地域を「食」で支えたい――薬局で奮闘する管理栄養士にインタビューしてみた！

管理栄養士

#管理栄養士 #薬局 #プロジェクトの裏側

2022年9月1日 15時57分会喜

建て替えプロジェクトが進行中のひのき薬局。前回は、社長×プロジェクトリーダーの対談をお送りしました。

「地域の拠点となる薬局へ！」ひのき薬局・建て替えプロジェクトに挑むリーダーへ社長がインタビューしてみた @会津若松

PR TIMES STORY

今回は、もう１つの目玉の「認定栄養ケア・ステーション」を担当する管理栄養士・木崎さんへ、新米広報の齋藤がインタビューをしてみました！　薬局で働く管理栄養士のイメージを定着させるべく奮闘している想いを語ってもらいます！

◆認定栄養ケア・ステーションとしての取り組み

――　昨年、福島県内の薬局として初めて（日本調剤郡山薬局と同時）認定栄養ケア・ステーションの認定を取得しましたね。まずは認定栄養ケア・ステーションについて教えてください。

認定栄養ケア・ステーションとは、地域の方が栄養ケアの支援・指導を受けることのできる地域の栄養ケアの拠点として、日本栄養士会から認定されている施設のことです。

食・栄養の専門職である管理栄養士・栄養士が所属する、地域密着型の拠点として、地域住民の方はもちろん、医療機関、自治体などを対象に栄養相談、セミナー講師、料理教室、レシピ・献立作成などニーズに応じたサービスを提供します。

――　これから認定栄養ケア・ステーションの活動をスタートされるとのことですが、どのような取り組みをしていきたいですか？

幅広い年代を巻き込んだ料理教室や講話などの新しい活動を通して、この地域に住んでいる人たちの食を豊かにしていきたいです。地域の人たちの食事の悩みや不安に寄り添うことができるような栄養ケアステーションを目指しています。

また、ひのき薬局がある地域は、高齢化が進んでいます。地域を支えていくためには、特に高齢者の方へのアプローチが大切だと考えています。

高齢のご夫婦二人暮らしや独居という方は多く、買い物や調理が困難という理由から、低栄養などの健康被害が懸念されるケースもあります。

ひのき薬局を利用されていない方でも、実は栄養支援を必要としている方はたくさんいるのではないかと思います。介護サービスを利用されている方は多くいらっしゃいますので、ご自宅を訪問されているケアマネージャーさんやヘルパーさんと密に情報交換ができるネットワークを作り、必要な支援を提供できる体制を作っていきたいと考えています。

また、当グループでは、配食事業として高齢者向け宅配弁当の配達も行っています。薬局が運営している配食事業なので、ただお弁当を届けて終わりではありません。体調が悪そうな方がいれば声をかけ、後で電話をして様子を確認するなど、スタッフ一人ひとりが利用者さんの健康を気にかけて対応をしています。こちらもケアマネ―ジャーさんや自治体と情報共有をしながら行っています。

地域の方と直接「食」について関わることができる部分ですので、管理栄養士が介入し、食事に関する悩みの聞き取りなどを行っていきたいです。

最近は食に関する関心を高めてもらおうと、お弁当に入っている食材について声掛けを始めました。「食べてみるね！」と言ってくださる方が増えてきて、とても嬉しく感じています。地域に住んでいる一人一人にアプローチをすることで、食の面から地域を盛り上げていきたいです。

食事の悩みを抱えていても、自分でその意思表示をする方は少ないので、配食や在宅訪問の機会を通して、地域との関わりを強化し、皆さんの食を支えていきたいと考えています。

◆薬局で働く管理栄養士の認知はまだまだこれから？

――　ところで、管理栄養士って病院のイメージがありますが、薬局の管理栄養士の知名度ってどうなんでしょう？

低いです…！（涙）

最近は管理栄養士へ向けた会社説明に参加していますが「薬局の管理栄養士は、どんなことをしているんですか？」と、ほぼ100％聞かれます。大学で薬局の管理栄養士については触れないので、そもそも就職先として検討する人も少ないと思います。就職活動で様々な企業を見ていく中で「薬局で働く管理栄養士の存在を初めて知った」という方が多い印象ですね…

管理栄養士は、外部に向けて活動されている方は少ないので、そもそも管理栄養士自体があまり知られていないのかもしれません。

認定栄養ケア・ステーションの活動も、まずは地域の方、他職種の方へ「薬局に管理栄養士がいる」ということを知ってもらうことからスタートになりそうです。そのためにも、薬局外への発信力を高めていきたいですね。

――　実際、薬局の中ではどのような業務をしているんですか？

薬局に来られた患者さんの栄養指導や配布用のオリジナルレシピ、食に関する資料作成などを行っています。

他に、月に1度は隣の病院と個別に契約を結んで非常勤管理栄養士として栄養指導を行っています。Dr.の指示のもと、糖尿病や高血圧、脂質異常症の方をメインに指導を行い、外来栄養食事指導を算定しています。

実は薬局で管理栄養士が栄養指導を行っても、現在のところ保険算定することができないんです。そこで、今年の4月から薬局独自で、有料の栄養相談も実施しています。

（1回単発コース500円、3回継続コース1,000円）

食事への関心や、健康への危機感を感じている方など、現在までに数名の方に利用していただいています。

調剤事務としての仕事と兼務しており、管理栄養士の仕事と両立しながら業務を行っています。業務の比率としては、管理栄養士：調剤事務が7：3くらいです。

――　薬局にいる管理栄養士の「強み」だと思えるところはありますか？

薬局に管理栄養士がいることのメリットは「いつでも会いに行ける、相談できる」ことだと思います。病院の場合、医師の指示がなければ栄養指導を受けることができませんが、薬局では患者さんの希望があればいつでも相談することができます。

また、薬局という特徴を活かして薬剤師との連携を密にとり、食事からのアプローチにも力を入れています。お薬をお渡しするときに、薬剤師が検査値について聞き取りすることがよくあります。また、隣の病院では健康診断も実施しており、まだお薬は飲んでいないけど検査値があまり良くなかったという方もいらっしゃいます。まずは薬剤師から食事の見直しについてお話しして、必要であれば管理栄養士に引き継いで栄養相談を実施しています。例えば、ご飯の量を減らすというアドバイスでも「お茶碗１杯で〇〇㎉なので、あとこのくらい減らしてみましょう」といったように、より具体的にお話しすることが出来ます。

薬局なので薬での治療というイメージになりやすいですが、管理栄養士がいるということを活かして、食事で検査値の悪化を予防、改善をしていけるようにサポートしていければと思います。

◆食事の悩みを共有して、つながれる場をつくりたい

――　ひのき薬局の建て替えも進んでいますね。新しいひのき薬局でチャレンジしたいことはありますか？

大きくは２つあります。

まずは地域の皆さんが集まる機会として、ひのき薬局で料理教室を開催したいです。新しいひのき薬局では、給湯室兼用のオープンキッチンの設置が予定されており、今まではできなかった料理教室もできるのかなと期待しています。大人に限らず、子ども連れの親子などを対象にした料理教室や食育体験を行うことで、様々な世代で食への関心を高めてもらえればいいなと思います。自宅でもできる調理の工夫を伝えられる場にしていきたいです。

内観イメージ：コンセプト提案・薬局設計　アルキテク設計室

もうひとつは、在宅への訪問です。要介護者や在宅での療養をする方が増えている状況において、ひのき薬局でも在宅医療に力を入れています。薬剤師が訪問している方の中には、栄養指導が必要な方もいらっしゃいます。薬局内で「食事がとれていないようだ」「痩せてきている」などの情報共有を増やし、介入につなげていきたいです。

要介護者の場合でも、食事は毎日のことなので介護をされている方の負担は大きいです。簡単にできる調理の工夫や食べやすい食形態など、より在宅での生活に寄り添った提案をすることで、高齢化が進む地域にある薬局だからこそできる、在宅での支援にチャレンジしていきたいと考えています。

――　前回のインタビューで、岡本さんが「新・ひのき薬局のコンセプトはつながりの場」と話していましたね。木崎さんは新しいひのき薬局で、管理栄養士としてどのような「つながり」を作っていきたいですか？

料理教室や講話などの栄養ケアステーションの活動を通して「地域の皆さん同士のつながり」を作っていく場にしたいです。

食事について同じ悩みを抱えていても、なかなかその人たちで情報交換や交流をするという機会は少ないのが現状です。介護食のこと、子どもの好き嫌いのことなど、同じ悩みを持つ人同士でのつながりができることで、一人で抱え込んだりせずに気軽に相談し合える地域にしていきたいと思います。

人との交流は、身体と心の健康を保つうえで欠かせないものです。コロナ禍で外出の機会が減り、人との交流も減った方も多いと思います。そのような状況でも「食」を通して皆さんがつながる、交流できるように薬局として、管理栄養士として奮闘していきたいと思います。

――　最後に、目指す管理栄養士像をおしえてください。

食事の悩みが出てきた時に、真っ先に連想される人でありたいです。

食事は毎日のことで、健康の基盤です。それなのに、相談窓口がどこにあるか分からないというのが現状ではないでしょうか。薬局の管理栄養士がその役割を担うことで、皆さんが生涯にわたって安心した生活を送れるよう、食の面から地域を支えていきたいと思います。

つい最近、他県に引っ越してしまった患者さんから、食事について相談の電話がありました。その方は薬局で栄養指導をしていた方だったのですが、遠く離れてからも自分を思い出してくれたこと、頼ってもらえたことがとても嬉しかったです。

気軽に相談してもらうためにも、患者さんの声、気持ちに寄り添うことは常に意識しています。栄養相談と聞くと「食べてはダメ」「我慢しないといけない」など、マイナスなイメージを持たれる方が多いと思います。食事は毎日のことなので、我慢ばかりでは続きません。毎日の食事を楽しみながら、無理なく改善できるような方法をアドバイスすることを、これからも心がけていきたいです。