サロンシステムA'staff（エースタッフ）が30年間お客様に使われ続ける理由

サロンシステム

2021年5月20日 00時00分株式会社アライド・システム

美容室のための「サロンシステム」の開発と販売。私はそのたった１つの仕事にすべてを注ぎ、気づけば起業から30年が経っていました。

アライド・システムの提供するサロンシステムとは、美容室（サロン）の予約からお会計（レジ）、顧客登録、売上集計、顧客へのDM送付といった機能のほか、在庫管理や来店予測分析、スタッフの勤怠管理や歩合計算まで、サロン内で発生する様々な情報を管理するシステムのこと。

東京の三鷹（当時は吉祥寺）で小さなシステム会社を起業した30年前から比べると社員はだいぶ増えましたが、決してベンチャーとかITとか言われるような会社ではありませんでした。

入社してくる若手（社員）から見れば、特定の業種に絞ったソフトウェアを作っている会社、という程度にしか思っていないかもしれません。そんな当時を思い出しながら、創立30周年を迎えた今、改めてなぜこの事業を30年間続けているのかを社員に伝えるべくお話しようと思います。

今から30年以上前も、美容室向けのシステムは何社か販売していました。もちろん今のようにクラウドサービスのようなシステムはありませんし、Windowsパソコンなどもありませんでした。今の20代30代世代には死語だと思いますが、MS-DOSというOSで動くMS-DOSパソコンが主流でした。

これも今では考えられないですが、そのMS-DOSパソコンも各メーカー独自にカスタマイズしていて、我々のようなソフトウエア会社はメーカー毎に開発をしなければなりませんでした。私の前職がIBMの販売会社（特約店）でしたので、そのルートも使いIBMのパソコン（5530）に開発したソフトをインストールして販売を開始しました。

ただ、売上や顧客の情報管理方法は、今とは全く違うやり方で、いわゆる “後打ち“ でした。閉店後にバックルームに置かれたパソコンに手作業で顧客情報を打ちこみ、売上を登録。時間が無いのでつい入力を怠ってしまったり、忘れてしまったりと、情報管理以前の問題もかなりありました。

“パソコン、データ無ければただの箱” と言われた時代でしたが、“パソコン、データ無ければ高い箱” と揶揄されてもいました。事実、その当時の販売していたパソコンの価格が80万円前後でしたので、正に “ただの高い箱” になってしまったサロンもありました。

その高い箱にしないため、売上データを確実に入力してもらうにはどうしたらいいのか……。それは顧客の会計時に直接売上データを入力してもらうことでした。今では当たり前のことですが、それが現行のPOS型サロンシステムの原形になったのです。

顧客の会計時にデータ入力できたことで、劇的にデータ入力率が上がりました。しかし、まだまだ会計機の域を脱することはできていませんでした。

　　　　　当時のIBM5530

貢献度を見える化

サロンのスタッフは美容師のほか、まだ美容師として正式にカットができない ”アシスタント” と呼ばれる社員がいます。その社員は顧客を担当できないため、目に見える形で評価されにくかった時代でした。更に、正式にカットができる（いわゆるカットデビュー）までの道のりは長く、営業時間外での練習や、さらにその練習のためにカットモデルも自ら探すなど、心が折れそう、という声が聞こえてきそうでした。

そんな現場の美容師さんの役に立ちたいと、私はずっと考えていました。

現場で入力したデータをもっと活用できないか。これまで見えなかったデータを数値化できないか……。という新たな目標も見えてきました。その目標から実現した機能が、顧客DM発行やアシスタントポイント機能、売上明細登録機能でした。

このように “現場でのお困りごとを解決する“ こんな便利な機能があったら……。という視点で、ここからさまざまな機能が実現していきました。

社長になるとは思っていなかった

とはいえ、起業のきっかけは夢とか信念とか、そんな立派な理由ではありませんでした。当時一緒に仕事をしていた経営コンサルティング会社の社長に「会社を辞めようと思っています」と相談を持ちかけました。

実はそのコンサルタントの社長と一緒に働きたいという思わくがあったのですが、「応援するから会社を作りなさい」「あなたは一緒にやるより、（私と）対等にやったほうがいい。起業しなさい」と背中を押されてしまったのです。その当時、私の２人の息子は３歳と１歳でした。

1991年3月6日に株式会社アライド・システムを設立しました。吉祥寺にある小さなアパートからのスタートでした。事業内容は前職で担当していたサロンシステムの開発と販売。幸いにも担当していた美容チェーン企業と引き続き取引ができ、順調に思えるスタートとなりました。

自社開発に振り切ったのはDOSからWindowsへの移行タイミングだった

その3年後には専務の山本も加わって、さあ、頑張ろうと思っていたのですが、実は当時のアライド・システムの開発は外部に委託していました。ユーザーからの細かな要望も多くなり、委託先とのレスポンスも上手くいかなくなってきていました。

その翌年、ユーザーである美容室チェーンにシステムのWindows版への移行提案が通り、そのタイミングで自社開発をしてみようと決意しました。やっとここから、当社の主力製品が生まれようとしていました。

初めての自社開発です。本当にうまくいくのか、スケジュール通りにいくのか。ここは本当に私達には大きな決断と、プレッシャーでした。

そして1996年6月、初の自社開発システムがリリースされました。発注者であるユーザーの製品ですが、我々が作ったと初めて言える。本当に嬉しかったです。ちゃんと動くのか、そして使っていただけるのかという不安も、納品してユーザーからのフィードバックを頂くなかで安心と自信に変わりました。開発者の山本も、不具合でさえもそれを修正してより良いものを作ろうというチャレンジ精神に燃えていました。

1994年当時の須藤（右）と山本

パッケージ化して販売する提案にNOを出される

私達は、このシステムを全国の美容師さんに使ってもらおう、と考えました。きっと喜んでもらえる、という自信がありました。

美容師さんの仕事は、顧客の集客から予約管理、（歩合制が多いため）売上集計や店舗独自の評価制度での計算や目標進捗管理も日常のことです。そのほか、顧客へのDMハガキの作成や店舗の清掃、そして営業後の技術向上のための練習など、作業が多い。人を美しくする仕事以外にこんなに大変なのか、と私もこの仕事を始めてから知りました。

このシステムがあれば、予約管理も歩合集計もやってくれる。システムをパッケージ化して他の美容室にも展開できればと考え、その美容室チェーンにパッケージ化の提案を行いました。しかし、一緒にパッケージ化を推進してくれた美容室チェーン担当者からの返事は、想定外なものでした。

「我々は外販はしない。ノウハウは外に出さない」

経営者サイドの結論でした。断られた時のショックは大きく、会社の先行きが不安になりました。

「A'staff（エースタッフ）の開発」

もう一度、最初から。

その美容室チェーンと一緒に販売していく夢は破れましたが、決意し、自社開発を続け、営業を始めました。しかし、多くの美容室にプレゼンをしていく中、我々のシステムの、というよりも美容室への我々の考え方や足りない機能など、不十分さが分かってきました。

例えば、美容室は歩合制が多かったのですが、その計算のもとになる集計項目や考え方は、100店舗あれば100通りあるというくらい、訪問する先々で違った考え方を要求されました。

「基本的に考え方が違うんだよ」

「こんな機能もないのか」

私は落ち込みました。今までの “これが美容室” という考え方が如何に偏った考え方だったかがわかりました。それでも1件1件営業を行い、社内では機能開発に励みました。

そんなある日、当時原宿に本社のあった有名サロンオーナーから直々に連絡がきたのです。他社システムからの入替を検討中との連絡です。当社から送った一通のダイレクトメール。たまたまそのダイレクトメールが、その社長の目にとまったのです。

このチャンスは逃さない！という思いとは裏腹に、当時100店舗超のチェーン店をも抱えるその企業に果たして認められるのだろうか、という不安な気持ちも正直ありました。

結果は当社パッケージの採用を正に英断してくださり、直営12店舗への導入が決まったのです。そこから、そこ（有名サロン）に導入しているならば……ということで製品としての信用を得られたことは非常に大きかったと思います。その後に営業に行く先々で、提案がどんどん通るようになりました。

1人で会社を設立し、2人のときに自社システムを開発し始め、この直営12店舗への導入が決まった時も社員はたったの4名でした。今考えるとよくやったなと思いますが、全員総出でシステムの設置を行いました。出荷してPCを設置して、システムの操作指導を行い、納品初日は店舗で ”立ち合い” です。立ち合いとは、システムの横で一日中立ちっぱなしで予約や会計の操作が入る度に、サロンのスタッフさんをサポートします。そこで学んだサロンワークの光景は、その後の開発にも大変参考になりました。どうしたらサロンのスタッフさんが使いやすいシステムになるかを考えました。

その時にリリースされたサロンシステムが『A'staff(エースタッフ)』です。

それからずっと、アライド・システムのメイン製品です。今ではA'staffを導入している企業は美容業界に限らず、ネイル、エステ、リラクゼーション、ペットサロンなど様々な業界で利用されています。現在アライド・システムは社員は増えましたが、その当時、少数精鋭で頑張った記憶というものを、現在の社員にも伝えたいと思っています。

使われ続ける理由

ユーザーの中には、創業時からずっとシステムを使ってくれている方もいらっしゃいます。本当に長い年月です。『A'staff』は進化し続けるサロンシステムと名打ってバージョンアップをしてきましたが、機能ももちろん重要なのですがやはり強みは”サービス”だと思っています。

今はクラウドが主流となり、サービスの提供方法も大きく変わってきましたが、基本的な考え方は変わっていません。ヘルプデスク対応、パソコンも一緒に提供しているユーザーには修理窓口サービスも引き受けます。顧客再来店率が伸びずに悩んでいるユーザーには、『A'staff』を使った機能活用提案や『勉強会』をしています。

当然のサービスでは、と思われるかもしれませんが、これらを外注せずに私達だけで多くのユーザーに提供するのは正直大変です。しかし大事なことは、私達がユーザーのサロンワークを理解し、寄り添う気持ちを忘れないこと。この業界を好きでいること。その上での新技術であり、新機能であると思います。

その気持ちを持ちつづけながら社員と一緒に頑張っていきます。　