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「顧客起点」を軸にしたサービスリブランディング|株式会社ユーザベース

活用したことがある方も多いだろうソーシャル経済メディア『NewsPicks』を運営する株式会社ユーザベース。BtoB向けのSaaS事業を展開してきた同社が2023年2月に発表したTOB(株式公開買付)に伴う株式非公開化は、記憶に新しい方も多いのではないでしょうか。そんなユーザベースが先日7月1日に「SPEEDA・INITIAL・FORCASなど国内SaaSプロダクト名称を「スピーダ」に統一」を発表しました。

今回は、このリブランディングを共同代表の佐久間衡さんと一緒に主導した広報責任者である菅原弘暁さんにインタビュー。「経営のスピードを上げる」というスピーダ事業ミッションを実現するためのリブランディングの進め方や大切にしてきたことについて伺いました。

株式会社ユーザベース Head of Publich Relations

菅原 弘暁(Sugahara Hiroaki)

2011年から4年間、大手総合PR会社のオズマピーアールに勤務。その内の1年間は博報堂のPR戦略局に在籍。2015年よりPR Tableに共同創業者として参画。SaaSプロダクトの立ち上げ、主に採用広報やコーポレートブランディングなど企業の広報コンサルティングを行い、2016年より取締役に就任。2018年にPR業界では初となる大規模カンファレンス「PR3.0」を主宰。シリーズCまで事業と組織を牽引して、2020年12月に取締役を退任。2021年よりグループ広報/コーポレートブランディング責任者としてユーザベースに入社。現在に至る。

「会社をわかりやすく」から始まったリブランディング

BtoCのソーシャル経済メディア『NewsPicks』や、多数のBtoB事業を展開する株式会社ユーザベース。2023年2月にTOBに伴う株式非公開化を発表後は、取締役会を刷新し3〜5年以内の再上場に向けた事業改革を進めています。

そのひとつが、代表取締役の佐久間衡さんと広報責任者の菅原さんが中心となって取り組むBtoB事業のリブランディングです。「SPEEDA」「FORCAS」「INITIAL」など、これまで別々の国内SaaSプロダクトとして提供していたものの名称を「スピーダ」に統一することで、認知拡大をはじめ、一貫したブランドメッセージの発信や顧客体験の向上を目指します。

リブランディングに際しては、佐久間さんからCEO直下組織となった広報PRへ「とにかくこの会社をわかりやすくしてほしい」という要望があったそうです。当時のユーザベースが抱えていた課題として以下の2つのポイントを挙げました。

1.事業の複雑性が高く、メディアに取り上げてもらえない
事業数が多いことに加え、事業起点で編成された組織それぞれにCEOを置いていたこともあり構造が複雑で、会社として一貫したメッセージを外に発信しにくい状態が続いていました。
また、自社が経済メディアを運営しているため、メディアに取り上げられづらく、プロダクトの特徴や魅力が第三者の視点で外に向けて発信されていなかったそうです。

2.投資家に向けて会社の全体像をうまく伝えられていない
投資家に対して、複雑なビジネスモデルが抽象的に伝わってしまい、戦略や強みなどがわかりにくくなっていました。

上記の課題を解決し、ユーザベースの全体像を明確に描くためのリブランディングは、「四半期ごとの業績に追われる上場企業の時には余裕がなくて難しかったと思います」と話す菅原さん。TOBによって株主が1社となり、再成長のための準備期間と位置付けられた現在を「好機」と捉えました。

株式会社ユーザベースインタビュー01

広報PR主導。顧客起点と社内への全開示

ユーザベースのリブランディングに広報PRとして携わることになり、どのように進めていったのでしょうか。大切にしたことや社内の巻き込み方について伺いました。

顧客起点という軸をぶらさない

ビジネスの根幹は顧客であり、その声に耳を傾けて何を求めているのかを理解することが重要」という考えから、リブランディングに際し大切にしたのも「顧客起点という軸をぶらさない」ことでした。その視点は、TOB後に進められた組織改革にも反映されています。

例えば、以前のユーザベースでは組織がプロダクトごとに編成されており、ひとつの組織が取り扱えるのはひとつのプロダクトのみでした。しかし、今回のリブランディングではその仕組みを根本から見直し、顧客特性に合わせて複数のプロダクトを取り扱えるように方針を転換しています。

さらに、「SPEEDA」「FORCAS」「INITIAL」といった個々のプロダクトの名称を統一し、カタカナで読み間違いがない「スピーダ」として新たに展開することも決定。複数のプロダクトの名前や特徴を顧客自身に理解してもらうという複雑さを回避し、それぞれのニーズに合ったより良い提案ができるようにすること、大企業を中心としたクロスセルの加速などを目指します。

TOB後、「もう一度、顧客起点に立ち返ろう」という声が経営陣から挙がるようになったといいます。菅原さん自身も「ユーザベースが『顧客と誠実に向き合っている会社』だということを確実にステークホルダーへ伝えていくことこそが、広報PRとしてもっとも大切な役割」だと感じたそうです。

情報を全社にすべて展開

ユーザベースにとっても大きな決定だったリブランディングのプロジェクトが本格的に始動したのが2023年7月。まずは経営層を中心に大枠を固めていく作業が行われ、2023年12月の全社集会で発表がされました。

プロジェクトが始まった当初から賛否両論があることは想定していたからこそ、透明性と全社的なコミュニケーションを大切にしたといいます。例えば、全社発表に至るまでのリブランディングの経緯をドキュメントにまとめ、全社員がアクセス可能な状態にしました。また、Slackを活用して「ロゴの検討」「サービスサイトの検討」「スピーダ(認知記号)以降に付く〇〇部分の検討」など、項目ごとにそれぞれオープンのチャネルを作成。重要な情報や検討プロセスはSaaS事業600人以上のメンバーがいるチャネルで常に発信し続け、社員側からも意見できるようにしました。

良い意見であればボトムアップでも積極的に採用する。一方向の情報発信ではなく、社内を巻き込みながら双方向のコミュニケーションによって、社員にも顧客起点になることを促しながら、リブランディングが進められたそうです。

ユーザベースのプレスリリース活用法

コーポレート系以外の情報に関してはプロダクトマネージャーなど広報PR担当者以外の人がプレスリリースを作成することもあるユーザベース。最後にプレスリリースの活用についても伺いました。

情報を整理して社内共通のゴールをイメージ

複数のプロダクトを展開しているため、社内の関係者も多く、情報が整理されにくい課題があったそうです。それを解決するために実施したのが、「プレスリリースを作成して社外に伝えるイメージをつくる」ということでした。

「外部の人たちに何を伝えたいのか」「一番伝えたいメッセージは何か」という視点に立って、プレスリリースのたたき台を作成することによって、社内での合意形成が進み、情報が整理されやすくなるのだといいます。

メディア掲載につなげることで社員をエンパワーメント

また、メディア掲載につなげられれば、自社の認知度や信頼を高めることができ、それは結果的に社員をエンパワーすることにもつながると考えているそうです。

メディアに掲載された客観的な視点で書かれた記事を目にする、その記事に対する外部からの評価に触れることで、社員は自信と誇りを持つことができる。「今回のTOBやリブランディングに対して、複雑な思いを抱えていたり自信を喪失した社員は少なからずいる。しかし、考え抜いて、お客さまのために本気で変わろうとしている」ということをプレスリリースを介してフィードバックできれば、再び自信を取り戻せるはずだと説明しました。

株式会社ユーザベースインタビュー02

まとめ:「顧客起点」の軸を大切にした情報発信で、自社に対する社内外の解像度を高めていく

TOBに伴う株式非公開化や取締役会の刷新、組織改革とリブランディングなど、再上場を目指した大きな変化の中にあるユーザベース。目まぐるしく状況が動く時こそ、社内外に向けた情報発信を積極的に行うことで、会社が掲げるパーパスやビジョンに対する解像度を高め、ステークホルダーの信頼や安心につなげることができるはずです。

今回ご紹介した、「顧客起点」という軸を大切にした情報発信は、業種を問わずさまざまな企業にとって意識すべき視点ではないでしょうか。

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