デザインの力で企業と「個」の関係を刷新する #PR3.0 Conference

「PR3.0 Conference」は、企業と「個」の新しい関係構築をテーマに開催されている大規模なPRカンファレンスです。2019年11月29日に開催された2回目のテーマは[ DESIGN ]。各業界からキーパーソンを招き、デザインを多角的に捉える複数セッションが行われました。そのイントロダクションとして行われたキーノートセッション「企業と『個』の新しい関係をデザインしよう」の一部内容を掲載します。

本カンファレンスSession2のレポートはこちらからご覧ください

登壇者

  • 株式会社ファミリア代表取締役社長 岡崎 忠彦氏
  • KESIKI inc. PARTNER / DESIGN INNOVATION 石川 俊祐氏

モデレーター

  • 株式会社グッドパッチ代表取締役社長 / CEO 土屋 尚史氏

企業改革の基軸は『デザイン』だと直感した

岡崎氏が代表取締役社長を務める株式会社ファミリアは、1950年に創立されました。子どもの健やかな成長を願う女性たちが生みだした、子ども服を提供する会社です。

創業者のひとりを祖母に持つ岡崎氏は、幼少期から会社に関わるクリエイターの姿を見て育ち、自らもデザイナーへ。ファミリアのデザインを一部担う関係性でしたが、経済低迷のあおりを受けたファミリアに、徐々に深く関わることになっていきます。

岡崎 「僕が入社したころのファミリアは、デザイン思考ゼロの状態でした。前年比という概念に縛られ、ダブルのスーツを着たおっさんたちが子供服について話している。その姿を見て、この企業にはデザインのアップデートが必要だと感じました」

土屋 「一人のデザイナーだった岡崎さんが、どういう風に企業変革に関わっていったんでしょうか?」

岡崎 「まず、社長ボンボンというだけでも浮いているのに、デザイン業界の言語で話すから、はじめは周囲とコミュニケーションが取れない状況からのスタートです。宇宙人だと思われてたんじゃないかな(笑)。

そこでまず、創業期に立ち返ろう、というメッセージの発信から始めました。子どもたちの未来を考えて生まれた子ども服会社なのだから理念を作らなければ、と」

土屋 「現在掲げられている『子どもの可能性をクリエイトする』という企業理念ですね」

岡崎 「この理念が生まれたことで、売上や利益といった基準では図れない行動に対する大義名分ができました。この理念が浸透し、ファミリアは変わっていったんです」

リーダーシップを持つデザイナーが世の中の価値を変える

一方、デザインファームIDEO tokyoの立ち上げメンバーである石川氏がデザインの道を志したきっかけは、「1対1の関係性」への想い。目の前の誰かを幸せにしたいという思いからイギリスでデザインを学び、工業デザイナーとして歩みはじめます。しかし、帰国後ジョインした国内大手家電メーカーで、デザイナーに対する日英間の定義の違いに苦しむことに。

石川 「日本では量産商品を効率的に生産していくための色や素材、形を決めていく役割しかデザイナーには与えられていません。その仕事では、誰を幸せにするために仕事をしているのかがわからなかった。この違和感を払拭するために、改めて私はイギリスにもどり、そこでデザインコンサルティングファームに就職しました。

イギリスでは、企業課題をデザインの力で解決するのがデザイナーと定義されています。先ほど岡崎さんが話されていたファミリアの経営状況改善のための『理念を作る』という施策も、まさにデザイナーが企業と共にデザインするものです」

土屋 「デザイナーが企業に対してリーダーシップをとる関係性が築かれている?」

石川 「その通りです。デザイナーと一言で言っても、ブランドを扱う人、ビジュアルを扱う人、エンジニアリングを扱う人……さまざまな専門分野のデザイナーがいます。

そういったデザイナーたちが力を合わせて、世の中の価値をどのように変えていくか、デザインの視点から考えていくのが理想だと思います。

こういったデザインの可能性を日本でも広めていきたいと思い、IDEOの東京支店の立ち上げにジョインしました。IDEO Tokyoでは経営層と直接やりとりし、課題解決の根本と向き合う経験を重ねられました」

企業と『個』の関係性をデザインする方法

土屋 「それぞれデザインを通じた企業との関わりについて独自の背景を持つお二人ですが、今回のセッションテーマである企業と『』の関係性についてご自身のエピソードから掘り下げていきましょう。

岡崎さんは経営状況が悪化していたファミリアに対して、その後どのように取り組んでいったのでしょうか」

岡崎 「僕は嫌いな言葉が二つあります。一つは『前年比』。この言葉は使用を禁止しました(笑)。もう一つは『ファミリアらしい』。この言葉はみんな使いたがるけれど解釈が十人十色で、都合の良い言い訳文句にもなっていました。

だからこそ、私はこの『ファミリアらしさ』のビジュアル化が必要だと感じ、理念を作ったのです」

土屋 「理念を組織に浸透させるときは、どのようなことを意識しましたか?」

岡崎フレッシュな言葉で毎日伝えることです。そして、社内だけでなく、社外メディアでも繰り返し理念について語り続けました。それでも、組織にその理念が浸透したと実感するまで4年ほどかかりましたね」

土屋 「理念が浸透したと感じた瞬間は?」

岡崎 「ファミリアの店舗にはアトリエというスペースがあり、子どもたちがデザイン画を描いたり、ものづくり体験をしたりするのですが、社員のひとりが子どものデザイン画をもとに服を作り始めたんです。その光景を見たとき、理念が言葉ではなく形になったんだ、と感動しました」

土屋 「なるほど。石川さんは企業に対してデザインプロジェクトを介して関わっていくとき、どんなことに気をつけていますか?」

石川 「具体的なゴールを設定することですね。何かを始めようとするとき、漠然としたゴール設定は関わる人たちの共感を得やすいですが、方向性がずれてしまい、失敗にもつながります。したがって、キックオフミーティングに誰が参加し、何を共通認識とするかが重要です」

土屋 「キックオフミーティングには必ず意思決定者がいるべきという話をよく聞きます」

石川 「意思決定者はもちろん、一見関係のない人も参加するほうが望ましいです。というのも、最終的にカルチャーとして浸透させていくことを考えると、様々なステークホルダーが社内文化を変革させ、浸透していくための接点になる可能性があるわけですよね。

プロジェクトの推進チームは、コアチームと拡張チームに分けて設計します。オーナーシップを持ってコアチームが決めたことを、拡張チームが各部署に伝え、浸透させていく。こうしたプロジェクトを社内で浸透させていくための組織設計も、デザインプロジェクト成功の鍵を握ります」

土屋 「各企業の人間関係や組織図も理解していなければなりませんね」

石川 「基本的に、プロジェクト開始前にヒアリングをさせていただくこともあります。たとえばファミリアさんのように、理念がカルチャーとして浸透し、社長の意志決定がトップダウンで伝わる会社だったらまた別なのですが……」

岡崎 「いやいや、トップダウンと言っても、そうストレートには話が伝わりませんから。どう社員を巻き込んでいくか、チーム設計の部分は考えています」

土屋 「チーム設計のときはどういったことを心がけていますか?」

岡崎 「信頼すること尊敬すること会話することです。チャットツールの活用などの具体的な施策も含め、コミュニケーションを保ち続ける仕組みをデザインするよう意識しています」

企業と『個』の関係性をこれからどうデザインしていくか

土屋 「石川さんは新しく組織を立ち上げられたと聞いていますが、どのようなビジョンがあるのでしょうか」

石川 「新しい組織では、『愛される会社がどのようにデザインされるべきか』という課題に向き合おうと考えています。

日本には、いいモノを作っているのに伝えきれていない企業がとても多い。一方、企業理念と発信する商品やサービスの意図が明確に一致している企業は少ないのです。これまで多くの企業のデザインプロジェクトに参加していくなかで、私はこの課題の大きさに直面しました。

日本企業の何を変えるべきなのかを模索し、透明性を持った愛される企業や文化を応援していくことが私たちのミッションです」

土屋 「最後に、今後企業と『』の関係性をどうデザインしていくか、それぞれお聞かせください」

岡崎 「まずは子どものため。その優先順位を崩すことなく、ステークホルダーとの関係性をどうデザインするのかを考えていきたいです」

石川 「私たちは、社内を一番大事にするという優先順位を意識したいです。ひとつの企業にいる理由が希薄化しつつあるなか、『個』のモチベーションを高めることは企業の大きな課題となるはずです。企業と『個』は、お互いのやりたいことが一致しているのが望ましいと思います。会社をコミュニティとしてデザインしていけたら良いですね」

企業と『個』の関係性に直結するインナーブランディングのデザイン

企業と『個』の関係性を『デザイン』というキーワードから掘り下げた本セッションでは、インナーブランディングからパブリックリレーションズへ紐づいていくデザインの重要性が語られました。

  • 企業やプロジェクトが目指すビジョンを明確にビジュアル化する
  • デザイン思考やデザイナーの立ち位置を再定義し、企業に取り入れる
  • 会社そのものをデザインする視点で社会と向き合い、メッセージを伝える

こうしたヒントは、業界を問わず、多くの企業の漠然とした課題を解決するための道筋を作るものでしょう。

この記事のライター

宿木 雪樹

宿木 雪樹

ライター・編集者。カンパニーストーリーやプロダクトのユーザーボイスのインタビュー記事を中心に、企業オウンドメディアにて編集・執筆。ほか、マーケティングに関わるコラム連載も執筆中。好きなものはハーブティー。30代になって健康な生活に目覚めました。

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