表参道のカフェで社長交代宣言。創業15周年を迎える葬送プロデュース企業「ハウスボートクラブ」の新たな挑戦

終活

2022年2月1日 06時00分ハウスボートクラブ

＜ハウスボートクラブについて＞

海洋散骨「ブルーオーシャンセレモニー」を主軸の事業とする株式会社ハウスボートクラブ。2007年に創業して以来、海洋散骨のトップランナーとして成長を続けている。2015年には東京都江東区に終活をテーマにしたコミュニティカフェ「BLUE OCEAN CAFE」をオープン。「終活をブームから文化にしたい」と、終活相談、終活セミナーや「入棺体験」のワークショップなどを通して、終活や死生観について明るくオープンに語れる集いの場を提供している。2022年2月1日には株式会社鎌倉新書のお別れ会プロデュース事業「Story（ストーリー）」を譲受。今後は、葬送プロデュース企業として新たな「お別れ会・偲ぶ会」の普及に努める。

ハウスボートクラブは、創業者である村田ますみが、亡き母の遺骨を海に撒いたことがきっかけで、2007年に創業した企業です。創業以来「ブルーオーシャンセレモニー」というブランドで、海への散骨を希望する方々のお手伝いに取り組んできました。創業15周年を迎えた2022年に、村田は社長交代を決意。語られていなかったその理由と、新規事業に向けての想いを代表取締役会長CEOの村田ますみと、代表取締役社長COOの赤羽真聡が綴ります。

ゼロから海洋散骨のマーケットづくりに奔走

村田：

当社は2007年に一艘のボートを購入するところからスタートしました。当時の日本に、海洋散骨という概念は、ほとんど浸透しておらず、本当にゼロからマーケットを作り上げる必要がありました。創業期の受注は、年間数件。それが2020年度は創業期の100倍以上に増えました。コロナ禍にも関わらず、昨年度は最高益になる見込みです。創業以来、大切にしてきたことは「海洋散骨」に対する考え方。当社が提供する「ブルーオーシャンセレモニー」は、単に海へ遺骨を撒くのではなく、グリーフケア（ご遺族の心のケア）を意識した、大切な葬送・供養のひとつであると考えています。どちらかというと、埋葬の代わりというよりは葬儀の一形態と捉えています。

創業15年を機に決断した社長交代

村田：

12期から13期に入った2019年のタイミングで、東証一部上場企業の株式会社鎌倉新書にグループ入りすることを決めました。かなり大きな決断だったのですが、これまで育ててきた海洋散骨の事業を本当の意味でパブリック化したいという想いがありました。従業員には、「みんな、小学生（12歳）から中学生（13歳）になるよ。学校には制服で登校するし、算数から数学に変わる。だからみんなも大人になるんだよ」と、校長先生のような挨拶をしましたね（笑）。

鎌倉新書にグループ入りした頃から、私は「脱散骨屋」を目指そう、と言い始めました。私は母を散骨したことがきっかけで散骨事業をおこなっていますが、世の中すべての人が散骨を選ぶべきだとは思っていません。私たちは、従来の伝統的価値観にとらわれない自由な葬送の選択肢を世の中に提供したいと思っています。鎌倉新書へのグループ入りから3年。中学生から高校生になるタイミングで、改めて、中学生と高校生の違いは何だろう？と考えたところ、「高校生になったら、もうお父さんお母さんの力は必要ないな」と思いました。

創業者であり社長の私を親とするならば、これからは会社や従業員たちの自立を見守りながら、より高い目標のために力を尽くそうと思ったのです。

そして、まずは、自立・自走する組織を目指すために、社長を交代しようと決意しました。

「彼に会社を託したい」。表参道のカフェで第2章が開幕

村田：

新社長には、2019年に鎌倉新書から当社へ出向してきて様々な困難を一緒に乗り越えてきた赤羽が適任だと思っていました。私はゼロから1を作り出すタイプで、赤羽は1を10にも100にもできるタイプ。私はエモーショナルですが、赤羽はロジカル。真逆なタイプの2人なので、うまく役割分担ができると考えたんです。

赤羽：

社長交代の話をもらったのは、ちょうど1年前の2021年2月です。正直驚きましたよ。

村田：

表参道のカフェで、私からいきなり切り出したんですよ（笑）。

赤羽：

そうでしたね。まあ、村田はいつもいきなりなんで（笑）。2週間後に、社長を引き受ける決意を固め、その後1年間をかけて社長交代の準備を進めてきました。引き受けようと思った理由は、未来ある従業員たちのさらなる成長を支えたいと思ったことですね。それは、将来的に会社の成長、私自身の成長にもつながります。また、自分が必要とされる場所で仕事をしたいというのは私のビジネススタイルですので、村田のお手伝いができるというのであれば、尽力したいと思いました。

村田：

鎌倉新書の清水祐孝会長からも「赤羽はいい男だよ。よろしくね」と言われたことがあるんです。鎌倉新書にグループ入りした当初は、買収されたとネガティブに捉えられることもありましたが、親会社がハウスボートクラブらしい経営を続けることができるようサポートしてくれていて、会社の中でも「いい男」を差し出してくれたので、とても有難いと思っています。

真逆なタイプの2人が挑戦する新たな葬送のカタチ

村田：

今、ハウスボートクラブは第2の創業期だと思っています。マーケットがない状態から散骨事業をスタートさせて、15年間にわたり普及活動に努めてきました。そして昨年、厚生労働省から散骨のガイドラインが出されました。これは、散骨がやっと国にも認められたといえる画期的な出来事で、私の中では、ひとつやり切ったという気持ちになったと同時に、次は何に向かって進めば良いかを考えるようになりました。現在私は、社会福祉士の国家試験取得に向けて勉強しています。散骨をおこなう中で、人が亡くなるもっともっと前から、その人々と関わっていきたいという想いが強くなりました。お客様が医療や介護のお世話になっているときから関わりながら、エンディングサービスに繋げていくという取り組みをしていきたいと思っています。そのためには、介護業界のことを理解したいと思い、まずは社会福祉士の資格を取ろうと思ったんです。アメリカに留学するから英語を勉強しようという感じに似ていますね（笑）。

赤羽：

私は新社長として、海洋散骨や新しい供養のカタチをどのように伝えていくかを考えていきたいです。お別れ会のプロデューサーや散骨コーディネーターという職業はまだまだ珍しいのが現状です。それらの人材がプロとしてもっと活躍できるように市場を創っていきたい。出向して2年で、当社は骨太で筋肉質な企業に成長したと思います。1を100にするために、ここから先は戦略が得意な私の出番かと思います。また、2022年1月に鎌倉新書から譲受した、お別れ会プロデュース事業「Story（ストーリー）」の促進にも注力していきます。

村田：

鎌倉新書のStory事業は、2015年12月にスタートしました。鎌倉新書の清水会長が「従来のお葬式とは違うものがこれから求められるのではないか」と始めた事業です。鎌倉新書とディスカッションを重ねる中で、私は清水会長の想いに共感し、Storyの事業に魅力を感じていました。グループ入りの理由は「散骨のパブリック化」と先ほど申し上げましたが、このStory事業の存在も大きかったです。

赤羽：

「Story」を通して、故人の人生の物語を振り返る時間を提供する。とても意義のある事業です。コロナ禍で従来のようにお葬式ができない状況が続き、葬儀の規模も縮小しています。最近では家族葬が一般的になりつつありますが、ご遺族だけでなく、故人とご縁のあった人の中には、お別れを言いたい人はきっといるはずです。お別れ会と聞くと、社葬や有名人が大規模で行うものというイメージがあるかもしれませんが、「お別れ会・偲ぶ会」の本質はそこではありません。故人とご縁のあった人々が、故人の映像やアルバムを見ながら語り合うものであり、一人ひとりに合った100％オリジナルなプランです。利用者様が「Story」を選ぶ理由として、「温かさや会の自由度で選んだ」と仰ってくれる方がほとんどです。「Story」が、お別れ会・偲ぶ会の新たな文化として、日本全国に広く浸透することが、私たちの目標であり、願いです。

近年、家族の形態が変わり、また日本は世界に先駆けて、人類が経験したことがない超高齢社会を迎えます。そんな日本で、大切な人をどのように看取るのか。当社は葬送のプロデュース企業として、新しいソリューションを生み出したいと考えています。