福島県南相馬市では、「巣立ち応援18歳祝い金支給事業」として、18歳の成人を迎える市民のみなさんに門出のお祝いと応援の気持ちを伝える事業を令和4年度よりスタートしました。

具体的には、「祝い金（5万円）を支給する」、「まちの人からの応援メッセージポスターを市内中に掲示する」の2つのことをしています。

このストーリーではこの事業を実施した背景やポスター制作への想いについてお伝えします。

出産でも、入学でもなく、「巣立ち」に祝い金を支給する理由

なぜ18歳の「巣立ち」のタイミングで祝い金を支給することにしたのかをお話します。

１.  この時期は新しいことに挑戦できるタイミング

成人になる、進学・就職する、引っ越すなど、いままでの環境から大きく変わるこの時期は、今まで体験したことがない新しいこと、やってみたかったけどできなかったことに挑戦できるタイミングでもある。

祝い金をその原資にして、自分の世界を広げてほしかった。

２.  門出の時期はお金がかかる

卒業、進学、就職、引っ越し、免許取得などいろんなことにお金がかかるタイミング。実際にお金を支払うのは保護者の方かもしれないけど、お金を出してもらう18歳にとっても少し引け目を感じる時期かもしれない。

そんな思いを少しでも軽くしたかった。

ただ祝い金をわたすだけじゃない。「想い」を届けるために。

私たちは、地域みんなが18歳の「巣立ち」を応援していること、そしてこの事業の想いをより届けるためにどうすれば良いのか、担当課で何度も話し合いを重ねました。

そして、「まちの人からの応援メッセージポスター」に辿り着きました。

18歳のみなさんが普段話すのは、家族、友達、先生くらいかもしれません。

でも、いつもは話したことのないまちの人も18歳のみんなの成長を見守っている、未来を応援している。

そんな「がんばってね」「応援してるよ」という気持ちを伝えたくて、まちのみなさんに協力いただき応援メッセージポスターを作成することにしました。

見慣れた風景と生の声から作った6種類のポスター

応援メッセージポスターを作成するにあたって、一番伝えたい18歳のみなさんに見てもらえるポスターを作りたい。その想いで委託業者であるmarutt株式会社と一緒に検討を進めていきました。

被写体の選定については、18歳のみなさんが普段行くお店や馴染みのある場所などを直接高校生に聞いて検討を進め、「南相馬を感じてもらえる、懐かしい」と思ってもらえる場所や地域のみなさんを選び、6種類のポスターを作成しました。

そして、それぞれのポスターに添えたメッセージも、被写体にインタビューを行って、本人の言葉からその想いを、コピーとして紡ぎだしました。

また、その6種類のほか、18歳が被写体となるポスターも作成しました。

メッセージを受け取る側である18歳のポスターには、メインコピー以外の言葉はありません。

18歳のみなさんが家族、友達、先生、地域に想う気持ちや伝えたい言葉は違う。

だからこそ、ポスターには言葉は入れず、それぞれの想いを馳せて感じてほしい。

そんな想いを込めて、全部で7種類のポスターが完成しました。

被写体の方の18歳に対する想いや撮影の裏側については、こども家庭課noteで掲載しています。

「さぁ、行っといで。」に込めた想いとは

ポスターのメインコピー「さあ、行っといで。」は、全ての18歳に向けての言葉です。

「成人の門出」は全ての18歳に訪れます。

いままでは「こども」、これからは「おとな」。

人生の中でも一、二を争う重要な門出へのはなむけの言葉です。

また、進学、就職、それに加えて引っ越しなどで、新しい環境に身を置くことになる人も多くいます。

そんな彼らに「地域社会全体でみなさんを応援しているよ」という想いを贈りたい。

文字通り人生の”門出”に立つ18歳に贈る言葉として、玄関先で背中をポンと押し、送り出す実家の雰囲気を込めて「さぁ、行っといで。」という言葉に表しました。

少しでも多くの人に届いてほしい

市役所っぽくない封筒を

まずは対象である18歳のみなさんに見てほしい。この事業はただ5万円を配るだけじゃない、18歳を応援する気持ちを伝えるためにも、封筒を手に取って応援メッセージを受け取ってもらいたい。

そこで、長方形の落ち着いた色の”いつもの封筒”ではなく、イベントの招待状のような、ワクワク感があるトレーシングペーパーでできた半透明の封筒を選びました。

大事な人の言葉はそれだけでお守りになると思う

それ以外にも、封筒入れてある1枚のまっさらな色紙。

この色紙は誰かにメッセージを書いてもらうために入れました。

家族や友人、お世話になった先生たちから応援メッセージをもらい、新しい環境・ステージへ挑戦をする際や何気ない時に見返して欲しい。

巣立ちのタイミングは一瞬だけど、この色紙はずっと手元に残る。

ふと色紙をみた時、いまの大事な思い出に勇気づけられるとともに、ちょとだけ南相馬のことも思い出してくれたら嬉しい。

そんな思いで18歳のみなさんに白紙の色紙を贈りました。

より多くの人に見てもらうために

18歳の「巣立ち」を地域全体で応援するため、そして市外のみなさんにもこの応援メッセージポスターを見てほしい。

ただ、これまで通りの手法でPRしたとしても限界があり、多くの方に見てもらうことは難しい。

そこでmarutt株式会社さんと本事業について、そして南相馬市の子育て環境を市内外のみなさんに知ってもらうために、今までのこども家庭課の情報発信する媒体の環境整備を改めて検討しました。

noteではHPやSNSでは伝えられない被写体の方の選定理由や事業についての裏話、そして市外へ広く周知するために「PR TIMES」への掲載。

その反響は私たちの想像を超えるほど、多くのみなさんに見ていただき、「このポスターを見て元気づけられた」「こんな風に応援してもらえたらうれしい」など電話やメール、SNSなどに多くの感想が寄せられました。

18歳の巣立ちを地域全体で「応援しているよ、見守っているよ」という気持ちをポスターという形に変えて、届けられたら。そんな思いでスタートしたこの事業を多くの方に見ていただくことができ、より一層、多くの方が18歳、そしてこどもたちを応援しているということを実感しました。

18歳へ送るメッセージ

18歳の巣立ちの日を大切な人と

高校の卒業式である3月1日。

高校生から大学生、社会人などそれぞれの道に進んで行く日。

その最後の日を、家族や友達、部活の仲間などと大切な思い出として残してほしい。

この撮影会はそんな想いを込めて、思い出とになる1日となるよう開催しました。

そして、撮影する18歳のみなさんが持っている花はポスターでも使用されているガーベラ。

花言葉は「前向き」「常に前進」。そんなメッセージを込めて。

新たなステージに進んだみなさんへ

巣立ちの日が過ぎ、故郷を離れた人、地元で環境が変わった人、新たな環境に進んだみなさんを巣立った後も何かメッセージを送ることはできないか・・・

新たなステージに進み、楽しいこともあれば、辛いこともある。

そんなみなさんを「いつでも応援しているよ」と伝えたい。

それは家族だけではなく、地域のみなさんがそう思い、18歳のみなさん、そしてこどもたちが大きく成長する姿を見守り、その成長に喜びを感じている。

そんな地域のみなさんの想いを少しでも届けることができたらと、市の図書館にメッセージBOXを設置し、18歳への応援メッセージを募集しました。

本当にたくさんの方々からメッセージをいただき、こどもたちの巣立ちをこんなにも応援していることがとても嬉しく、そのメッセージを巣立ったみなさんへどうしても伝えたいと思い、一人一人メールにてお送りしました。

近くでは応援することはできないけれど、この南相馬市から応援する気持ちを色紙に込めて・・・

令和５年度も新たに巣立つみなさんへ

今年度も新たに巣立つみなさんへ向けて、祝い金の支給手続きが開始ました。

また、18歳のみなさんへ応援のメッセージが伝わりますように、想いを込めて応援メッセージポスターを作成しています。

多くのみなさんに見ていただき、少しでもメッセージが伝わりますように。

南相馬市は地域のみなさんと一緒に18歳の巣立ち、そしてこども・子育てを本気で応援しています。

■巣立ち応援18歳祝い金支給事業

　ホームページ：https://www.city.minamisoma.lg.jp/portal/sections/15/1510/15101/3/19747.html

　note：https://note.com/minamisoma_18sai/

　問い合わせ先：南相馬市　こども未来部　こども家庭課

　　　　　　　　〒975-8686 福島県南相馬市原町区本町2丁目27（東庁舎１階）

　　　　　　　　（電話）0244−24−5229

　　　　　　　　（E-mail）kodomokatei@city.minamisoma.lg.jp

　Art direction + Design : 西山 里佳（marutt Inc.）

　Producer : 斎藤 亮太（marutt Inc.）

　Photograph : 白井 亮

■marutt Inc.

　地域にひらかれたデザイン事務所を目指し、デザインというツールで困りごとや、もやもやを「まるっと」解決するお手伝いをしています。企業や商品のブランディング、ビジュアル戦略や広報物の制作をはじめ、イベント企画等のソフト面から、店舗や施設等のハード面まで企画、提案、制作をします。

　また、「表現からつながる家『粒粒』」のクリエイティブスペースとしての運営に加え、多様な粒が集い、個々が表現するきっかけに出会い、デザインやクリエイティブが身近になるような場所づくりを行っています。

■白井 亮／Ryo Shirai

　写真家 /1979年福島県いわき市生まれ。大阪芸術大学写真学科卒業後、広告代理店のスタジオ勤務を経て、2007年上田義彦氏に師事。2011年独立。広告をはじめ、雑誌、書籍などで、ポートレート、ランドスケープ、静物などの撮影を手がけながら作品を発表している。

主な作品に国土交通省主催の地域振興プロジェクトで、半島に暮らす人や風土、産物を撮影した「半島のじかん」、東日本大震災後に福島県富岡町夜の森地区の警戒避難区域に咲く桜と街を撮影した移動写真展「桜の森 夜の森」、北海道江差町で江差追分を唄う名人など、十二人の肖像を撮影した写真集「江差 凪の刻」、秋田のあけび蔓細工職人の籠や、材料の蔓採りから籠編みまでを四季を通して撮影した書籍『中川原信一のあけび籠』がある。

Official Website : http://ryoshirai.com

■南相馬市の子育て施策

　子育て世代に心強い３つの無料化（給食費・保育料・医療費）や出会いから結婚、子育て、教育等、補助金を含めた切れ目のない支援を行っています。

詳細は市ホームページをご参照ください。