AI時代、「アート思考」はどこまで検証されているのか ― 国内外の定義・実践・効果研究を整理した図解26ページを無料提供

「自分起点」「0から1」「センスメイキング」「芸術ベースの組織介入」を区別。先行研究との共通点と「判断前提生成」の再構成部分を明示し、主要8ページを公開

組織行動科学®︎

980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、組織行動科学®の研究・教育開発を行うリクエスト株式会社(本社:東京都新宿区、代表取締役:甲畑 智康)は、国内外で「アート思考/Art Thinking」の名称のもとに語られている定義、教育、企業実践、芸術ベースの組織介入、効果研究を整理した図解レポート、「アート思考の国内外の現在地」全26ページを作成しました。

本レポートは、2026年9月3日までに公開された日本語・英語の主要資料を対象とした、公開情報に基づく探索的レビューです。

網羅的な系統的レビューやメタ分析ではなく、現時点で公開情報から確認できる、

  • アート思考という言葉が何を指しているのか

  • どのような研究・教育・企業実践が存在するのか

  • どのような効果が報告されているのか

  • 何がまだ十分に検証されていないのか

  • 当社の「判断前提生成」は、先行研究の何を引き継ぎ、何を再構成したのか

を整理したものです。

本リリースでは、レポートの主要な論点を示す8ページを掲載します。

二つの資料を公開したからこそ、国内外の研究と照合する必要があった 

当社は2026年9月2日、アート思考を「自由な発想」「感性」「自分起点」といった説明で終わらせず、既存の言葉や基準では捉え切れない現実を形にし、次の判断に先立つ新しい見方、問い、価値仮説を生み出す「判断前提生成」として定義しました

 

9月3日には、この定義を概念のままにしないため、起動条件、実践方法、判断デザインへの移行、組織条件、AI利用原則、評価、実証研究の設計までを整理した「実装・検証編」を公開しました

 

しかし、自社で定義を構築したことだけでは、その定義が妥当であるとは言えません。

 実装方法を示したことも、その効果が確認されたことを意味しません。

 そこで今回、いったん当社の定義から離れ、国内外において、

  • 「アート思考」という言葉が何を意味しているのか

  • どのような研究系統があるのか

  • 企業や教育で何が実践されているのか

  • どの範囲まで効果が確認されているのか

  • 当社の定義と先行研究は、どこが共通し、どこが異なるのか

を確認しました。

今回のレポートでは、当社の定義を前提に先行研究を評価するのではなく、既存研究との共通点、当社が再構成した部分、まだ検証できていない部分を分け、「判断前提生成」の研究上の位置を確認しました。

同じ言葉で、異なる活動と成果が語られている 

国内外の文献を確認すると、Art Thinkingは、統一された一つの方法として扱われているわけではありません。

 作品を鑑賞すること、自分の関心から始めること、既成概念を疑うこと、問いを立てること、作品や試作品をつくること、新しい事業を構想すること、組織の見方や文化を変えることなど、目的と成果の異なる活動が、同じ言葉で語られています。

 これらは、互いに重なることがあります。

 しかし、

  • 作品を見たこと

  • 自分の思いを表現したこと

  • アイデアが増えたこと

  • 現実の見方が変わったこと

  • 組織の判断や行動が変わったこと

は、同じ成果ではありません。

アート思考を仕事で扱うには、活動名、思考の仕組み、能力、成果、適用範囲、責任を分ける必要があります。

「アート思考の研究」と「アートを用いた研究」は、同じではない 

今回のレビューでは、根拠の異なる情報を同じ重さで扱わないため、主に四つへ分けて確認しました。

 1.Art Thinkingを直接扱う研究 

Art Thinkingという名称を使用し、定義、特性、プロセス、企業や組織への適用を論じた研究です。

 2.隣接する芸術ベースの研究 

arts-based methods、arts-based learning、芸術ベースの組織介入、リーダーシップ開発、workarts、アーティスト・イン・レジデンス、ArtScienceなどです。

 3.大学・教育機関・実践機関による公表 

大学、ビジネススクール、研究機関等が公表するプログラム内容、実施状況、方法論です。

 4.企業実務のために構築された操作的定義 

特定の仕事や組織において、観察、記録、評価できる形に再構成されたモデルです。

 

ここで重要なのは、芸術を用いた研修や組織介入で効果が報告されたことを、そのままArt Thinking固有の効果として扱わないことです。

 実践されていることと、効果が確認されたことは同じではありません。

 有望であることと、標準手法として確立したことも同じではありません。

有望な結果は報告されている。しかし、効果の実証範囲は限定されている 

2024年に公表された、芸術ベースのリーダーシップ開発に関する質的メタサマリーでは、2008年から2023年までに発表された31件の実証研究が整理されています。

 そこでは、内省、高次の認知能力、感情知性、対人能力などについて、有望な結果が報告されています。

 一方で、長期的な行動変容、実務における判断品質、新規事業や研究開発の成功率、組織業績との因果関係、他の研修や思考法との比較については、十分に確立されていません。

 また、この研究群の中心は、Art Thinkingそのものではなく、隣接する芸術ベースの学習やリーダーシップ開発です。

 したがって、本レポートでは、「芸術ベースの隣接研究から有望な示唆が得られていること」と、「 

Art Thinking固有の効果が証明されていること」を明確に区別しました。

参加者が満足したことと、学習・行動・組織成果は同じではない 

芸術を用いた研修は、日常業務とは異なる体験を伴うため、参加者に強い印象や高い満足感を与えることがあります。

 しかし、

  •  参加者が満足した

  • 学習が起きた

  • 仕事の行動が変わった

  • 組織成果が生まれた

 という四つは、それぞれ異なる状態です。

 

2022年に公表された二つの定量的サブ研究では、芸術ベースの研修に対する高い満足度や有用性評価が、期待された技能向上には反映されない結果も示されています。

 研究者は、その差についてハロー効果の可能性を指摘していますが、同時にサンプル数が小さいという限界もあります。

 アート思考を企業へ導入する際には、体験直後の感想だけでなく、その後の仕事において、

  • 現実の見方が変わったか

  • 次に確かめる問いが変わったか

  • 判断が変わったか

  • 行動と結果が変わったか

  • その経験が組織に残ったか 

を確認する必要があります。

アートを導入するだけでは、アート思考にはならない 

アート思考を企業へ導入する際には、アーティストを「既成概念を壊す人」「自由に発想する人」と一括りにする危険があります。

 また、観察、問い、批判、創造、身体性、対話といった能力を、アートにのみ固有の能力として扱うことにも注意が必要です。

 

芸術やアーティストを、売上、新規事業、アイデアを生むための手段としてのみ扱えば、芸術実践が持つ自律性や批判性が失われる可能性もあります。

 さらに、企業とアーティストでは、目的、時間感覚、成果物、評価、責任について用いる言葉が異なります。

 

企業への実装には、両者をつなぐ翻訳者や媒介者、経営層の支援、活動時間、評価方法、十分な資源が必要です。

問題は、アーティストが語るか、ビジネスパーソンが語るかではない 

アート思考をめぐる議論では、

  • アーティストだから語れる

  • ビジネスを知る人が企業向けに翻訳すべきである

  • アーティストでない人が語ることには問題がある

といった、語り手の属性が焦点になることがあります。

しかし、今回のレビューから見える本質的な論点は、語り手の肩書ではありません。

問うべきなのは、「芸術実践の何を根拠に、どの仕事へ、どの条件で翻訳し、その結果、何が実際に変わったのかを検証できるか」です。

アーティストの経験は、制作の内側で起きていることを記述するうえで重要です。

ビジネスの実務家の経験は、その働きを企業の仕事、判断、組織へ翻訳するうえで重要です。

研究者の役割は、定義、成立条件、効果、限界を検証することです。

しかし、いずれか一つの経験や肩書だけで、アート思考の妥当性や効果が保証されるわけではありません。

国内と国外では、公開文献上の強調点が異なる 

今回確認した日本の主要文献では、

  • 自分の関心や内発的動機

  • 自分なりの問い

  • 既成概念への批判

  • 0から1のアイデア 新規事業や商品構想

が、比較的強く語られています。

一方、国外の主要な概念研究や隣接研究では、

  • 曖昧な状況におけるセンスメイキング

  • 素材や身体を通した意味形成

  • 集合的な学習

  • ダブルループ学習

  • 芸術的介入の組織への埋め込み

  • 持続的な組織能力

へと、研究対象が広がっています。

これは、日本と国外の国民性や文化的本質の違いを示すものではありません。

本レビューで確認した代表的な公開文献に、どのような重心が現れているかを比較したものです。

国内外に共通して、実践の前後をつなぐ構造が不足している 

定義や実践方法は異なりますが、国内外の文献を横断すると、共通して十分に整理されていない問いが残ります。

  • どのような状況でアート思考を起動するのか

  • 鑑賞、対話、制作、試作、介入のうち、何を何のために行うのか

  • 何が変化すれば、アート思考が成立したと判断するのか

  • 未確定な探索を、いつ終えるのか

  • 誰が影響を受け、誰が最終判断と責任を引き受けるのか

  • 開始前後で何を記録・比較し、何を組織へ残すのか

不足しているのは、アート思考についての魅力的な説明ではありません。

起動、実践、変化、判断への移行、責任、評価をつなぐ構造です。

「判断前提生成」は、先行研究を無視して構築した独立概念ではない 

今回のレビューでは、「判断前提生成」と先行研究の関係も明示しました。

 当社の実装・検証編で示した、

  • 二焦点性

  • 多価性

  • 両利き性

  • 即興性

  • 身体性

という五つの中核特性は、Sandbergが2021年にArt Thinkingの特性として整理した五特性と一致します。

RobbinsとSandbergによる2023年の論考では、これらに遊戯性と美的経験を加え、集合的センスメイキング、ダブルループ学習、組織文化の変化へ接続しています。

したがって、当社は、この五特性そのものを独自に発見したとは位置づけません。

判断デザイン研究における「判断前提生成」で再構成したのは、次の接続です。

  • 現在の判断前提と現実の不適合を起動条件とする

  • 新しい現実の見方、探究すべき問い、価値仮説を成果とする

  • 事実、感覚、解釈、価値を分ける

  • 探索から判断デザインへ移るゲートを置く

  • 影響、境界条件、最終責任を確認する

  • 組織条件と運用役割を定める

  • AI利用と価値仮説を統治する

  • 実践エピソードを単位として評価する

  • 判断、行動、結果、組織学習までを追跡する

また、「判断前提生成」は、芸術一般に共通する唯一の定義でも、効果が確立された標準尺度でもありません。

芸術実践、センスメイキング、組織学習、芸術ベースの組織介入に関する知見を踏まえ、企業における責任ある判断へ接続するために再構成した、

  • 操作的定義

  • 理論モデル

  • 実践仮説

  • 検証枠組み 

として位置づけています。

定義編、実装・検証編、国内外レビューの関係 

今回のレポートは、これまでに公開した二編を、国内外の研究の中に位置づける第三段階です。

第1段階|定義編 

アート思考を曖昧なままにしないために、

  •  何をアート思考と呼ぶのか

  • 何を生み出すのか

  • 似ている活動と何が違うのか

  • 論理思考、デザイン思考、判断デザインとどう役割を分けるのか 

を整理しました。

 第2段階|実装・検証編 

定義したアート思考を概念のままにしないために、

  •  いつ起動するのか

  • 何を外へ出すのか

  • どのように応答を受け取るのか

  • いつ判断デザインへ移るのか

  • 組織で成立させる条件は何か

  • どのように記録・評価するのか 

を整理しました。

 第3段階|国内外の現在地 

当社の定義と実装モデルについて、

  •  どこが先行研究と共通するのか

  • どこを企業判断のために再構成したのか

  • どこまで効果が確認されているのか

  • 何がまだ検証されていないのか 

を明示しました。

 

定義、実装、外部研究との照合を分けることによって、自社の考え方を自社の説明だけで正当化しない構造としています。

最終結論 

アート思考には、本レビューで確認した主要公開資料の範囲において、国内外で共有された一つの標準定義はありません。

 複数の考え方と実践が存在し、芸術ベースの隣接研究では有望な成果が報告されています。

 一方、Art Thinking固有の長期的・因果的効果が、共通尺度によって確立された段階ではありません。

 今後必要なのは、アーティストらしく考えることを勧めるだけでも、アートを研修へ取り入れるだけでもありません。

  • 何をアート思考と呼ぶのか

  • いつ必要になるのか

  • 何を実践するのか

  • 何が変化したら成立したのか

  • 誰が責任ある判断へ変えるのか

を、観察、記録、検証できる形にする必要があります。

全26ページの図解レポートについて 

資料名:アート思考の国内外の現在地

副題:同じ言葉で何が語られ、何が実践され、どこまで検証されているのか

資料の位置づけ:公開情報に基づく探索的レビュー

調査時点:2026年9月3日

対象言語:日本語・英語

構成:全26ページ

主な内容:

  • アート思考と呼ばれている活動・成果の分類

  • Art Thinkingという名称以前から存在する芸術と企業の接続研究

  • 国外におけるArt Thinkingの主要系統

  • Art Thinkingを取り囲む隣接研究領域

  • 国外における主な活用場面

  • 単発体験から組織能力への発展

  • 有望な効果と、まだ十分に確立していない効果

  • 企業導入時の注意点

  • 日本におけるアート思考の展開

  • 国内大企業調査から見える活用場面

  • アイデアと事業化の間に生じる断絶

  • 日本と国外の公開文献に現れた強調点

  • 国内外に共通して残る六つの空白 

  • 「判断前提生成」と先行研究との関係

  • 調査方法と解釈上の限界

  • 国内外の主な参考文献

全26ページ版の請求方法 

PDF版をご希望の方は、メール本文に会社名と氏名を記載し、以下までお送りください。

  • 送付先:request@requestgroup.jp

  • 件名:「アート思考の国内外の現在地」PDF希望

  • メール本文:会社名・ 氏名

受信したメールアドレス宛に、全26ページ版を無料でお送りします。

 ※ご記載いただいた情報は、本資料の送付およびお問い合わせ対応に使用します。

本レポートの想定活用場面 

本レポートは、次のような場面での活用を想定しています。

  • 経営、新規事業、研究開発部門におけるアート思考導入の事前検討

  • 人事、教育、組織開発部門における研修設計と効果評価

  • AI導入後の仕事、問い、評価指標の再設計

  • アーティストと企業・研究機関の協働設計

  • デザイン思考とアート思考の役割整理

  • 芸術ベースの研修、鑑賞、制作体験の成果設定

  • 大学、ビジネススクール、研究機関での教育・研究

  • アート思考に関する記事、講演、調査、研究企画の基礎資料

本資料は、アート思考の導入を無条件に推奨するものではありません。

法令、安全、品質、契約、標準など、基準が明確な仕事では、既存の基準に基づいて正確に判断することが優先されます。

アート思考は、現在の目的、問題設定、因果説明、評価指標、成功基準では、現実を十分に説明し、次の行動を適切に導けなくなったときに検討するものです。

代表コメント:リクエスト株式会社 代表取締役 甲畑 智康

 今回のレビューで確認したかったのは、私がこれまで感じてきた違和感が正しいことを証明することではありません。

 

アート思考という言葉のもとで、実際に何が語られ、何が実践され、どの範囲まで研究され、何がまだ確かめられていないのかを、一度、自分たちの定義の外から確認することでした。

 

私は2003年に東京藝術大学美術学部を卒業し、その後、企業の人材育成・組織開発に20年以上携わってきました。制作経験と企業実務の両方を持つことは、今回の問題意識の背景にはなっています。

 

しかし、その経歴自体が、アート思考の定義や効果の正しさを証明するものではありません。

 必要なのは、誰が語ったかではなく、芸術実践の何を根拠に、どの仕事へ、どの条件で翻訳し、その結果、何が実際に変わったのかを確かめることです。

 

今回、先行研究との共通点、私たちが企業判断へ接続するために再構成した部分、まだ検証できていない部分を、できる限り分けて公開しました。

 

アート思考を、一部の人の感性や権威、一度の印象的な体験で終わらせず、現実の見方、問い、価値仮説、判断、行動、結果、組織学習の変化として検証できるものにしていきたいと考えています。

関連リリース

本レポートの調査上の限界 

本レポートは、2026年9月3日までに確認できた主要な公開資料を対象とした探索的レビューであり、網羅的な系統的レビューやメタ分析ではありません。 

また、次の限界があります。

  • 非公開の企業実践や内部データは含まれない

  • Art Thinkingという名称を使わず、同様の実践を行う研究が存在する可能性がある

  • 大学や実践機関による実施公表は、独立した効果検証とは異なる

  • 肯定的な事例が公表されやすい出版バイアスがあり得る 

  • 「アート」「芸術実践」「アーティスト」の範囲は研究ごとに異なる

  • 国内外の比較は文化的本質の違いではなく、確認した公開文献上の強調点を示している

本レポートは、アート思考の効果を確定するものではなく、現時点の概念、実践、証拠、限界、未解決点を整理するものです。

組織行動科学®について 

組織行動科学®は、組織で働く人の思考と行動が「なぜ起こり、なぜ続くのか」を、事業環境、歴史、経験から明らかにし、より善く再現するための研究・実践体系です。

リクエスト株式会社は、980社・33.8万人の働く人のデータを基盤に、企業で働く成人の研究と教育開発を行っています。

リクエスト株式会社について 

リクエスト株式会社は、組織行動科学®を基盤に、企業で働く人の行動、判断、経験形成、組織学習に関する研究と実践支援を行っています。

代表取締役の甲畑智康は、2003年に東京藝術大学美術学部を卒業後、企業の人材育成・組織開発に20年以上携わってきました。芸術における創造の過程と、企業における判断形成の双方を背景に、AI時代の「判断デザイン」「判断経験設計」「判断構造設計Pro」の体系化を進めています。

会社名:リクエスト株式会社
代表者:代表取締役 甲畑 智康

所在地:〒160-0022 東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
公式サイトhttps://requestgroup.jp

会社概要https://requestgroup.jp/corporateprofile

お問い合わせhttps://requestgroup.jp/request

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会社概要

URL
https://requestgroup.jp
業種
教育・学習支援業
本社所在地
東京都新宿区新宿3丁目4番8号 京王フレンテ新宿3丁目4F
電話番号
090-4183-2525
代表者名
甲畑智康
上場
未上場
資本金
-
設立
2020年10月