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熱海で200年超。メディアが注目する老舗旅館、17代目がはじめたPR |合資会社古屋旅館

創業1806年の熱海でもっとも歴史ある旅館とされる「古屋旅館」は、年間通して満室が多く、閑散期でさえ通常時の8割が埋まるという大人気の温泉宿です。今回お話を伺った内田宗一郎さんが代表取締役に就任した2015年は、グループ全体の売り上げが前年の115%、2023年はそこからさらに130%と成長を続けています。

また、旅館経営にとどまらず、「和栗モンブラン専門店」や「ラグジュアリーパフェ専門店」を展開し、事業を拡大。熱海の賑わいを復活させる一翼を担ってきました。

さらに、社内でも業務の一部をアウトソーシングしたり、従業員の福利厚生を手厚くしたりするなど、新たな取り組みを行っています。ここ数年はそういった取り組みを、プレスリリースやSNSを活用して発信し始めたことで、メディアからさらに注目される存在に。本記事は、内田さんに、広報PRに注力するようになったきっかけや、老舗旅館として広報PRを行う意義などについてお話を伺いました。

合資会社古屋旅館(静岡県熱海市):最新のプレスリリースはこちら

合資会社古屋旅館 代表取締役/株式会社モデストスマイル 代表取締役社長

​​内田 宗一郎(Uchida Soichiro)

静岡県生まれ。高校卒業まで地元で過ごしたのち、大学進学で上京。早稲田大学法学部を卒業し、株式会社三和銀行(現株式会社三菱東京UFJ銀行)入行。平成14年に古屋旅館に入社し、平成27年より同社代表取締役に就任。地域活性化の活動にも尽力し、熱海市観光協会副会長、熱海温泉ホテル旅館協同組合理事、熱海商工会議所青年部理事も務める。

広報PRの重要さは知りつつも、動き出せずにいた4年間

──老舗旅館ということもあり、昔からのご贔屓のお客さまが多くいらっしゃる中で、​​広報PRに力を入れようと思った出来事や人物がいたのでしょうか。

以前から情報発信の必要性については認識していて、2016年から2017年ごろ、コンサルタント会社が開催する広報セミナーに集中して参加していました。そこでプレスリリースが重要ということを知り、やってみたいと思っていたんです。

一方で、田舎の旅館の代表というのは社長兼プレイヤーであり、さらに地域の活動においても役職を持っていて、なかなか広報まで手が回らなくて。常に頭のどこかにプレスリリースのことはあったのですが、後回しにしてしまい、セミナーに参加してから4年ほど経ってしまいました。

──一念発起してプレスリリースに着手したのにはどのような想い、考えがあったのでしょうか。

2021年2月に熱海に「和栗モンブラン専門店」を開店することになり、そのための新会社を設立したのがきっかけです。コロナ禍で旅館の運営も大変な中で、大きなチャレンジでした。しかし、転換点となる出来事。これを機にずっと頭にあった情報発信を始めることにしたのです。

PR TIMESでプレスリリースを配信することにしたのは、テレビ取材に来てほしかったからというのが大きな理由です。自社のブログやSNSで発信するよりも多くの方に見てもらえるのでは、という期待がありました。

参考:熱海一の老舗温泉宿「古屋旅館」がスイーツ事業の新会社設立。今春、熱海銀座商店街に「和栗モンブラン専門店」

──最初のプレスリリースの反響はいかがでしたか。

当時は、出店した地域(熱海銀座商店街)にラグジュアリーな飲食店というのがほとんどなかったので、珍しさからかさまざまなメディアで取り上げていただき、SNSでも話題になりました。プレスリリース自体のPV数もどんどん伸びて、可視化されることで効果を実感しましたね。開店から3年経った今もお客さまは途切れることはなく、一過性のブームに終わらなかったのもよかったと感じています。

合資会社古屋旅館インタビュー01

老舗としての「意外性」と連続することでの「ストーリー性」を

──これまでさまざまなプレスリリースを配信されていますが、もっとも反響があったプレスリリースを教えていただけますでしょうか。

やはりDX化による業務改善のプレスリリースでしょうか。老舗旅館がDX化を推進するという「意外性」が注目いただいた理由だと思います。人材不足の解消というのもメディアの関心度が高いトピックです。とある有名ニュースサイトで、このDX化による業務改善に関する記事が非常に読まれ、「いいね」をたくさんつけていただきました。

あとは「チタン製熱交換システム」を使った温泉熱活用のニュースも環境に配慮した取り組みとして注目していただきました。広告効果も非常に高いため、できる限りメディアの方の目に留まるようなプレスリリースを心がけています。

予約データのオンライン&アウトソーシング化プレスリリースのポイント

合資会社古屋旅館プレスリリース01

参考:創業200年超、熱海一の老舗温泉宿「古屋旅館」が予約データ入力のオンライン&アウトソーシング化を推進、月間120時間の作業時間短縮を実現

まず老舗旅館によるDX化という「意外性」が大きなフックとなっています。また、旅館という労働環境が厳しいとされる業種の作業時間短縮の実現は、働き方の課題解消につながる「社会性」を感じられるニュースだったのではないでしょうか。さらに、月間120時間という具体的な数字を用いることで、どの程度のインパクトであったかが一目でわかります。今回の場合、0.6~0.7人分の業務効率が図れていることが想起できます。

温泉熱活用プレスリリースのポイント

合資会社古屋旅館プレスリリース02

参考:熱海の老舗温泉宿「古屋旅館」が「温泉熱活用」の10カ年計画の目標達成。年間の重油使用料をゼロに

熱海の温泉熱の活用は、その地域ならではの「地域性」、CO2削減など環境への配慮は、「社会性・公益性」があるニュースと言えます。また、「10カ年計画の目標達成」「重油使用料がゼロ」と、具体的な数字を盛り込むことで、達成難度の度合も図れます。本文中では目標達成できた要因として、実際に取り組んできた過程を丁寧に解説。情報をオープンにし、自社だけでなく業界の発展につなげられるよう取り組む古屋旅館の真摯な姿勢がしっかり伝わる構成になっています。

──メディアから注目されるために、プレスリリースを作成する際にこだわっていることや、気をつけていることはありますか。

意識しているのはニュースの連続性やストーリー性です。例えば、2022年に館内の大規模なリニューアル工事を行ったのですが、普通ならリニューアル完了後にプレスリリースを配信することが多いですよね。その点当社では、まず「リニューアルのために休館します」というプレスリリースを配信し、工事が完了してから再度「リニューアルしました」と配信したのです。この狙いは、休館してまでリニューアルするというのを知っていただくことで、期待値を上げること。それから、連続して配信することでニュースにストーリー性も持たせています。

──たしかに期待値が上がりますね。

実際にプレスリリースを配信するようになって、あらためて感じているのですが、過去にもメディアに注目してもらえるような取り組みをたくさんしてきたんですよね。もっと早くやっていれば、「面白いことをやっているね」と言っていただけただろうな、と少し後悔しています。

やはりプレスリリースは自社のブログなどとは大きく異なり、社外の方に古屋旅館の先進的な取り組みを広く知っていただく機会になります。最近ではプレスリリースを出したら、必ず地元の新聞社にも知らせるようにしており、その成果として取り上げられるようにもなりました。

また、社内に対しては「社外に発信できるような取り組みをしている会社だ」と誇りに思ってもらえる機会になると思いますね。

合資会社古屋旅館インタビュー02

優秀な人材確保にも情報発信は不可欠

──メディアに取り上げられるようになったことで、予想していなかった効果や感じているメリットなどはありますか。

いろいろありますが、わかりやすいのは採用面でのメリットですね。新卒者からのエントリーが増えていて、今年は6名も入社してくれました。熱海の田舎で、チェーン展開もしていないこの旅館からすると、非常にありがたい状況だと思います。

この業界はどこも慢性的な人手不足で、年間通じて求人活動をしている施設が多いんですよね。だからこそ、自社を差別化するにはしっかり情報発信することが必要です。中小の施設はそういった活動をしていないことが多く、プレスリリースを通じてどんな会社なのかをうまく伝えられれば、当社のバリューを感じてもらえると思っているんです。

──社員への福利厚生に関するプレスリリースも、採用面で効果を発揮したのではないでしょうか。

「ファミリーエンゲージメントプログラム」の導入ですね。社員やその家族の宿泊を無料にするという、福利厚生の延長としてみれば普通の取り組みですが、プレスリリースとして出すと独自の価値が生まれますよね。こちらの件では取材も入り、いろいろな方面から好評だったので、「こんな普通のことを発信してもな」と躊躇せずに、まずは発信してみることがすごく大切なことだと身にしみました。

|「ファミリーエンゲージメントプログラム」プレスリリースのポイント

合資会社古屋旅館プレスリリース03

参考:熱海の老舗温泉宿「古屋旅館」、社員・家族の宿泊を無料にする福利厚生「ファミリーエンゲージメントプログラム」を開始

発表しなければ、なかなか知ってもらう機会のない社内に対する施策。内田さんのコメントにある通り、採用に対して有効と言えます。また、メディアに対しては、先ほどのDX化のプレスリリースと同様、過去に取り組んできた働きやすい環境づくりの事例を記載することで、単発ではなく継続的な取り組みであることを表現。「宿泊無料」という、旅館ならではの「独自性」もあります。

自社だけでなく熱海をけん引して地域貢献を

──古屋旅館として、これからどんなことを強化していきたいですか。

今進めているDX化や働き方改革は、さらに進める予定です。採用や経理も進めているので、形になったらまた発信したいですね。

これは、PR的な意味だけでなく、現場でしかできないサービスを強化していきたいためです。当社は宿泊施設の予約サイトへの口コミをすべてチェックしていて、必ずお返事を書くようにしているんです。旅館は「人」ありきで、お客さまにお一人おひとり「こんにちは」と声をかける。現場以外でのコミュニケーションも大切にする。これが旅館のサービスの価値です。

PR的な意味だけではないと言いながらも、口コミでのやり取りは、そのやりとり自体が広報の一環になります。そういう業務へリソースを割くことが重要だと思っています。

──では最後に、代表として広報PRを強化する意義について、お聞かせください。

最初はなかなかプレスリリースに着手できませんでしたが、実際にやっていくと、配信するのが楽しくなってきたんです。例えば大企業なら、日経新聞に出るのが目標みたいな慣習があるじゃないですか。そんな感じで、プレスリリースに出せるような取り組みをしようと思えば、モチベーションにつながります。

それから、私たちが先進的な取り組みをし、社外に発信していくことで、自社だけでなく熱海全体が活気づくことにも重きを置いている点です。かつての自分のようになかなかプレスリリースにまで手が回らない旅館もあるかと思います。ですが私たちが情報を発信し続けることで、ひとつの見本になるかもしれません。同じようにやってみたいと思う方が増えてくれたらいいですよね。この業界や、地域全体をよくする観点で、これからも新しいことを続けていきたいです。

合資会社古屋旅館インタビュー03

まとめ:老舗旅館が手がける意外性。メディアが取り上げたくなる存在に

これまでの歴史や伝統を大切にしつつも、それだけに頼らずあらたなことに挑戦し、企業としての可能性をますます広げている古屋旅館。

社外に対して広めることの大切さや、プレスリリースを通じて情報発信することで得られている効果について伺う中で、内田さんの狙いや工夫には、メディアが取り上げたくなるポイントが多く存在しました。

また、内田さんが代表となり、企業理念を策定し「Mission:お客様と社員の幸せを第一に考える」を掲げている同社。広報PR活動への期待は働く社員のためのものでもあったのです。

古屋旅館の代表である内田さんが大切にする広報PR活動のポイントは3つ。

  • 「意外性」:老舗旅館がDX化などの先進的な取り組みがフックに
  • 「連続性」「ストーリー性」:一過性にせず、企業や事業としての「成果」だけでなく、「行動」を発表することででより期待値を上げる
  • 「地域」「業界」「社員」:視野を狭めず、企業や事業を超えた価値を発揮する

これらは歴史の長い企業や、地元に根付いた商店の方々だけでなく、新たに広報PRに取り組もうとしている企業にとって大いに参考になるポイントではないでしょうか。また、ポイントとして挙げた3つは、どのような企業も押さえておきたい内容です。

今後、ますます新しいことに取り組んでいくであろう古屋旅館と活気が戻っていく熱海という町に目が離せません。

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この記事の監修者

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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