数々のスマートシティのプロジェクトを手がけてきたスマートドライブのCRO(チーフ レベニュー オフィサー)はスマートシティをどのように捉えているのか？そして、協業する際に大切にしていることや、「スマートシティは感動する機会を増やす」と語る理由とは？

落ち着いた語り口から想像できないほど、アートやエモーションといった人々の気持ちを大事にする弘中にインタビューを行いました。ご覧ください。

株式会社スマートドライブ 

CRO(チーフ レベニュー オフィサー)　弘中 丈巳

日系コンサルティング会社にてキャリアをスタート。北海道支店長として拠点立ち上げに携わる。その後、株式会社セールスフォース・ドットコムにて営業として地方拠点の立ち上げと新しいモデル構築を行う。その後、株式会社マルケトの1人目の従業員として、インサイドセールス、セールス、カスタマーサクセスなどの立ち上げをおこない、コマーシャル営業部の責任者として組織拡大に従事。2019年にスマートドライブに参画しCRO(Chief Revenue Officer)に。マーケティング〜カスタマーサクセス・ビジネス開発を統括し収益の最大化に取り組む。

スマートシティにおけるスマートドライブに求められる役割とは？

さっそくですが、最近話題のスマートシティやスーパーシティについてどのように捉えていますか？また、スマートドライブの役割についても教えてください。

「スマートシティ」は雑誌、新聞、テレビなどでも頻繁に目にするようになってきましたが、何年も前からあるコンセプトでして、IDCという企業が10年ほど前に「市民の生活や、ビジネスを支える為の電気、水道、ガス、通信、交通、建物、行政サービスなどの生活インフラ全体を垂直統合して、より生産性の高い効率的な都市のあり方を実現する」と提唱しています。確かに電気・ガス・水道などの生活インフラさえあれば生きていくことはできますが、より豊かな生活を送るためには効率的で安全な「移動」を提供することも、重要だと思っています。

このように考えた時に、まず我々がやるべき事は、異なる業界のデータや異なるインフラのデータをまとめあげることだと思います。そして、経済合理性を成立させつつ、まとめあげた複数のデータを可視化し、移動の効率化を促すことがスマートドライブに求められている役割だと認識しております。

データの統合だけでなく、異なるインフラ企業間の事業連携も大変そうな気がするのですが、スマートドライブはどのような立ち位置なのでしょうか？

立ち位置としては、我々を通して事業連携の芽を作る事ができればいいな、と思っています。先日、とあるスポーツチームから、まちづくりに関するお問い合わせを実際にいただきました。そのスポーツチームは、ウェブサイトなどを色々と検索したが、どこに相談していいのか分からなかったそうです。そして、色々調べていたらMobility TransformationのWebサイトにいきついて、「こんなにも共創を大切にし、業界の垣根を超えた取り組みを実践しているスマートドライブがプロジェクトマネージャーに入ったら、面白いプロジェクトになりそうだ」と思っていただいたそうです。

このように、スマートシティを作る為の情報ネットのハブに、スマートドライブが介在することは大きな意義があると思っています。

あと、もう一つ我々が果たすべき役割として思っていることは、スタートアップならではの機動力を活かしたプロジェクト推進です。電気事業者や水道事業者の企業規模はとても大きいですが、大手企業同士が一緒に何か取り組みを行う場合、どうしてもスピードが遅くなってしまいがちです。そこで、我々のようなスタートアップが複数の大手インフラ企業とのPoCを行い、大手企業同士を繋げた方がスピードは数倍早いと思っています。

Quick Win(クイック ウィン)と呼んでいるのですが、小さくてもいいから早く成功させることを重要視していました。実証実験だけで終わることをよしとしないで、ビジネスとして早く成立させる。こうした経験を積み上げていき、A社でやったQuick WinとB社でやったQuick Winを繋げて、業界全体に展開した方が社会的インパクトが大きいと思っています。

なるほど。創業時から「ノン・エクスクルーシブ」を貫いて、どの系列にも属さないからこそ、様々な企業との協業やQuick Winの横展開がしやすい。ということもあるのでしょうか？

そうですね。会社が描いているビジョンが少しずつですが形になってきている実感を持っています。大手企業からみて「スマートドライブって結構使いやすいよね」「スマートシティのプロジェクトにスマートドライブを入れておくと円滑に進むよね」というような潤滑油のような立ち位置にいるのは、嬉しいことでもありますし、我々がパフォーマンスを発揮できるところに身をおけているな、と本当に感じています。

協業を進める上で大切なこと

様々な企業と協力しながら進めていく際に、大事にしているポイントや、重要視していることはありますか？

パートナービジネスにおいて、私たちが大事にしている事を紹介させていただきます。まず、単純に「あそこは沢山売ってくれそう」「あの製品は沢山売れそう」といった関係性のパートナービジネスは、いずれ破綻すると思っています。我々のパートナーとなる企業様と共に、相手方のビジネス、それも本業のビジネスがスケールするかどうか？というのがもっとも重要だと思っています。例えば、どこかの企業が「スマートドライブのサービスをたくさん販売して、売上が上がりました！」だけでは成功だと思っていなくて、パートナー企業様が持っている本業のサービスも一緒に売上が伸びるとか、財務基盤が改善される、といったような関係性が成立しないパートナービジネスは、ありえないと思っています。

さらにスマートシティの文脈でのアライアンスでは、協業することでパートナー企業様の本業ビジネスの売上が伸びるだけでなく、地域住民の方々に対してプラスの価値を提供できるかどうかを大切にしています。スマートシティというほどの規模ではないですが、都城ドライビングスクール様の事例を紹介します。

都城ドライビングスクール様では、運転免許の教習だけではなく、高齢者講習も行っていまして、高齢者の方々が普段使用している車に我々のIoTデバイスを活用しています。このデバイスを利用していただくことで、日々の運転傾向がチェックできますので、安全運転スコアの推移や、ヒヤリハット発生箇所などを紙で印刷して高齢ドライバーに渡しています。

教習所の観点でいえば、提供できる価値が増えて受講者が増えていくでしょう、一方で高齢ドライバーの方の観点で言うと、事故を未然に防ぐだけでなく、定期的に運転することで認知症予防や改善に繋げようとしています。また地域住民の方からすると、高齢ドライバーの方がデータを活用して自分の運転を振り返る事は、事故削減に繋がっていく。

これは「三方良し」の状態で、高齢者の方の健康維持だけでなく、地域の事故を減らすことができれば、こんな素晴らしいことはないんじゃないかと思っています。

たしかに、スマートシティのプロジェクトにおいては「三方良し」の視点がないと、うまくいかなそうですね。

うまくいく、いかないではなくて「三方良し」を描けないのであれば、やる意味がない。と思います。

モビリティデータの活用の鍵は「エモーション(アート)」と「ロジック」

「三方良し」なスマートシティを実現するためのベースとなるモビリティデータは、どのように活用していくべきなのでしょうか？

スマートシティ文脈でのモビリティデータは「エモーション」と「ロジック」が大切だと考えています。

モノの移動(=物流)については、「ロジック」が重要でして、早く物を届けれられるように最適化を繰り返していく。一定の条件(注文数、場所、時間など)を鑑みたうえでの最適解は見つかりやすいと考えています。一方で、モノではなく人の移動は「エモーション」や「アート」が重要だと思っています。例えば、春は遠回りしても桜並木を通りたい、とか、デートした帰り道は湾岸沿いの夜景の綺麗な道を通りたい、とか。

たしかにロジックというよりもエモーショナルな部分が大事な気がしますね。

そうですね。渋滞についても、エモーショナルなアプローチによって将来的には解決できる可能性があると思っています。例えば、私が紅葉が好きだとして、今走ってる道をそのままいくと最短距離だが、その道は大勢が通る道なので渋滞が頻発している。しかし、「紅葉が好き」というデモグラ（属性情報）があれば、「弘中さん、20分到着遅れるけど紅葉の綺麗な道がありますよ、通りませんか？」といったレコメンドを出してそもそも渋滞にならないように道路上の車両コントロールを行い緩和する。こういった、エモーショナルに訴えかけるようなアプローチが今後求められてくると面白いなと思っています。

スマートドライブはデジタルマーケティングや、ゲーム業界出身者が多いのでロジックだけでなく、エモーション(アート)も得意分野であると。

そうですね。マーケティングチームが日々やっているように、態度変容を促すためにどういった情報を収集し、どのようなコンテンツを、どのタイミングで届けるのか？というものが重要ですし、スマートドライブの得意分野です。また、長期的な関係性を地域住民の方々と築いていくためには、予算を投じた大量の広告を投下して、刈り取るだけでは、良好な関係を築くのは難しいので、こうしたアプローチが必要になります。

もう１つは、ゲーム業界のインセンティブに代表されるUXのノウハウも重要だと思っています。どのようなインセンティブを出すと、ユーザーが喜んでサービスやアプリを利用して、継続していただけるのかを見極めるノウハウも、上述したエモーションの部分での展開を実証実験で終わらせずにビジネスとして成り立たせるには必要なことです。

このように、スマートドライブ にはデジタルマーケティングとソーシャルゲーム出身者が多く存在しますので、弊社ならではのロジック×エモーションでのMobility課題解決という強みをしっかりと価値提供していきたいと考えています。

人材面からみても、スマートシティにおいてスマートドライブが活躍できる領域は沢山ありそうですね。

今までの知見をここで一気に発揮するときが来たぞ、という感じですかね。

スマートシティでは感動する機会が増える

では、最後の質問です。スマートシティが進展していくと、どういう世界が広がっていると思いますか？

スマートシティだからといって、生活が劇的に便利になるとは思っていません。今までは、オンラインショッピングで商品を注文してから届くまで３日かかっていたのが、６時間で届くようになったとか、渋滞が減って嫌な思いをしなくなったとか、そういうイメージです。

劇的に何かが変わるというよりも、ゆっくりと確実にちょっとした便利が積み重なっていくのであまり実感はできないかもしれませんが、未来にタイムスリップしたら「なんか、めちゃめちゃ便利になってる！」と実感できる、というような世界だと思っています。

端的にまとめると、「目的達成する時間が短くなる」ということですが、ずっと効率化を求めていても限界がありますし、効率化によって生じた空き時間に、人としてのエモーショナルな体験を求めるようになるのではないかと。そうすると、人間が感動する機会が増えると思っていて、紅葉がみたいと思ったら、今よりも短い時間で安全に見に行けて、その後に海水浴に行ったり、自宅では５Gでスポーツ観戦したり、みたいな。そういった感動体験を沢山得ることが出来るようになると思います。

クールな語り口から想像できないほど、エモーショナルな世界を描いているんですね！私も感動する機会が増える街に住んでみたい、と思いました。本日はありがとうございました。

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