話題のスタートアップ「GREEN SPOON」や「PostCoffee」、「PETOKOTO」などの広報PRを担う熊本薫さん。BREW株式会社でベンチャーキャピタルと取締役を務めながら、出資先のみならず出資していない企業の広報PRサポートを担われています。その数、なんと14社!(2021年10月25日取材日時点)
プライベートでは二児の母でもある熊本さんは、一体どのように複数社の広報PRを担われているのでしょうか。仕事で大事にしていることやこれまでのキャリア、熊本さんの広報PR観についてお伺いしました。
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広報PR歴7ヵ月で14社を支援
── 同時に14社ものスタートアップ・ベンチャーの広報PR支援をされていると聞いて驚きました。
熊本さん(以下、敬称略):自分でも数えてみてびっくりしました(笑)実は、広報PR担当として本格稼働し始めたのは、今年の4月からなんです。BREWの出資先である「GREEN SPOON」が好調だったのですが、事業責任者が広報PRを兼任していてどうしても稼働に限界があり……スタートアップで資金も潤沢にあるわけではないので、私が広報PRを担当することに決まりました。
── 初めての広報PR業務はどのように身につけられたのですか?
熊本:過去の取材実績をベースとしたメディアリストはあったので、最初はそこから一人ひとりに連絡して、ご挨拶の機会を作りました。お会いしたメディア関係者との信頼関係を強固にするのもちろん、メディア・リレーションズの幅を広げていこうと考え、お会いした方に別のメディア担当者さんを紹介してもらいながらリストを増やしました。
また、X(旧Twitter)で他社の広報PR担当者と積極的に交流し、情報交換やメディア関係者の紹介などをしてもらいましたね。
そうして広報PR業務に向き合ううちに、メディア露出獲得の成果が出始め、さまざまなスタートアップの広報PRサポートをするようになり、気づいたら14社になっていました。
原動力は「誰かの頑張りを伝えたい、誰かの役に立ちたい」気持ち
── 広報PR担当になったのは今年の4月ということですが、改めて、熊本さんのご経歴を教えて下さい。
熊本:株式会社USENに営業として新卒入社し、1年目に結婚、妊娠・出産。そのまま育休を取得して、3年目に復帰しました。グルメサイトの営業として働く中で、ママ会特集ページを提案して作成するなどの企画業務も始めるようになりましたね。そのページの反響が想像以上に大きく、2年後に乳幼児ママ向けの総合情報サイトを立ち上げ、編集長に就任しました。
その後、大学時代の友人で、マンガアプリ事業などを手掛けるand factory株式会社の創業者でもある小原から、立ち上げたばかりのand factoryの話を聞き、ビジョンや事業に共感して、転職を決意したんです。
── and factoryではどんな業務を担われていたんですか?
熊本:働くママ向けのサイトを立ち上げて編集長に就任しました。ママライターのディレクションや、タイアップ企画の立案など、過去の経験を活かしたメディアづくりを進めていました。
ですが、ママ向けサイトとしては後発だったこともあり、スケールしない状況が続いて。次第にひとりで思い悩むことが増えていきました。「編集長として全然できていない」とか、「ほかの人は優秀なのに、なんで自分はできないんだろう……」とか。
そうしているうちに、とうとうメンタルを崩してしまったんです。
── そうだったんですね。その後はどうされたのですか?
熊本:2ヵ月ほど休職しました。ただ、その期間にメディアを他社に本格的に譲渡することが決まったので、「復帰しても私のポジションはあるのか」という不安でいっぱいになってしまって。
そんな中、私が復帰するタイミングで、小原が「熊本はそこにいてくれるだけでいい。ポジションを何かつくって」と、経営会議で私の居場所を作るよう取り計らってくれたようなんです。本人からではなく、後から人事責任者に聞いたんですけどね。そう言ってくれる経営者がいる組織で、自分にできることをやりきりたいという想いが次第に強くなりました。
復帰後はバックオフィス部門で総務担当として業務を再開しました。お弁当の手配やオフィスのゴミの処理などの日常業務をこなしつつ、インターナルコミュニケーションも担っていました。社員一人ひとりの頑張りをみんなに知ってもらおうと、社内報や社内イベント等を企画していました。経営会議の突撃レポートは好評でしたね。
今もサポートしているスタートアップのみんなの頑張りを伝えたいという想いで業務に向き合っています。「誰かの頑張りを伝えたい、誰かの役に立ちたい」という気持ちが私の原動力になっているのかもしれません。
いま私が取締役を務めるBREWは、小原がand factoryの会長職に就いた後、また事業づくりがしたいと今年4月に本格稼働した会社です。人生の恩人である彼とまた一緒に働きたい、自分自身も挑戦し続けたいと思い、BREWへの転職を決めました。
複数社の仕事を請け負うからこそ、丁寧で正直な期待値調整を
── 仕事をお受けする際に大事にしていることはありますか?
熊本:「期待値調整」はとても大事にしています。ご相談をいただいた際に、必ず社長と話をするようにしており、相手企業が期待していることと私ができることを丁寧にすり合わせるようにしています。
私の強みはメディア・リレーションズを活かしたメディア露出です。X(旧Twitter)仲間やメディア関係者、知り合いのご縁を活かして、さまざまなメディアへの露出を試みます。また、スタートアップは市場や事業の方向性が刻々と変わるので、長期的な戦略を緻密に練るスタイルは採用しにくいと思っています。こういった広報活動の方針や考えをお伝えするようにしていますね。
また、どんなに小さな掲載面でもチャンスがあれば、前向きに話を進めます。点を線に、そして面にすることで、大きな掲載に繋がることもあるからです。なので、掲載先を限定・選択したい企業には他のPR会社の知り合いをご紹介しています。
しっかり期待値調整しないと、後々、お互いに不幸になってしまうと思うんです。「そんなつもりじゃなかった」って思いたくないし、思われたくないじゃないですか。
── 実際に複数社の広報PRを担当する上で、大事にしていることはありますか?
熊本:クライアントに対して、自分の現状や予定の共有をこまめにしています。資金調達やプレスリリース、イベントが発生すると、いつも以上に時間がなくなってしまいます。そこで、自分のスケジュールをこまめに、かつ、正直に共有して、稼働への期待値調整を行なっています。「今週は他社のこういうイベントがあるので、少し稼働が少なくなるけど、次週以降でこういう動きをするので安心してください」みたいに。
また、時間の質を高めることにこだわっています。担当する企業数が6社を超えたあたりから、当時の時間の使い方だとまわらないと感じ始めました。そこで、時間をつくるために業務内容の棚卸し作業はこまめに行なうようにしています。業務内容や工数をExcelで可視化して、業務の取捨選択をします。クリッピングや請求書発行など必要だけど時間のかかる事務作業は社内メンバーにお願いすることもあります。
“推し”だから頑張れる
── 複数社の広報PRを担当されることで生まれるメリットはありますか?
熊本:シナジー効果は大きいですね。たとえば、A社のサービスに興味を持ったメディア関係者との会話の中で、B社のサービスを紹介して、掲載に繋がったり。連載枠のあるメディアには、2ヵ月連続で異なるクライアントのサービスを紹介いただいたこともあります。
また、私自身、メディア関係者に共有できるネタが豊富になり、さまざまな角度から提案できるようになっていると感じます。切り口を変えたことで、ひとつのサービスを1週間に2つの媒体で取り上げてもらえたこともありました。
複数社受け持っていると手薄になる企業があるのでは、と思われるかもしれませんが、実際はその逆ですね。複数社受け持っているからこそ、総合力を向上でき、露出力を高めることができるんです。
── 熊本さんのバイタリティの高さを感じます。14社もの広報PRの支援を頑張れるのはなぜなのでしょう?
熊本:シンプルに、支援先の企業のみんなを「好き」という気持ちからですね。好きな人たちの好きなサービスと向き合っているので、苦では全然ないんですよ。いわば、“推し”がたくさんいる状態なんです(笑)
そもそも「この人のためなら頑張れる!」と思える人たちの支援しかお受けしていないので、現在担当している企業は、心から好きでたまらないところだけですね。好きだからこそ、「頑張りを伝えたい、役に立ちたい」という気持ちが強くなっていくんだと思います。
── 熊本さんの今後の目標を教えてください
熊本:BREWに広報PRサポートを請け負う子会社を設立したいです。子会社化して、困っているスタートアップをいま以上に支援できる存在になりたいんです。一人で担えるキャパシティにも限界があります。その一歩として、実は最近PRチームを組成したので、少しずつクライアントを増やしていけたらと考えています。
私にとっての広報PRは、みんなの熱量を物語に変換して伝え、伝説をつくること。クライアントの伝説づくりを目指す中で、自分自身も、広報PRを担う者としてパワーアップしたいですね。
誰かの役に立ちたいからこそ、継続的な無理はしない。
「大変ですけど、やっぱり頼ってもらえる限り彼らの役に立ちたいんですよね!」
そう言って笑う熊本さんは、現在、小学6年生と2歳、二児の母。
時間のやりくりを聞いたところ、土日は子どもと向き合うためほぼ仕事をしないのだそう。平日も下の子の保育園へのお迎えがあるので、17時にはオフィスを退社。
日中は社内外の人とのコミュニケーションに時間を割き、帰宅後、家事や寝かしつけを終えたあと22時くらいから、メールなどへの返信や資料づくりなどをこなしながら、限られた時間を最大限活用できるよう工夫されているということでした。
「子育てがあるから」「時間がないから」と考えず、愚直に業務に向き合っている姿勢が印象的な熊本さん。
ひとりで思い悩んでしまう時、周りの人との正直なコミュニケーションを心がける熊本さんのパワフルなエネルギーを思い出して、ぜひ周りに助けを求めてみてください。突破口がみえてくるかもしれません。
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