「カスタマーハラスメントに関する定量調査」を発表 顧客折衝があるサービス職の35.5%がカスハラ被害経験あり

カスハラ被害者の25.5%が社内でのセカンド・ハラスメントを経験

株式会社パーソル総合研究所

株式会社パーソル総合研究所(本社:東京都港区、代表取締役社長:萱野博行)は、過去3年以内にカスタマーハラスメント(カスハラ)を受けた被害経験者3,000人を対象とした「カスタマーハラスメントに関する定量調査」の結果を発表いたします。

近年、顧客による理不尽な要求や威圧的な言動が深刻化し、カスハラの問題が社会的な注目を集めています。厚生労働省や東京都が新たな制度づくりを検討する中、企業や自治体も独自のカスハラ対策を強化(模索)しています。

本調査は、サービス業におけるカスハラの実態とその影響を明らかにし、カスハラによる影響を防ぐための効果的な人材マネジメント施策や、カスハラに強い組織づくりのための具体的な指針を示すことを目的に実施いたしました。




カスハラ被害者の25.5%が会社や上司に報告・相談した時にセカンド・ハラスメントを経験



■主なトピックス ※トピックスの詳細については「主なトピックス(詳細)」をご確認ください

【実態編】

1.     顧客折衝があるサービス職の35.5%が過去に顧客からのカスハラ・嫌がらせを受けた経験がある。また、20.8%が3年以内に被害経験がある


2.     被害経験者の32.6%が、ここ3年でカスハラ経験が「増加」と回答。(「減った」は13.8%。「わからない」は6.9%)


3.     3年以内のカスハラ経験率が最も高い職種は「福祉系専門職員(介護士・ヘルパーなど)(34.5%)」 。経験率と離職率をマップ化すると、「福祉職(介護士・ヘルパーなど)」、「宿泊サービス」、「受付・秘書」は経験率と離職率がともに高い。


4.     性年代別では、男女ともに「若年層」のカスハラ経験率が高い

 

5.     3年以内に、顧客から口コミサイトやSNSで嫌がらせの投稿をされた経験は34.2%。「投稿5回以上」の被害経験も13.5%となった。 


6.     被害内容は、「暴言や脅迫的な発言(60.5%)」が最も高く、「威嚇的・乱暴な態度(57.7%) 」、「何度も電話やメールを繰り返す(17.2%)」と続く。 


7.     カスハラの加害者の属性は「初対面の客」で46.3%、次に「常連客」で41.0%。性別・年代層をみると、「女性」よりも「男性」が多く、年代では「高齢層」ほど多くなる


<現場・会社対応>

8.     会社側の対応は、「嫌がらせの被害を認知していたが、何も対応はなかった」が36.3%で最も高い。認知無しも19.3%。 


9.     被害を相談した被害者の25.5%が社内でのセカンド・ハラスメントを経験。(ここでのセカンド・ハラスメントとは、ハラスメント被害者が、被害を報告・相談した時に起こるハラスメントのことを指す)


<心理的影響>

10.     カスハラ直後の心境として、「仕事を辞めたいと思った」が38.0%、「出勤が憂うつになった」が45.4%と高い


11.     1年以内の「カスハラ被害あり層」と「被害なし層」を比較すると、あり層は「違う会社で働きたい」「今の会社を辞めたい」「今の職業を変えたい」といった転職意向が1.8倍-1.9倍高かった。また、年間の離職率平均も1.3倍高い


<企業の取組>

12.     カスハラの予防・解決策は、「実施されていない(43.0%)」が最も高い(従業員認知)。取り組みの内容は、「社内に相談窓口が設置されている(47.5%)」、「クレームやハラスメントの事例が社内で共有されている(39.5%)」が続く。


13.     カスハラ対策・予防施策のギャップについて、従業員の期待度に対して企業の実施率が低い項目は、電話応答での自動録音。次に、対外的な方針・態度の公表、名札のフルネーム表記廃止


【対策編】   

14.     何かあっても同僚・会社・上司が助けてくれるという「信頼資産」が高い群は低い群と比べ、カスハラ後の心境として「仕事を辞めたい」が23.2ポイント低く、およそ半減。「心身に不調をきたした」は14.9ポイント低い。一方で、トラブルがあると自分では何もできない、対応できないと感じる「心の負債」はその逆の傾向。


15.     信頼資産・心の負債には、「組織文化」「カスハラ知識の有無」「相談ネットワーク」の3つの要素が影響。


16.     信頼資産が高い組織は、チームワーク志向・自由闊達・開放的な組織文化が高い。低い組織は、顧客意向の尊重と属人思考が強い。知識とネットワークは、それぞれ高い層ほど信頼資産が高く、心の負債が低い


17.     カスハラ後の会社対応によっても、その後の信頼度は変化。カスハラを「認知あり、対応なし」の場合ではその後の会社信頼度・相談しやすさが大きく下がり、「対応あり」の場合には上がっている。


18.     部下からの信頼度が高い上司は、部下の成長への志向性が高く、傾聴・観察、成長支援、率先垂範を積極的に行っている。一方で、信頼度が低い上司は顧客志向だけが強い



■主なトピックス(詳細)

【実態編】カスタマーハラスメントの現状

1.    顧客折衝があるサービス職の35.5%が過去に顧客からのカスハラ・嫌がらせを受けた経験がある。また、20.8%が3年以内に被害経験がある。



2.   被害経験者の32.6%が、ここ3年でカスハラ経験が「増加」。(「減った」は13.8%。「わからない」6.9%)

※図表についてはトップページをご確認ください。



3.   3年以内のカスハラ経験率が最も高い職種は「福祉系専門職員(介護士・ヘルパーなど)(34.5%) 」 。2位以降は「顧客サービス・サポート(30.7%)」、「受付・秘書(30.0%)」、「医療系専門職員(医師・看護師など)(28.9%)」と続く。また、職種別にカスハラ経験率と離職率をマップ化すると、福祉職(介護士・ヘルパーなど)、宿泊サービス、受付・秘書は経験率と離職率がともに高い。

※マップの図表については報告書の21ページをご参照ください。

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/customer-harassment.html



4.   性年代別では、男女ともに「若年層」のカスハラ経験率が高い。雇用形態別では、「自営業」のカスハラ経験率が高く、27.6%。



5.   3年以内に、顧客から口コミサイトやSNSで嫌がらせの投稿をされた経験は34.2%。「投稿5回以上」の被害経験も13.5%であった。



6.   カスハラが起こった場面では、「普段就業している場所(68.1%)」が最も多い。被害内容は「暴言や脅迫的な発言(60.5%)」が最も多く、「威嚇的・乱暴な態度(57.7%) 」、「何度も電話やメールを繰り返す(17.2%)」と続く。



7.   カスハラ加害者の属性で割合が高いのは「初対面の客」で46.3%、次に「常連客」で41.0%と続く。性別・年代層をみると、「女性」よりも「男性」が多く、年代では「高齢層」ほど多くなる。



<現場・会社対応>

8.   会社側の対応は、「嫌がらせの被害を認知していたが、何も対応はなかった」が36.3%で最も高い。「認知無し」も19.3%。会社側から対応があった場合は、「事実確認のためのヒアリング(44.5%)」が最も多い。



9.   被害を相談した被害者の25.5%が社内でのセカンド・ハラスメントを経験。

セカンド・ハラスメントの内容は、会社や上司から「ひたすら我慢することを強要された(11.0%)」、「軽んじられ、相手にしてもらえなかった(8.9%)」、「一方的に自分自身に責任転嫁された(8.2%)」と続く。

※図表についてはトップページをご確認ください。



<心理的影響>

10.    カスハラを受けた直後の心境を聴取すると、「仕事を辞めたいと思った」が38.0%、「出勤が憂うつになった」が45.4%と高い。また、「次の転職時は顧客やり取りの無い仕事につきたい」と感じた者も37.5%いた。



11.     1年以内の「カスハラ経験あり層」と「無し層」を比べたところ、「あり層」は転職意向が1.8-1.9倍高い。また、年間の平均離職率は1.3倍高い傾向が見られた。



<企業の取組> 

12.     従業員が認知しているカスハラ予防・解決策は、「実施されていない(43.0%)」が最も高い。取り組んでいる会社は、「社内に相談窓口が設置されている(47.5%)」、「クレームやハラスメントの事例が社内で共有されている(39.5%)」が続く。



13.     カスハラ対策・予防施策のギャップについて、従業員の期待度に対して企業の実施率が低い項目は、電話応答での自動録音。次に、対外的な方針・態度の公表、名札のフルネーム表記廃止。



【対策編】

 ■カスハラの影響を最小化するために、「信頼資産」と「心の負債」というバランス・シートの発想で図式化

カスハラに強い職場の要素について、何かあっても同僚・会社・上司が助けてくれるという「信頼資産」をためておくという発想とトラブルがあると自分では何もできない、対応できないと感じる「心の負債」を減らすという発想。



14.    何かあっても同僚・会社・上司が助けてくれるという「信頼資産」が高い群は低い群と比べ(3層比較)、カスハラ後の心境として「仕事を辞めたい」が23.2ポイント低く、およそ半減。「心身に不調をきたした」は14.9ポイント低い。一方で、トラブルがあると自分では何もできない、対応できないと感じる「心の負債」はその逆の傾向がみられた。



15.    信頼資産・心の負債には、「組織文化」「カスハラ知識の有無」「相談ネットワーク」の3つの要素が影響。信頼資産と関連が高いのは、チームワーク志向の組織文化、会社の対応やトラブル対応・事例などの知識、上位層と同僚の相談可能人数(相談ネットワーク)がプラスに関連している。

※図表については報告書の42ページをご参照ください

https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/customer-harassment.html



16.   信頼資産が高い組織は、チームワーク志向・自由闊達・開放的な組織文化が高い(3層分割の高低比較)。逆に低い組織は、顧客意向の尊重と属人思考が強い。カスハラ知識と相談ネットワークはそれぞれ高い層ほど信頼資産が高く、心の負債が低くなっている。



17.   カスハラ経験後の会社対応の有無によって、その後の信頼度は変化している。カスハラについて会社が「認知あり、対応なし」の場合では大きくその後の信頼度や相談しやすさが下がり、「対応あり」の場合には上がっている。



18.   部下の回答傾向から、上司への信頼度の高いタイプと低いタイプを抽出し、タイプ別の比較を行った。信頼度が高いタイプは、部下の成長への志向性が高く、傾聴・観察、成長支援、率先垂範行動などの行動をしている。信頼度が低いタイプは顧客志向だけが強い。



■調査結果からの提言

昨今、カスタマーハラスメント(顧客からの嫌がらせや不当な要求)への世間の耳目が集まっている。東京都は全国初のカスハラ防止条例制定に動いており、UAゼンセンもカスハラのガイドラインを発表。民間の議論も活発化している。

その背景には、現場の人手不足がある。顧客サービス職の人材不足がますます高まる中で、カスハラによる離職は事業・ビジネスの存続に関わる深刻な問題だ。今後、さらに社会問題化していけば、顧客サービス職を選ぶ労働者もますます少なくなってしまう。


本調査では、ホワイトカラーを含めた顧客折衝のある職種について、広範囲に及ぶカスハラの実態が確認され、また、近年増加傾向にあることも示唆された。特に福祉・医療職は頻度高く発生している。


その一方で、会社の対応は後手に回っている。対応している企業は事前予防も含めて4割に満たない。それどころか、一部ではセカンド・ハラスメントのような我慢の押しつけや従業員への責任転嫁が行われている実態も明らかになった。

不特定多数の客との折衝があるなかで、カスハラ発生を完全に防ぐのは難しい。人材マネジメントの観点からは、未然に防ぎきるよりも、「カスハラに強い」組織を創るという発想が重要になる。


カスハラの負の影響を最小化するためにデータから示唆されたポイントは、 1.みなで助け合えるという職場の「信頼資産」を貯めること、2.トラブルが起こっても何もできないという「心の負債」を減らすことである。予防的措置、研修訓練による知識付与、マネジメント改革は、こうした「カスハラに強い組織づくり」に直結しており、企業として積極的な施策が必要だ。

カスハラ後にも、被害者を適切にケアし、事例として共有していくことで、会社への信頼資産を貯めることにもつながっていく。また、社内だけではなく、対外的に会社としての態度や対策を表明していくことも求められている。

目指すべきは、増えるカスハラに怯え続けることではなく、カスハラが「起きたとしても大丈夫」と思えるような強い組織づくりである。



本調査を引用いただく際は、出所として「パーソル総合研究所」と記載してください。


●調査結果の詳細については、下記URLをご覧ください。

 URL: https://rc.persol-group.co.jp/thinktank/data/customer-harassment.html


●構成比の数値は、小数点以下第2位を四捨五入しているため、個々の集計値の合計は必ずしも100%とならない場合があります。


                                     
■調査概要

調査名称

パーソル総合研究所「カスタマーハラスメントに関する定量調査」

調査内容

・サービス系職種における顧客からのハラスメント・嫌がらせの実態とその影響を確認する。

・ハラスメントの負の影響を防止するための人材マネジメント・施策の在り方について示唆を得る。

・医療・福祉領域のペイシェントハラスメントの実態と取り組みについて明らかにする。

調査方法

調査会社モニターを用いたインターネット定量調査

調査時期

自由回答調査:2024年2月6日 - 2月9日

定量調査  :2024年3月21日 - 3月25日

調査対象者

■顧客折衝のあるサービス職 全国20~69歳男女

【SC調査】n=20,108s

【本調査】3年以内ハラスメント被害経験者 n=3000s

対象職種:

 事務・アシスタント、営業、カスタマーサポート、飲食・宿泊接客系職、理美容師、航空機客室乗務員、コンサルタント、教員、ドライバー、警備、医療・福祉系職員

実施主体

株式会社パーソル総合研究所


■【株式会社パーソル総合研究所】<https://rc.persol-group.co.jp/>について

パーソル総合研究所は、パーソルグループのシンクタンク・コンサルティングファームとして、調査・研究、組織人事コンサルティング、人材開発・教育支援などを行っています。経営・人事の課題解決に資するよう、データに基づいた実証的な提言・ソリューションを提供し、人と組織の成長をサポートしています。


■【PERSOL(パーソル)】<https://www.persol-group.co.jp/>について

パーソルグループは、「“はたらくWell-being”創造カンパニー」として、2030年には「人の可能性を広げることで、100万人のより良い“はたらく機会”を創出する」ことを目指しています。

人材派遣サービス「テンプスタッフ」、転職サービス「doda」、BPOや設計・開発など、人と組織にかかわる多様な事業を展開するほか、新領域における事業の探索・創造にも取り組み、アセスメントリクルーティングプラットフォーム「ミイダス」や、スキマバイトアプリ「シェアフル」などのサービスも提供しています。

はたらく人々の多様なニーズに応え、可能性を広げることで、世界中の誰もが「はたらいて、笑おう。」 を実感できる社会を創造します。

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会社概要

株式会社パーソル総合研究所

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URL
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業種
情報通信
本社所在地
東京都港区南青山一丁目15番5号 パーソル南青山ビル
電話番号
-
代表者名
萱野博行
上場
未上場
資本金
1億円
設立
1989年09月