大手航空会社や旅行会社、スポーツ団体や行政・地方自治体など多くの企業が次々とバーチャル事業に参入し、空前のVRブームと言われる昨今。実は世界一の来場者数を誇るVRイベントを主催している会社が日本企業である事はあまり知られていないのではないでしょうか。

VR法人HIKKYが主催するVRイベント「バーチャルマーケット」は、2020年12月の開催時には延べ来場者数100万人を超え、日本はもとよりアメリカやヨーロッパ、中国等のアジア諸国からも多くの来場を記録しています。

そんな世界一である日本のVRコンテンツをより世界中に広めるべく、グローバル人材を積極採用し発足されたのが、様々な海外出身者からなるHIKKYグローバルチームです。今夏には当社初の海外法人となる中国法人を設立予定など、グローバル展開を急速に推し進める中で奮闘している点や今後の展開などをHIKKYグローバルチームメンバーである以下の5名にお話を伺いました。

蒋さん（中国出身／中国法人事業＆中国圏へのPR・マーケティング・営業）

フィビーさん（香港出身／中国法人事業＆中国圏への営業）

Lhunさん（カナダ出身・在住／英語圏を中心としたグローバルマーケティング、モデリング制作サポート等）

キムさん（韓国出身／オープンイノベーション事業＆プロジェクトマネージャー）

ケリーさん（アメリカ出身／英語圏へのPR・マーケティング）

（左からケリーさん、Lhunさん、キムさん、蒋さん、フィビーさん）

―まずはHIKKYに入社した理由を教えてください。

蒋：元々フリーランスで働いていたのですが、新型コロナウイルスの影響で仕事が減ってしまい、もっと社会との関わりを持ちたいと感じていたところに知人にHIKKYを紹介してもらいました。現在中国ではVRがかなり注目されてきており、私自身元々ITコンサル出身なので最新テクノロジーの分野で仕事がしたいとも思っていたのと、私自身もオタクなのでHIKKYにはそういった方が多いので馴染みやすいのではと感じたのも決めての1つですね！（笑）

Lhun：私は元々VRコミュニティに精通しており、ソーシャルプラットフォームとしてVRは今後世界的に普及していくだろうと感じていました。その中で業界においてかなり深い知見を持ち、VRのプロ集団であるHIKKYに入社を決めました。日本の音楽やアニメ等の文化が大好きなのも理由の1つですね。

キム：PC、スマホの次はVRの時代が来ると感じており、世界のVR業界の中で独自の動きをしながら面白い事をやって成果を出しているHIKKYに成長可能性を感じたからですね。また、事業の内容だけじゃなくコロナ禍以前からリモートワークを定着させているなど先行者としての動きにも魅力を感じました。

フィビー：VRに関する知識はあまりありませんでしたが、VRに将来性を感じ、VRのプロの集団であるHIKKYに入社することで業界への知識を深くできると思ったからです。

ケリー：HIKKYの行っているVR事業を英語圏に促進すれば、絶対にさらに人気が出ると感じたからです。

―実際に入社してみていかがですか？

ケリー：とても楽しく働けています。同僚は全員優しいですし、やりがいがある仕事です。HIKKYに入社してから初めてVR上で人とコミュニケーションを取る事を体験しましたが、実際に会っているような感覚を覚えました。コロナ禍で人に会う機会がかなり減りましたが、VRでなら地球上のどこにいても世界中の人々に会える機会が溢れています。可能性がありすぎて、ワクワクしてたまりません！

キム：入社当初はHIKKYの急成長の段階でしたので目まぐるしく忙しい日々でしたが、段々HIKKY独自の社風にうまく適応されたシステムが整ってきていると感じます。仕事の内容的にはクリエイターの集団らしく様々な面白おかしい事を動かしていて、また自分から発案して動かしていく機会がたくさんあるのでチャレンジし易い環境です。社員の方々は凄く優しくて暖かい人が多く、すぐ受け入れてくれる方が多いです。

フィビー：HIKKYはプラス的な思考で楽しい雰囲気の方々が多く、相談などもしやすい環境です。私は週の半分はリモートワークですが、社内のコミュニケーションツールで社員間のやり取りがかなり盛り上がっているのでコミュニケーションもしっかり取れています。会社のDiscordやSlackはいつもたくさんの情報が飛び交っているので、情報を追いかけるのが少し大変ですが（笑）

蒋：社員の皆さんは漫画好き、アニメ好き、ゲーム好き、二次元好きの方が多く、さまざまな個性を持っている方がいますが、皆さんがとても優しく、フラットで働きやすい職場環境だと思いました。

Lhun：社員の多くがVR愛好家であり業界全体をより深く、広く理解しているプロの集団だなと感じます。またHIKKYの社員に対する柔軟性と理解は、ユニークであり素晴らしいと思います。

―みなさんとても良い環境で働けているのですね。良い点の他にグローバルメンバーだからこそ苦労した点はありますか？

Lhun：やはり時差の壁は大きいですね。この業界は動きが速くタイムリーな共有が求められますが、私はカナダ在住で日本とは13時間の時差があり、ビジネスタイムが被らない時間帯があります。そのため重要なメンバーからの詳しい情報を待っている間、進行ができないということもあります。

あとはやはり言葉の壁や、西洋のコミュニティの感情や仕事のスタイルは日本のそれとは異なる傾向にあると感じます。しかし、私達は世界共通コミュニティであるVRコミュニティに所属しており、さらに日本の音楽等の文化が好きであるという共通項がある者同士ですので、違いも分かち合いながら一緒に多くの素晴らしい作品を生み出すことができると考えています。

蒋：アメリカ時間・中国時間など、時差の配慮はありますよね。あとは国によって、文化だけでなくビジネス世界のあらゆるルールがかなり違います。また中国語、英語、日本語それぞれの言語の表現方法も異なるため、翻訳する際も直訳にならないよう考えながら訳し、各国のビジネスルールに則った行動を取ることには留意しています。

―海外と日本でのビジネススタイルやルールが違うという事ですが、具体的にどのような違いがあるんでしょうか？またそれに対して実際に行った事などはありますか？

ケリー：例えばPRの観点からいうと、まだまだ日本はテレビの影響力も大きいと感じています。しかしアメリカでは特に若年層においては圧倒的にSNSを見ている時間の方が長いです。SNSから様々な情報を得たり、何のコミュニティに参加するか決めたりしていると感じます。ですので、海外に向けてのPRにはもっとSNSを有効活用するべきだと考えながらお手伝いしていますね。

Lhun：そうですね、欧米では特にSNSやインフルエンサーの影響力が大きいと感じています。また文字で見るだけでなくユーザーエクスペリエンスの提示が重要であると考えています。そこでバーチャルマーケットのTwitterアカウントの英語版（https://twitter.com/EnVket ）を作成し英語圏に特化した内容の発信をしています。また、最近では英語圏のユーザーに向けて、バーチャルマーケットや過去のVR会場をわかりやすく紹介する為のYouTubeやTwitchでのストリーミング配信(https://www.youtube.com/playlist?list=PLp1hGvUagfpwUpLW3Kc10lEfugmxWYonz)を始めました。HIKKYグローバルチームから積極的に発信することに力を入れています。

ケリー：ただ海外の方は広告に対して非常に抵抗があるように感じています。なのでこういった配信の際もただ私達が主催しているVRイベントを紹介するだけでなく、愉快なコンテンツ内容にすることを心掛け、広告感を出さないように気をつけています。

―中国の観点だとどうでしょうか？今後、中国法人の設立を予定しているんですよね。

蒋：はい、中国にも多くの優れたVRクリエイターがいるため、彼らと一緒に中国VR業界をさらに盛り上げたいと考え、中国法人設立を進めていました。ただ中国でのVRの発展が予想以上に早かったため、それに順応するべく今夏での設立に向けて鋭意取り組んでいるところです。

―中国法人進出にあたり、苦労した点やそれの解決策は何かありましたか？

蒋：最初は、何もわからない手探りの状態から始めたので色々調べたり聞いたり苦労は多かったです。最初の第一歩を進めるのが難しかったのですが、過去にお世話になった上海で一番大きい日本企業の知人からの紹介で、中国の政府部門の方に繋がる事ができ、それからは手早く対応してもらえるようになりました。

フィビー：やはり情報がないと新規市場への参画は難しかったので、蔣さんが中国のコミュニティーと細かくコミュニケーションを取ってくれたことが、情報収集にとても役に立ったと思います。

私が苦労した点でいうと、中国コミュニティの方とのコミュニケーションの取り方ですね。私は香港出身なのですが、香港は中国の一部でありながら中国本土とは少し違います。私は香港人ということをアピールするのではなく、「あなたたちと仲良くしたい」という気持ちを持って中国コミュニティの方々と対応して進めています。インターナショナルのやりとりをするときには、相手の文化に気を使うの事が大変だけど重要だなと感じています。

―今後中国法人ではどのような展開をしていくのでしょうか？

蒋：もうすぐ現地での法人化ができますが、中国の事業はまだまだこれからだと思います。中国でビジネスをしていく上ではパートナーがとても大事です。そのため現在中国の数社とパートナーシップの締結を進めています。今後パートナー企業たちと一緒に中国のコミュニティを盛り上げるために邁進していきたいと思います。

また、先程欧米チームの話でも出ましたが、日本だと伝統的なメディアが（主に新聞やテレビ）重要な役割を果たしていますが、中国でも同様に、KOLというインフルエンサーマーケティングが主流なので、そこもしっかり意識しながら中国でのPR・マーケティングも進めてまいります。

―その他グローバルチームから発信したプロジェクト等はあるのでしょうか？

Lhun：現在世界中でVRクラブ（VR空間上にあるクラブ／ライブハウス）が流行っている事に着目し、世界中の様々な人が音楽を楽しむ共通の場を作りたいという想いから「club Emission」(読み：クラブ エミッション)をグローバルチームが主体となり制作いたしました。

VRは時間や距離の制約がなく、いつでもどこからでも自由に楽しみ世界中から集まることができる空間です。音楽も言わずもがなですがそういった概念のない世界共通言語。この2つを組み合わせる事で大きなシナジーを生み出せると考えました。

実際にEmissionにてDJイベント等を実施しましたが、グローバルからの来場者は予想以上に多く、反響もとても良かったです。今後このEmissionで日本や海外のアーティストのVRライブ等が開催できる新しいサービスも提供予定です。この取組はグローバルチーム発案の施策の成功例といえるでしょう。

―最後に皆さんの今後頑張っていきたいことや展望を教えてください！

ケリー：HIKKYの英語圏への展開をさらに推し進め、世界中のクリエイターとVRユーザーのコミュニティに貢献していきたいです。海外の人々はバーチャルマーケットはもちろん、他の弊社のVR事業の事も知りたがっています。私はグローバル広報として、英語でその人たちに弊社のやっていることをどんどん発信していきたいです！

フィビー：中国法人設立に向けてもスムーズに軌道に乗ることができるように取り組んでいきたいですし、VRをもっと一般層に浸透させるように頑張っていきたいです。そのためにできることから個人で普及活動をしており、V R飲み会などを企画しています。たくさんの方に興味を持ってもらえるようにSNSを活用してVR上で撮影した自撮りをアップしたりしています。

Lhun：もっとたくさんの音楽グループと一緒に仕事がしたいです。過去にはLDH所属のアーティスト「PKCZ®」や、世界的ギタリストの 「MIYAVI」など、チームで心に響く作品を作ることができたのは、今までのHIKKYでのハイライトでした。多くのエレクトロニック・ミュージックやポップス、ロックのアーティストと仕事をしてきましたが、今後はピアノやクラシックの歌、あるいはオーケストラなど、もっと伝統的な音楽のジャンルにも挑戦していきたいです。現実世界でのコンサートはとてもエキサイティングだと思いますが、VRではそれ以上に人の感覚をハイジャックして非現実的なものを見せることができ、夢を見せることができます。それがクラシック音楽や他のジャンルにどう反映されるのかとても興味深いですし、私たちはそれを実現できると思います。

蒋：もっともっともっと社会との関わりをもっていきたいと思います。2019年末からコロナが流行り在宅ワークが増えてきて、孤独感や、心に不安を抱える人が増えてきており、私もその1人でした。哲学的になってしまいますが、人生の一番の財産は、出会いだと思っています。現状のコロナ禍ではリアルの世界での出会いはまだなかなか難しい。ならばV Rをそのソリューションとして、リアルに会わなくても交流したり仕事したり、新しい繋がりを作っていきたいです。

キム：今までは事業をメインで見てきましたが、これからは制作も共に見られるオールラウンドプロジェクトマネジャーとして成長して、今後は自分でプロダクトを作って統括できるようにやっていきたいと思っています。また多様性こそVRの可能性でもあり、人はそれぞれ個性があって色んな可能性を秘めているので、それを最大限発揮できるようにしてあげたいと思っています。技術力のある方々の中で仕事をしているので、技術面でも少しずつスキルを身につけていき、最強なグローバル人材になることを目指しています！（笑）