株式会社FUNDINNOが提供する、株主管理・経営管理プラットフォーム「FUNDOOR（ファンドア）」では、スタートアップの成長フェーズごとに発生する課題を解決しています。

　FUNDOORが提供する機能は、様々な場面をカバーしています。資金調達の準備段階では「資本政策機能」、投資家にアプローチする際は「新規投資家ステータス機能」や「ピッチ共有機能」といった機能もあります。その他にも、増資の登記、株主名簿の作成、株主総会や取締役会へのサポートにも対応しています。

　FUNDINNO社主催のピッチイベントなども企画しており、イベントとかけ合わせてご利用いただけることも提供価値だと考えます。最近ではこういった企画を経て、株式投資型クラウドファンディングを成功された企業様が複数社誕生しております。

　これらの多くの機能開発を牽引しているのは、エンジニアはもちろんのこと、PdM（プロダクトマネージャー）の存在が欠かせません。

　今回は、FUNDOORのPdMである福島蓮（ふくしま・れん、写真左）、雨宮亨匡（あめみや・としまさ、写真右）のふたりにインタビューしました。

どんな人がFUNDOORを作っている？

ーこうやってPdMにインタビューするのは初めてですね。最初におふたりがFUNDOORに参画するに至った経緯を教えてください。

福島：

　弊社には大学在学時にインターンで参画し、大学卒業と同時に正社員として入社しました。学生の頃から、独立してサービスを作ることに関心があり、作る過程を学べることや会計のバックグラウンドが活かせることから、FUNDOORへの参画を決めました。

　高校生の頃には簿記部に所属しており、大学在学時には公認会計士の二次試験まで合格しています。

雨宮：

　福島さんと同じく、私もインターンで参画し、正社員となりました。大学時代は別のスタートアップで働いており、コーディングもしていました。他社でのインターン時に、CFO・CxOが注力すべき業務に集中できていない状況を目の当たりにし、スタートアップを支援する側になりたいと思うようになりました。

ー最近も新たな機能のリリースがありましたし、FUNDOORの機能はさらに増えていると思います。おふたりがPdMとして担当した機能を教えてください。

福島：

　実は、FUNDOORにまだ株主総会機能（2020年9月リリース）が無い頃から携わっているので、初期は全機能の要件定義に関わっていました。

　FUNDOORって、最初は事業計画機能と資本政策機能をリリースしたんですよね。今は、先日リリースを発表した(*1)「財務予実管理機能」を中心に担当しています。

雨宮：

　私は「アタックリスト機能」「ピッチ共有機能」を中心に担当しました。投資家とのハブになる機能がなかったため、昨年はその開発に注力していました。

　最近まで「取締役会機能」や「電子契約機能」も担当していましたが、今は「資本政策機能」のUI・UX改善に注力しています。

*1:株主管理・経営管理プラットフォーム「FUNDOOR」新たに『財務予実管理機能』をリリース（2023年5月22日公開）

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000208.000021941.html

スタートアップの最大のペインは“ファイナンス”

ーアタックリストやピッチ共有、財務予実管理機能など、ファイナンス系の機能の開発・改善に注力しているのはなぜでしょうか？ 詳しく教えてください。

雨宮：

　原則として、ユーザーのペインをベースに優先順位を判断しています。シード・プレシード期のスタートアップ企業にとって、一番大きな課題となっているのが「資金調達」です。

　資金調達の課題は、どの起業家も共通の課題として顕在化していますが、「なぜ・どれくらい・いつまでに・どんな方法で」など、具体の話を掘れば掘るほど、認識が曖昧になっていく方が多いのではないかと思います。

　起業家の知識や経験の不足に対して、それを打破する仕組みを作る必要があると考えました。

　そのような背景から、ファイナンス活動全体を支援することを目的に、機能開発がスタートしています。

　資金調達後にピッチ資料を送る、投資家にアタックしてどうだったのか管理する、資本政策表を作成する……FUNDOORに来れば全て完結する、というプラットフォームを目指しています。

ー新機能の開発をする上で、PdMとしてどのような所を工夫していますか？

福島：

　ユーザーがどのように使うのか、ユーザーストーリーを整理して開発をしています。例えば「ここにヘルプページのリンクがあっても誰も見ないよね」とか。実際に、自分も１ユーザーとして何度もフローを確認し、ブラッシュアップしています。

　ユーザーストーリーを整理していれば、エンジニアさんと開発を進める上でも「ここは妥協できないです」といった議論が生まれていきます。

雨宮：

　FUNDOORは、ユーザーから「UI・UXが良いよね」というお声をいただくことが多いです。以前、外部のデザイナーさんにデザイン講座を開いてもらったことがあり、そのUXデザインの基礎が頭に入った状態で、要件定義をしています。

　ユーザーが「ヘルプページを見なければ分からない」という状態にならないよう、直感的に利用できるよう、デザイナーさんと都度議論しながら作成しています。FUNDOORのような専門知識の必要そうなツールを、専門知識がなくても、迷わずスムーズに利用できる、という点は常に意識しています。

自分が起業家になったつもりで

ー資金調達等の経験は無いと思うのですが、「やったことがない」ことに対して、どのように解像度を上げていきましたか？

雨宮：

　おっしゃるとおりで、初めは、自分が当事者ではないので、どのように要件を決めて良いかものすごく悩みました。でも、ほとんどの起業家にとって、ファイナンスは初めてのイベントだということに気が付いたんです。

　ということは、自分が起業家になってファイナンスしようと思った時に必要な機能や、困りごとを解決する機能があれば、いいんじゃないかと気がつきました。

そこから、非常にスムーズに要件が決まっていきました。

　それだけだと、間違った方向性に進むリスクもあるので、とにかく、ユーザーヒアリングを徹底的におこなうことを意識しました。

　あと、ExcelやGoogleのスプレッドシートに勝とうと思っていなくて、それを使った上で「さらに不便な所はどこか？」と探るようにしています。

福島：

　私も同感です。とはいえ、一般的な資金調達フローは、仕組化されていると思っています。その上で、当事者意識を持ちつつ、まずは社内の上長や役員陣にヒアリングをおこないました。自社ではどのようなプロセスを踏んでいて、今何に困っているのか？など。

　その次に、数十人単位で、ユーザーヒアリングを実施します。誰の何の課題か、課題の深さはどれくらいか、を見極めていきます。あと「お金を払ってでも解決したい課題か？」というのは確認するようにしていますね。

教科書と実務は違う

ーユーザーからいただいたフィードバックの中で、新たな気づきや想定外な点はありましたか？

福島：

　ユーザーが「あったらいいよね」という温度感で言っているのか、「ないと困る！」という温度感なのか、その辺りの温度感をPdMが察知することの重要性に気づきました。

課題がないのに解決策だけで作ろうとすると、大抵上手くいかなかったです。

　過去にヒアリングを充分に重ねずに作ったケースもありました。「こんな機能があったらいいよね」「目の前の人が困っているから」という理由で作り始めてしまったこともありまして……（苦笑）

　当時の反省も踏まえ、今はユーザーの声を十分に拾いつつ、プロダクト・機能がマーケットにフィットするどうか、常にそこを意識しています。

雨宮：

　私の場合、教科書（Web検索で知ること）と実務は違う、というのが気づきでした。取締役会の事前承認のフローなど、実務に沿ったフローに関しては有難いフィードバックだなと思います。

　法的に担保されていても、実務上では追加で対応している業務も多いんですよね。特に株主総会・取締役会は。

　上記を踏まえると、良い意味で、予想外のフィードバックを多くいただくことが多いです。新機能は仮説ベースで作っていますし、予想外のフィードバックも拾い上げて開発する環境があります。また、intercomでお問い合わせをいただいたものも、全て目を通してます。

　ぜひ、気づいた点は気兼ねなく、お問い合わせいただければ幸いです。

ー今後どんな課題を解決していきたいですか？

福島：

　ユーザーの声をもとに、プロダクトのPMFを目指していきたいと思っています。特に私が担当した「財務予実管理機能」は、「情報の集約」と「情報の出力」の２つのフェーズに分かれていると思います。

　これまでは「集約」する機能に集中していましたが、次は「出力」のフェーズに入ります。投資家や株主コミュニケーションのためにはスムーズな出力機能が重要となりますので。まずはユーザーの課題整理を漏れなく実施し、開発に集中したいと思っています。

雨宮：

　ユーザーから、「機能が豊富なのはわかっているけど、全体をもっと繋げてくれたら、社内での利用者も増えると思う」という声をいただいております。

　確かに、今までの開発は、機能単位で進めていたと思います。今月（2023年5月）からチーム体制も変更になり、顧客課題と向き合い、課題単位で開発するチーム体制となりました。

　具体的には、「全ての機能をシームレスに繋げる」「全ての経営情報を統合する」がテーマです。

ー最後に、どんな人に使っていただきたいか教えてください。

福島：

　シード・プレシード期のスタートアップ企業の方々におすすめしたいです。エクイティでの資金調達中の方も、ぜひFUNDOORを使ってみてください。

雨宮：

　ファイナンス中の経営者はもちろんですが、事業が忙しく、管理業務に目を向ける余裕のなくなっているCEO、CFOの方にも使って欲しいです。楽をできるところは楽をしてほしいなと思っています。

ー福島さん、雨宮さん、ありがとうございました！

最後に

　今回は、機能開発を牽引するPdMのふたりにインタビューをしました。

　「自分が起業家になったつもりで」開発に向かう姿勢や、予想外のフィードバックもどんどん開発に落とし込んでいることがわかりました。

　今後もより多くのスタートアップ企業の役に立つ機能を開発していく予定です。今後の新しい機能リリースもどうかお見逃しなく。

聞き手/ライター：猪狩千尋

撮影：保立繁柾、鈴木達登