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山口県に根差して100年超。広報PRの力で地域を代表する銘菓へ|あさひ製菓株式会社

1917年に創業したあさひ製菓株式会社は、山口県に本社を置く、和洋菓子製造販売店です。「山口に感謝し、山口に密着し、山口の誇りとなれるお菓子屋」を使命に掲げ、主力商品の「月でひろった卵」をはじめとしたオリジナルの和洋菓子、ケーキなど約300の商品を自社製造し、県内に34店舗ある和洋菓子専門店「果子乃季」を展開しています。

また、1年に2回、それぞれ40,000人程度の人が来場するイベントを開催するなど、地域の人々をはじめとしたファンとのコミュニケーションも積極的に行い、ファンとのつながりをより強固にしていることで山口県内外でご存じの方も多いのではないでしょうか。

本記事では、同社の取締役であり商品開発部とマーケティング本部の部長を兼任する坪野幹さんにインタビュー。昨年マーケティング部を新設した背景や本格的に取り組み始めた広報PR活動の効果、今後の展望についてお話を伺いました。

あさひ製菓株式会社(山口県柳井市):最新のプレスリリースはこちら

あさひ製菓株式会社 取締役 商品開発部・マーケティング本部 部長

坪野 幹(Tsubono Motoki)

大学の経営学部卒業後、製菓学校で2年間和菓子を学ぶ。卒業後、埼玉県内の和菓子屋で修行し、故郷の山口県へ戻りあさひ製菓株式会社。入社後は8年間和菓子職人として働きながら商品開発に携わる。現在は昨年立ち上げたマーケティング本部と商品開発部の部長を兼任。

地元銀行の支援を受け、マーケティング本部を始動

──昨年マーケティング本部を立ち上げて、本格的に広報PR活動をスタートされたと伺いました。何か契機となるような出来事があったのでしょうか。

コロナ禍で売り上げが大きく落ち込んでしまったことがひとつのきっかけです。この時期は多くの企業で同じような状況だったかと思いますが、私たちも同じような状況でした。その状況を打破するために主力商品である「月でひろった卵」のリニューアルに取り組むことになったんです。

まず、リニューアルに先立ち、2022年から1年間かけて山口銀行の担当の方にマーケティングを教えていただきました。そして、山口銀行の伴走支援を受けながら、リブランディングにも着手。2023年12月28日に「月でひろった卵」の完全リニューアルを発表。それを機に、プレスリリースやSNSを活用しながら広報PRにも力を入れていこうということで、マーケティング本部を立ち上げました

あさひ製菓株式会社 プレスリリース

参考:【山口銘菓「月でひろった卵」新パッケージ解禁】10年ぶりのリニューアル。パッケージを一新し、サプライズな仕掛けも加えて魅力アップ。

──創業100年を超える老舗であり、地元に多くのファンがいる中で、なぜ広報PRに力を入れようということになったのか、広報PRの目的をどのような点に置かれているのか教えていただけますか。

東京や大阪、福岡などの大都市圏では、観光客がコロナ禍以前を上回る水準に戻って来ていると思いますが、小さな都市ではまだまだ回復途上です。山口県に関していえば、2019年と比較しても90%程度しか戻っていない感覚があり、多くの方に訪れていただくためにも県外に向けて発信していくことが大切だと感じています。

また、山口県は人口の減少が全国を上回るペースで進んでいると言われていて、いまと同じ方法を続けていても売り上げはいずれ下がってきてしまうでしょう。従業員も守っていかなければならないので、地元に軸を置きながらもインターネット販売など県外でも商品が売れるような仕組みづくりが必要です。そのためにも、広報PRで県外への認知拡大を図ることが大切になってくると思います。

──観光客を増やすため、県外からの購入を増やすためということですね。実際に広報PRに取り組んでみて、手応えを感じることはありますか。

マーケティング本部を立ち上げてプレスリリースの配信やSNSをかなり強化して取り組むようになったことで、山口県に住む方々との距離がずいぶん近くなったのを感じます。SNSの反応もとてもよくて、Xに関していえば開設当初は2,000人程度だったフォロワーが、現在では24,000人まで増えました。また、商品の取り扱いやコラボレーションを希望する企業からの問い合わせが増えたことも、広報PRの効果ではないでしょうか。

さらには、採用の場面でも手応えを感じていますね。面接の際に「プレスリリースを見ました」という方が増えていますし、新卒採用向けの合同説明会では、広報PRの活動を学生さんたちに紹介するととても反応がよいんですよ。お菓子づくりだけではないということを知っていただくよい機会になっていると思います。

広報PRは、直接的には売り上げにつながらない部分もありますが、想起してもらえることや認知拡大という点ではとても重要な役割を担います。山口県に軸を置くあさひ製菓が、日本中や世界中に知っていただくためには大切な働きなので、今後も力を入れていきたいですね。

SNSとリアルイベントの両輪でファンとのつながりを築く

スピード感と情報の新鮮さを重視したSNSで新たな価値提供

──SNSでの発信も積極的にされていますが、ファンとのコミュニケーションの取り方ではどのような点を大切にしていますか。

SNSはやはりスピード感と情報の新鮮さがもっとも大切だと思います。フォロワーの方からの質問にはすぐに答えるようにしていますし、コメントにも真摯に対応することを意識しているので、常に投稿をチェックしているんです。実際に、昨年3月にアカウントを開設して以来、Xを開かなかった日は1日もないですね。

私たちは「山口のしあわせの真ん中をつくる」をスローガンに掲げていて、さまざまな取り組みの土台に「お菓子をつくっているのではなく、みなさんの思い出をつくりたい」という思いがあります。その部分を大切にしながら、ファンとのコミュニケーションを通じたお菓子以外の価値を提供していくことも、これから私たちが力を入れていくべき部分ではないでしょうか。

──これまでに、SNSの発信がきっかけで反響につながったことや、SNSの声が店舗運営に反映されたことはありましたか。

毎年6月に当社の本社工場で「あじさい祭」という大きなイベントを開催していて、その中で「部長を探せ」という企画を実施しています。それをXで告知したところ、山口県内だけでなく四国地方、遠くは神奈川県や富山県、中には車で8時間かけて日本各地から大勢の方が来てくださったんです。

今年の5月に、男性アイドルグループのKing & Princeが山口県に来た際に、JR西日本さんから「果子乃季新山口駅店」で何か企画をしてほしいという依頼をいただいて。SNSを活用してKing & Princeのファンの方々の意見を聞き、「月でひろった卵」をKing & Prince仕様の特別パッケージにしたり、お店をデコレーションしたりしたところ、大きな反響がありました。

そして、商品やお店だけでなく当社社長自ら村岡嗣政(むらおかつぐまさ)知事を訪問するなど、盛り上げるためのさまざまな活動を行いました。

リアルイベントは社員自身が楽しめることを大切に

──さまざまなイベントを実施されていますが、イベントを企画する際に大切にしていることはありますか。

まずは社員である私たち自身が楽しむことを大切にしながら一つひとつのイベントを企画しています。その中でももっとも大規模なイベントが、当社の会長が工場の裏山を切り開き、20年以上かけて150種20,000株のあじさいを植えたことから始まった前出の「あじさい祭」です。

期間中は工場のすべてを解放して、お客さま自身にお菓子をつくっていただいたり、できたてのお菓子を試食していただいたり、いろいろな楽しい企画を実施。ひとつの企業が開催するお祭りとしてはかなり規模が大きいため、全国から製菓会社の方が見学に訪れて、「勉強になった」「次回も遊びにきます」と言っていただくことも多いんですよ。

また、昨年12月に「月でひろった卵」のリニューアルを記念して開催した「YANAI MOON NIGHT」は、地元の方々はもちろん社員自身もお祭りに参加するような感覚で楽しむことができたイベントです。このときは、「月でひろった卵」が誕生した1986年にちなんで1,986個の光る風船「ルミエム」を空に放ったのですが、「どこにもないようなイベント」を企画するというのも大切にしていることのひとつですね。

あさひ製菓株式会社主催「YANAI MOON NIGHT」
あさひ製菓株式会社主催「YANAI MOON NIGHT」より

参考:【日本最多1,986個の光る風船“ルミエム”が山口の夜空を舞う】「YANAI MOON NIGHT」の開催が決定!

──イベントの際にもお客さまの声を集めることを意識されたり、その声を商品開発に活かしたりしているのでしょうか。

はい、まさに取り組んでいるところです。例えば、「あじさい祭」には毎年3日間で40,000人以上という多くのお客さまが訪れるので、会場で新しい商品や試作品を食べていただいて、反応を見ながら商品づくりに活かしたいと思っています。この取り組みを始めて1年ほどなので、まだ新商品開発につながった事例はありませんが、おつまみ系のお菓子に合うお酒など、今までにはない商品も徐々に増えていくのではないでしょうか。

マーケティングを学んだことで、マーケティング起点で商品開発をすることの重要性を知ることができています。今後もそのベネフィットを大切にしながら商品を出していきたいと考えています。

あさひ製菓株式会社主催「あじさいフォトコンテスト」の入選作品
あさひ製菓株式会社主催「あじさいフォトコンテスト」の入選作品より

プレスリリースをきっかけに増えたコラボ企画

──広報PR活動を本格的にスタートされたのを機に、プレスリリースも配信されていますが、実際にプレスリリースを配信してみて反響はいかがでしたか。

プレスリリースを配信するようになり、いろいろな方面からお声がけをいただくことが増えましたね。「PR TIMES」は、メディアだけでなく同業者の方やお取引先となる企業の方も注目しているようで、当社のプレスリリースを見た埼玉県のお茶屋さんから連絡が来たこともありました

また、他企業とのコラボレーションの事例も増えています。例えば、山口県のコーヒー豆専門店「COFFEEBOY」さんと果子乃季でコラボしたコーヒーゼリーや、明治の業務用チョコレートブランド「meiji THE Cacao PROFESSIONALS」さんとのタイアップで実現した3種類の「月でひろった卵」などです。コラボ企画はすべてマーケティング本部が軸となって考えていますが、「月でひろった卵」に関するコラボの希望があれば、できるだけ応じていきたいと考えています。

──最後に、広報PRを担うマーケティング本部としての今後の展望をお聞かせください。

まずは「月でひろった卵」のファンをつくること。以前、マーケティング本部がリニューアルのタイミングで「月でひろった卵」の認知度を調べたところ、山口県内の認知度は95%を超えていることがわかりました。ところが、隣の広島県や福岡県での認知度となると一気に10%台まで落ちるんです。県外での認知度はまだまだだということを実感しました。その一方で、「宮城県の菓匠三全さんの銘菓『萩の月』は全国で知られているじゃないか」「自分たちにだってできるはず」と気持ちを奮い立たせるきっかけにもなりました。

「月でひろった卵」は、リニューアルの際に県外での認知拡大を図ることも意識してパッケージなどをデザインしているので、県外に贈り物として持って行っていただける商品に育てていきたいと思います。

また、あさひ製菓は、創業100年以上にわたり山口の人々に支えていただいています。現時点では県外への出店は考えておらず、山口の人々への恩返しは、この山口の地で続けていきたいと考えているんです。これからも、山口の人々にとって「第三の家」のような存在になれるように、今まで以上に地域に根差した会社にしていきたいと思います。

まとめ:地元で愛される菓子から、全国から知られ求められる銘菓へ

コロナ禍の業績悪化を好機ととらえ、マーケティング本部を設立し本格的な広報PR活動を始めた、あさひ製菓株式会社。

お聞かせいただいた広報PRの5つのポイントは以下の通りです。

  • SNSでの情報発信は「スピード感」と「情報の新鮮さ」を大切に
  • SNSとリアルイベントを連動させた企画で新たなファンづくりにつなげる
  • 他企業とのコラボレーションを積極的に行い認知拡大を図る
  • プレスリリースではメディア以外に見られることも意識した情報発信を
  • 軸は地域に置きながら、インターネット販売など地域外にも販路をつくる

プレスリリースやSNSによる情報発信とリアルイベントを巧みに織り交ぜたあさひ製菓株式会社の広報PRの取り組みは、製菓メーカーだけでなく多くの企業にとって大いに参考にしていただける事例ではないでしょうか。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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