２０１９年１１月5日９時過ぎ私は大動脈解離になりました。

病院に救急搬送され、緊急手術となりました。妻は私の手術同意書を書くときに、一ヶ月生存率は５％以下と告げられました。

　私が意識を取り戻したのは手術から3日後でした。

周りを見渡すと、見たことのないような機械が、まさしく城壁のように取り囲んでいました。15時間にも及ぶ手術です、術後も大変です。

　目は開けることができましたが、指も動かせませんでした。妻や姉達が呼ぶ声は聞こえますが、聞こえているという意思を伝えるすべがありません。瞬きを２回しましたが、当然わかってもらえません。自分の意思を伝えるすべがないのです。

　意識ははっきりしているのに、ちゃんと言っていることがわかる事を伝えたくても伝えられません。そこから生き地獄の始まりです。

　とても苦しい人工透析。これからの生活不安で悩み、夜は痛み止めの影響からなのか、死神まで見えるようになりました。

瞬きするたびに、自分の近くに近寄ってきます。

　私の仕事は、手袋製造業いわゆる斜陽産業です。事業規模も小さく配達・機械整備・生産管理などすべて自分でこなしてました。私以外はパート3名ほどの小さな会社です。その私が意識不明で病院に担ぎ込まれました。

覚悟しました。もう駄目になるのだと。

　さらに、生活不安です。収入が絶たれます。

娘は高校受験を控える身で、息子はまだ小学生でした。口もきけない私は、本当に毎晩泣きました。自分の病気で、子供の人生は台無しです。

　術後の治療が始まりましたが、今後満足に動けないといわれました。仕事もできない、歩くこともできない。話すこともままならない。

（左ひざから下の筋肉はなくなりました。）

　病院に貼ってある、就業支援のポスターを眺めながら、ここは地獄だと感じました。

　リアルな感情で、少なからず生命保険と学資保険がある。これがあれば残された家族だけならやっていけるかもしれないと思いました。動けない私がいることは、負担が増えるばかりです。何度も考えてはいけないことを考えました。人間追い込まれると悪いほうへと考えは向くものです。

　毎日の治療は厳しかったです。1日ごとに人工透析。水分も制限されてたので、異常なのどの渇き。少しでも動けるようにと午前・午後の痛みに耐えながらのリハビリ。肺に水が貯まれば、針を刺して抜きます。こんなつらさは二度とごめんです。

　倒れる少し前から、準備していたクラウドファンディング・国の物づくり補助金の申請・ホームページも素人ながら頑張って作ったところでした。

これらもすべてダメになりました。

松葉杖を使いなんとか歩けるようにまで回復したので、クリスマス前に退院しました。自分で何も出来ませんでしたが、本当に嬉しかったです。

そこからは、やる気も気力も何もない廃人でした。いつ人生を諦めるかそれしか毎日考えていませんでした。　

　会社の売り上げもどんどん落ちていきました。さらにコロナウイルスが原因で手袋を使う工場もみんなストップしてしまいました。名前もよくありません。うちの会社と同じ名前のウイルスが蔓延して、人の命を奪っていきます。そこから始まりました。誹謗中傷の電話です。

「便乗して変な名前で仕事するな！」

「製品使ったらうつるんじゃないか？」

本当にいろいろ連絡をいただきました。

さらに、領収書もお願いできません。

「有限会社コロナーでお願いします」と言うとみんな反応します。

売り上げは半分以下、本当にもう駄目だと思いました。

そんな時に、一本の電話がかかってきました。

「コロナウイルスで大変な時だからこそ、対策グッズを作って欲しい」

・東京では、電車のつり革が触れなくて、学校・会社に行けない。

・接触感染が怖くて、外出できない。

・感染が怖くて定期的な通院もできない。

びっくりしました。田舎の岐阜では無縁な状況でした。

　まだ、自分も週に3回通院しておりました。

自分で作り・通院で使用して・改良してを何度も繰り返しました。

　そうして出来上がったのが、【Ｔｏｕｃｈ－Ｃｕ】です。

銅繊維入りの、接触予防手袋です。

　全然売れないので、さらにびっくりしました。

しかし、ここで思いもかけない言葉をかけられました。

「このようなニッチな商品も、この辺りで売ってたらニッチな商品のままだけど、ネットの世界ならニッチな商品じゃなくなるよ」

　そこから、楽天に出店してみましたが、また売れない。

そんな時にたどり着いたのが、この　ＰＲＴＩＭＥＳ　でした。

　プレスリリース？だった自分がです。

そこから、新聞取材もしていただいて、テレビにも出演できました。

反響も大きく、2か月ほど売り切れが続きました。

本当にありがとうございました。

私は、大病をして生死をさまよいました。

　自分の余命はあとどのくらいあるのだろうか？

　子供たちが一人前になるまで、生きていられるだろうか？

　今やっている仕事が、ちゃんとやり遂げられるだろうか？

毎日考えます。

　4月の終わり、まだ廃人だった時、私は考えました。

どうせ死ぬなら、前のめりで死のう！

自分はあと一年しかもたない、

だったら最後まで最後の一日まで頑張ってみよう！

　これはあくまで覚悟ですが、同じ病気の友人も言っています。

「いつ突然死しても悔いはない」と言い切れるくらいの覚悟で一日一日を深く生きることが大事！

　本当にその通りです。

病気をして、本当に人は一人では生きていけないものだと痛感しました。

家族・友人・取引先など自分の周りにはこれ程たくさんの人がいて、互いに支えあって生きているのだと。

　私は、突然病気にかかり仕事も家族も失いかけました。

将来への希望も夢もすべてなくなりました。

　それでも、一歩踏み出しました。

大きなことをする必要はないと思います。

小さくても、一歩踏み出すと一日が輝いてきます。

そうすると、明日が楽しみになります。

病気や仕事で悩んでいる方も小さく一歩踏み出してみましょう。

　みなさんの明日が輝きますように

代表取締役　菱田　男

会社概要

有限会社　コロナー

所在地　：岐阜県安八郡輪之内町下大榑12908-2

設立　　：昭和50年１１月２８日

事業内容：手袋製造業、ニット小物製造販売

会社ＨＰ：https://www.corona-gloves.com/

電話　：0584-69-2283

ＦＡＸ：0584-69-2274

e-mail:dan@corona.roo.ne.jp