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PR道を極めるために決断した、広報11年目の転職―新生銀行広報 マネージャー・風間聡

広報担当者としてのキャリアを重ね、次に進むべき道が見えず立ち止まる瞬間。PRパーソンの中にはその戸惑いを自ら体験した方も、あるいはそれを想像して不安を覚える方もいるのではないでしょうか。

大手IT企業の広報担当者として10年以上のキャリアを持つ風間聡さんは、2018年、株式会社NTTデータから株式会社新生銀行(現SBI新生銀行)のグループIR・広報部のマネージャーに転職しました。転職で求めたのは、他企業・他業界での広報活動でした。

未知の業界での広報活動に携わり、PR道を極めようと決意した転職は、風間さんにどのような影響を与えたのでしょうか。その変化と、改めて見えた広報PRの魅力について答えてくれました。

株式会社SBI新生銀行の最新のプレスリリースはこちら:株式会社SBI新生銀行のプレスリリース

株式会社新生銀行 グループIR・広報部 マネージャー

風間 聡(Kazama Satoshi)

株式会社NTTデータにて、法人営業、システム開発を経験後、2008年より広報部。広告やPRツールの企画・制作を4年半、メディアリレーションを4年半、経営幹部の情報発信やビジネスイベントの企画運営を約2年経験。2018年、株式会社新生銀行へ入社。広報担当として、社内外の広報業務に携わる。

10年で広報の主な領域を網羅的に経験。新たな経験を求めて転職

ー 前職では、入社後ずっと広報PRを担当されていたのでしょうか。

風間さん(以下、敬称略):いいえ、入社後約3年半は法人営業を担当し、その後半年間システムエンジニアを経験しています。システム開発については、短期間ながら一連の流れを経験する機会に恵まれました。

次のキャリアステップを考えたときに興味を抱いたのが、会社全体が見られる仕事です。プロジェクト単位だけではなく、会社をより俯瞰的に見られる業務に携わりたいと思いました

企業の主な経営資源として、「人」「モノ」「カネ」「情報」などの要素が挙げられますが、私はこのいずれかに関わることができる部署を希望していました。広報はこのうちの「情報」に深く関わることができて、おもしろそうだと思ったんです。

社内公募制度を利用し、2008年に広報担当者としてのキャリアをスタートしました。

ー 以降、広報活動を約10年間続けられたんですよね。一社で広報一本というキャリアは、なかなか珍しいのではないでしょうか。

風間:そうですね。前職ではジョブローテーションがありましたが、私は広報の部署内での担当異動を何度か経験した結果、約10年間広報担当者としてのキャリアを築くことになりました。

広報キャリアのスタートは広告宣伝の担当です。企業広告や会社案内などの制作物、Webサイトのリニューアルなどに携わりました。その次はメディアリレーションの担当です。リリースの作成や取材対応、記者会見なども経験しました。さらにその後、経営幹部の情報発信のサポートや自社主催のビジネスイベントの企画・運営を担当しました。イベントは目に見えない製品を伝えるための大事な機会のため、貴重な経験になりました。

株式会社新生銀行_風間 聡_20110901

ー 広範な広報活動を経験して、どう感じましたか。

風間:一言で言えば、「おもしろい」。広報担当者は、複数の視点、たくさんの要素から会社のしくみやカルチャーを体感できます。

そして、一つひとつの仕事が会社に影響力を持つことも広報の魅力です。自分の言動が会社の印象を左右する可能性がある。そこにはプレッシャーもありますが、やりがいにもつながっていると思います

ー 長く働いた企業から転職したきっかけはなんだったのでしょう。

風間:一社で広報担当者としてでできることをある程度やりきったので、異なる業界や企業でも広報活動をしてみたくて転職を決意しました。

広報のベテランとして自分が伝えられることがあるかもしれないと感じたのも、転職の理由です。10年も広報の仕事をしていると、セミナーや勉強会で質問されることも多くなってきて。社外でも自分ができることについて、考え始めたんです

ー 転職活動時の条件は広報担当者であることのみですか。

風間:それに加えて、ある程度の期間は腰を据えて広報活動に携われる会社を選びました。いわゆる総合職で入社する場合、入社後しばらくして広報とは異なる部署へ異動する可能性もありますから……。

ー 新生銀行を選んだ理由はそこにもあるんですね。

風間:新生銀行は中途採用の社員が多く、各部署に経験を積んだプロフェッショナルが多いんです。個々のスペシャリティを尊重する文化が備わっている印象がありました。

また、新生銀行は金融業界の中でもユニークな立ち位置にある点にも魅力を感じました。業界に先駆けた取り組みをたくさんやってきた銀行。ここならば、きっとおもしろい広報活動ができると感じました。

金融業界独自の知識や用語を身につけ、見つけた広報の原点

株式会社新生銀行_風間 聡_20110902

ー 転職して、仕事の内容はどのように変わりましたか。

風間:広報担当者としての業務内容は、それほど大きく変わるわけではありません。前職と異なる点は、例えば、個人と法人のお客様がいることです。

また、銀行の広報に限らず大切なことですが、一つひとつの発言に対しては慎重になりますね。銀行は社会のインフラ的な側面があるので、発信する内容が多くの方に影響がある可能性があります

ー 新生銀行の広報PRチームはどのような編成ですか。

風間:IRと広報の業務を一つの組織で担っています。加えて社会貢献、株主実務といった範囲もカバーしており、13名の社員が携わっています。

私はこの中で広報が主な担当ですが、組織内ではそれぞれがサポートし合えるだけの理解が必要になるので、金融業界の知識だけでなく、IRなどについても勉強中です

ー 金融業界は勉強することが多そうですね。

風間:そうですね、まさに日々勉強です。前職とは事業内容が違うことはもちろんですが、銀行特有のことなどもあります。

例えば、決算書類の見方が一般の事業会社と異なるんですよ。財務諸表に出てくる言葉がこれまでと違うので、読み解くための勉強は言葉を調べるところからはじめました。

また、記者の方から質問される数字を把握することにも、はじめは苦労しました。よく聞かれる数字はすぐに答えられるよう、定期的にチェックしています。

ー 転職して広報活動に対する取り組み方は変わりましたか。

風間:改めて“外”の視点に立ち返れたと思います。約15年間いた前職では、ある程度業界や会社に対する知識のある状態で広報活動に向き合っていました。転職してからは、金融業界について詳しくない人に対してもどう情報を伝えればいいのか考えるようになりました。

この変化は、新天地に来てから前職のころの自分を振り返って気付けたことです。情報を届ける広報担当者として大切な視座や姿勢を、転職を通じてあらためて手に入れられたのかもしれません。

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ー 風間さん自身の変化は?

風間:金融機関のビジネスを知ることで、自分自身のお金に対するスタンスについても考えるようになりました。これからは自分のお金のことも真剣にやっていかなきゃなぁ、と。

自分の人生に思わぬ影響を与えてくれるのもまた、業界を超えた転職のおもしろいところですね。広報をやっていきたい気持ちは今後もぶれませんが、また別の業界を知りたくなるときが来るかもしれません。

情報の先にいる「人」を想い、最適解を探し続ける

ー PRパーソンとして意識している姿勢を教えてください。

風間:まず、あいまいなことは言わないことです。誤解を生まない一次情報の発信は、どの業界のPRパーソンにも通じることだと思います。

加えて、素直さも必要です。今は金融業界について学びながら広報担当者として立っていますが、それでも経験豊富な記者さんのほうが専門領域に詳しい場面もあります。そういうときは、わからないこともちゃんと伝え、周りに質問しながら一つずつ疑問をつぶしていきます。

ー 新生銀行の広報担当者としての目標はなんですか。

風間:一人ひとりの人と新生銀行との間に立ち、より良いイメージを届けていけたらと思います。同時に、新生銀行に対しても自分の経験を活かし、より良い影響を与えていきたいです。

広報活動は社外に情報を発信するだけでなく、社外で聴いたことを社内に持ち帰る役割も担っています。これまでに身につけたスキルはもちろん、日々の生活の中で経験したことも会社に還元していけたらうれしいですね。

ー 風間さんにとって、広報とは?

風間:情報を発信する先にいる「人」を想う仕事です。

広報の仕事が直接売上を左右することは多くありません。それに、企業に対するイメージが一つのメッセージで劇的に良くなることもあまりないでしょう。だからこそ、私たちは一つひとつの発信の先にいる人の心の動きを考え、言葉を発し続けていく必要があります

ここでいう「人」は、お客様だけではありません。これから新生銀行に入社したい人、会社の仲間……あらゆる立場の人が含まれます。それぞれの人に自分の仕事が良い影響を与えるよう考え続けること。それが広報だと思います。

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新天地でPR道の原点に触れ、描ける未来があった

入社15年の会社を離れて異業界に飛び込み、業界のことををゼロから学びつつ広報活動をリードする。これは決して簡単なものではありません。それでも風間さんの背中を押したのは、「他の業界でも広報活動をやってみたい」という想いでした。

風間さんが語る広報道の魅力は、とてもシンプルなものでした。ステークホルダーとの善き結び目として真摯に情報を発信していくことは、どんなに長い広報歴であっても、挑戦の日々なのです

キャリアに不安を抱えたり、モチベーションを求めて惑ったりしている方は、今一度ゼロ地点から見える広報の魅力に立ち戻ってみると良いかもしれません。

(撮影:原 哲也、取材はリモートで実施しました)

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この記事のライター

宿木 雪樹

宿木 雪樹

ライター・編集者。カンパニーストーリーやプロダクトのユーザーボイスのインタビュー記事を中心に、企業オウンドメディアにて編集・執筆。ほか、マーケティングに関わるコラム連載も執筆中。好きなものはハーブティー。30代になって健康な生活に目覚めました。

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