サニタリーショーツのパイオニアとして知られ、奈良県橿原市で創業95年を迎える老舗インナーウェアメーカーの株式会社タカギ。
従来はOEMや小売店舗への卸売が中心でしたが、時代の変化に合わせてプライベートブランド「bodyhints(ボディヒンツ)」「AROMATIQUE(アロマティック)」を展開してきました。また2021年には、ジェンダー問題にも向き合い、女性の社会での活躍を応援するアンダーウエアブランド「ayame(アヤメ)」を立ち上げています。
本記事では、同社の代表取締役である髙木麻衣さんと、広報PRを担当する石井未来さんにインタビュー。広報PRに注力するようになった経緯や得られた効果、現在進めている女性活躍推進や地域貢献に向けた取り組みについても伺いました。
株式会社タカギ(奈良県橿原市):最新プレスリリースはこちら

株式会社タカギ 代表取締役
奈良県出身。大手商社での経験を経て、2014年にタカギに入社。女性経営者ならではの視点で働きやすい会社づくりに注力。フレックス、テレワーク制度の導入などを行い、社内制度や社風を改革。プライベートブランドの「AROMATIQUE(アロマティック)」と「ayame(アヤメ)」のブランドプロデュースを担当。社会にも目を向け、2018年よりCSR活動の月経教育支援活動を開始。自治体とも連携し、女性活躍推進活動に力をいれている。プライベートは三姉妹の母。

株式会社タカギ 広報・PB事業部 sales/MDチーム
奈良県出身。新卒で大手エアラインに入社。タカギのプライベートブランド「AROMATIQUE(アロマティック)」の商品を愛用していたことをきっかけに、2021年にタカギに入社。企業広報やプライベートブランドのPR、SNS運用、ECサイト・オウンドメディア運営を担当。
価値をストーリーで伝え、選ばれる商品に
──本日はよろしくお願いします。御社はいつごろから広報PR活動をスタートしたのですか。
髙木さん(以下、敬称略): はい、よろしくお願いします。以前はBtoBのOEMが中心で、正直広報PR自体を必要としていなかったのですが、プライベートブランド(PB)を立ち上げ、2016年ごろから本格的に情報発信を始めたんです。当時は、社外の広報PRパーソンに委託し、新商品のプレスリリースを直接メディアに持参してもらっていましたが、現在は広報PRを社内で内製しています。他社との違いをより正確に伝えていくためには、ものづくりの観点から発信することが重要。広報PRの専門部門を設置しているわけではありませんが、PB事業部に石井が在籍し、マーケティングや企画も含め、会社全体の広報PRの役割を担ってくれています。
──石井さんは入社3年目だそうですが、入社の経緯を教えていただけますか。
石井さん(以下、敬称略): 私はもともとタカギの商品のファンだったんです。前職はエアライン業界で異なる仕事をしていたのですが、その頃からタカギのプレミアムインナーウェアブランド「AROMATIQUE」を愛用していました。
そして、コロナ禍にヨーロッパ調のレースがあしらわれたおしゃれなデザインのマスクに出会い、「どこの会社のものなんだろう」と販売元を確認したら、以前から愛用している地元奈良県のタカギだったことに驚いたんです。調べていくうちに採用があることを知り、2021年に入社しました。当時の仕事を辞めたかったわけではなく、タカギに入社したいと思い転職を決めました。
──商品への思いが叶っての転職だったのですね。髙木さんはものづくりの観点から発信する重要性を感じたとのことですが、広報PRの目的や役割をあらためて伺えますでしょうか。
髙木:当社は1930年に祖父が創業して以降、化学繊維ではなくコットンやシルクの素材を使い、1枚1枚職人の手で丁寧につくり上げることにこだわってきたものづくりの会社でした。時代とともに、価格競争に巻き込まれ、上質な商品なのに安価にせざるを得ないというアンマッチな状況に陥ってしまい、経営状況が厳しかったこともあります。しかし、私たちの商品は、初期コストはかかっても長く使っていただける商品です。丁寧なものづくりや品質の良さ、自社の思いをストーリーとして伝え、納得してご購入いただきたいと思っています。ただ、このことをそのまま発信してもお客さまに伝わりにくいため、「ブランドとして目指す姿」「私たちがあるべき姿」「お客さまに抱いていただきたい印象」この3つをどう伝えるかを考え、より魅力的に届けるのが広報PRの役割だと思っています。

顧客目線を持ち、伝えたいことを8割に絞る
──プレスリリースでも新商品の発表はもちろん、幅広く配信いただいていますよね。
石井: SS(春夏シーズン)やAW(秋冬シーズン)といった季節の変わり目や、新商品の発売、受賞といったタイミングには、逃さずプレスリリースを配信するようにしています。
──最近の受賞リリースと言えば、「令和6年度 奈良県社員・シャイン職場づくり推進企業表彰」での「仕事と家庭の両立推進部門」受賞でしょうか。
髙木:本表彰での受賞は今回で2度目ですが、「仕事と家庭の両立推進部門」での受賞は初めてなんです。自社サイトだけの情報発信では、外部から見たときに本当にその取り組みや活動が実施されているのか判断がつきにくいものですが、PR TIMESでの発信が自治体の目に留まり、エビデンスの役割も果たしてくれたのかもしれません。そのように考えると、プレスリリースは認知度の向上だけでなく、次のステップへの足がかりともなると感じています。
参考:令和6年度 奈良県職場づくり推進企業表彰の「仕事と家庭の両立推進部門」を受賞
石井: ほかにも、毎年3月8日の「国際女性デー」や、他社ブランドとのコラボレーション関連の配信もしているのですが、やはりこの辺りはよく読まれる傾向にありますね。
──プレスリリース配信の際に意識していることはありますか。
石井: 商品に関する発表は、公式Instagramやメルマガ配信でクリック率の高かったビジュアルを、アイキャッチ画像に使用するなどの工夫も欠かしません。
また、私自身タカギのファンだったこともあり、「好きだから全部伝えたい」という気持ちが強くて、最初に書いたプレスリリースはかなり長文でした。製造工程から職人のこだわり、デザインに至るまで、知っていただきたいことをすべて盛り込んでしまったんです。今では伝えたいことの8割に絞るようにしています。
一方で、つくり手側では当たり前に感じていることも、何も知らないお客さまにとっては「すごい!」と思ってもらえるポイントがあります。タカギの当たり前が実は特別なものだったりするんです。私は異業種から転職してきたからこそ、「つくり手側」と「受け手側」の2つの視点を持ち、お客さま目線で知りたい情報は何かを考えることを大切にしています。
髙木:最近は、ファッション関連の展示会などで「タカギさん、PR TIMESによくプレスリリースを出されていますよね」「ビジュアルの使い方や発信の仕方を参考にしています」と声を掛けていただけることも増えましたね。特に、卸売中心だった企業が消費者向けのビジネスに取り組む際には情報発信の方法に悩むケースが多いようで、皆さん他社の発信をよく研究されているんです。頻繁にプレスリリースを配信しているため注目してくださっている方も多く、業界内での認知度の高まりを実感しています。
ブランド価値を拡張するコラボレーション
──他社ブランドとのコラボレーションについても積極的な印象ですが、お声がけが増えた影響などあるのでしょうか。
髙木:広報PRに注力して以降、他社さまからのコラボレーションの依頼は増えたと思います。直近では、「Noblesse Oblige(ノブレス オブリージュ)」と第二弾のコラボレーション商品を発表しました。
──コラボレーションの手ごたえはいかがでしょうか。
髙木:当社はインナーウェアメーカーですので、衛生面や着心地に着目しがちなのですが、ファッショントレンドの最先端であるブランドと協力することでファッション性を極限まで追求したデザインができています。また社内では、これまでと異なるデザインの追求によりデザイナーの発想の幅が広がり、新たな商品を展開することで営業部門のモチベーションが高まるなど副次的効果も生まれているんです。
石井: 「AROMATIQUE」の世界観がさらに広がっていくのを実感していますね。私自身も学びが多く、広報PR担当者としての言葉の引き出しが増えるのが楽しくてたまりません。
|タカギ「AROMATIQUE × Noblesse Oblige 第二弾発売」プレスリリースのポイント
石井さんの「伝えたいことを8割に絞る」こだわりが活かされたプレスリリースです。前半で「100年以上の歴史」「極細絹糸」といった素材の価値を簡潔に伝え、後半では「とろけるようにカラダにフィット」という魅力的な表現で着用感の良さを伝えています。また、第二弾の特徴として第一弾比を記すことは、継続したニュースを発表する際のポイント。企業視点と元ファンならではの視点を、絶妙なバランスで組み合わせています。(PR TIMES 取材担当者より)
プレスリリース:ロンドン発ランジェリーブランドとAROMATIQUEのコラボ「AROMATIQUE × Noblesse Oblige」第二弾を発売開始

奈良県への貢献と同時に海外展開を視野に
──今後、事業としてどのような展開を考えていますか。
髙木:インバウンド需要の変化や、下着=消耗品のイメージを持つ方が増えたことなどの理由から、百貨店の売り場は縮小傾向にあります。当社も、以前は大手百貨店に自社のブースを常設していましたが、現在はポップアップ出店が中心です。一方で、これまでファッション感度の高いランジェリーを百貨店で購入していたお客さまが行き場を失っている状況だと感じており、まだ具体化はしていませんが、インナーウェアメーカー同士が協力して新たな販売機会を模索しているところです。
また2030年に向けて、海外展開も積極的に進めています。アパレル業界では、アジア圏内で製造し日本国内で販売する、というのがスタンダードでした。当社もベトナムに提携工場を持ち日本で販売してきましたが、海外での販路を拡大することに力を入れていくつもりです。
現在も台湾とアメリカで少しずつ売り上げを伸ばしており、今後は欧州への拡大、海外向けのOEMにも注力し、将来的には国内と海外の売り上げを5:5ほどにするイメージを描いています。
──海外での展開に力を入れていかれるんですね。一方、地元奈良県での活動も積極的かと思いますが、奈良県、日本国内での取り組みとして計画されていることはありますか。
石井:タカギだからこそできる取り組みで地元に貢献していくことも目標のひとつです。奈良県で開催される「日本女性会議2025橿原」では髙木が企画部長を務めていますが、イベントの開催や雇用を生めるような地元奈良県に人が訪れたくなるブランド、企業になりたいと思っています。
髙木: 奈良県では2018年から、サニタリーショーツの良さや正しい知識を身につけてもらい、月経に対するネガティブなイメージを変えていきたいという思いから月経教育活動を行っていますね。
石井: 男子児童も女子児童も一緒に授業を受けるのですが、男子児童からは「今度からつらそうな子がいたら声をかけてあげようと思った」「お母さんに優しくしようと思った」といった感想も聞かれ、とても意義のある活動だと感じています。
髙木: 現在は奈良県内の小学4・5年生を中心に、年4、5回程度の講義を行っているんですが、奈良県発の取り組みとして、全国に広めることができたら嬉しいですね。
※参考:【イベントレポート】「日本女性会議2025橿原プレ大会」女性経営者の本音トークセッションに株式会社タカギ代表 髙木麻衣が登壇。
──広報PR活動において今後期待することはありますか。
髙木: 私の思いを言葉で表現してくれる存在は本当に貴重です。石井には現在のように、フラットにコミュニケーションを取れる関係性を続けてもらえたらと思います。
石井: 今後もこれまでのように髙木と密に連携を取りながら、広く適切なタイミングで情報発信を続けていくつもりです。

まとめ:ファン視点と企業視点を組み合わせた情報発信
ものづくりへのこだわりを守りながらも、時代の変化に合わせて柔軟に事業形態を拡充させてきた株式会社タカギ。事業の拡大はもちろん、会社としてのブランディングを推進する代表の髙木さんと、入社前から商品のファンだった石井さんが密に連携しながら広報PR活動を進めている点が印象的でした。商品への愛情と知識を持ちつつ、お客さま目線を軸にした情報発信が、自社の魅力を多くの人に届けるカギとなっています。
今回のポイントは以下のとおりです。
- 価格競争から抜け出すためにも寄与。丁寧なものづくりの価値をストーリーで伝えることを重視
- 企業視点とファン視点の両方を持つメンバーが広報PRを担当。プレスリリースは「つくり手」と「受け手」の両視点で作成し、内容を8割に絞ることを意識
- 小学校での月経教育をはじめとした、社会貢献。自社だからこそできる地域に根差した活動
上記の取り組みに加え、他社とのコラボレーションも重要な戦略となっています。話題が生まれるのを待つのではなく、話題となるニュースを積極的につくり出す姿勢も真似をしたい点です。
これから社内外への情報発信に力を入れようとしている企業、ブランディングに取り組もうとする企業にとって、参考になる事例だったのではないでしょうか。
同社のこれからの広報PR活動をはじめ、女性活躍推進や地域貢献に向けた企業としての取り組みに注目です。
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