プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、2018年よりスポーツチーム・団体の積極的な情報発信を支援する「SPORTS TIMES」をスタート。スポーツチームや団体が自ら発信することで、試合結果がニュースのメイントピックになりがちな現状を変え、スポーツの魅力をより広く伝えていくことを目指すプロジェクトです。
2026年2月25日にはスポーツチーム・団体向けのセミナーを開催。葛飾区に拠点を置く「南葛SC」の代表取締役専務兼ゼネラルマネージャーの岩本義弘さんと、プロモーション部長を務める天野春果さんをお迎えし、『応援され続ける「ファンづくり」施策の極意 南葛SCに学ぶ広報PR術』をテーマにお話しいただきました。
人気漫画『キャプテン翼』から生まれた同クラブが、多くの地元ファンの心をつかむまでに、どのような取り組みが行われたのでしょうか。当日の内容をもとにレポートします。
株式会社南葛SC(東京都葛飾区):最新プレスリリースはこちら

株式会社南葛SC 代表取締役専務兼ゼネラルマネージャー
岩本 義弘1972年7月24日生まれ(53歳)。東京都出身。株式会社TSUBASA代表取締役として『キャプテン翼』のライツ業務全般を担当。Jリーグを目指すサッカークラブ「南葛SC」の代表取締役専務 兼GMも務めており、サッカー解説者やスポーツジャーナリストとしても活動している。オールスポーツWebメディア『REAL SPORTS』編集長も担う。前職は株式会社フロムワン代表取締役兼サッカーキング統括編集長。

株式会社南葛SC プロモーション部長 Two Wheel Sports 代表
天野 春果川崎フロンターレのプロモーション部長として、「Jリーグ地域貢献度10年連続1位」を記録するなど、数多くの実績を残し、2024年1月退職。2024年2月、南葛SCプロモーション部長に就任。街を巻き込む数々のユニークな企画を通じて、南葛SCのPRを軸にした地域との関係構築を牽引する。
「広く」よりも「深く」。地域に根ざすクラブづくり
国内外に熱狂的なファンを持つ人気サッカー漫画『キャプテン翼』。その主人公・大空翼が少年時代に所属したチームと同じ名を冠するのが、原作者である高橋陽一氏がオーナー兼代表取締役社長を務める「南葛SC」です。葛飾区及び東京都全域をホームタウンとし、「葛飾からJリーグへ」を合言葉に地域に根ざしたクラブづくりを進めています。
特筆すべきは、南葛SCの「SC」がサッカークラブではなく「スポーツクラブ」を意味していること。そこには「単なる競技団体にとどまらず、スポーツを通じて地域の人々が自然につながれる場所でありたい」という高橋氏の深い思いが込められているそうです。
現在、男子は関東サッカーリーグ1部、女子はなでしこリーグ2部に所属。男女のアカデミーやスクールも展開し、地域の子どもたちがスポーツを全力で楽しめる環境づくりにも注力しています。2020年にはJリーグ百年構想クラブにも認定され、Jリーグ参入を見据えた体制づくりも進められてきました。
また、クラブ運営にはスポーツビジネスやマーケティングなど多様な分野の人材が関わり、地域企業との連携も広がっています。業界・業種を超えた地域企業との連携も広がり、現在はパートナー企業が400社を超えるなど事業面でも成長を加速させているところです。
そして南葛SCでは、コロナ禍明けの2023年から有料観客試合をスタート。ホームスタジアムでの平均収容率は75%以上と、毎年順調に観客動員数を増やしてきました。天野さんはその戦略の核を「単なる数字の追求ではなく、明確な集客ロジックの共有と実践」だと説明。特に、以下のポイントを大切にしてきたそうです。
- ファミリー層の獲得に注力:現在の南葛SCの観客データを見ると、男性比率や年齢層がやや高い傾向にあります。地域に根ざしたプロスポーツクラブは子どもから高齢者まで幅広い層が混ざり合うことが「健全な形」と考え、子どもと母親を中心としたファミリー層を巻き込む施策を最優先事項として取り組んでいます。
- 「広く」よりも「深く」:南葛SCのホームタウンは葛飾区を中心とした東東京エリア(墨田区、台東区、江戸川区、足立区など)に広がり、その総人口は約300万人にものぼります。しかし、あえて「広く薄く」網を広げることを避け、まずは葛飾区の約47万人に対して「深く濃く」根付くことを最優先。足元の信頼を勝ち取ることが、結果として地域全体への波及効果を生むのだそうです。
- 地域クラブとしての基盤づくり:人々の生活動線の把握や、地元住民との関係づくりにも注力。自ら葛飾の街を歩き、街の特徴を肌で理解することこそが、地域密着型クラブにとって揺るぎない経営基盤になるのだと説明しました。
集客のカギは「魅力的なチーム」と「きっかけづくり」
スポーツクラブにとって、集客はもっとも重要な課題のひとつです。南葛SCでも重視しているのが、地域からの支持を示すバロメーターになるという「収容率」。そのためには、監督や選手が「強い」だけでなく、「魅力的なチーム」を目指すことが欠かせません。
一方で、スタジアムに足を運んでもらうための「きっかけづくり」は、広報PRの役割だと天野さんは話します。観客を増やすためのプロセスを次の3つの段階で考えているそうです。
1.地域:まずはクラブの存在を知ってもらうため、地域イベントへの参加や情報発信を通じて、地元の人々に南葛SCのことを認知してもらう。
2.来場者:スタジアム周辺の公園などを活用したホームゲームイベントを通じて、試合を観なくても気軽に立ち寄れる場をつくり、「休みの日をスタジアム周辺で過ごすのっていいな」と思ってもらう。
3.観客:イベントなどをきっかけにクラブへの関心を高めてもらい、実際に試合を観戦するファンへとつなげていきます。
スポーツに興味のない人にとって、有料の試合観戦はハードルが高いもの。そこで南葛SCでは、スタジアム周辺の公園などを活用したホームゲームイベントを開催し、まずは気軽に立ち寄れる場をつくっています。イベントだけを目的に訪れる人もいるそうですが、天野さんは「それでもよい。地域のお祭りのような存在としてクラブを知ってもらうことが、次の来場につながる」と話します。
また、集客施策を考える際、「楽しい・おもしろい・温かい・近い」といった4つのキーワードを軸にすることも大切にしているポイントとのこと。「おもしろい」には笑いを生む楽しさだけでなく、興味関心を引きつけるおもしろさも含まれ、「近い」には、スタジアムまでの物理的な距離だけでなく、クラブや選手を身近に感じてもらう心理的な距離も含まれます。こうした要素をイベントや企画に落とし込みながら、地域に愛されるクラブづくりを進めているそうです。

ホームゲームと地域活動で広げる。南葛SCのファンとの接点
そして大切にしているのは、単発のイベントではなく、「いつ来ても楽しい」と思ってもらえる環境をつくること。ここからは、取り組み事例を紹介します。
1.地域と連携したホームゲームイベント
ホームゲームでは、地域資源を生かしたさまざまな企画を実施しています。例えば、葛飾区にある相撲部屋と連携した「南葛相撲カーニバル」では、力士がスタジアムに来場し、ちゃんこ鍋の提供や子どもたちとの交流イベントを実施。味噌ちゃんこは即完売し、追加販売を含めて1,000食以上が売れるなど大きな盛り上がりを見せました。
また、イベントの運営には地元の小学校PTAなどにも協力してもらうことで、地域との関係づくりにもつなげています。
2.スポーツと地域文化を掛け合わせた企画
葛飾ならではの文化とスポーツを組み合わせた、以下のような企画も積極的に実施。こうした活動は、地域文化の発信にも貢献しているといいます。
- なんかつ寅さんランド:葛飾・柴又を舞台にした人気映画『男はつらいよ』とコラボレーション。風間八宏監督やコーチが「寅さん」の姿で登場するなど、ユーモアを交えた演出で来場者との距離を縮める企画です。地域の観光資源とクラブの認知を同時に高める取り組みとして実施しています。
- 節分イベント「南葛青鬼」:葛飾の亀有香取神社で行われる節分祭と連携し、南葛SCの選手やスタッフが青鬼となって豆まきを行うイベントに参加。実施後のイベントレポートはこちらよりご覧いただけます。
- 銭湯企画「南葛SC湯」:下町文化として残る葛飾の銭湯と連携し、クラブのPRと銭湯利用促進を同時に行う企画。高橋陽一氏が銭湯絵を描くなど話題性のある取り組みを行い、地域文化の発信とクラブの認知拡大を図りました。
3.地域イベントの参加・学校訪問
関東リーグのホームゲームは年間9試合程度。天野さんは「試合がない日の活動こそ重要」だと考え、地域イベントへの参加や学校訪問なども積極的に実施しています。
- 翼DREAM:サッカー教室に加えて夢を持つことの大切さを伝える授業を実施。試合を観戦できる「ドリームパス」を地元の子どもたちに提供するなど、サッカー観戦の機会を創出しています。
- 南葛サウナクラブ:地元のサウナ施設と連携し、選手が「熱波師」としてサウナイベントを行うユニークな取り組み。継続的に実施することで、サウナを通じたクラブの認知拡大効果を期待しています。
このように、クラブのカラーを明確にしたホームゲームイベントや地域活動を積み重ねることで、南葛SCでは地域との関係を少しずつ広げながら、その価値に共感するファンを増やしているといいます。
南葛SCが重視する「発信力の強化」と「キャリア形成」
セミナーの後半では、南葛SCの代表取締役専務兼ゼネラルマネージャーであり、スポーツメディア『REAL SPORTS』編集長も務める岩本義弘さんが、南葛SCが実践する広報PR戦略や組織体制について解説しました。
ファンとの接点を生む発信力の強化
現代のスポーツクラブにとって「自ら発信する力」を持つことが不可欠だと語る岩本さん。特にYouTubeでは試合の裏側や選手の日常を伝える「密着動画」を継続的に公開し、クラブの素顔を見せることでファンとの心理的な距離を縮めることに成功しています。
その発信を支えているのが、3名体制の広報チームです。男子チーム、女子チーム・地域活動、試合現場と役割を分担し、クラブのあらゆる活動を発信できる体制を構築しています。
また、岩本さんは選手自身によるSNS発信も重視。「ファンは選手自身の声を聞きたがっている」という考えのもと、現在ではSNS発信を選手のKPIとして設定し、選手が主体的に情報を届ける、南葛SC独自の文化づくりを進めているそうです。
「選手社員制度」による競技と仕事の両立
南葛SCの組織づくりにおいて、最大の特徴のひとつが、競技と仕事の両立を支える「選手社員制度」です。現在は、所属選手の8割以上がクラブの正社員として勤務し、午前中の練習を終えた後には、地域貢献活動やパートナー企業への営業活動などに主体的に取り組んでいます。
この制度は、選手が抱える「現役引退後のキャリアへの不安」を解消し、安心して競技に打ち込める環境を整えることを目的として、2019年からスタート。単に雇用を保証するだけでなく、実務を通じて社会人としての資質を高めることにも重点を置いているのだそうです。
パソコン操作やDXツールの活用、効果的なSNS運用、さらにはコンプライアンス研修といった、ビジネスシーンで必要とされるスキルを学ぶ機会を提供しています。ピッチ外でもひとりの社会人として成長できる仕組みを整えることで、選手たちの将来を見据えた人材育成が、クラブの根幹として進められています。

【質疑応答】参加者からの質問に岩本さんと天野さんが回答
ここからは、当日セミナー会場で寄せられた質問の一部を抜粋し、おふたりの回答とあわせて紹介します。
──プロモーションを構想する際、どこから考え始めるのでしょうか。企画が形になっていく思考の出発点を教えてください。
天野さん(以下、敬称略):企画で大切なのは「偶然」と「意識」だと思っています。例えば、冬になると街で片方だけの手袋が落ちていることがありますよね。僕はそういうものを意識して見ています。企画も同じで、日常の中にヒントは必ず落ちている。でも、それを「ただの手袋」として通り過ぎるか、「何かのきっかけ」として拾い上げるかは、意識しているかどうかの違いなんです。
見つけようとしても必ず見つかるものではない。だからこそ、自分がどれだけ動いているかも大切です。偶然の中にあるヒントを、意識して拾い上げることが企画の出発点だと思います。
──企画を実施するうえで、もっとも大切にしていることは何でしょうか。
天野:妥協しないことですね。面白いものや楽しいものは、妥協したら絶対につくれません。
また、考える段階も大変ですが、当日の運営もかなり大変です。ホームゲームイベントは4時間くらいありますが、夜の試合でも朝から準備を始めます。会場で流すBGM、スピーカーの位置、アナウンスの内容、看板の設置場所など、一つひとつにこだわる。そこを雑にすると粗くなってしまって、お客さんの心をつかむことはできません。来てくれた人をしっかり満足させるためには、細部までこだわることが大切だと思っています。
──エンターテインメント性のある企画を進めようとすると、社内で「競技に関係ないのでは」といった反応が出ることもあります。そうした空気を変えるためのポイントはありますか。
岩本さん:南葛SCも昔はスポンサーを獲得することさえ「余計なことをするな」と言われたこともあります。
大切なのは、まず経営陣としっかり話すこと。どんなクラブを目指すのかを共有する場を持つべきだと思います。もし「強いチームをつくるだけ」が目的なら、地域リーグでもいいわけです。でも、地域の人に来てもらって楽しんでもらうためにクラブを運営しているなら、競技に直接関係ないという理由で否定するのは違うと思います。
現場同士で議論すると衝突しやすいので、トップに理解してもらい、トップから方針として示してもらうことがポイントではないでしょうか。組織としての透明性も重要だと思います。
天野:関わる運営や広報を自分で全部やるのも方法のひとつです。人の手を借りずに、まず自分で企画を立てて売り込みに行く。3人くらいいれば、ある程度のことはできるので、まずは結果を出して、サポーターの存在がどれだけ大事かを周りに理解してもらう。そうやって少しずつ空気を変えていくしかないと思います。

まとめ:競技の枠を超えて地域とつながる接点をつくる
今回のセミナーでは、南葛SCの取り組みを通じて、地域に応援され続けるクラブづくりの考え方が語られました。集客のためのロジック設計、地域資源を生かしたイベント企画、継続的な情報発信、そして組織としての体制づくり。これらを積み重ねることで、クラブと地域との関係は少しずつ深まっていきます。
試合の勝敗だけに依存するのではなく、ホームゲームイベントや地域活動、継続的な発信を通じて、日常の中にクラブとの接点をつくっていく。そうした積み重ねが、地域に応援されるクラブづくりにつながっているのだと感じられる内容でした。
「葛飾からJリーグへ」という目標を掲げながら、地域とともに歩む南葛SC。枠にとらわれない柔軟でユニークな取り組みはスポーツチームに限らず、地域と関わる企業や団体にとっても多くのヒントを与えてくれるものといえるでしょう。
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