1990年にホテルウィング1号店をオープンして以来、約30年にわたりホテル＆レストラン事業を展開している株式会社ミナシア（旧：株式会社フォーブス）。

ホテル事業やレストラン事業を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するためにESGやSDGsの考え方を意識しながら3つのテーマ【環境に配慮したホテル運営】【地域連携強化】【未来を担う子どもをサポート】を軸に継続的な取り組みを行っている。

今回は、【未来を担う子どもをサポート】について実際に行っている取り組みを深掘り。ホテルウィングプレミアム東京四谷でスタートし、いまでは毎年、キャンセル待ちが出るほどの人気となっている「キッズアクティビティプログラム」の生みの苦しみ、育てる楽しさを取材した。

▶2015年からスタートした「キッズアクティビティプログラム」

ホテルウィングプレミアム東京四谷は2014年6月にJALシティ四谷からリブランドし、当社が運営する初のプレミアムブランドとして開業した。

今年で7回目を迎える「キッズアクティビティプログラム」は、延べ参加者数334名。（お子様182名・同伴された保護者は152名）。アンケートによる評価も「楽しかった」「また参加したい」「子どもに良い経験がさせられた」と非常に高い評価を得ている。

今では毎年キャンセル待ちが出るほどの人気となっている宿泊体験型のイベントだが、スタートするまでには色々なストーリーがあり、回を重ねるごとに苦労や学びもあって、イベントに携わるスタッフは「完成系がないサクラダファミリアのようなもの」とも話す。

当時、一児の父であった総支配人が、「子どもの夏休みの思い出づくりで何かできないか？」「親子ともに悩む自由研究や課題のお手伝いができないか？」、「そもそも、いろいろなことをやってホテルの知名度を上げられないか？」という想いでアイディアを出した。しかし、初年度はオープンから夏休みまでの時間がなく、初めての親子イベントの集客がうまくいくか不安もあったため社内から反対され、翌年の夏からスタートできるよう企画を温めた。

外部のイベント会社などの手は借りず、社内のスタッフだけで企画から募集、イベント運営まで行う「キッズアクティビティプログラム」。手探りで始まった企画会議では、いろいろなアイディアが出るものの収拾がつかなくなることもしばしば・・・しかし、迷ったときは「いかに子どもが楽しめるか？」で判断すると決めた。

館内で子どもでも体験できるホテルの仕事は？

フロント業務・ベッドメイク・消防設備点検・シェフの料理教室・・・参加する子どもたちがやってみたいことやお楽しみもないと面白くないだろうと話し合い、入社式やディナー後のお楽しみタイム「縁日コーナー」も取り入れることにし、また、保護者の方が「参加させたい」と思ってもらえる企画も入れるべきと考え、レストランサービス技能士が講師になり、楽しく美味しく学べるテーブルマナーも加えた。

企画決定から募集開始まで約1か月。社員の親子に参加してもらい、料理教室とテーブルマナーを実施して時間配分やわかりやすく教えるコツ、スケジュールの再調整を行って参加者を募った。

苦労してようやく形になった「キッズアクティビティプログラム」。1件目の予約が入ったときの喜びは一生忘れられないと総支配人は言う。

初年度は、子ども14名（10家族）が参加し、時間通りに体験プログラムを運営できているか、保護者の方が満足してくれているか？を気にしながら開催し、無事にトラブルもなく終了したが、反省点や改善点も見つかり、企画を盛り込み過ぎて利益を心配してくださる保護者の方もいた。

▶初回の苦労を乗り越え、成長し続けるイベントへ

初回を終えると、もっとこうしたほうがいいと、またスタッフから色々アイディアが出た。「お友達ができるようにグループ分けや男女比率をよく考えたほうがいい」「一般のお客様のご迷惑にならないようもっと配慮したほうがいい」「縁日コーナーのバルーンアートは一人にひとつ渡したほうがいい」「意外と名刺交換会が盛り上がる」という意見が出た。時間が空くと子どもたちが飽きてしまうので、普段は見ることのできない調理場やバックオフィス見学ツアーを追加したり、2日目の感想文を書く時間には早く書き終えてしまった子のためにナプキンアート体験を追加したり、支配人席に座って写真撮影会をしたり・・・初回にアドリブで行った飽きさせない工夫が今では定番のコンテンツとなっている。おかげ様で初回は「縁日コーナー」が一番好評だったが、2回目以降はその他の体験プログラムのコンテンツのほうが人気となっている。

毎回の苦労があるからこそ、ブラッシュアップして次々と良いものになってきており、募集すると数日で埋まる予約状況を見ると成長を実感する。

参加者は、子どもが「また来たい」というので参加したというリピーターや、地方在住の子で東京に住んでいる叔母と参加した子、なかには保護者の方が他のホテルで働いており、「自分の娘に自分の仕事をわかって欲しかった」と参加する親子もいた。

毎年、事前準備として名札や名刺作成、終了証を用意している。名前を間違えてはいけないと気を張る作業だが年々読めない名前や使い慣れていない漢字の子が増えていてスタッフが戸惑うことも・・・それも思い出話で出てくるほど、スタッフはこのイベントを毎回楽しみにしている。

コロナで2年間開催ができなかったため、今年の募集をスタートしたときはドキドキしたが、「キッズアクティビティプログラム」は満枠となったため今は募集を停止している。

＜プレスリリース＞

ディスカバリーキャンプ2023は現在も募集中。定員になり次第、募集停止）

▶ホテル＋周辺施設で体験する「ディスカバリーキャンプ2023」を今年より本格始動

ほかの地域ではできない独自性を加え、ホテルウィングプレミアム東京四谷を起点にした地域活性化を行うために周辺施設とコラボした「ディスカバリーキャンプ」を今年より本格始動させた。

夏休みの職業体験プランにウッドクラフトや防火・防災学習、新宿の歴史を学ぶ機会を加えることで、活動の輪を広げていきたいと考えている。ホテルのみならず周辺施設と協力し合い、さまざまな経験ができれば、子どもたちの体験の幅が広がり、夏休みの宿題にも将来の職業選択にももっと役に立つだろうと模索し続けている。

「キッズアクティビティプログラム」同様に、参加者の意見を参考にしながら、今後もっと成長させていきたいイベントのひとつになった。

▶イベント開催をきっかけに得るものは大きいと実感

「キッズアクティビティプログラム」などの体験プログラムを毎年実施しているのは別の意味もある。参加する子どもたちは皆、キラキラと目を輝かせ、初めて会う友達とも仲良くなり、一生懸命に学んでいる。そんな姿を見ていると、私たちのほうが元気をもらうことがある。スタッフも一緒に楽しみ、子どもたちから色んなことを学ばせてもらっている。

最初はホテル部門とレストラン部門、外部委託業者のベッドメイクさんとの調整も大変だったが、今では自ら参加したいというスタッフも多いため、「実は参加したいのに業務が入ってしまっている」など、運営スタッフのシフト組みは毎回苦労するとのこと。イベント運営には人手も必要なため、首都圏の他店舗からヘルプを募っているが、このイベントによってスタッフ同士がコミュニケーションをとれる機会にもなっているのでスタッフにも人気となっている。

当社は、同じように意欲的に学ぶ小学生を応援するイベント「こども国会」（運営：CHEERS株式会社）にも協賛し、イベントに参加させてもらうことで多くの子どもたちの前でホテルの仕事を紹介している。ホテル名を覚えてもらうだけではなく、子どもとの会話や政策アイディア発表の中から予想外の意見や斬新なアイディアをもらったり、毎回新たな発見があったりするのが面白いと感じている。

▶未来を担うこどもをサポートし続ける企業へ

行動制限緩和やインバウンド需要が急速で回復しており、宿泊業や飲食業を中心に人手不足が深刻化している。ホテル業界ではDX化が進み、無駄なコストや労力を省く業務の効率化が求められているが、「顧客接点」の部分では人によるおもてなしが重要となってくる。

近い将来、「キッズアクティビティプログラム」や「ディスカバリーキャンプ」に参加した子どもたちが、就職や転職の際にホテルウィングを思い出し、門をたたいてくれる日がくるのを夢見て、「未来を担うこどもをサポートする」ことは続けていく。

これからもさまざまな取り組みを続け、継続することによって企業ブランドおよびサービスブランドの認知向上、ブランド構築による企業価値向上に努め、さまざまなシーンで選んでいただけるホテルチェーンになるよう、挑戦はつづく。