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「PASSIONとLOVE」が原動力。ひとりを想像し、接点を広げる共感型コミュニケーション|株式会社パルグループホールディングス

「CIAOPANIC TYP」や「DISCOAT」「3COINS」など、アパレルから生活雑貨まで63のブランドを展開する株式会社パルグループホールディングス。

全国に展開する1,000以上の実店舗と、自社ECサイト「PAL CLOSET(パルクローゼット)」、アプリ・SNSなどをシームレスに連動させたオムニチャネル戦略に加え、商品開発の強化に注力している同社。これらの施策により、4期連続で過去最高売り上げ2,000億円超(2025年2月期)を更新し、特にECサイトの売り上げは、3期連続で過去最高益を記録し、業績に大きく寄与しています。

本記事では、同社取締役専務執行役員としてプロモーション、広報PR、デジタル化を推進する堀田覚さんにインタビュー。顧客の共感を育む社内インフルエンサー制度や、購買履歴・行動データを活用したパーソナライズドなコミュニケーションなど、売り上げに直結する取り組みについてお話を伺いました。

株式会社パルグループホールディングス(大阪府大阪市):最新プレスリリースはこちら

株式会社パルグループホールディングス 取締役専務執行役員 兼 プロモーション推進部部長 兼 WEB事業推進室室長 兼 コミュニケーションデザイン室室長

堀田 覚(Hotta Satoshi)

大学卒業後、三陽商会に入社、婦人服の営業にはじまりVMD(ビジュアルマーチャンダイジング)やMD、ブランド責任者を経験。2009年、ハースト婦人画報社に入社。メディアコマースサイト「ELLE SHOP」の立ち上げとMDとマーケティング責任者として事業の成長に注力。2014年 パルに入社。現在は、取締役専務執行役員であり、パルプロモーション推進部部長 WEB事業推進室室長 コミュニケーションデザイン室室長EC、WEBシステム、プロモーション、SNS、CRM、DBマネジメントなどを管掌。

共創の可能性を広げるオープンな情報開示

──パルグループでは60以上のブランドを展開されていますが、広報PRの組織や体制はどのようになっているのでしょうか。

パルグループの広報PRを担う組織は、大きく分けてパルグループホールディングス所属の「広報室」と事業会社パル所属の「コミュニケーションデザイン室」の2つです。

広報室は主にIRをはじめ、コーポレート広報を、コミュニケーションデザイン室は事業寄りの広報を担当しています。普段は、ファッション業界誌などの取材対応や、テーマに応じたアサイン先の調整、最終的な記事のチェックを行っています。また、各ブランドにもそれぞれ広報PRを担っている担当者がいて、連携しながら活動しているのも特徴です。「3COINS」のように取材のお問い合わせが非常に増えているブランドは、専属の広報担当者を数名配置して対応しています。

──ここ数年、パルグループの報道をよく見かけます。広報PRに注力するようになったきっかけは何だったのでしょうか。

もともとは、各ブランドの個性や魅力がしっかり伝わっていれば、会社の名前を全面に出す必要はないだろうという考えでした。しかし、会社の規模が大きくなるにつれ、「パル」という社名が一般にも認知されるようになり、取材のご依頼をいただく機会も増えてきました。そこで、会社としての取り組みや姿勢を世の中に発信していく必要性を感じたのです。社内での広報PRに対する意識が変わったのは、ECサイト「PAL CLOSET」の売り上げが伸びてきたことも影響していると思います。

また近年は、システムやデジタル領域において、外部のテック系企業やスタートアップと協業しながら新しいサービスや仕組みを生み出す機会も増えています。そうしたパートナー企業に向け、パルグループのビジョンや価値観などを知っていただき、理解していただくためというのも、広報PRに力を入れる理由のひとつです。

──BtoCの会社で、取引先に向けた広報PR活動をされるというのは新鮮です。

確かに、あまり一般的ではないかもしれませんね。私たちの会社は、いきなり大きな予算を投じて一気にスケールさせるというより、少しずつ改善を重ねながら、しかるべきタイミングでアクセルを踏むようにしています。特に、今は自社ですべてを内製するよりも、APIやSaaSなどを活用して、その時々に必要なサービスを柔軟に取り入れながらビジネスをつくっていく時代です。自社でどれだけおもしろいアイデアがあっても、信頼できるパートナーがいなければ、形にすることはできません。

だからこそ、「こういうサービスが次に来る」といったアパレル業界や小売業界ならではの視点をテック系企業やスタートアップなどのパートナーに共有し、「このアイデアは化けるかもしれない」と共感してもらうことが重要になります。そうした信頼関係があれば、相手も先行投資として開発に取り組んでくれますし、実際にいくつかのサービスはそれで大きく成長しました。

このような共創の関係を築くには、広報PR活動を通して「この会社は面白い」「一緒に何かやってみたい」と思ってもらうことが大切だと思います。

株式会社パルグループホールディングス01

各ブランドがタイムリーに情報を届ける

──ここからはプレスリリースについてお話を伺えればと思います。プレスリリース配信の流れや、作成時に心がけていることなどありますか。

「PAL CLOSET」や「パル」に関するプレスリリースはコミュニケーションデザイン室で作成しますが、各ブランドのプレスリリースは、ブランドごとの担当者が作成し、私たちがチェックしたうえで配信する流れになっています。

大きなニュースの場合には、メディアを招いて発表会を行うこともありますが、私たちが取り扱うブランドは非常に多いため、毎回すべてのメディア関係者に個別で連絡を取るのは現実的ではありません。だからこそ、情報発信の手段としてプレスリリースは非常に有効だと感じています

心がけているのは、タイムリーにきちんと情報を発信し続けるということです。SNSが強くなっている現在でも、メディアに取り上げられることで得られる注目度は依然として大きい。

顧客接点を最大化する1,900人の社内インフルエンサー

──パルグループでは、店舗スタッフを中心に構成されている「社内インフルエンサー」がいて、情報発信されているんですよね。

はい。今はファッション雑誌に掲載していただくだけでは、情報は広く届かず、デジタルを活用して自分たちで発信する必要があります。そのため、当社では「全員広報」のような形で、各ブランドの店舗スタッフが積極的に情報発信に取り組んでいます。

現在は約1,900人のスタッフがインフルエンサーとして活躍しており、総フォロワー数は2,200万人にのぼります。同じブランドでも数十人のインフルエンサーがいますが、SNSのパーソナライズの仕組みを活かすことで、同じ商品情報でも届く相手が変わってきます。

また一度目で響かなかった、もしくは忘れてしまったとしても、情報が目に触れる頻度が増えることによって、「やっぱり気になる」と興味を持ってもらえることもあります。情報があふれる現代では、渾身の一撃を放つよりも、いかに多くのタッチポイントを持って繰り返し目にしてもらうかが重要なのではないでしょうか。

──各ブランドの店舗スタッフがインフルエンサーとして活動する仕組みを、どのようにして社内に浸透させていったのでしょうか。

ひとつは、成果に応じてきちんと評価をするということだと思います。私たちはもともと、創業者の考えである「働きに応じて平等」をとても大切にしている会社です。成果を数字で測り、インセンティブを設計する。

どうすれば自分が評価され、収入が増えるのかが明確になることで、発信する側も「暇なときにやる」のではなく、「本気で取り組んで成果を出そう」と取り組んでくれるわけです。フォロワー数によって給料がプラスされたり、ECに貢献した売り上げが可視化されたりと、社内でアフィリエイトをしているような感覚に近いですね。

EC躍進のカギは「おすすめ」と「パーソナライズ」

──堀田さんは、前職でメディアコマースサイトの立ち上げにも携わられていたと聞きました。パルグループでもECサイトの強化を進めてほしいというリクエストがあったのでしょうか。

僕がパルに入社した2014年は、ちょうどInstagramが日本に登場した年で、今後はSNSをうまく活用する企業が伸びていくと言われていました。社内でも、広報PRや広告宣伝のあり方をデジタルに寄せていこうという方針があり、販売もコミュニケーションもデジタル化していきたいという思いがあったようです。

当時はECのほうの売り上げがあまり伸びてこなかったこともあり、僕がそちらも見るようになりました。デジタルマーケティングでは、データをもとに分析しなければ改善ができません。そのため、ECの売り上げやデータと連携して取り組む必要があり、ECも含めて一括で管理するほうが効果的だと考えたからです。

──ECの売り上げは前年比約110%(2025年2月期)、特に「PALCLOSET」は116%超の成長を記録し、「ZOZO TOWN」の売り上げにかなり近づいていますよね。どのあたりから手応えを感じるようになったのでしょうか。

劇的に変化したのは、やはりコロナ禍ですね。すべての店舗が1ヵ月ほど休業になり、商品を売る場所がなくなりました。しかも休業が明けてもなかなか人が戻って来ない。当然、在庫がたくさん出てしまい、ECで売っていくわけですが、そのときにコミュニケーションのデジタル化も強化していったんです。

SNSでの発信に力を入れた結果、ECの売り上げが大幅に上がりました。そこからは、店舗とECを両立していくのが当たり前になったと思います。

──ECサイトを強化していくうえで、どのようなことを大切にされているのでしょうか。

最初の頃に意識していたのは、「初めての人でも迷わず使えるUI設計」です。それまで店舗しか利用していなかったお客さまがECを使い始めるということもあり、わかりやすくスムーズに買い物ができるサイトづくりにこだわりました

そして、ECでの買い物が当たり前の選択肢となった今は、「現代の消費行動に合った体験設計」を重視しています。最近のお客さまは能動的にコンテンツを探すよりも、SNSと同じように「おすすめ」を優先する傾向が強いですよね。隙間時間などで細切れに時間を使いながらおすすめを消費する方が増えているんです。そうした行動に合わせて、ECでもパーソナライズされた提案や、隙間時間で楽しめる設計を大切にしています

株式会社パルグループホールディングス02

コミュニケーションの軸は「等身大の感覚」と「想像力」

──店舗運営やSNSなど、日頃からお客さまとのコミュニケーションを多く取られていると思いますが、その中でパルグループが大切にしていることは何でしょうか。

大切にしているのは、「生活者の等身大の感覚」と「お客さまに対する想像力」です。当社では、トップダウンで「こういうブランドをつくりなさい」と指示するのではなく、「こういうことをやりたい」という社員の強い思いからブランドが立ち上がることが多く、一人ひとりの「好き」が原点になっています。その結果、各ブランドは価格帯、年代層、性別、好みまでさまざまで、自然と多様性のあるブランドポートフォリオが生まれました。

2023年には、そうした想いを言語化するために、「PASSIONとLOVE」というコーポレートメッセージを策定したんです。これは、自分たちの「好き」を、全員広報の気持ちで広げていくという、パルの文化の根幹を表すものだと考えています。

コミュニケーションにおいても、この価値観を大事にしつつ、お客さま一人ひとりを想像することを大切にしています。データをただの数値として捉えるではなく、「この人はどんな気持ちでこのブランドを好きになってくれたのか?」という視点を持つことが、不可欠ではないでしょうか。

PASSIONとLOVE ロゴ

参考:【株式会社パル】創業50周年を迎え、コーポレートロゴを一新

──たくさんのお話をありがとうございます。最後に、これから取り組んでいきたいことや、思い描いていることを伺えますか。

少子高齢化など、国内の市場環境を見たときに、実質的な市場規模が今後大きく広がることは考えにくく、アパレル業界も寡占化が進んでいくと思います。その中で生き残っていくためには、やはりナンバーワン的な存在にならなくてはいけないため、まずは国内でそこを目指していく。同時に、海外のマーケットにも展開・進出していく必要があると考えています。

そこに広報PRとしてどのように寄与していけるのか、具体的な戦略はこれから考えていくことになりますが、まずはパルの根幹となる文化や価値観をしっかりと発信し、一貫性のあるメッセージを感じていただくことが必要です。そうした取り組みを通じて、事業を成長させていくことが自分の役割であり、楽しみな部分でもあります。

株式会社パルグループホールディングス03

まとめ:事業成長を後押しするパルグループホールディングスの広報PR

ブランドごとの個性を尊重しながら、企業としての価値観を丁寧に発信するパルグループホールディングス。堀田さんのお話からは、現場起点の柔軟な発想や、生活者視点に立った等身大の情報発信が、ブランド力の向上とECの成長を力強く支えてきたことが伝わってきました。

今回のポイントは以下のとおりです。

  • テック企業やスタートアップとの共創を進めるため、プレスリリースを通じて自社のビジョンや価値観を発信
  • プレスリリースやSNSを活用してタッチポイントを増やし、情報を繰り返し届けることで、顧客の関心を持続させる
  • 購買履歴や行動データを活かし、等身大の顧客の感覚や想像力を持ってパーソナライズされた情報発信を行う
  • 店舗スタッフを中心とした約1,900人の「社内インフルエンサー」制度で、発信力を最大化。成果を評価に反映させることで社内に定着させる

パルグループホールディングスの取り組みは、これから事業の多角的な展開を目指す企業や、社内外への情報発信に力を入れる企業にとって、参考になる事例だったのではないでしょうか。

同社からは5月に入ってからすでに、新店オープンやコラボレーション商品、オンライン上で商品の着用イメージが確認できる「FaceChange」の機能など、たくさんのニュースが発表されています。成長を続ける同社の今後の事業展開、情報発信が楽しみです。

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この記事のライター

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『PR TIMES MAGAZINE』は、プレスリリース配信サービス「PR TIMES」等を運営する株式会社 PR TIMESのオウンドメディアです。日々多数のプレスリリースを目にし、広報・PR担当者と密に関わっている編集部メンバーが監修、編集、執筆を担当しています。

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