生成AIの活用が進む現代において、「広報PR業務でAIをどう使うべきか」と悩むこともあるのではないでしょうか。
プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、2026年2月20日に株式会社テックベンチャー総研との共催でセミナー「200社以上のAI推奨調査で蓄積したナレッジから読み解く『AIに選ばれメディアの変化を生き抜くPRとは』」を開催。SEOやLLMOコンサルティングで多くの実績を持つ株式会社LANYの竹内渓太代表と、大和大学でマスメディアの社会的役割や信頼性を通じた表現の自由を研究する岡田五知信教授にお話しいただきました。
当日は、ディープテック領域に特化した広報PR担当として数多くのメディア掲載の実績がある袈裟丸梨里子さんがモデレーターとしてセミナーを進行。
本レポートでは、AI検索最適化に欠かせないLLMOに基づいた広報PRの戦略や、視聴環境やユーザーニーズの変化に直面するテレビ業界の現状やコンテンツに合わせた広告の特徴など、当日の内容をもとにまとめました。

テックベンチャー総研 企業広報研究会事務局長/一般社団法人パワーストローク広報顧問/株式会社AJプランニング 代表取締役社長/広報コンサルタント・メディカルプランナー
袈裟丸 梨里子医療系BtoB企業の広報部立ち上げとマネジメントを経験後、医療ロボットベンチャーからオファーを受け転職するも、コロナ禍の影響から半年で倒産の憂き目にあう。この経験をバネにTech系専門広報として独立し、ピーク時には7社を請け負うまでに成長。そのうちの1社から多数のメディア露出実績を認められ執行役員CMOとして事業成長に貢献。退職後は幅広い経験を生かし、大手企業の広報アドバイザリー業務、講師活動、教育系事業支援などに積極的に取り組んでいます。2024年10月よりPR TIMES公認プレスリリースエバンジェリストとして活動。
AI検索時代に求められるLLMOと広報PR戦略
SEOやコンテンツマーケティング、広告運用など、デジタルマーケティングを中心に事業を展開する株式会社LANY。変化の激しいAI検索時代における戦略について、同社代表の竹内さんに最新の知見と共にお話しいただきました。
生成AI利用により非指名検索が増加
2025年9月に、Google検索は「AIモード」を日本語での提供を開始しました。検索結果画面のトップにAIが回答を自動生成して表示する「AI Overviews」をはじめ、日常的にAIを活用する機会が増えています。
なぜ、AI検索対策のニーズが高まっているのでしょうか。セミナーの冒頭で竹内さんが語ったのは、「思考代理人」としてのAI活用による生活者の購買行動の変化です。商品やサービスの購入をする際には従来活用されていた検索エンジンに代わり、AIに具体的なニーズを伝えて比較・検討する行動へと徐々にシフトしているといいます。

まるでコンシェルジュのようなAIは、利用者の「思考代理人」として、ニーズにマッチした商品やサービスを提案します。この新しい検索行動においては、生成AIの基盤であるLLM(Large Language Model:大規模言語モデル)に選ばれることで、認知から購買までのプロセスで優位性を持ちやすくなります。
AIに選ばれる広報PRのアプローチ
検索行動や購買行動が変化する今、広報PRのアプローチにも変化が求められています。従来型の広報PRが瞬間的に訴求する「フロー型」である一方で、AI検索時代の広報PRはデジタル上で信頼や評価を積み重ねる「ストック型」のアプローチが求められるといいます。
そのポイントとして、竹内さんは「AIに『〇〇』といえばこの会社と記憶させる」「AIが回答する際の推奨理由に自社の強みが盛り込まれている」「AIの回答基準に、自社が提唱する基準を提供する」を挙げました。
AIは最新情報を補完して回答する
ストック型のアプローチを実践するためには、生成AIのメカニズムを理解することが重要です。生成AIは事前学習の情報に加え、RAG(Retrieval-Augmented Generation:検索拡張生成)という仕組みを通じ、外部データベースから最新の情報を取得し、回答を生成します。
LLMOを広報PRに活用するためには、「推論〜調査〜生成」という一連のプロセスを踏まえた戦略が必要です。
自社の強みをAIに学習させる
続いて竹内さんは、戦略的な広報PRにおける具体的な施策を紹介しました。広報PRにおいてLLMOに取り組む際に大切なポイントは、自社の強みを活かすこと。例えば、自社の強みを「担当者の質」「LLMOの知見」「特定領域の専門性」と定義した場合は、これらをWebにおける多角的な情報発信を通じてAIに学習させる施策が考えられます。

<施策例>
- LLMO関連の情報発信を強化し、Web上の情報を増やす
- 担当者の質を学習させるために、担当者ページを作成する
- 特定領域や業界の専門性を伝えるために、事例ページを作成する
ファクトを伝えて基準を変える
生成AIに選ばれない場合は、商品・サービスの本質的な選び方をAIに学習させて新たな評価軸を作ることもポイントです。
例えば、「料金」「上場会社」「支援実績の量」という要素がAIの選定基準として重視されている場合、基準を満たさなければ選ばれない可能性があります。AIから選ばれる基準を変えるには、以下の施策が有効です。
- 「ファクト(事実)の作成」:研究結果などを伝え、新たな事実を可視化する
- 「課題の拡散」:可視化した事実を、ニュースなどを通じて社会に広く伝える
- 「基準の転換」:新たな事実を基にした評価軸を一般化させる

竹内さんは、AI検索時代の広報PR担当が新たに担うべきミッションについても言及。「AIを意識して自社の評判をデザインし、推奨率を最大化すること。一連のアプローチは戦略的な広報PRに通じており、広報PR担当の方にとって取り組みやすい領域だ」と話しました。
プレスリリースには「ファクトづくり」「AIへの教育」を意識する
また、AIを意識した戦略的な広報PRの手法として、「ファクトづくり」「AIへの教育」の2つを挙げました。
<ファクトづくり>
- 調査結果の広報PRによる「世論の数値化」
- 第三者機関、専門家との共同研究による「エビデンスの構築」
- 「No.1」の実績など、自社が選ばれる理由の明文化
<AIへの教育>
- 権威性の高い大手メディアへの掲載=信頼の証跡づくり
- サイテーション(言及)を増やすためのデジタル広報PR活動
- プレスリリースの構造化=AIが理解しやすい名詞と数値の活用
生成AIは「情報の捏造(ハルシネーション)」を抑制するために、外部の信頼できる情報源にアクセスして事実の根拠を参照します。AIがアクセスできる場所に「自社が選ばれる理由」をわかりやすい形で設置することで、AIの学習が参照しやすくなります。
竹内さんは、プレスリリースはAIが参照しやすい情報源のひとつだといいます。一例として、PR TIMESが「医療・美容クリニック」「旅行・店舗・グルメ」「QA・コミュニティ・ライフスタイル」領域にて多く参照されているという調査結果が紹介されました。
参考:AI検索で最も引用されるサイトは?全8業界50カテゴリのAI検索引用ランキング「AI Search Cited Award 2026 上期」を発表
AIに好まれる文章の4つのポイント
最後に、国際学会で採択されたGEO(Generative Engine Optimization)に基づく、「検索エンジンに組み込まれた生成AIに好まれる文章の書き方」についても解説しました。
| 結論ファースト | 記事の冒頭や見出しの直下で、ユーザーの問いに対する直接的な答えを提示する。特に「主語+述語+理由や背景」といった情報密度の高い一文が好まれる傾向にある。 |
| Q&A形式の導入 | 想定される質問を見出し(H2、H3)にして、その直下に2〜3文の簡潔な答えを記述する。 |
| 箇条書きと表の活用 | 複数の要素を比較したり、手順を説明したりする際には、箇条書きや表を用いて情報を構造化する。 |
| 平易な言葉への置換 | 社内用語や専門用語を避け、誰もが理解できる平易な言葉に書き換える。 |
実際に、上記要素を含めたLLMが理解しやすい文章構造へのリライトを行った検証をLANYで実施したところ、AI Overviewsの引用成功率が32%に。リライト対象記事の81%において検索順位が上昇したそうです。
竹内さんが紹介した手法は、これからLLMOに取り組もうとする企業にとって戦略的な広報PRを考えるうえでヒントになったのではないでしょうか。
メディアの現状と未来。今支持されるコンテンツ
大手出版社やテレビ局で勤務し、現在は大和大学で教授を務める岡田さん。公平性や信頼性を担保したメディアによる情報発信を、歴史的かつ社会的な視点で分析しています。新聞・テレビ・雑誌といった旧来メディアと、SNSやYouTubeなどの新たなメディアとの関係性について研究している岡田さんに、放送メディアの現状と未来についてお話しいただきました。

大和大学 社会学部 教授/関東学院大学 経営学部 客員教授
岡田 五知信株式会社徳間書店に新卒入社し、その後株式会社新潮社へ。有名週刊誌の記者として、現場の第一線で活躍。1997年には日本テレビ放送網株式会社に入社。バラエティをはじめ、報道や情報番組などの制作を経て、コンテンツ戦略本部プロデューサーとして制作および企画に携わる。同社退職後、関東学院大学の客員教授などを歴任し、現在は大和大学にて教授を務める。
「テレビ離れ」は「テレビ受像機離れ」なのか
セミナーの後半に登壇した岡田さんは、視聴率の低下や「テレビ離れ」に直面する放送メディアの現状について、各種統計を用いて紹介しました。総務省「令和6年度 情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書」によると、平日のメディア平均利用時間は、全年代で「テレビ:154.7分」「ネット:181.8分」に。
参考:令和6年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書(概要)
LINE株式会社が2023年6月に発表した「テレビ・メディア視聴に関する調査」によると、単身世帯のテレビ保有率は「10代:50%台後半」「20代:70%弱」となり、スマートフォンの普及や動画配信サービスの台頭による影響が考えられます。
参考:【LINEリサーチ】「テレビ」の保有率は全体で9割、『単身世帯』の10代・20代では「パソコン」が「テレビ」の保有率を上回る結果に
一方で、株式会社博報堂のメディア環境研究所の調査では、若年層においてもテレビ番組への関心の高さが示されていることがわかります。
こうした結果も踏まえ、各統計から、特に若い世代のテレビ離れは「テレビ受像機離れ」による視聴デバイスや視聴スタイルの変化によるもので、テレビ番組は支持されていると岡田さんは分析しました。
インターネット広告費は4兆円以上に伸長
オンデマンド視聴やパーソナライズされた体験のニーズ拡大を背景に、各種メディアの広告費も変化しました。株式会社電通「2025年 日本の広告費」によると、インターネット広告費は4兆459億円に伸長。テレビメディア広告費を含む、マスコミ四媒体広告費の2兆2,980億円を大幅に上回る結果に。
参考:2025年 日本の広告費
ニーズの変化に伴い、放送メディアの重要指標である世帯視聴率は個人視聴率にシフトしました。放送メディアは予測視聴率データを活用した広告効果の最大化を図るとともに、GRPの効率化が期待できるCM枠を提供しています。
ショートドラマ市場の世界的成長
高精度のデータは、価値あるコンテンツの制作にも活用されています。若年層を中心に人気の高いショートドラマは、世界的に市場規模が拡大。2029年には8兆7,000億円まで成長するという調査結果が発表され、日本市場も2026年に1,530億円規模に成長すると予測されています。
PPLで訴求: 日本テレビ『毎日はにかむ僕たちは。』の広告事例
岡田さんは実例として、日本テレビとごっこ倶楽部が共同制作する縦型ショートドラマシリーズを例に、ユニークな広告戦略について紹介。2023年3月にTikTokで配信開始された同シリーズはZ世代の支持を集め、SNSで総再生数26億回超・TikTok平均再生数が約400万回の人気作です。
同作は、PPLを採用しており、作中の「はにかむ」シーンに商品を自然に映り込ませています。 物語の一部として自然に商品を訴求できるPPLは視聴体験を強化し、嫌悪感なく商品の認知を拡大できるといいます。同シリーズでは、日清オイリオグループ株式会社など大手企業とのタイアップが行われました。
サービス開始から10年目の「TVer」が黒字転換
岡田さんはコンテンツにとどまらず、サービスの成長事例にも触れました。パソコンやスマートデバイスからテレビコンテンツを視聴できるTVerは、タイムシフト視聴などのニーズに応えることで着実に支持を獲得。コネクテッドTVの視聴増加や広告販売の強化を要因として、2023年度には黒字転換を達成しました。
TVerの主な収益源は動画広告収入で、2024年度の広告売上は前年比で2.2倍、2025年度も上期の時点で前年同期比約2倍を記録するなど、成長が加速中です。
放送メディアでの豊富な経験を持つ岡田さんは、成長著しいコンテンツやサービスの運営元に、広報PR企画を持ち込むなど、柔軟にアプローチすることの必要性を語りました。
【質疑応答】参加者からの質問に、竹内さんと岡田さんが回答
ここからは、当日セミナー会場で寄せられた質問の一部を抜粋し、おふたりの回答と合わせてご紹介します。
──AI Overviewsの引用成功率や検索順位が上昇したリライトについて、どのように検証したのか教えてください。
竹内さん(以下、敬称略)/LANY:AI Overviewsが表示される対策対象のキーワードを50個ピックアップし、当社のコンテンツが全く引用されていなかったケースに絞って検証しました。リライトの際には、引用されている他社サイトの該当箇所を分析してAIの選定傾向を把握し、生成AIが参照しやすい構造へと書き換えています。
──PR TIMESで配信するプレスリリースには動画を埋め込めるのですが、AIにおすすめされやすい動画サービスはありますか。
竹内/LANY:YouTubeですね。「AIは動画の内容までは読み取れず、YouTubeの概要欄や自動生成の字幕を読んで内容を把握している」という意見があります。その意見が仮に正しいとすると、YouTubeはAIが読み取れる情報が比較的多いです。
また、YouTubeの動画を埋め込むと、AI Overviewsに表示される場合があります。表示された動画経由で認知を広げられる場合もあるので、私はYouTubeを推奨します。
──AIとの対話により意思を決定する方が増える一方で、情緒的価値により意思決定をする方もいます。情緒的価値にアプローチする対策の必要性について、どのようにお考えですか。
竹内/LANY:両面から対策すると良いでしょう。私は今後、情報収集の際に最初に触れるユーザーインターフェースがAIになると考えています。極論、調査や比較検討はAIサービスの画面内で完結するイメージです。そして、ある程度意思決定したうえで、最終的にWebサイトを閲覧して決断する流れになると思います。
購入に向けた意思決定のプロセスでは、商品やサービスの機能やファクトがとても重要です。自社サイト以外にもプレスリリースを配信してAIに学習させ、一方で商品やサービスへの思いやブランドメッセージを掲載したWebサイトを置くといったバランスをとってはいかがでしょうか。
──TVerにアプローチするポイントをお伺いできたらと思います。
岡田さん/大和大学:TVerのスタッフは複数の企業から出向しており、そのうち約7割がテレビ局員でしょうか。TVerは過去IPの活用や動画広告の販売により黒字化した段階で、現状はPPLなどのノウハウを確立していない状態だと私は考えます。
権利処理を終えたコンテンツとコラボレーションしたイベントやグッズの企画などを売り込める可能性はありますし、TVerの担当者も興味を持つのではないでしょうか。
TVer以外にも、ショートドラマの制作会社にアプローチすることも考えられますね。本日のセミナーにより、みなさんショートドラマの可能性を実感できたと思うので、ぜひ検討してみるとよいでしょう。
まとめ:ユーザーの行動に注目して戦略的な広報PRを
本イベントの第一部では、LLMOを踏まえた検索行動や戦略的な広報PRを実践するポイントをお伝えしました。また、第二部では変化の過程にあるテレビ業界の現状をはじめ、テレビ局が注力するサービスやコンテンツにおける広告の可能性や展望について解説しました。
今後の購買活動を左右するAIに向けたマーケティングに欠かせないLLMOで確かなノウハウを持つ竹内さんと、テレビ局の変遷を間近で体感しながら、新たな可能性に着目する岡田さんのお話は、広報PR担当者の方々にとって貴重な機会だったのではないでしょうか。
本記事でおふたりから学んだ「AIに選ばれ、メディアの変化を生き抜く戦略的な広報PR」の主なポイントは以下のとおりです。
- ファクトとともに「自社の商品・サービスを選ぶ理由」を構造的に伝え、正しく参照されることが必要。AIに選ばれるブランドになることで、生活者に選ばれる。
- 現在、AIに選ばれにくい状況に直面しているなら、自社の強みに合わせて世論を変えていく「新たな評価軸を作る戦略的な広報PR」が求められる。
- AIがアクセスできる場所に「自社が選ばれる理由」を「AIが学習しやすい形」で設置することがポイント。
- 転換期を迎えているテレビ局は、デジタルマーケティングやAIの活用により、広告効果の最大化や視聴者のニーズに応える良質なコンテンツ制作に注力。
- 動画広告には、コンテンツ内に商品やサービスを自然に溶け込ませる形で訴求し、認知の拡大を目指すPPLも取り入れられている。
- TVerやショートドラマなど、成長するサービスやコンテンツの運営元や制作会社への広報PR案件を企画し、提案できる余地は大きい。
広報PR担当者の方はぜひ、本記事でご紹介したポイントを参考にしてみてください。
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