神奈川県を中心に店舗を展開するサカエヤ仏壇店（株式会社サン・ライフホールディング）では、仏壇仏具、さまざまな小物類を販売しています。

2023年4月より、大倉陶園監修の新オリジナルデザイナーズ仏壇「MiKOTO（みこと）」の全国販売を開始しました。木の温かみを感じるやわらかい色合いやたたずまいから、生活空間へそっと馴染み、家族はいつでも故人に語りかけることができます。また、コンパクトなだけでなく、収納力に優れた家具としての機能を備えており、継承しても負担が残りません。

コンセプトからデザインまで、数多くのこだわりが詰め込まれた「MiKOTO」。本ストーリーでは、そんな本商品を実現するまでにあった挑戦の軌跡について担当者の土屋よりお伝えします。

仏壇を持たない家庭が増加するなか「祈る=故人と対話する」場を作りたい

昭和8年に平塚の地に創業したサカエヤ仏壇店は、地域の皆様のおかげで相模原店、海老名駅すぐ近くのメモリアルサロンサカエヤ、八王子北口仏壇ショールームを含む4店舗を展開しています。上場企業であるサン・ライフホールディングのグループ会社として、ご供養のお悩みを抱えた皆様に心からの安心と満足をお届けできるよう励んできました。

商品開発のきっかけとなったのは、「仏壇」を持たなくなった現代の生活からの危惧感だったと土屋は振り返ります。私たちは多くのお客様の供養をサポートしてくる中で、近年は無宗教葬の増加に代表されるような供養の形の変化が見られました。例えば、2000年初頭には5％程であった無宗教葬が、2021年には35％まで増加するなど、宗教への進行にも多様性が見えてきています。

さらに、仏壇は「小さな本堂」として扱うのではなく、「故人様と対話をする場所」に変化してきました。仏壇がない方でも「手を合わせる対象」として位牌を作る方が半数以上といったアンケート結果が得られるなど、仏壇を戒名を記すものではなく、手を合わせる対象として用意しているのではないかと考えるようになります。

そのような傾向と相まって、仏壇を所有している世帯が減少し始めているという危機感が社内にありました。2020年には単独世帯が2,015万世帯と全体の38％まで増加しており、別世帯が一緒に住まう家族が減少し、9割以上が核家族世帯となっています。

そのような状況と相まって、同居世帯の減少で「子供に迷惑をかけたくない」、集合住宅居住で「仏壇を置くスペースがない」といった理由で、実家に仏壇があるということで仏壇を持たない世帯が増加。現在では、6割以上の世帯が自宅に仏壇がない状況です。

一方で、「祈る」という供養の行動は廃れてはおらず「手を合わせてあげたい」「どうしたらいいか分からない」という声をお客様から多く頂いていました。調査を行う中で、仏壇がない事で故人様への供養を十分に行えず、後ろめたさを感じる人は半数以上という結果も得られたのです。

また仏壇は本来小さなお堂の役目がありますが、宗教・宗派にこだわらない無宗教葬が増加する中で「故人と対話する場所」としてとらえられるようになりつつあります。サカエヤ仏壇店でも、ご家庭のリビングなどの生活空間に馴染むコンパクトな仏壇や、カウンターキッチンにも置けるサイズ感の小さな祈りのステージなどを取り揃えています。

（「仏壇購入実態調査2017」(2017, いい仏壇)より）

「故人を祀る特別な場所でありながら、家族と故人が寄り添って過ごせる新しい祈りの場を提供したい」。そんな思いから、新しい仏壇を大倉陶園監修のもと、オリジナルの仏壇を開発するに至りました。

新しい祈りの場とは？　オリジナル仏壇のコンセプト

新しい仏壇の開発にあたっては、以下の2点を心掛けました。

まず、仏壇が日常の生活空間に馴染み、故人様へ供える「食」を通じて故人様らしい供養を行なっていただけること。亡くなった方は「香り」を召し上がると言われます。しかし、線香やお花での供養は現代の生活の中では特別感があり、負担に感じる人も少なくありません。そこで、私たちにとって最も身近な香りである「食事」を通じて供養ができる仏壇をつくることにしました。さらに、日常の一部でありながら上質な供養をしてほしい、という願いから、伝統ある食器メーカーの大倉陶園様にもご協力いただくことになりました。

次に、残された家族に迷惑をかけないよう、コンパクトかつ、若い方が引き継いでもよいと思える「仏壇らしくない」デザインを目指しました。仏壇を、残された家族に「迷惑をかける物」ではなく「継承したい物」にすること。生前から用意しても負担にならない「家具」の機能を備えた多様性を備えたものにしたいと思いました。

そこで、「設営場所を選ばない自由に祀れる祈りの空間」をテーマに開発を進めました。

コンセプトを、「故人と共に生活する」従来の仏壇にはない食事や対話が出来る仏壇、としました。従来の仏壇以上に食事を出す、広々と花を飾るなどといった故人へのお供えを大切にした祈り壇です。

デザインは、部屋に馴染むナチュラル色の木材を使い、高さ、幅共にリビング、寝室どの場所に置いても飾れる仏壇をイメージしました。お参り方法としては、椅子に座った状態でのお参りをイメージし、高さはH130㎝を想定。（通常のモダン仏壇はＨ120㎝前後あります）。

奥行きのあるテーブルデザインを採用し、狭い空間でも様々なレイアウトが可能です（食器を入れる、本を置く、お酒を飾る、写真で祀る等）。位牌を飾る場合は祈り台（別売り）を用意しており生活空間が変わった際も持ち出して利用が可能です。

開発にあたって苦労したこと

上記のコンセプトに沿って開発を進めたところ、さまざまな壁にもぶつかります。故人が使っていた食器、好きだった食べものや飲み物を供えて沢山の供養をして欲しい反面、祈りの空間は守りたい、という相反する思いがありました。

そのような状況を一手に解消するべく、供養スペースの扉を撤去する決断をします。監修者である大倉陶園様のご意見もいただきながら、最終的に食事を通じた供養のしやすい奥行きのあるテーブルデザインを採用することにしました。

その他には、現代の生活空間に馴染みづらい「仏壇」を現代の生活に合うデザイン性とサイズ感に落とし込むかという課題もありました。「家具」に着想を得て、多くの家具店を訪れ洋室に合うデザインや今の生活の邪魔にならない高さなど参考にしています。さらに、飾る場所としてフラップ扉を採用することで、よりカジュアルで普段使いのしやすいデザインに仕上がっています。

試行錯誤の末、およそ8ヶ月かけてようやく今のかたちにたどり着きました。

（開発初期の「MiKOTO(みこと)」）

（開発初期の「MiKOTO(みこと)」）

故人がいる特別な場所でありながら、声をかけたくなる親しみやすさ

完成した新しい仏壇は「故人に生前と変わらず、ふたこと、みこと、語りかけてほしい」という願いを込め、「MiKOTO（みこと）」と名付けました。名前の通り、故人がいる特別な場所でありながらも、思わず声をかけたくなるような親しみやすさを感じる仏壇です。その特徴をご紹介します。

◇自由な祀り方が叶う供養スペース

奥行き・高さともにゆとりがあるテーブルデザインを採用しており、食事を出す、高さのあるグラスやボトルを置くなどといったお供えも行えます。

◇移動しやすいシンプルな祈り壇

位牌を飾るための祈り壇は別途ご用意しており、生活空間が変わっても持ち出して利用ができるなど、柔軟な取扱いが可能です。

◇お参りしやすい高さ

「お子様からご年配の方まで無理なく手を合わせていただけるように」との思いを込めて、どんな方も楽にお参りができる130cmに設計しました。

また、「MiKOTO（みこと）」は収納力に優れた家具としての機能を備えているため、置くスペースに困らず、継承しても負担が残りません。

本体下部の収納スペースは骨壺もそのまま納めることができるほどの十分な余裕があり、「自宅墓」としての利用価値も提供しています。正面に設置したフラップ扉には、故人の思い出の品に限らず、家族の愛用品を置くなど供養にとらわれない使い方が可能ですので、継承の点でも気兼ねする必要がありません。

サカエヤ仏壇店では「MiKOTO（みこと）」を通じて新しい祈りの場を提供できればと考えています。故人とともに生活し、毎日の食事を通じて供養できる点は今までの仏壇にはない特徴です。

「MiKOTO（みこと）」が次の世代に継承されていき、家族だんらんの空間で末永く大切な方をご供養できる場となれば、それにまさる喜びはありません。