株式会社パラドックス（以下、パラドックス）は「企業独自の価値＝こころざし」を抽出し、それをもとにコーポレート・採用・カスタマー・インナーといった各種ブランディングを行っています。今回は、名古屋市で活動する株式会社スタッフロール様（以下、スタッフロール）のブランディングプロジェクトについてご紹介します。   

自分らしさを見つけ。自分の人生に出会う。

スタッフロールは、人生や仕事に悩みを抱える人に向けて、「在りたい自分」と出会うためのサービスを展開しています。事業のひとつとして、うつ病等の気分障がいの方に向けた社会復帰支援プログラムを実施。

名古屋駅の近くにある「Views（ビューズ）」という名古屋市指定の福祉事業所で、利用者が自分自身を見つめ直し、他の誰でもない自分だけの人生を歩むための場を提供しています。従業員は7名ほどの規模感でありながら、独自のブランディングプロジェクトを進める同社の高瀬代表に、理念に込めた想いやプロジェクトの背景をお聞きしました。

ブランディングプロジェクトのスタートは2017年。他の福祉事業所との差別化やスタッフ間のサービスクオリティをいかに平常化するか、という課題を解決するため、組織として目的を明確化し理念を策定することからスタートしました。

「理念を言語化するにあたって、従業員の間で何度もセッションを重ねました。その過程を経ることで、自分たちの仕事の意義を再確認できましたし、組織の一体感が増したと感じています」。高瀬代表は、理念策定のプロセスが重要と語ります。当時は3名の共同経営者で運営をしていたため、価値観を確認し、すり合わせていくことでブレない軸が明確になりました。従業員以外にも、パートナーであるクリニックの担当者様やViewsの利用者の皆様にもインタビューを実施。スタッフロールの特徴をお聞きすることで、独自性に気づくだけでなく、プロジェクトの輪を広げていくことができました。

言語化したミッションは「一人ひとりの在り方を、一緒にみつける」。ビジョンは「一人ひとりが自分の在り方をみつけ 自分の人生の主役になっている社会」というもの。

その他、顧客への提供価値を示すバリュー、従業員の行動指針を示すスピリットも策定。そこに込められた想いを高瀬代表は次のように語ります。

「うつの症状を持つ人は『〇〇すべき』『一般的には〇〇』といった、社会や他人、親の価値観に縛られ、自分自身の価値観を見失っていることがほとんど。『自分にとっての幸せは何か』を改めて考える場が必要です。しかし、福祉施設の多くは「職場への復帰」を促すという、仕事を中心にした考え方になっています。元の職場に戻ることが本当の幸せとは限りません。スタッフロールの最大の特徴は、在りたい自分を一緒になって見つけ、「心から望む人生への復帰を目指す」という姿勢でした」。

その後、策定された理念は手持ちのカードとして形になり、社員間でのコミュニケーション言語の統一や理念の浸透を促進しています。

加えて、Viewsの立ち位置をさらにわかりやすくし、差別化を促進するための事業コンセプトとメッセージも言語化。新たにセッションを実施し、サービスの特徴を明確にしていきました。

Viewsの大きな特徴は、プログラムの内容です。うつの症状を持つ人に対して、なるべく刺激を与えないという施設もある中で、Viewsでは様々なチャレンジが多く、農業の体験、マラソン大会への参加、マジシャンを呼んだ手品の習得など、あえて人と会話する機会をつくっています。それらの目的は、自己実現のチャンスと自己理解のヒントを提供すること。職場復帰の先も続く人生を生き抜くために、自分らしさを知り、他人にも優しくなれるように。うつをきっかけとして経験を増やし、よりよい人生を歩んでいってほしい、という信念が元になっています。

そんな思いから決定した事業コンセプトは「life career support」。仕事におけるキャリアのためではなく、人生のキャリアを支援していくという姿勢を表現しました。さらに、Viewsの利用を検討する方へのメッセージを打ち出しました。

代表の高瀬文聡氏は、事業の構想につながる過去の原体験を次のように語ります。

「新卒で入社した会社で、どうしても周りの人と自分を比べてしまい『もう無理だ』と上司に相談したことがありました。その際、上司にかけてもらった言葉が、いまでも原動力になっています。『歩幅は違ってもたどり着くゴールは同じ』。その言葉を聞いたとき、自分のペースでいいんだと思えました。当時はつらい時期でしたが、支えてくれる人がいたから乗り越えることができた。そこから、上司のように人を支えられる存在になりたいと思うようになったんです。そのとき初めて、自分自身で答えを出せた気がしました。一言で人の人生に影響を与えられるようになりたい、光を灯せる人になりたいと」。

自身の経験から得た想いは、独自のDNAとして根を伸ばし、さらにブランドづくりは加速しています。2020年には事業所のリニューアルも実施。空間からもブランディングを意識し、いわゆる福祉事業所というイメージを持たれないよう、カフェのようなリラックスできる空間へと生まれ変わりました。それだけでなく、Viewsの世界観を表現するため、一本のガジュマルの木を植えました。人々の心の拠り所となり、様々な生物を育む。そんな自然の懐の深さを、Viewsの特徴や「自分の在り方をみつける」という、スタッフの姿勢と重ねました。様々な視点が集まり、発見がうまれる場。Viewsに関わる人、共感した様々な人たちが集い、共創し合う空間を象徴するシンボルツリーへ、スタッフロールとViewsの進化は続いていきます。

ブランディング活動を続ける中で現れた変化についても聞かせていただきました。

「HPやSNSでのメッセージ発信、外部研修などでの広報活動を通じて、理念に共感いただいたうつ病当事者の方、その周囲の支援者の方々からの問い合わせが増えました。その結果、理念に共感した方が入所し、スタッフの想いや考えを、利用者の皆さんへ臆せずに伝えることができるようになりました。スタッフ自らが『自分の想いを出してもいい』という空気をつくることが、場の安心感につながり、利用者さん同士でも自分の価値観を伝え合っています。自分の価値を大切にできる人々が集い、『同じ症状を抱えた当事者』という枠を超え、『自分の人生を考え直す仲間』となったことが活気になる。私たちの目指してきたViewsの在り方に日々近づいていますね」

さらに将来的には、スタッフロールが果たす役割はさらに大きくなっていくと、高瀬代表は言います。

「スタッフロールのビジョンは、人生の主役になっている社会をつくること。他者が主役ではなく、自分が主役になることです。うつ病の人はもちろんですが、自分を見失っている人は世の中にたくさんいます。例えば就職活動をする学生もそうです。社会に出る前って不安ですよね。自分が何かがわかって社会に出たいけれど、なかなかできていない。私たちの活動は自己分析でもあり、仲間ができる活動です。だから、孤独感を抱える人たちの役に立てるはず。日本に暮らす外国人の方、高齢者、社長もいわば孤独ですね。さらには、コロナで人と関わる機会が減っている現代において、自分たちに何ができるかを考え、行動していきます。」

コロナ禍において、自分の本当の「在りたい姿」を考え始めた人も多くいるはずです。変化の激しい現代だからこそ、変わらない自分の軸を見つけることが必要なのではないでしょうか。スタッフロール様が人の心により添い続けるように、パラドックスも微力ながらスタッフロール様により添い続けていきます。

クライアント企業情報

会社名：株式会社スタッフロール　https://www.staffrole.co.jp/ 

住所：〒451-0045 愛知県名古屋市西区名駅二丁目25番21号 ベルウッド名駅１階

代表取締役：高瀬 文聡

事業内容：

「一人ひとりの在り方を、一緒にみつける」をミッションに、人生や仕事に悩みを抱える人に向けて、「在りたい自分」と出会うためのサービスを展開。事業のひとつとして、うつ病等の気分障がいを持つ方に向けた社会復帰支援を実施。運営する福祉事業所「Views」では、他者ではなく自分の価値観を大切にし、自分らしい人生を歩む人を増やすプログラムを展開しています。

ブランディング企業情報

会社名 : 株式会社パラドックス 　http://www.prdx.co.jp

住所 : 東京都港区北青山3-5-15 ミヤヒロビル10F

代表取締役 : 鈴木 猛之

事業内容：｢志の実現に貢献する｣ことをミッションに、企業や人が大事にする価値観やあり方を深く洞察し、世の中に提供している使命や意味(＝志)を言語化・視覚化。その企業や人にしか語ることができない“独自のストーリー”を軸にした本質的なブランディングを行い、日本の人々がもっと誇りを持って生きていける社会の実現を目指しています。