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歴史の中に価値を見いだす。ピンチをチャンスに変えた広報PR|株式会社七越製菓

深刻な米不足と価格高騰が日本の家庭を直撃した今夏。その状況を昨年から予見し、いち早く難局を乗り越えるための広報PR施策に取り組んだのが、1984年の創業以来、手づくりの心を大切にしながら、味と製法にこだわった米菓をつくり続ける株式会社七越製菓です。

今年6月には、創業40周年と同社の看板商品である「手揚げもち」の発売25周年を記念した、「復刻版手揚げもちしょうゆ味」を期間限定発売。動画やモノクロ写真を効果的に用いたプレスリリースは、「自社の商品への理解と、それを知ってもらうための見せ方」が評価され、「プレスリリースアワード2024」において「ストーリー賞」を受賞しました。

その背景にはどのような苦労や工夫があったのでしょうか。同社取締役の片岡美和さんと、工場長の井口雅史さん、動画制作を担当した瀧山純平さんにお話を伺いました。

株式会社七越製菓(埼玉県さいたま市):最新のプレスリリースはこちら

株式会社七越製菓 取締役

片岡 美和(Kataoka Miwa)

埼玉県さいたま市(旧与野市)出身。就職情報・進学情報メディア会社であるディスコ(現キャリタス)で約20年の勤務経験後、株式会社七越製菓の取締役に就任。以後、管理全般・BtoC業務・Eコマース・広報を管掌。最近では、越境ECチャネル展開も行い、現在に至る。キャリアコンサルタント。

株式会社七越製菓 第二工場 工場長

井口 雅史(Iguchi Masashi)

1967年4月18日生まれ。埼玉県川越市出身。2014年に株式会社七越製菓に入社しました。前職での和菓子製造の技術を活かそうと、この米菓業界に飛び込みました。入社後、米菓作りの厳しさを知り、手間をかける、手造りにこだわる、昔ながらの味わいを残していくことでお客様に「美味しい」と喜んでいただけるよう努めております。

株式会社イマジンライツ・フィルムズ 代表取締役社長

瀧山 純平(Takiyama Jyunpei)

1995年10月26日生まれ。埼玉県川口市出身。私は幼い頃より多くの映画を観て育ち、作家、詩人、映画監督を目指す中で、2022年に映像制作会社を設立しました。映像作家で活動する傍ら、YouTubeチャンネル「CITY LIGHTS」を運営しており、ライブハウス、ロックバーなどの紹介動画、ローカルミュージシャンの弾き語り動画などを日々発信しています。会社設立当時から“想像は観れる”という言葉を常に忘れず、クリエイティブ活動をしてきました。私、お客様、視聴者、その他大勢の人の“想像”を感じ取り“創造”することを楽しみに、日々映像制作と向き合っております。

職人としてこだわった「無添加」を超える「おいしさ」

──まず、看板商品である「手揚げもち」の復刻版を発売することになった経緯を教えていただけますでしょうか。

取締役・片岡さん(以下、敬称略):七越製菓は1984年の創業で、「押焼せんべい」と呼ばれる丸煎餅をつくって販売していました。その後、1999年に「手揚げもち」を発売したところ好評をいただき、現在はロングセラーの看板商品となっています。

今年で七越製菓は創業40周年、「手揚げもち」の発売25周年ということで、これを機に「復刻版手揚げもちしょうゆ味」を期間限定で発売するといった施策を考えました。一方で、ここ数年の物価の高騰による原材料の値上がりや、人件費の高騰、加えて今夏は、米菓業界内でもっとも大切な「米不足」問題も。この難局を乗り越えるためにも、当社の看板商品であり、原点でもある「手揚げもちしょうゆ味」の復刻版を盛り上げたいと思ったのがきっかけです。

──「手揚げもちしょうゆ味」の復刻版を発売するにあたって、苦労されたことなどはありましたか。

工場長・井口さん(以下、敬称略):「手揚げもちしょうゆ味」はもともと、旨み成分の入った醤油を使用していましたが、時代のニーズに合わせて途中からは無添加の醤油に切り替えていました。しかし、おいしさでいうと旨み成分の入っている醤油のほうが圧倒的に味わい深いんですね。そこで、社長と相談をしながら、復刻版を発売するタイミングで当初の醤油に戻すことに決めたんです。

不安だったのは「無添加」という価値を手放すこと。無添加のほうがよいという風潮がある中で、そこに逆行することに対するデメリットは考えました。しかし、無添加の醤油は余分な添加物は入っていないけれど味が硬いんです。一方、復刻版の醤油は食べたときにまろやかな醤油の味が広がり、絶対にそちらのほうがおいしいんですよね。職人としておいしさを追求した結果、自信を持って変更することに決めました。

株式会社七越製菓インタビュー01

季節感と全世代を意識した商品開発でファンを獲得

──ここからは御社のプレスリリースについてお話を伺いたいと思います。今回、周年の節目にプレスリリースを配信しようと思ったのはなぜでしょうか。

取締役・片岡:「手揚げもちしょうゆ味」の復刻版発売を決定し、その伴走支援をさいたま市の産業創造財団にお願いしたところ、広報PR活動の一環としてプレスリリースの配信を勧められたのがきっかけです。

プレスリリースの原稿作成や内容について学ばせていただく機会もあり、動画撮影の支援や撮影プランの助言もしていただきました。

──受賞プレスリリースは、冒頭の動画やたくさんの画像が使われているのが印象的でしたが、どのような意図があったのか教えていただけますか。

取締役・片岡:読み手の心をつかむことが一番の狙いでした。特に冒頭に動画を置くことで、惹きつけるプレスリリースになるのではというアドバイスをいただいたんです。

ところが、準備を進めている段階で、弊社の創業者が亡くなるという出来事がありました。そこで、創業者のことを思い、昔の写真を使いながら会社の歴史を振り返ることにしたんです。

完成したプレスリリースは、まるで七越製菓の社史をめくっているような、プレスリリースの中で創業者が現役で働いているような感じがして、ひとりの読者として引き込まれるものができたなと思いました。

──今回の動画制作は瀧山さんが担われたそうですが、どのようなポイントを大切にして動画を作られたのでしょうか。

カメラマン・瀧山純平さん(以下、敬称略):七越製菓さんがこのプレスリリースを通して、どのようなことを届けたいのかがとてもよく伝わってきたので、その想いを大切にしながら「届けたい人のところにきちんと届く」ことを意識して動画の構成を考えました

とはいえ、動画で伝えられることとプレスリリースの本文で伝えられることはまったく異なります。動画は短い時間で伝えなくてはいけないので、伝えることを絞らなくてはならないんです。今回はプレスリリースの本文で創業時の七越製菓さんの様子や商品開発の想いなど、ストーリーが丁寧に描かれていたので、動画では「手揚げもち」をメインにしましたが、いつかもっと詳しく七越製菓さんのドキュメンタリーを作ってみたいなと思いました。

──今回のように動画制作を外部に依頼する際、すてきな動画に仕上げるためには、どのようにオーダーすればよいのでしょうか。伝え方のポイントなどがあればお聞きしたいです。

カメラマン・瀧山:動画を作る際には、「商品のターゲティング」と「動画のターゲティング」が同じだということを認識することが大切だと思います。商品と動画のターゲティングがずれてしまうと、伝えたいことが伝わらずにもったいないことになってしまうからです。伝えたい人、届けたい人が誰かを明確にしたうえで撮影の仕方や、BGMの選び方を意識することが必要ではないでしょうか。

また、動画で伝える一番のメリットは「人柄が伝わる」こと。例えば、緊張しながらも想いを伝えようとして頑張っている姿は、見ている人の心に響きます。何か気持ちを伝えたいときや、ブランドイメージをアップしたいときには、人が登場する動画というのはすごく向いていますし、メリットも多いと思いますね。

株式会社七越製菓 プレスリリース

目指すのは100年続く企業、100年愛される菓子づくり

──プレスリリースを作成するうえで工夫された点や、苦戦したことなどがあれば教えていただけますでしょうか。

取締役・片岡:「おかき」は全体的に茶色っぽくて、味の違いがあってもどれも同じような色味です。ほかのお菓子と比べても季節感が出しにくくて、季節感を言葉で説明することの難しさを痛感しましたね。その中で、工夫したのはなるべく華やかな色の商品写真を用いたこと

今回の写真は、商品カタログやバイヤーの方向けの商品規格書に使うもので、バイヤーの方が目で見て商品が理解できることを意識して撮られています。それをプレスリリースに用いたことで、しっかりとおいしさを伝えられたのではないでしょうか。

──プレスリリースの配信後の反響や、効果を感じることはありましたか。

取締役・片岡:流行り廃りによって短命で消えていくお菓子もある中で、「手揚げもち」は今年で25周年を迎えます。ここまで永く愛されてきたこの商品を、スポット的に紹介するのではく、メディアの力を借りてこの先も末永く親しんでいただきたいという想いでプレスリリースを作成しました。

プレスリリースの配信後の反響としては、プレスリリースアワードを受賞することができたことも思ってもみなかったことのひとつですが、それ以上に復刻版の「手揚げもちしょうゆ味」がスムーズに市場に受け入れられたことが何よりも大きな手応えだったと思います。

実際に店頭でも「これが復刻版ですか」と質問してくれるお客さまもいて、私たちの広報PR活動が広がっていったことを感じました。これまでお店にいらっしゃったことがない新規のお客さまが「復刻版手揚げもち」を目当てにして来店するケースも増え、これもプレスリリースを通してコミュニケーションが拡大した結果だと思っています。

──地元の方々に愛されている七越製菓さんですが、新たに手掛けたいことや目指していきたいことなどをお聞かせください。

取締役・片岡:今回の広報PR活動を通して、私を含めた従業員一人ひとりが自社の歴史を振り返ることができました。また、社史をあらためて学び直したことで、市場においてその歴史をきちんと語れていない部分が多かった点にも気づけました。

亡くなった創業者がよく「100年続く企業」という言葉を口にしていましたが、これまでの歴史を大切にしながら情報を発信していくとともに、「手揚げもち」が年を重ねてますます愛される米菓になっていったら嬉しいですね。

工場長・井口:この先も、今まで培ってきた手づくりの製法をひたすらに守りつつ、どうすればさらにおいしくできて、お客さまに好まれる商品になれるのかを追求しながらやっていきたいと思います。

大手の和菓子店には何百年も続く商品もあります。同じ商品を何百年も前からずっとつくり続けることこそがある種のブランドだと思いますので、そこに負けないように製法にこだわりながら愛される商品をつくっていきたいですね。

株式会社七越製菓インタビュー02

まとめ:歴史とストーリーを大切にした七越製菓の広報PR

原材料高騰や米不足などの米菓業界の課題を背景に、看板商品である「手揚げもちしょうゆ味」の復刻版を広報PR施策として打ち出した、株式会社七越製菓。世の中が支持する「無添加の価値」をあえて手放し、信念と自信を持って原点回帰した商品は、新規ファンの獲得につながりました。

歴史を丁寧に振り返ることで自社と商品への理解を深め、それを動画やモノクロ写真を巧みに使いながら発信していく同社の広報PR施策は、老舗企業に限らず多くの企業にとって参考になる事例ではないでしょうか。

市場の動向をつかみ、いち早く難局を乗り越えるための施策に取り組んだ七越製菓。ピンチをチャンスに変えた同社の広報PR活動、100年企業となるべく新たに取り組んでいく広報PR活動に今後も注目です。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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