだし、企業の個性を世の中に届ける力になる──。ドウシシャの取り組みは、業界を問わず多くの企業にとって参考になるのではないでしょうか。

ドウシシャの「ENJOY」が込められた商品、そしてこれからの広報PR活動にも期待が高まります。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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