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日本酒「久保田」を生かした独自のPR。コラボレーション企画へのこだわり。

「品質本位でお客様の美味しさに挑戦しつづける」という思いで、日本酒と向き合い続ける朝日酒造。近年、日本酒好きの方だけでなく幅広く愛されるブランドに変化しています。

久保田が、幅広い年齢層に愛されるきっかけをつくったのは、社長直轄「ブランドコミュニケーションズマネージャー」に抜擢され、現在マーケティング部課長として活躍している高橋さん。他社とのコラボレーション企画や、久保田のリブランディングを中心に活動されています。

15年以上、広報PRを担当されている高橋さん。今回は久保田をどのように広報PRをして、他社とのコラボレーション企画を成功されてきたのかお伺いしました。

朝日酒造株式会社

高橋英里(Takahashi Eri)

デザイン会社でのPRを担当し、大手PR代理店に9年半勤めたのち、2017年6月に朝日酒造株式会社に入社。朝日酒造でブランドコミュニケーションマネージャーに抜擢され、現在はマーケティング部で、広報PRを始め、イベント、サイト・SNS・オウンドメディアなどのデジタル、販促、メルマガなどコミュニケーション活動全般を担当。

コラボレーションへのこだわり

── かなり長い間、広報PRの業界にいらっしゃると思いますが、前職の東京のPR代理店では、どのような広報PR活動をされたのでしょうか。

高橋:商業施設系の広報を担当していました。東京スカイツリー、虎ノ門ヒルズ、プレミアム・アウトレットの開業などです。その他にも、IT関連や自動車、製薬など幅広く携わっていました。入社初期のころは、ひたすらメディアに電話をかけたり、商業施設で取材対応したりすることが多かったです。役職が上がったあとは、企画書を書いたり戦略を練ったりする業務が中心でした。

会社として広報PRを強化する方向に

朝日酒造株式会社02

── 朝日酒造では、具体的にどのようなことを行っているのでしょうか。

高橋:2017年に入社してから2年弱は部署に所属せず、社長直轄のブランドコミュニケーションズマネージャーとして久保田のリブランディングを行っていました。主に久保田のミッションビジョンの立て付けや、リニューアル商品の考案など久保田のブランドマーケティング全般です。

現在はマーケティング部で、広報PRを始め、イベント、サイト・SNS・オウンドメディアなどのデジタル、販促、メルマガなどコミュニケーション活動全般を担当。その一環として、企業とのコラボレーションを行っています。

── 役職を担当したのは、どのような経緯だったのでしょうか。

高橋:求人応募があり、朝日酒造に応募をしました。私が入社をする前に「リブランディングをしたい!でも、できる人間がいない」という悩みを会社が抱えていたんです。久保田を発売して30年以上経ち、ピーク時の売り上げから下がり続けていて。社長1人で、久保田をどのように変えるべきかを悩んでいましたね。以前、代理店にも相談したものの、なかなかうまく進まなかったらしく。

そのタイミングで、ご縁があってブランドコミュニケーションズマネージャーになりました。広報課はあり、地元メディアへの広報活動はしていたものの、PRとしての機能は十分ではない状態だっため、広報PRも強化しました。

はじめてのコラボレーションは先方からの提案

朝日酒造株式会社03

── 以前から他社とのコラボレーションは盛んに行われていましたか。

高橋:久保田は、数年前までは他社とのコラボレーション自体が禁止でした。はじめて他社とのコラボレーションをしたのは、2017年です。スノーピークの代表が発案し、当社の代表が受けたことを機にスタートしました。

── どのようなコラボレーションだったのでしょうか。

高橋:「アウトドアで日本酒を楽しむ」をテーマに日本酒を共同開発し「久保田 雪峰」をつくりました。

スノーピークの代表から、コラボレーションのオファーをいただきました。キャンプで楽しむ飲み物をテーマに考えていらっしゃったところ、同じ新潟の地に根をおろしている朝日酒造を選ばれたそうです。

この取り組みをするまでは、他社とのコラボレーションをまったくしない方針だったので、久保田にとって大きな動きでした。

コラボレーションの基準は共感する信念とストーリー

── 2022年4月の丸山珈琲とのコラボレーションは、どのように考えられたのでしょうか。

高橋:大前提として、飲食店とのコラボレーションやペアリングなどはOK。久保田や久保田の酒粕などを使った小売商品の製造・販売はNGです。

久保田とコラボレーションをするときのルールを守った上で、その企業がどんな想いで経営されているか、信念やストーリーに共感できるかがコラボレーションを実現させられるかのポイントになってきます。

スノーピークとのコラボレーションが実現したのは、信念やストーリーに共感したことが理由でした。現在、商品開発は予定をしておりませんが、飲食店とのコラボレーションは引き続き行う予定です。

年間十数社以上からオファーをもらうことも

朝日酒造株式会社04

── コラボレーション相手に対してこだわっていらっしゃるんですね。久保田となれば、多くのオファーがあるのではないでしょうか。

正直、大手企業からもたくさんオファーをいただいていますが、泣く泣くお断りしております。久保田や久保田の酒粕などを使った小売商品の製造・販売はNGなため、難しい場合が多いですね。

── その上で、2022年4月に丸山珈琲とコラボレーションをされたきっかけを教えてください。

高橋:以前から百貨店で試飲販売会以外の取り組みができればと考えており、つながりがあった伊勢丹へはさまざまな提案をしていました。

その際に「4月にコーヒーの催事があるよ」とお話をいただいて。丸山珈琲をご紹介いただき、話を進めることになりました。

──「日本酒×コーヒー」は珍しいと感じました。丸山珈琲への提案予定は当初からあったのでしょうか。

高橋:もともと酒小町(日本酒コミュニティ)に「日本酒×コーヒー」の記事を書いていただいたので、提案イメージもある程度できあがっていたんです。Webマガジンに載せているものは、イベントにつなげやすく、今回も丸山珈琲にとんとん拍子で承諾が得られました。

イベント開催が決定した後は、丸山珈琲と自社から3種類ずつコーヒーと日本酒を選び、双方のマーケティング部署のメンバーで毎晩ペアリング。メンバー内で「このペアリングがいいのでは」となった組み合わせが、丸山珈琲側ともぴったりでした。

マスメディアを通して新規層へアプローチ

朝日酒造株式会社05

── 他社とのコラボレーションをするなかで、意識していることがあれば教えてください。

高橋:日本酒がそもそもニッチコンテンツなので、コラボレーションをするときは、マスメディアをつかい、新規開拓を意識しています。既存の顧客だけでなく、若い世代にも親しんでもらえるような工夫をしています。

椿山荘とのアフタヌーンティーDEAN & DELUCAとの日本酒といちごの限定メニューは非常に反響があり、ファッション、女性系メディアにも取り上げられました。

ファッション・女性系メディアから拡散

── ファッション・女性系メディアへ取り上げられた際はどのような工夫をされたのでしょうか。

高橋:もちろん戦略的に狙っても拡散されない場合もありますが、できるだけ取り上げられるように意識しています。特に、アイスやスイーツとのコラボレーションは相性が良く、メディアにも取り上げられやすいです。

某ファッションメディアに取り上げられたときは、すぐに反響がありましたね。

── 具体的にどのような反響がありましたか。

高橋:椿山荘とのアフタヌーンティーでは、SNSで拡散され、予約開始後1週間で満席になりました。特にTwitterは、SNSの性質的にリツイート機能があるので、取り上げられたときの拡散力は凄まじいですね。

おしゃれで見栄えのいい写真を意識

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── 相性がよいメディアに取り上げられるために、意識していることがあれば教えてください。

高橋:正直、日本酒だけだとファッションや女性系メディアとは相性がよいとは言えません。アイスやスイーツとのコラボレーションをすることによって、日本酒だけのイメージとガラッと変えることができます。

SNS用の写真を用意するときは、あえて日本酒をメインでは撮らないこともあります。

日本酒アピールよりも、「かわいい!」「おいしそう!」と思ってもらえる写真になるように意識をすることで、普段日本酒を飲まない方にも親しんでもらえるよう意識しています。

家飲み需要を逆手に。コロナ禍で販路拡大

── ここ数年、コロナの影響は少なからずあったと思いますが、対策されたことはありますか。

高橋:最初の緊急事態宣言になったときは、月の出荷額が半減しました。販売額も業務(飲食店)への販売額の方が高いので、影響は大きかったですね。

一方で、コロナ以前に販路拡大のため、量販店向けに久保田を正規で卸しはじめていたところでした。緊急事態宣言の発令期間が長引いたり、まん延防止等重点措置がそれ以上に続いた影響で、家飲み需要が増え、数ヵ月程度で売り上げは戻りはじめました。

既存顧客に対するコミュニケーション

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── 新規顧客の獲得に対して、非常に力を入れられている様子が伺えますが、既存顧客向けに行っている施策があれば教えてください。

高橋:これまで話していた内容だけだと、新規開拓にフルコミットしているように見えるかもしれませんが、実は既存顧客に対してのファンコミュニケーションにもかなり力を入れています。

月に1000件以上のお客様の投稿にコメント

── 具体的にどのような施策を行っているのでしょうか。

高橋:自社でInstagramを運用していて、そこでファンとのコミュニケーションをとるようにしています。コラボレーション商品を載せたり、見栄えのいい写真を投稿したりすると、コメントをいただくことがあり、いただいたコメントにすべて返信するようにしています。

また、お客様の投稿にコメントを毎日約30件程度行うようにしています。

── 毎日30件……! かなり労力がかかりそうに思うのですが。

高橋:多いときは月に1000件以上コメントすることもあります。もちろん時間はかかりますが、朝日酒造からのコメントを喜んでくれるファンの方がたくさんいらっしゃるので今後も継続していく予定です。

コメント以外にもDMでの返信も行っているので、月1000件よりももう少し上回っているかもしれませんね。

キャンペーンのプレゼントは手書きのメッセージを添えて

── 差別化ができそうですよね。ほかにもファンコミュニケーションで行っている施策はありますか。

キャンペーンの当選者へのプレゼントは、必ず手書きのメッセージを添えてお送りするようにしています。細かいことかもしれませんが、定型文だけではなく、一人ひとりに対して想いを伝えることは、より強い想いを持ってくれるファンになってもらうために必要なことだと思います。

コラボレーションは相乗効果がある企業コラボを意識

日本酒というニッチコンテンツを多くのお客様に届けるためには、話題性を産むためのコラボレーションが不可欠です。しかし、マスメディアばかりを意識しすぎては、自社商品のブランディングが崩れてしまいます。

朝日酒造は、拡散されるために必要なコンテンツと自社が崩したくない企業ブランドを守るバランスを非常にうまく保たれているなと感じました。

他社とのコラボレーションに悩まれている方、まだ他社とのコラボレーションをしたことがない企業の方は、ぜひ参考にしてみてはいかがでしょうか。
(写真提供:朝日酒造株式会社)

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この記事のライター

本庄遥

本業は世界を飛び回るソフトボール選手。ベンチャー企業で広報、マーケティング会社で取材ライターを担当。また、企業のマーケティング責任者、執行役員などを務める。

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