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年間売上100億円超、顧客数1500万人。8割が月内リピートするうどん屋の商品と顧客接点

全国で開催されることが決まった「そこで、PRゼミ!」。第一回となる「そこで、PRゼミ!さぁ福岡!」が2022年10月17日(月)に開催され、当日は「売り上げが伸びている企業の取り組みが知りたい」「もっと多くの人に自社の商品を知ってほしい」「広報PR活動を始めたが効果がない」など、さまざまな目的や課題を持つ130人が集まりました。

第一部では、年間顧客数1500万人を超え、年間100億円超を売り上げる福岡県北九州市発の資さんの代表取締役社長佐藤さんが講演。

本レポートは、講演内容とあわせて同社の広報を担当する原田さん、伊藤さんにいただいたコメントをまとめています。

※レポート内の株式会社資さんの売上、店舗数などの実績については2023年2月時点での最新データに更新しています

株式会社資さん 代表取締役社長

佐藤崇史(Sato Takafumi)

広島県出身。1997年慶應義塾大学環境情報学部を卒業後、ソニー株式会社、ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)を経て、2006年株式会社ファーストリテイリングに転じ、経営変革/グループ戦略/人事/店舗運営/社長室等の責任者を歴任し、経営変革を推し進めた。2018年3月より北九州のソウルフード「資さんうどん」を運営する株式会社資さんの代表取締役社長に着任し、同社の第二創業期をけん引。現在に至る。

株式会社資さんの最新のプレスリリースはこちら:株式会社資さんのプレスリリース|PR TIMES

創業40年で年間売上100億円を超えるうどん屋に成長

1976年、北九州市で創業した資さんうどん。

その歴史は、創業者である大西さんが売上不振のうどん屋を引き継いだところから始まります。「引き継いだからにはお客さまの喜ぶ顔が見たい」と、2年間かけて現在の出汁と麺の原型を完成させました。福岡で主流のあごだしではなく、鯖、昆布、椎茸などをブレンドした出汁と福岡のうどんに比べて、ややこしのある麺で勝負。このこだわった味は、あっという間に北九州のソウルフードと言われるようになりました。

そして、大西さんは「『資さん』を100年企業にしてほしい、未来栄光輝かせてほしい」と言い残して亡くなり、横山さん(2代目社長)から経営のバトンを受け取ったのが佐藤さんです。

北九州から九州全域に展開

佐藤さんが着任後、店舗数はぐんと伸び、もともとは北九州市中心の店舗展開でしたが、佐賀、福岡市内各地、筑豊……と増え続けています。

「本当においしいものはどこでも通じる」というのが前提ですが、資さんの味を多くの方に味わってもらうため、100年続く企業にするために、北九州市以外にも店舗展開を加速していくことを決意。現在では北九州市に根を張りつつも福岡県、山口県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の7県で61店舗を展開しています。

顧客構成、8割は月に何度も来てくれる常連客

資さんの顧客数はのべ年間1500万人。資さんが店舗展開する福岡県、山口県、佐賀県、熊本県、大分県、宮崎県、鹿児島県の7県の総人口約1276万人(※1)を上回る数字です。

来店回数の構成比を見ると、1ヵ月に複数回来店する顧客の構成比は2割以上、しかしその顧客のご来店がのべ客数の約8割を占めており、常連客に支えられていることがわかります。

※1 総務省「人口推計(2021年(令和3年)10月1日現在)」より

顧客の声を経営に反映、8割が常連客化

では、なぜ常連客は何度も足を運んでくれるのか。そのヒントを見ていきましょう。

毎日でも食べられる100種類以上のメニュー

創業者である大西さんの「お客さまが喜ぶことをとことん追求する姿勢」が現在の資さんの根底にあります。鯖、昆布、椎茸などを使った出汁に対するこだわり、麺のこだわりなど、顧客においしいと思ってもらうための味に対する追求はもちろん、100種類以上のメニューも顧客が喜ぶことをとことん追求した結果でした。

当時は八幡製鉄所のお膝元。出勤前や出勤後、毎日のように通う人が多くいました。毎日うどんばかりを提供するのも申し訳ないと思い、「何食べたいですか」と声をかけ、「かつ丼食べたい」と言われれば、かつ丼をつくり、「カレー食べたい」と言われれば、カレーをつくる。そうやって、連日食べても飽きないようにとリクエストに応えてメニューが増えたそうです。そして、メニューを増やしても手間を惜しまず、一つひとつのメニューの細部にまでこだわっています。

まさに、月に何度も訪れたくなる理由のひとつでしょう。

働く人のための24時間営業

当時、資さんでは工場や港で3交代で働く人がいつでも食べられるようにと、北九州にコンビニができる前から24時間営業をしていました。

この考え方は、現在も受け継がれています。2020年、新型コロナウイルス感染症が拡大し、店内飲食の時短制限がかかっていた期間は、店内飲食終了後にテイクアウト営業のみを行いました。

これもきっかけは顧客の声。夜勤の医療従事者やドライバー、工場勤務の人からのニーズに応えたものでした。「勤務終了後は飲食店が開いてなく、最近はコンビニ弁当しか食べていない」という声を聞き、24時間営業を実施。顧客数が多くなくても、その声を挙げてくれた方に感謝の声をいただけたのはうれしかったと当時を振り返っています。

個々のニーズに合わせた経営が、常連客を生んでいるのではないでしょうか。

顧客の喜びを起点に進化を続ける

メニューや営業時間のほかにも顧客の声を起点にしたものは、多岐にわたります。

利用しやすい便利な店づくり。カウンター、お座敷、テーブル……など、利用する人のニーズに合わせて今の店内が生まれているそうです。また、今はなきカレー専門店、しゃぶしゃぶ専門店、メニューなど。すべてが顧客の喜びを起点に進化を続け、今の店やメニューがあります。

資さんの価値=商品(こだわりの味)+サービス(顧客の声の反映)。

顧客にとっても、便益性と独自性が大切とされるなか、まさに独自に愛される価値を生み出しています。

顧客を広げ、常連客に。そして、資さんファンへ

では、実際に「顧客の声を聞く」ために、どのような取り組みを行っているのでしょうか。

顧客の声を聞く

資さんでは顧客の声を大切にする文化が、創業以来、根付いています。主に実施しているのは、以下の2点です。

  1. 店長・従業員を通じて顧客の反応を聞く
  2. 顧客の声を直接確認する

特に二つ目の「顧客の声を直接確認する」ために、経営幹部や現場の責任者が、常に次の3点を確認するようにしています。

  • 店舗のアンケート
  • Googleの口コミのコメント
  • TwitterなどのSNS

また、資さんからの情報発信と顧客とのコミュニケーションは、SNSとプレスリリースの合わせ技で実施しています。SNSだけだと、ビジュアルや表現のインパクト勝負になってしまうため、SNSを入り口にして認知を広げ、詳しい情報をプレスリリースに記し理解を深めるように努めているそうです。

特にプレスリリースを「想いやこだわりを届けるための重要なメディア」と位置づけ、積極的に活用。プレスリリースをコンスタントに発信することで、メディア関係者からの問い合わせも増え、さらに多くの人に伝えることができています。

「認知から愛着」「お客さまから資さんファン」になるように。そして、同時にすそ野も広げられるようにと、お客さまに知ってもらうことと深く理解してもらうことの両立を意識して進められています。

顧客から常連客。常連客から資さんファンを増やすためには、顧客の声を聞くこと、情報を発信すること、コミュニケーションを図ること……すべてが必要と言えるでしょう。

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時代に合わせて進化するため、社員全員を同じ想いに

佐藤さんは、着任後に経営理念を策定。部長から現場の店長まで全員が集まり、「幸せを一杯に。」という経営理念を半年かけて完成させました。

経営理念を策定

創業者の大西さんが存命の間は、「大西さんが言うこと=資さんが大切にすること」。あえて経営理念をつくる必要はなかったが、大西さんが亡くなって数年経ち、それが薄れてきているという危機感があったそうです。

また、新たな地域に店舗が広がり、新しい従業員が増えたため、資さんが大切にしてきたこと、これまでやってきたこと、こだわってきたこと……それらを知ったうえで、時代に合わせて進化するための経営理念の策定でした。

経営理念の浸透

経営理念を浸透させるために、さまざまな取り組みを行っています。40周年に合わせた社史の制作の案が出た際に、従業員だけでなく顧客にも届けるために「ファンブック」を制作。

同時に「社内報を制作し、従業員同士の交流はもちろん、創業当時から働いている従業員の想いを知れるきっかけにしてきたそうです。この社内報は佐藤さん自身の学びにもなっていると言います。

顧客接点と新しい企画を生むプレスリリース

株式会社資さん マーケティング・広報課 課長
原田 浩陽 (Harada Hiroaki)
1981年4月2日宮崎県出身。2004年に福岡大学卒業後、総合通販会社に入社。その後、2006年8月、福岡の広告代理店に入社し、不動産広告等を主にした営業、制作等を13年間従事。2020年1月に株式会社資さんへ入社。入社後、マーケティング・広報課にて、資さんうどんの販促物全般の制作・進行、マーケティング施策企画立案、社内外の広報業務に従事し、「幸せを一杯に。」の使命の下、資さんの情報発信、更なる認知拡大に取り組んでいる。

株式会社資さん マーケティング・広報課
伊藤 典子( Ito Noriko)
1983年12月25日長崎県出身。大手航空会社に入社し、グランドスタッフとして接客業に従事。その後、結婚、出産を経て、大手不動産会社の商業施設運営を担うプロパティマネジメント会社に入社。マーケティング調査、広告宣伝、販促企画に従事。2021年8月株式会社資さんへ入社。マーケティング・広報課にて、広報業務や販促物制作を行い「資さん」の魅力を発信すると共に、女性活躍推進PJのメンバーとして働きやすい職場環境の構築を目指す。

佐藤さんの講演を踏まえ、同社の広報担当である原田さん、伊藤さんにお話を伺いました。多くの方に愛され、リピートしてもらえる店になるための秘訣が詰まっています。

新規顧客に深く知ってもらえるプレスリリース

──資さんは広報PRに力を入れている印象ですが、広報活動はどのように変化しましたか。

原田さん(以下、敬称略):もともと広報を担う部署はなかったんです。そのため、まずは、広報・マーケティング部門の立ち上げからスタートしました。プレスリリースを一本ちゃんとつくって、メディアの方に知っていただき、掲載、エンドユーザーの方に情報を届けるという基本的なことを着実にやるようになりました。弊社の広報活動の基盤にあるのは「プレスリリース」というのは間違いがなくて。そこに時間をかけているという点は、大切にしているスタンスですね。

──新しいメニューがたくさん出ていますがどのようにお客さまへ訴求していますか。

原田:私たちのことを知っていただくためのプレスリリースですが、メディアの方に対してはもちろん、お客さまに詳しく正しい情報を伝えるための用途もあります。SNSだけでは伝えきれないことも、プレスリリースのなかに記載しているんです。

商品について伝える際のポイントは、商品の魅力を深く伝えること。資さんが何をこだわって、どう作って、どんなに皆さんに食べてもらいたいと思ってるか、ということです。きちんとそのポイントが伝わっているかどうかで、結果として売上にも影響してくると思います。

店舗の売り上げに大きく影響する広報PR

──広報PRによって売れる商品も変わってくるのでしょうか。

原田:出店が新地域の場合は、オープンする際に定番商品である「肉ごぼ天うどん」「ぼた餅」などを中心に訴求しています。そのため、新店では定番商品のご注文の割合がとても多くなっています。オープンからしばらくすると、今度は新たに販売したものを広報PRしているので、フェア商品が上位になってくるんですよ。

お客さまの反応は売上を示唆、反応を見て新しい企画を

──フェア商品の訴求はどのようにしていますか。

例えば、春に出した合い盛り丼。私たちとしては、従来のフェア商品とは異なるタイプの商品だったので、少しチャレンジでした。しかし、新しい商品として打ち出せるのはもちろん、既存商品の訴求にもつながるという利点もありました。

その後、冷やしぶっかけフェアでは、人気メニューを冷たいうどんにアレンジしたので、なじみやすくも新しい商品感を伝えられました。資さんしあわせセットは、お客さまの声を商品にしたもので、SNSでもすぐに話題になりましたね。今は、さらなる新しい商品づくりのため、お客さまの反応を見ながらさまざまな案を考えています。

──積極的にお客さまとコミュニケーションを図っていますが、広報として重視している指標はありますか。

原田:いろんな打ち出しや施策に対して「どのように反応してくださるか」「資さんがどう映っているのかな」と、試行錯誤しながら、しっかりとお客さまの反応を受け取るようにはしていますね。

例えば、プレスリリース配信、TwitterやFacebookのSNSでいいねの数が多いとフェア商品の売上がよいという傾向はあります。とは言え、逆のこともあり……。その際は、情報がしっかりと伝えられなかった、魅力的ではなかった可能性があると思い、振り返りをしています。

──参加型のアンケートも定期的にされていますよね。

原田:お客さまの声からできるメニューも多いですし、最近だと春のグランドメニューをアンケートさせていただきました。

共創できるストーリーを意識

──このような参加型のコミュニケーション、そもそもファンが多くないと難しいですよね。何か工夫していますか。

原田:お客さまから「ご飯を食べるなら資さん」と、最初に思ってもらえるような身近な存在であり続けることを意識しています。

伊藤さん(以下、敬称略):広報担当としてTwitter投稿はしていますが、一方的な発信の雰囲気にはしたくないなと思っていますね。受け取った方がどう捉えるのかを常に考えていて、ご自身でストーリーを展開していただけるよう心がけています。この考え方はプレスリリースも同じですね。

──新しく考えている広報PR施策はありますか。

伊藤:今、当社では「女性活躍プロジェクト」を立ち上げていて、私もメンバーとして活動しています。弊社は、パート・アルバイトで働いている女性の方も多く、皆さんに支えられています。そこで、現場であがっている声を実際に聞いて、より働きやすい職場を目指して活動しているんです。また、意欲があって、資さんに共感する仲間に、男女を問わず、どんどん集まっていただきたいと思っています。採用広報という役割も意識して、社外へ伝えていきたいですね。

「創業40年の継承」と「時代に合わせた進化」どちらにも顧客の声

資さんの根底にある「お客さまが喜ぶことをとことん追求」すること。これは創業者の想いであり、経営そのものでした。毎日でも食べられるように、と増えていった100種類以上のメニュー、働く人のための24時間営業は今現在も継承されています。

一方、時代に合わせて進化するために経営理念の策定を行うなど新しい取り組みを積極的に行っています。店舗が広がり、新しい従業員が増えたとしても社員全員が同じ想いで顧客を迎えているそうです。

そして、「店長・従業員の声を通して、顧客の反応を聞く」こと、「顧客の声を直接確認する」ことを大切にしている同社ですが、「顧客の声」を推進するために、店舗のアンケート、Googleの口コミのコメント、TwitterなどのSNSに目を通し、経営に活かしています。

より顧客との接点を持つための情報発信とコミュニケーションは、SNSとプレスリリースの合わせ技。顧客の声を聞くこと、情報を発信すること、コミュニケーションを図ることで「顧客から常連客」へ、「常連客から資さんファン」へつながっています。

第二部では、「資さんのプレスリリースがなぜメディアの目に留まるのか」をテーマに、西日本新聞社の富田慎志さん、ファンファン福岡編集長の竹若由里絵さん、佐藤崇史さんによる鼎談が行われました。

記者はどうやって情報収集しているのか、メディアフックがつまったプレスリリースのポイントなどを解説。あわせてご覧ください。

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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