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岡山の企業3社で実現したPR。広報担当者がゴールから逆算して企画した「AOHARE号」とは|菅公学生服株式会社

2024年8月、岡山県の企業である菅公学生服株式会社と青木被服株式会社、両備ホールディングス株式会社の3社は共同で、制服やデニムの制作過程で排出される残布を使って装飾したアートバス「AOHARE号」企画を実施。この「AOHARE号」に関する広報PR活動について、それぞれの企業がかける想いをレポートしていきます。

第一弾「岡山デニムをデザインとPRの力で全国へ。デザイナー自らが挑むブランド価値向上|青木被服株式会社」に続き、第二弾は本企画を発案した柄川麻紀さん(菅公学生服株式会社)にインタビュー。

繊維産業が盛んな岡山県は、学生服の出荷数でも日本一です。なかでも大手学生服メーカーである菅公学生服株式会社は、なんと創業170年という老舗企業。長年、子ども向けに学生服の残反を使ったものづくりのワークショップを開催してきました。今回はそのワークショップを3社のコラボレーション企画として実施することを提案。本企画の発案者である柄川さんに、企画に込めた想いや実施したことによる効果などについて、お話を伺いました。

菅公学生服株式会社(岡山県岡山市):最新のプレスリリースはこちら

菅公学生服株式会社 カンコーブランディング本部 ブランディング室 広報・PR担当 

柄川 麻紀(Karakawa Maki)

中学校教員(国語科)、教育関連会社の受付などを経験し、2016年に中途入社。カンコーブランディング室でお客様相談室、社内外広報業務を経て、2019年にマーケティング室に異動し販促物などの製作に携わる。2020年から2021年には産休育休を取得。2021年に広報強化のため再び広報関連の仕事に従事。2024年6月より、ブランディング室と統合し、社内外の広報に加え、カンコー、制服の価値向上のためのPR施策・イベントの立案・実施を行っている。趣味はカメラ。愛器の一眼レフはCanon eos 80D。EF70-200mmf2.8Lのレンズが宝物。プレスリリース素材の撮影や社内行事には必ずカメラを抱えてシャッターを切っている。

同じ熱量を持つ企業へコラボ施策を提案

──3社共同で実施した「AOHARE号」の企画について、実施の背景をお聞かせいただけますか。

以前、両備ホールディングスの方が弊社にいらっしゃった際に、岡山県で「広報横連携の会」というものを作りたいというお話があったんです。岡山から全国へ向けた広報PR活動は、1社だけだと難しいですが、複数の企業が力を合わせて発信できたら面白くなるのではないかと。その中で青木被服さんとも出会いました。しばらくは気軽な情報交換を月に一回ほど行っていたのですが、発足当初に両備さんがおっしゃっていた「複数の企業で発信すること」がずっと心の中にあり、いつかなんらかの形にしたいと考えていて。ただ何をするにせよ、いきなりすべての参加企業で実施するのは難しそうだったので、まずは2〜3社でコラボレーションする形で実施してみることにしたんです。

両備さんと青木被服さんに声をかけたのは、同じ熱量、温度感で向き合ってくださるのではないかと思ったからです。2社とも快諾してくださり、「AOHARE号」の企画がスタートしたというわけです。

メディア掲載を逆算して企画に

──「AOHARE号」の企画を実施する一番の目的はどんなところにあったのでしょうか。

弊社では、これまでも全国各地で制服の余り生地を使ったアップサイクルのイベントをやっていたんです。ただ、それだけではメディアに取り上げられるのは難しく、社会に伝わらないのがもどかしくて。3社が協力することでメディアに取り上げられ、「カンコー学生服はこんなことをやっているんだ」と知ってもらうのが一番の目的でした。そのため、「AOHARE号」はメディア掲載というゴールから逆算して考えた企画なんです。

「AOHARE号」企画の概要
子どもたちに向けたSDGsの12番「つくる責任、つかう責任」について学べるワークショップを実施。ワークショップ内では、カンコー学生服と青木被服の余り布を利用して子どもたちがアートを制作した。そのアート作品と、リメイクした余り布を使い、実際に1年間路線を走行するバスを装飾。両備グループ(事務局:両備ホールディングス株式会社)が推進する「進(シン)・宇宙一面白い公共交通を目指すプロジェクト」の一環として実施された。

まずフックとして「SDGs」をテーマとして設定し、夏休みの自由研究としても活用できることを訴求することで、注目を集められるのではないかと考えました。結果としては、記者発表当日にテレビ局が3社、新聞社などの紙媒体が6社ほど取材に来てくださったんです。プレスリリースはワークショップの実施前、記者発表後に配信したのですが、メディア掲載数がいつもの3〜4倍と、反響の大きさを実感しています。

また、お付き合いのなかった記者さんとも出会えて、その後ほかのプレスリリース配信時に連絡して取り上げていただいたりもしたんです。これだけ注目していただいたのは初めてだったので、やはり3社コラボとして発信したのがよかったのかなと思っています。

──メディア掲載という目的を達成できたんですね。今回のプレスリリースでは、どんな点を工夫されたのでしょうか。

3社合同の企画ですが、プレスリリースは「3社それぞれの想いや目的があるので、無理に合わせなくてもいいよね」と、それぞれで作成し配信することにしたんです。各社の紹介をするところではそれぞれの想いがきちんと伝わるように注意し、できたものを相互に確認するなど慎重に進めました

それから、写真の撮り方は結構こだわりましたね。例えば車内のアート作品とヘッドカバー、天井とがすべてひとつの画角に収まるように工夫しています。

AOHARE号

参考:【夏休み自由研究企画】SDGsアートバスを走らせよう! 制服やデニムの余り布でアートをつくるワークショップの参加者募集 ~カンコー学生服×青木被服×両備ホールディングス共催~

参考:子どもたちが作成したアートがバスを彩り、路線を走る!地域の産業やSDGsを学ぶワークショップから生まれた「SDGsアートバス」 ~カンコー学生服×青木被服×両備ホールディングス共催~

──ワークショップ内でSDGsについて学んでもらう場が設けられていたそうですが、どのように考えられたのでしょうか。

最初は、SDGsの12番「つくる責任、つかう責任」を紹介し、SDGs実現の一環として残反を使ってアートをつくろうと呼びかける内容でした。でも両備さんに聞いてもらった際に「排出した残反を再利用するというのは、あくまでカンコー学生服、青木被服、企業側のSDGsの取り組みであって、参加者のお子さんや保護者の方には関係ないのでは」とご意見をいただいたんです。そのご意見を聞いて、確かにその通りだと気づき、アプローチの仕方を変えました。残反の再利用は当社の「つくる責任」に対する取り組みなので、このワークショップではその活動をみなさんに手伝ってもらいたい。そのうえで、参加者の方には自分の生活の中で「つかう責任」を意識してほしい、と伝えることに。「つくる責任、つかう責任」の内容は、お子さんには難しいかなと最初は心配していましたが、正解のあるクイズではなく自由に思ったことを発言する場にしたこともあり、たくさん手を挙げて楽しそうに発言してくれました。当日配布したワークシートは、記入すれば自由研究になるようなものにしたので、「これで自由研究が終わった!」と喜んで帰るお子さんもいましたね。

カンコー学生服さま ワークショップ

想定外の副産物は社内コミュニケーションの活性化

──今回の企画には、御社の若手社員の方々も参加されたそうですが、社内ではどのような反応がありましたか。

社内からは20代のパタンナーや縫製の担当者が参加し、バスのヘッドカバーなどを作ってくれました。最初にこの話をメンバーに持っていったのが、繁忙期が明けたばかりの時期だったんです。迷惑になるのではないかと心配しながら相談したのですが、予想外にみんながノリノリで話を受けてくれました。実際に装飾をするバスに何度も足を運び確認したり、運転手さんが取り外しやすい作りに工夫を凝らしてくれたり。普段は制服・体操服と向き合っているメンバーなのですが、「自由な発想で作れるのがすごく楽しかった」という感想を聞いて、嬉しかったですね。それからデザイナーである青木さん(青木被服株式会社)とやりとりしたことで、デザイナーならではのこだわりを身近で感じられたのも良い経験になったようです。メンバーの上長の方からは「この企画に参加したことで現場でのコミュニケーションがすごく増えた。またこのような機会があったら声をかけてほしい」とわざわざ電話をもらいました。当初は広報PRの効果を目指して行った企画でしたが、思わぬところでこんな声をもらえて、自分にとっても宝物のような経験になりました。

カンコー学生服さま パタンナー・生産

まとめ:周りを巻き込むことで生まれた成果

カンコー学生服の取り組みを全国へ広めるべく、地元企業とのコラボ企画を発案した柄川さん。その行動力が功を奏し、目的であったメディアの注目を集める結果となりました。さらに想定外の成果として、社内コミュニケーションにも寄与することができるなど、広報PR担当者としての喜びが伝わってくるお話でした。

「AOHARE号」企画や、菅公学生服株式会社の広報PR活動から見えたポイントは4点です。

  • メディア掲載というゴールから逆算して企画したのが成果につながった
  • 他社とコラボする場合、同じ熱量を持っているかを重視する
  • プレスリリースは合同企画であっても各社の想いや目的に沿ってそれぞれ作成する
  • 広報PR施策にメンバーを巻き込むことで、思わぬコミュニケーションが生まれる

創業170年という老舗ブランドの上にあぐらをかくのではなく、自ら新しいことを企画し周りを巻き込む行動力は、広報PR担当者としてぜひ真似したい姿勢です。発信力を強化したい企業や、地元企業を盛り上げたい企業の方に、参考にしていただきたい内容です。

第三弾は、両備ホールディングス株式会社「進(シン)・宇宙一面白い公共交通を目指すプロジェクト」を担当する平本清志さんと同社広報の嘉悦登さんです。

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