LINE株式会社は、台湾、韓国、タイやインドネシアにもサービスを展開しており、それらの拠点で社員数数百人規模のオフィスを持ちます。LINEは去年からCOVID-19感染拡大の影響により全てのオフィスで在宅勤務を取り入れました。在宅勤務という慣れない環境の中、LINEのテクノロジーをさらに進化させたエンジニアたちの働き方や開発したサービスを、ここで紹介します。

COVID-19に関連するデマから人々を守ったエンジニア

イマニュエル・ハリム・クリスティアントさんはインドネシアでバックエンド、時々フルスタックエンジニアとして複数のサービスの開発やメンテナンスを担当しています。

インドネシアは日本よりもCOVID-19の感染者数が多く、去年の12月から毎日6,000人以上増えています。また、インドネシアではCOVID-19に関するデマが非常に多く、人々に余計な不安を与えています。そこでクリスティアントさんは去年3月にLINE Siagaという、保健省がCOVID-19に関する最新情報をリアルタイムで提供するLINE公式アカウントを開発しました。LINE Siagaは病院の空き状況、緊急時の電話番号、最新のニュースなど、信頼できる情報を日々提供するサービスです。

このサービスは、ローンチするのは難しくなかったものの、メンテナンスが思った以上に大変だったと彼は言います。なぜなら、保健省は混乱状態にあり、正確な情報をタイムリーに出せていないのが現状でした。本来ならシステムが自動で情報をアップデートしてくれるところを、クリスティアントさんは毎日ニュースのモニタリングをして更新していました。そこまでして頑張る理由について、「何よりも第一に人々を落ち着かせ、デマから人々を守りたい。国民が間違った情報に基づいて誤った判断をしていては、COVID-19に対抗することは不可能だから」と彼は言います。

LINE Siagaは去年11月の時点で、総合PV数1,700万回以上、34万人がフォローしている、国民に信頼されている情報源となっています。

2月頃台湾でマスクが不足したとき、医療マスクを探せるマップを作成したエンジニア

去年日本でもあったように、台湾でも医療マスクの買い占めがありました。その状況を改善すべく、台湾政府は医療マスクの在庫状況をオープンデータ化しました。それを知ったエンジニアのジュリアン・リウさんは医療マスクを検索して購入できるサービス、LINEマスクマップを開発するため、チームを立ち上げました。リウさんは普段LINE SPOTという台湾限定のサービスを開発しているので、LINE SPOTのメンバーでチームを結成し、LINE SPOTにLINEマスクマップを導入しました。

「他社も同時に似たようなサービスを開発しようと考えているはずだから、一刻も速く作る必要がありました。アイディアが浮かんだ瞬間、深夜にも関わらず企画チームに電話しました。マスクマップを作りたいと話しをして、翌朝すぐに取り掛かりました。誰かの役に立ちたい、社会に貢献したいと思っていたのでモチベーションがとても高かったです」とリウさんは言います。

その後、わずか2日間でLINEマスクマップが開発されました。LINEマスクマップの導入後、LINE SPOTの月間トラフィックは84％上昇しました。

LINEマスクマップを含む、マスクデータのオープンソース化は台湾の対COVID-19の戦いにおける偉大なサクセスストーリーの一つとして多くのメディアに取り上げられました。台湾の人々が初期段階で迅速な行動をとったため、現在の一日における新規感染者数は一桁まで抑えこまれています。

ブロックチェーンを進化させるチャンスをつかんだ韓国のエンジニア

Blockchain Labのジュンヨン・スーさんはCOVID-19がこんなに大きな危機になるとは想像もしていませんでした。スーさんは元々サンフランシスコでGoProなどの開発をしていましたが、先端技術に憧れ、LINEのブロックチェーン開発者になりました。本来なら10年や20年かけてたどり着く未来の技術を、COVID-19は極限にスピードアップさせたと彼は言います、「人々の現金離れは暗号資産（仮想通貨）に新たな可能性をもたらします。ただ、人々が現金を扱うことを拒む未来がこんなにも速く来るなんて」。

中国では中央銀行デジタル通貨の実用がすでに進んでいます。2022年には正式にデジタル人民元を発行する予定です。カナダ、ドイツ、タイ、香港などでも同じようなプロジェクトが次々と動き始めています。そんな中、スーさんは軌道に乗り、アジア内で中央銀行デジタル通貨の導入コンサルティングを始めました。それだけでなく、企業が独自のトークンを発行できるLINE Blockchain Developersのローンチにも貢献しました。LINE Blockchain Developersには既に200社以上の外部企業が申請している大変人気のあるサービスとなっています。

LINEは誰もが使いやすいブロックチェーンを目指して、プラットフォームを拡大します。

海外拠点に勤務するエンジニアが思う理想な働き方

2020年、世界中で起きた大きな変化のうちの一つが在宅勤務です。LINEはコミュニケーションアプリだけあって、普段からチャットを使って仕事をすることが多いです。話す相手がすぐ隣に座っていても、LINEでメッセージをすることがあります。そんなLINEは、前向きに在宅勤務に切り替えています。

在宅勤務には通勤時間の節約、自宅で快適に仕事ができる環境など、たくさんの利点がありますが、中にはエンジニアにしかない利点もあります。「プログラミングはインスピレーションを必要とする芸術です。以前は、ひらめきはオフィスにいる時間に拘束されていました。でも今は違います。翌日まで待つ必要はなく、今すぐにでも家でひらめきを形に変えることができるようになりました」とクリスティアントさんは想います。

一方で、在宅勤務には課題もあります。「仕事以外の要素、例えば、同僚とのコミュニケーションから得られる満足感はオンラインでは実感しにくいです。会社のイベントによるコミュニケーションは信頼関係や今後のコミュニケーションの効率化、また会社に行く楽しさに繋がります。週に2日間は会社に行ける環境が理想です」とスーさんは言います。クリスティアントさんやリウさんも、週２～3日はオフィス勤務があった方がいいかもしれないと共感しました。

未来に向けて

2020年はLINEのエンジニアにとって、サービスを前進させるだけでなく、新しいアイデアや技術を発掘する機会となりました。最後に、3名のエンジニアたちに今年を振り返って皆さんへメッセージを頂きました。

スーさん：「危機はチャンスであり、変化が激しい時代には、変化に素早く適応する人にこそチャンスがやってきます」

ジュリアンさん：「常にユーザーのためにできることを考えたいです」

クリスティアントさん：「これはみんなの戦いです。みんなで一緒に乗り越えましょう」