親族や友人・知人だけでなく、同僚や上司、取引先の関係者などから訃報を受けた際、お悔やみの言葉を伝えるケースは少なくありません。しかし、選ぶ言葉を間違えてしまうと、相手にとって失礼になってしまったり、余計に悲しみを助長させてしまったりすることにもつながります。
本記事では、お悔やみの言葉の意味や、事情によりメールや手紙で伝える場合のマナーなどを紹介します。
お悔やみの言葉とは?
お悔やみの言葉とは、訃報を受け、通夜や告別式などに参列する際に、故人を弔う気持ちを表すために遺族や関係者に対してかける思いやりの言葉です。ビジネスシーンにおいては、取引先や関係会社の社長や役員、その家族などが亡くなった知らせを受け、お悔やみの言葉をメールで送ることも少なくありません。
お悔やみの言葉をメールで送ることは、マナー的に正しいものではありません。よほど親しい間柄であるか、訃報をメールで受け取った場合であれば、お悔やみの言葉をメールで送るケースもあります。しかし本来であれば弔問して故人の関係者に直接伝えるものです。弔問できない場合は、手紙や弔電などでお悔やみの言葉を伝えるのがマナーです。
お悔やみの言葉の意味と例文
お悔やみの言葉にはいくつかの種類があり、口頭で使うもの、文章で使うもの、いずれにも使えるものがあります。それぞれの意味を理解しておくことで、訃報を受けた際、スムーズにお悔やみの言葉を相手に伝えることができるでしょう。お悔やみの言葉は、短く簡潔にまとめることが大切です。口頭で伝える場合は、声のトーンを抑えながら小さめの声を心がけることが大切です。
ご愁傷さまです
「ご愁傷さまです」は、心の傷を憂い、相手を気の毒に思うという意味になります。「愁」は憂いの気持ちを表し、「傷」は痛みを表現しています。「このたびはご愁傷さまです」と伝えるのが一般的ですが、この言葉は相手に直接かける言葉となるため、弔電やメールなどで使用するのは不適切です。葬儀の際だけでなく、訃報を耳にした際にも使うことはできますが、口頭でのみ使うようにしましょう。
お悔やみ申し上げます
「お悔やみ申し上げます」は、「亡くなった方の死を悲しみ、弔いの言葉を伝える」という意味です。対面で伝える場合もあれば、手紙や弔電、メールに使うこともあります。口頭では、「このたびは心よりお悔やみ申し上げます」と伝えます。弔電やメールなど文字で伝える際は「ご逝去の報に接し、謹んでお悔やみ申し上げます」などと少しかしこまった文にするとよいでしょう。
ご冥福をお祈りします
「ご冥福をお祈りします」は、「故人の死後の幸福を祈る」という意味があります。この言葉は遺族や関係者ではなく、亡くなった人に対する言葉となります。そのため口頭ではなく、弔電やメールなどの文章で使うのが適切です。ただし故人の宗教によっては使わないほうがよいケースもあります。詳しくは後述しますが、「ご冥福をお祈りします」を使用する場合には注意が必要です。
哀悼の意を表します
「哀悼」とは亡くなったことを悲しむ気持ちです。「哀悼の意を表します」とは「故人の死を思うと悲しみで心が痛む」という意味で使います。この言葉も口頭では使用せず、文章のみで伝える表現です。弔電やメールなどで使用する際は「謹んで」を文頭につけることで、より丁寧に自分の気持ちを相手に伝えることができます。
残念でなりません
「残念でなりません」もよく使われるお悔やみの言葉です。葬儀などに参列した際、遺族や関係者に対し、訃報を受けて悔やむ気持ちを「残念でなりません」と表します。文章でお悔やみの言葉を送る際にも使うことが多い表現です。「このたびのご不幸、誠に残念でなりません」などと伝え、そのあとに「心よりお悔やみ申し上げます」と続けるのもよいでしょう。
お悔やみの言葉を伝えるときに注意したい、忌み言葉
お悔やみの言葉は故人の死を悲しみ、遺族や関係者を気遣うための言葉です。知らず知らずにふさわしくない言葉を使い、相手を傷つけてしまうことがあってはいけません。不吉な意味を連想させる言葉は「忌み言葉」といい、使ってしまうと相手に失礼です。不幸が重なることや、再び不幸が訪れることを連想させるため、口頭でお悔やみの言葉を伝えるときだけでなく、メールや弔電などの文章においても以下の言葉は避けるようにしましょう。
たびたび、重ね重ね、しばしば、またまた、再び、続いて、引き続き、いよいよ、再三、何度も、重ねて、など同じ言葉を繰り返す表現。
「死亡」や「生きていたころ」のような、直接的な表現も適切ではありません。「ご逝去」や「ご生前」といったふさわしい言葉に置き換えることが大切です。
お悔やみの言葉は宗教によって異なる
お悔やみの言葉には、上述したようにさまざまな言い回しがあります。いずれも故人を弔う気持ちや遺族・関係者をいたわる言葉ではありますが、特に「ご冥福をお祈りいたします」というお悔やみの言葉については注意が必要です。
この言葉はお悔やみの言葉としてよく使われます。先に述べたように、「故人の死後の幸福を祈る」という意味があり、仏教において使われる言葉です。故人が、思想の異なる神道やキリスト教など、別の宗教に属している場合は使用するのを避けたほうがよいでしょう。同じ仏教でも浄土真宗の教えでは、故人は極楽浄土で仏になるため、悩んだり苦しんだりすることはないとされています。そのため「冥福を祈る」という言葉は適しません。亡くなった人がどの宗教・宗派に属していたかがわからない場合は、「お悔やみ申し上げます」など別の言葉を使うようにしましょう。
お悔やみの言葉をメールで伝えるときの5つのマナー
先述したように、お悔やみの言葉は本来、直接または弔電で伝えるのがマナーです。しかしビジネスにおいては、突然の訃報に対し、すぐにお悔やみの言葉を伝えるため、メールを活用するケースもあるでしょう。そのような場合でも、マナーを守り、相手に失礼のないようにしなければなりません。ここでは、お悔やみの言葉をメールで伝えるときのマナーについて解説します。
マナー1.メールを送る相手を見極める
本来であれば葬儀に参列するか弔電や手紙などを送るのが好ましいとされていますが、相手との関係性によってはメールでお悔やみの言葉を伝えても問題はありません。特に付き合いが深い取引先の関係者であれば、すぐにメールでお悔やみの言葉を伝えてもよいでしょう。逆にあまり付き合いのない取引先関係者からの訃報に対しては、メールではなく弔電やお悔やみ状などを送ることをおすすめします。
マナー2.相手との関係性にかかわらず敬語や丁寧語を使う
普段は親密な関係性を保っている取引先担当者から訃報を聞いた場合、ついいつも通りのくだけたメールでお悔やみの言葉を送ってしまいがちです。しかしお悔やみの言葉は、相手との関係性がいかなるものであっても、必ず敬語や丁寧語で伝えるようにしましょう。例えば、「突然の不幸を聞いて」ではなく「突然のご不幸を伺い」など、丁寧な言い回しにするのがマナーです。
マナー3.忌み言葉を避ける
先にも述べましたが、お悔やみの言葉を相手に伝える際、忌み言葉は使用しないようにしましょう。「切れる」「離れる」「別れる」などの不吉や不幸を連想させる言葉、「わざわざ」「たびたび」「重ね重ね」などの同じ言葉を繰り返す言葉は、不幸が連続することを連想させてしまいます。
マナー4.機種依存文字や絵文字は避ける
ビジネスメールで絵文字を使用することは多くないかもしれませんが、よほど関係性の深い取引先担当者であれば、日頃は絵文字付きのフランクなメールを送ることもあるかもしれません。しかし、メールを受け取るデバイスなどにより、送った絵文字とは違ったイメージで相手に届いてしまう可能性も考えられます。また、ローマ数字や半角カタカナ、「①」などの環境依存文字は文字化けするケースもあります。お悔やみの言葉が伝わらないどころか、相手への失礼にあたります。重要なメールを送るときと同様に、相手に正しく伝わる文字のみを使用するようにしましょう。
マナー5.本文は簡潔にまとめる
不幸があった相手は、葬儀の手配や関係者への対応などに追われ、多忙であることが考えられます。そのようなときに、メールで長文のお悔やみの言葉を送るのはかえって迷惑になってしまいます。お悔やみの言葉を簡潔に述べるほか、適切な改行を入れるなどし、相手がすぐに読める・読みやすいメールを心がけましょう。相手に余計な時間を取らせることを避ける意味から、時候の挨拶などの前置きは必要ありません。メールの件名は「お悔やみを申し上げます」など、お悔やみの言葉を伝えるメールであることがわかるようにすると、より親切かもしれません。
お悔やみの言葉をメールで送るときの例文
ここまでは、お悔やみの言葉を伝える場合に推奨される言葉や、注意すべき点、メールで伝える際のマナーなどを紹介しました。メールは弔電や手紙のように、極端にかしこまった文章にする必要はありませんが、最低限失礼のない内容にしなければなりません。ここでは、実際にお悔やみの言葉をメールで送るときに参考になりそうな例文を、相手との関係別に紹介します。
取引先に送る場合
件名:【〇〇株式会社 △△より】お悔やみ申し上げます
本文:
〇〇株式会社
〇〇事業部 〇〇様
××様逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
しばらくは何かとお取り込み中かと思い
略儀ながらメールでのお悔やみとさせていただきました。
失礼の段何卒ご容赦ください。
心から哀悼の意を表します。
上司に送る場合
件名:〇〇事業部の△△です。お悔やみ申し上げます。
本文:
××様のご逝去に際し、心よりお悔やみを申し上げます。
大変だと思いますが、どうかご無理をなさいませんように。
メールでのお悔やみとなりましたことをお詫び申し上げます。
××様の安らかなご永眠をお祈りいたします。
同僚に送る場合
件名:△△です。お悔やみ申し上げます。
本文:
このたびはご逝去の報に接し、心よりお悔やみ申し上げます。
大変な時期かとは思いますが、気を落とさずお身体に気をつけてください。
仕事のことで何かお手伝いできることがあれば、いつでもお声がけください。
親戚に送る場合
件名:△△より お悔やみ申し上げます。
本文:
このたびはご愁傷様でした。心からお悔やみを申し上げます。
本来であれば直接ご葬儀に伺うべきところですが、都合によりこのような形になり申し訳ありません。
××さんには生前とてもお世話になりました。落ち着いた頃に改めてご焼香に伺います。
しばらくは大変だと思いますが、気を落とさずお身体に気をつけてください。
友人に送る場合
件名:△△より お悔やみ申し上げます。
本文:
××様のご逝去を悼み、心からお悔やみを申し上げます。
しばらくは葬儀などでお忙しいことでしょう。
〇〇さんのことなので、気遣いや心遣いなどで無理をしているのではと心配しています。
何かあればいつでも連絡ください。
このメールで少しでも元気になってくれたらうれしいです。
お悔やみの言葉の手紙の書き方
日頃あまり付き合いのない取引先の担当者など、お悔やみの言葉をメールで送るのは失礼にあたるケースでは、手紙で伝えることがマナーです。お悔やみの言葉を手紙にする場合、「主文(本題)」「末文(締めくくり)」「後付け(日付・署名・宛名)」の3つで構成するのが一般的です。お悔やみの手紙は、時候の挨拶などの前置きは不要です。以下の流れに沿って書くとよいでしょう。
①主文(本題)
1.お悔やみの言葉
冒頭で「お悔やみ申し上げます」とお悔やみの言葉を伝えます。故人を弔う気持ちや遺族・関係者へのいたわりの気持ちを端的に伝えることが大切です。もし相手と面識がない場合は、故人との関係についても触れておくとよいでしょう。
2.訃報に対する驚きや慰めの言葉
お悔やみの言葉に続き、訃報を知ったことへの驚きや、遺族・関係者の健康を気遣う言葉や慰めの言葉を伝えます。メールでも手紙でも、亡くなった理由を尋ねることはマナー違反となります。親しい人やよく知る関係者が亡くなった場合、理由が気になるかもしれませんが、触れないように注意しましょう。
3.葬儀に参列できないことに対するお詫びの言葉
お悔やみの言葉を手紙で送る場合、事情により葬儀に参列できないケースがほとんどかと思われます。弔問を欠席することへのお詫びを伝えるようにしましょう。葬儀に参列できない理由が結婚式などの慶事の場合は「事情により」とします。
4 .香典を同封したことを伝える言葉
手紙と一緒に香典を同封する場合は、主文の最後でそのことについて触れます。「心ばかりではございますが」などの言葉を添えることで、押しつけがましくならず、丁寧な印象を与えることができます。
②末文(締めくくり)
5.結びの言葉
手紙の最後には「安らかなご永眠をお祈りいたします」や「心から哀悼の意を表します」といった結びの言葉を書きます。相手が浄土真宗以外の仏教に属していることがわかっている場合は「ご冥福をお祈りいたします」でも構いませんが、宗教がわからない場合は別の言葉を選ぶようにしましょう。
③後付け(日付・署名・宛名)
6.日付・署名・宛名
主文・末文のあとは、日付・差出人・宛名の順番で後付けを記載します。日付は西暦ではなく和暦を使用します。
お悔やみの言葉はなるべく早く伝えるようにしましょう
訃報を受けた際は、相手との関係性にかかわらずなるべく早くお悔やみの言葉を伝えることが大切です。親しい間柄であれば、いち早くメールで故人を弔ったり、関係者をいたわったりすることができます。メールを送るとかえって失礼にあたる相手には、葬儀に参列できない事情がある場合、当日に弔電を送るか、できるだけ早くお悔やみの言葉を手紙で送るようにしましょう。友人や同僚、上司、取引先など相手に合わせて適切な言葉を選び、お悔やみの言葉を伝えることが大切です。
お悔やみの言葉に関するQ&A
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