株式会社アダルは、コロナ禍で加速する新時代のオフィスの在り方「共創の場」へ向けて、コワーキング・カジュアルミーティング・リチャージ等、ワーカーの活動内容に合わせ適切な環境を提供する「ABW(Activity Based Working）」という考え方に基づき5月12日（水）に『A.T.I.C（アティック）８』コレクション全26シリーズを発売致しました。

今回は、メインモデル"TENIS（テニス）"について開発担当者の企画開発室 井川貴裕にインタビューを行い、開発秘話に迫ります。

Q1.アダルは飲食やオフィス、ホテル、商業施設など、これまで幅広い業種に向けた家具を販売してきましたが、今回はなぜオフィスに絞った商品をリリースしたのでしょうか？

コロナ禍によってリモートワークが普及し、オフィスで働くという意味を再考する社会ニーズが広まったことが大きな理由です。アダルが飲食店やホテルで培った、人が「心地良い」と感じる空間創りにつながる家具製作の知見を、オフィス空間づくりにつなげたいとい考えました。

そこで、近年のインテリアニーズの変化から、価格や機能といった「機能的価値」よりも、木の質感、ファブリックの手触り、高揚感が高まる色彩、デザインなどの「情緒的価値」に重きを置くことによって、アダル独自のアプローチを推進していこうとチームで方針を決定しました。

そんな中で、レクサス、コカ・コーラ、良品計画など、グローバルカンパニーをクライアントとして、インテリアやプロダクトデザインを展開しているスペインのデザインスタジオ「STONE DESIGNS」とのコラボレーションによる、"TENIS"の開発はその象徴的な家具であり、技術的な制約を超越して人々にエモーショナルな感動を生み出すようなプロダクト開発につながったと手応えを感じています。

Q2.メインモデル"TENIS"の開発に至った経緯を教えて下さい。

今回デザインを依頼したSTONE DESINGSとは以前弊社の展示会に来て頂いたことがきっかけで親交があり、一緒に何か仕事したいですね、ってお話していたんです。

そんな中 A.T.I.C vol.8コレクションの開発がスタートし、新たな視点で日本市場に馴染むデザインをして頂けないか依頼したところ快諾頂きました。そこからテニスボールから着想を得た、流れるように美しいデザインが特徴のソファ、その名も"TENIS"の開発がスタートしました。

Q3.流れるように美しいデザインが特徴の商品とのことですが、苦労した点があれば教えて下さい。

一見すると分かりづらいかもしれませんが、"TENIS"はソファ本体の木工部分と3次元に曲げたフレームのスチールパイプの異素材が絡みあう非常に高い技術が必要な商品です。

木工を得意とする自社工場だけでは製造が完結できない為、スチールパイプのフレーム部分は協力工場で製作し、それぞれの工場で製作したソファとフレーム部分を最後に嵌め合わせることとなりました。

しかし、3次元の構造体は製作が非常に難しく、スチールパイプと木部双方の寸法が2、3mm狂うと画像のようにソファ本体とスチールパイプの間に不自然な隙間ができてしまいます。その後差が後の張地を張る工程にも響き、商品が美しく仕上がりません。

開発は非常に難航し、寸法通りに製作されているはずのスチールパイプと木部を合わせてみると綺麗に納まりませんでした。部分的に調整すると他の部分が干渉してしまうこともありました。

Q4.どのようにその問題を解決したのでしょうか？

前提として、接合部に「パイピング」と呼ばれる同じチューブ状の隙間埋め素材を使用すれば比較的容易に課題解決できます。しかし、それではデザイナーが思い描く軽やかで流線的なデザインが損なわれるのではと考え、「パイピング」は使用しませんでした。

スチールフレームは何箇所か溶接する部分があるのですが、その溶接によりスチールが若干曲がってしまうのは構造上どうしようもないことなので、木部で調整を図りました。

図面上では表現できないような誤差、例えば座った際の荷重によるフレームのゆがみやブレなども考慮し、自社のベテラン職人2名と相談しながらすき間埋め材を入れたり、手で少しずつ木部を削ったりしてファーストモデルを作り、それを基に量産できるような体制を構築しました。

このファーストモデルがやっと出来上がった時、それに立ち合おうと職人、企画開発室、品質管理室、色々な部署から自然と人が集まってきたのが、我が子が生まれるシーンに皆で立ち合っているようで非常に印象的でした。

以前勤めていた別の家具会社で海外工場を立ち上げた際、工場長としてマネジメントに携わったことがあるのですが、職人の気持ちや気になるポイント、モチベート方法、パートナーとのコミュニケーションの方法など、その時の経験も役立ったと感じています。

Q5.最後に、商品開発における今後のビジョンを教えて下さい。

市場ニーズに合わせた商品開発はもちろんそうなのですが、今ある技術に満足しない商品開発も行っていきたいと思っています。これは日本の製造メーカーだと良くある話だと思うのですが、商品開発を行う上で社内から出るデザインだけではどうしても自分たちのできる範疇で留めてしまう傾向があります。

今回のSTONE DESINGSとのコラボレーションように、デザイナーの意図を汲むこと、良い商品を市場に届けたいという想いを一貫することで、通例行わないことも積極的にチャレンジしたことが結果的に会社の技術的な経験値向上に繋がったと思います。

新しい発想との出会いと家具メーカーとしてのレベルアップを改めて実感したので、今後も様々なコラボレーションを積極的に推進していきたいと思います。

A.T.I.C vol.8 プレスリリース

A.T.I.C vol.8 ブランドサイト

https://www.adal.co.jp/atic/

会社概要

会社名 ： 株式会社アダル

代表取締役社長： 武野 龍

所在地 ： 〒812-0863　福岡県福岡市博多区金の隈3-13-2

設立日 ： 1968年4月

事業内容 ： 業務用イス・テーブル・什器などの製造および販売、家具輸入販売、その他、インテリア資材販売及び設計・施工

資本金 ： 1億8,225万円

従業員数 ：273名（2021年2月時点）

URL ： https://www.adal.co.jp/