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長く愛されるパインアメ。ひとりの広報担当者が仕掛けるファンとの共創

設立71年、愛され続けるパインアメで有名なパイン株式会社。コロナ禍で外出が減ったことで売り上げは少し下がってしまったそうです。

しかし、その間も常にファンの方とのコミュニケーションを大切にしてきた姿がありました。同社でひとり広報として奮闘する開発部広報室 井守真紀さんは、開発者でもあります。

新商品の開発から、その商品の広報PR活動まで一貫して行う井守さんに広報の立ち上げやファンとのコミュニケーションについてお伺いしました。

パイン株式会社(大阪府大阪市):最新のプレスリリースはこちら

パイン株式会社 開発部広報室

井守真紀(Imori Maki)

大阪樟蔭女子大学卒業後、パイン株式会社に入社。管理部業務課、開発部企画課を経て2018年に開発部広報室初代の室長として広報室の立ち上げに携わる。商品企画から広報・イベントまで幅広く担当している。

売れない苦労が生んだ提案、異例の抜擢

広報PRは未経験、事務職からの転向

── 井守さんが広報PR担当者になった経緯を教えていただけますでしょうか。

入社したときは、管理部門で受発注や請求書の発送など、お客さまの対応を含む事務の仕事をしていました。

その頃、会社公式のTwitterを提案してみたんです。私が運営するつもりは一切なくて、「タダやし、やったら」くらいの考えで。それを当時の上司が会議で提案してくれ、一発で許可されたんですよ。ただ、Twitterを運用した経験がある人もおらず、「Twitterって何やねん」という方ばかりだったので、結局私が任されることになりました。それからしばらくは、事務仕事の傍らツイートしていたんです。

── 井守さんご自身は当時からTwitterをされていたんですか。

そうですね、個人的にすごく楽しんでいました。無料でできることを知ったときに、「企業でできたらいいな」と思ったんです。当社は、広告や宣伝をまったくしてきておらず、新商品の販売に苦労してきたんですよね。少しでも情報を発信できたらと思い、そのツールを社内に紹介したくらいの気持ちだったんですが……。

── 実際に広報部門が立ち上がったのはいつ頃でしょうか。

Twitterを担当するようになったあと、所属していた管理部門から開発部に異動して、2018年にようやく広報部門を立ち上げたんです。それまでの間、同業他社の方に声をかけていただいて広報セミナーに参加したり、少しずつ勉強していました。

パイン株式会社インタビュー01

新商品開発と広報PRを一貫して対応

── おひとりで広報PRを担当されていますが、普段はどのような業務をされていますか。また、開発と兼務していて、よかったことはありますでしょうか。

新商品をつくる、それから広報PRに関することすべてなので、生み出すところから世の中に出すまで一貫して携わっています。新商品をつくるとき、味のイメージを膨らませていって、こんな切り口で……という話をしますし、プレスリリースをつくったり、ホームページの更新、イベントも開催しています。

何もないところから研究室と相談しながら商品をつくっているので、他社の広報PR担当者の方とは違った目線で広報PRに携われているかもしれません。

コラボ商品のメリットと注意点

── コラボレーション商品も多くありますが、どのように企画されているのでしょうか。

パインアメのコラボ商品に関してはすべて、企画を持ち込んでいただいているんです。ありがたいことに多くご提案いただいており、すべてのコラボレーションを実現はできないのですが、何度も打ち合わせを重ねてつくりあげています。

私たちだけで実現できるものではなく、各社の強みや面白い部分をパインアメとミックスすることで、より面白くなるコラボのみを進めていますね。

── コラボレーション商品の広報PRに関するメリットを教えてください。

本当に二馬力になるんですよ。異なる業界の企業・商品とのコラボのときは、今まで考えていなかった方々に訴求できているのを特に感じました。ご一緒する企業がこれまで培った独自の販売ルートがあるので、私たちの得意なお菓子の販売ルートで届けられていなかった方々にも訴求できるんです。また、メディア露出も同じくですね。私たちが普段やり取りしているメディア関係者の方以外に注目していただき、新たなメディアの掲載につながったこともあります。

── 反対に注意点や苦労したことはありますでしょうか。

そうですね、再春館製薬所さんと共同開発したドモホルンリンクル飴は、薬にまつわるような話をするのですが、実際はのど飴。あくまでもお菓子なので、薬機法(旧:薬事法)に留意しつつ、注目していただける表現を2社間で、かなり検討しましたね。

参考:販売累計100万袋突破記念!超貴重な「ドモアメ」(非売品)が当たる!「ドモホルンリンクルのど飴」大ヒット&一周年記念キャンペーン開催  InstagramコラボレーションLIVEも共同開催

パイン株式会社インタビュー02

意識しているのは、ファンとの共創

ファンを動かした正義感

──「パインアメはもう売っていない」に対するTwitterの反応は話題になりましたよね。

当初は傍観するつもりでしたが、「もう売ってないんですか」というお客さまからのお問い合わせが増えたことで、信じて心配してしまう方がいるんだな、という思いと、間違ったものが広がっていくのが見ていられなくなり……最後は正義感で。公式にお伝えすることを決めたんです。

正しい情報を伝えることが目的だったので、こんなに注目されたのは想定外でした。ただ、皆さまが「正しい情報を拡散しないといけない」と、ご協力いただけた結果だと思いますので素直にうれしいですね。

当時の投稿(パイン株式会社公式Twitterより):https://twitter.com/pain_ame/status/1534314694802124800

パイン株式会社インタビュー03

「パインアメの日」イベントで新商品発表に向けた仕掛け

── SNS以外にどのようにファンとコミュニケーションしていますか。

「パインアメの日」に制定されている8月8日は、毎年、パインアメを食べてくれている方をイベントに招待しています。2019年は、8月8日「パインアメの日」にちなんで888人お招きし、「黄色いものを何か身に着けてくる」というドレスコードを設けて開催しました。

大阪らしいアーティストの方にゲスト出演していただいたり、「こんなのあったら面白い」を回答いただくコーナーを入口につくったり、会長のトークショーも行いましたね。今年は、あべのハルカス近鉄本店さんと一緒に企画して、1日限定のイベントを行いました。

──「こんなのあったら面白い」を回答いただくコーナーは開発に活かすためでしょうか。

いえ、パインアメのコラボの場合、私たちからお願いするわけではないので、「こんなのあったら面白い」大喜利に近いですね。自分が回答したような新商品が出た際に、一緒に商品をつくっているような気持ちになっていただけるとうれしいな、と思って。なので、SNSでご意見を聞くこともありますし、定期的にやっていきたいと思っています。

── 開発というよりもファンの方が軸なんですね。イベントの企画内容もおひとりで進めたのでしょうか。

そうですね。一緒に会社を動かしていると思っていただけるような、同じ目線で楽しいことができないかな、と常に考えています。

8月8日のイベントは、イベント会社の方と相談しながら進めているのですが、私が考えた「パインアメくん風 あなたの似顔絵をプレゼント」もファンの方に楽しんでいただくための新しい企画のひとつでした。

パインアメの日
2019年8月8日「パインアメの日」イベントの様子。パイン株式会社さまよりご提供。

安心、安全、正直。会社の姿勢を表現した広報PR

── コロナ禍で売り上げが下がったと伺いましたが、そのほか大きな影響があったことはありますか。

2002年に全品回収したときですね。食品メーカーで1〜2商品の回収が行われることはありますが、当時の当社は全商品。そのため、在庫0です。アメを型から外す時に塗る油が問題だったのですが、全商品に使用されていて。そこから安心・安全について本当に一から見直し、業者の方との信頼関係を再度構築しました。

発覚した当日に上層部がすぐに動いて判断したことが、信頼につながったと思います。問屋の方にも「仕入れてあげるから、ちゃんとしたのを早くつくりなさい」と、たくさんお声がけいただきました。

── Twitterの「正直に」と同じく、会社の姿勢が一貫していますね。最後に、井守さんが大切にする広報PR活動を教えてください。

日々のお客さまの声を大切にしたいですね。コツコツやり取りを続けて、少しずつファンを増やしたいなと思っています。

もちろん、他社と比較するとSNSのフォロワー数は少ないですが、私たちが困っていると助けてくれたり、応援してくれたり、お友だちみたいに思ってくださっている方々がたくさんいるんです。SNSで質問があり、私が返せなかったときは、お客さまどうしで質問に返してくださっているのを見かけることもあります。

お客さまの声を励みに、お客さまに面白いと思っていただけたり、喜んでいただけたりするような活動をしていきたいですね。

パイン株式会社インタビュー05

「パインアメ」という長く愛される商品をたったひとりで広報PR活動し、ファンとのコミュニケーションを続けている井守さん。どのような話をする中でも大前提にあるのは、ファンの姿でした。

ひとり広報の方はもちろん、企業の規模や歴史にかかわらず、参考になる点があったのではないでしょうか。

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この記事のライター

丸花 由加里

丸花 由加里

PR TIMES MAGAZINE編集長。2021年、PR TIMESに入社し、「PR TIMES MAGAZINE」、ご利用企業向けのコミュニティイベント「PR TIMESカレッジ」の企画・運営を行う。2009年に新卒入社した大手インターネットサービス運営会社では法人営業、営業マネージャーとして9年半、その後オウンドメディアの立ち上げに参画。Webコンテンツの企画や調査設計に携わる。メディアリレーションズを主とした広報を経て、現職。

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