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企業とアナリストの視点で紐解く。投資家との対話を企業価値向上につなげるIR活動|Sansan×SBI証券

企業とアナリストの視点で紐解く。投資家との対話を企業価値向上につなげるIR活動|Sansan×SBI証券

企業と投資家をつなぎ、適正な株価形成や中長期的な企業価値向上を支えるIR活動。その重要性が広く認識されている一方で、IR活動に十分なリソースが割けないケースや、「投資家とのコミュニケーションをどう広げていけばよいのか」「何を・どこまで伝えるべきか」といった悩みを抱えるケースも多いのではないでしょうか。

プレスリリース配信サービス「PR TIMES」を運営する株式会社PR TIMESは、12月22日に「投資家がファンになるIR活動」をテーマとしたユーザー会を実施。限られた体制と時間の中で企業価値を高めるためには、どのような取り組みから着手し、どのように進化させていくべきなのでしょうか。

Sansan株式会社でIRを担当する救仁郷 佑美さんと、SBI証券でシニアアナリストとして多数の企業を担当する宝水 裕圭里さんがご登壇。実務担当者とアナリスト双方の視点から企業が投資家から支持されるためのポイントを解説していただきました。本レポートは当日のお話をもとにまとめています。

「IR優良企業」Sansan株式会社に学ぶ、IRの実践と戦略

BtoB企業に向けた多様なAX(AIトランスフォーメーション)サービスを提供する、Sansan株式会社。2019年に上場した同社がこれまでに取り組んできた具体的な取り組みや、IRと広報PRの連携について、IR・サステナビリティ推進部の救仁郷さんにお話いただきました。

Sansan株式会社 IR・サステナビリティ推進部

救仁郷 佑美(Kunigo Yumi)

新卒で野村證券株式会社にて個人向け営業を経験。その後株式会社サイバーエージェントでメディア向け広告営業及びIR業務に従事。2019年にSansan株式会社へ入社。これまでに決算説明会やIRサイト運用、統合報告書の企画設計・制作実務を担当し、現在は有価証券報告書やウェブサイトでのサステナビリティ開示にも携わる。

上場初期に取り組んだ「IR活動の基盤構築」

まず、上場初期に取り組んだのはIR活動の基盤づくり。その中でも特に以下の3点を重点的に注力したそうです。

1.決算開示の充実

「決算短信」と「決算説明資料」に加え、以下の任意資料を自社WebサイトのIRページに掲載。決算開示の充実を目指しました。

  • 決算補足資料:財務諸表や同社特有のKPIをまとめたデータブック。投資家やアナリストが業績モデルを作成しやすいようExcel形式で共有。
  • 決算説明資料(スクリプト付):決算説明会のトークスクリプト付きスライド資料。説明会に参加できなかった投資家にも内容が伝わるよう工夫。
  • よくある質問:投資家の関心が高いテーマを事前に想定し、回答をまとめたFAQ。決算と同時に開示することで、理解促進につなげている。

2.投資家との対話を拡大

四半期あたり約100件の取材対応を行い、投資家からのリクエストに応じるPull型の対話を実施。加えて近年は、国内証券会社主催のカンファレンスへの参加や、マネジメントを中心とした海外訪問など、Push型の対話にも積極的に取り組んでいます。

また、投資家からのフィードバックも重視しており、四半期あたり約30件のコメントの収集をKPIとして設定。ポジティブ・ネガティブを問わず、定期的に役員へ共有しているそうです。

3.多様なチャネルでの情報発信

あわせて、多様なチャネルを通じた情報発信についても基礎固めを進めてきました。

  • IRサイト:IR情報のデータベースとして位置づけ、サイト構成の整備や更新頻度を設計。
  • 統合報告書:上場2年目から着手。四半期決算では伝えきれない中長期的な成長ストーリーを伝える。
  • 株主総会:主担当は法務部門だが、事業報告動画や招集通知の一部パートはIRが担当。当日の質疑応答についても、想定質問や回答方針の設計をIRが担う。
「投資家がファンになるIR活動」をテーマとしたユーザー会01

成長フェーズに合わせてIR活動の領域を拡大

上場当初は上長と救仁郷さんを含む2名体制でIR活動を進めてきたそうですが、成長フェーズに合わせ「IR・サステナビリティ推進部」を設置。現在は5名体制でIR活動の領域を広げています。この3年間では、特に以下の5点を強化してきたそうです。

1.事業説明会の企画

事業理解を深めてもらうため、決算と同時に事業説明会を開催する取り組みを過去数回実施。個別事業に特化した説明会を決算説明会と同日に開催することで、事業理解をより深める機会を創出しました。

2021年の決算発表時の企画例

  • 第1四半期:Sansan事業の事業特化説明会
  • 第2四半期:Eight事業の事業特化説明会
  • 第3四半期:テクノロジーに関する取り組みの説明会

また、海外投資家向けの事業説明会「IR Day」も実施。各事業責任者によるプレゼンテーション、質疑応答ともに英語で行い、海外投資家に的を絞った情報提供を行っています。

2.海外訪問

海外訪問も成長フェーズで強化したことのひとつとのこと。上場当初から継続しているマネジメント主導の海外訪問に加え、近年はIR部門単独での海外訪問の機会も増やしているのだそうです。

訪問後のフォローアップにも注力し、3ヵ月から半年後を目安にIR部門から改めて連絡を取り、再度対話の機会を設けることで継続的な関係構築につなげています。

3.サステナビリティ開示による非財務情報の拡充

サステナビリティへの関心の高まりや統合報告書の制作をきっかけに、ESGやサステナビリティに関する情報開示の重要性について投資家からのフィードバックが増加。こうした声を受け、マテリアリティの特定からサステナビリティ方針の策定までを行い、非財務情報の整理・開示を進めています。

4.統合報告書の拡充

また、統合報告書の初版は53ページとコンパクトな内容でしたが、6年目となる2025年版では105ページにまで拡充。単なる情報量の増加ではなく、成長ストーリーがしっかりと伝わる構成を意識し、毎年内容を見直している点が特徴です。

参考:Sansan株式会社、「統合報告書2025」を公開

5.個人投資家向け施策の拡充

さらに、これまで機関投資家とアナリスト向けだったIR活動を、個人投資家にも広げる取り組みも推進。個人投資家向け施策として、2025年は主に以下を実施しました。

  • 個人向けコンテンツの充実:自社IRサイト内に「5分でわかるSansan株式会社」など、事業内容をわかりやすく紹介するページを設置。
  • オンライン説明会の開催:これまで年1回程度の開催だったものを、現在は年3〜4回と回数を増やして実施。
  • 「資産運用EXPO」への出展:東京・大阪の2拠点に出展し、個人投資家と直接対話する機会を創出。

IR・広報PRの役割を整理し、企業理解を深める情報発信を

目的や役割の違いがわかりにくいIRと広報PR。救仁郷さんは、両者の違いを以下のように整理していました。

  • IR:投資家を主な対象とし、適正な株価形成に責任を持つ立場。常にポジティブな情報を発信するのではなく、過度な期待が先行する場合には期待を調整するなど、冷静なメッセージやネガティブな情報も含めて伝える。
  • 広報PR:ステークホルダーの中でも、主にメディアや顧客に向けた情報発信を行う。企業や事業の魅力をどのように伝えるかという視点が重視される。

対象やアプローチ方法には違いがあるものの、「企業価値向上」というゴールはIRも広報PRも同じ。広報PRで発信している情報の中には、以下のように投資家の分析に役立つ有益な情報も数多くある、と連携の重要性で締めくくりました。

  • 市場調査:自社サービスが市場の中でどのポジションにあるのかを示す情報
  • ユーザーの声:顧客が抱える課題、サービスがどのように使われているのかを伝える情報
  • マネジメントや事業責任者が登壇する会見:事業成長や方向性を語る場として、IRと広報PRが連携し、決算のストーリーと整合させながら発信
「投資家がファンになるIR活動」をテーマとしたユーザー会02

アナリストの視点から考える「投資家に響く」情報発信

IR活動において、セルサイドがどのように企業を評価しているのかを理解することは欠かせません。セミナー後半では、SBI証券 シニアアナリストの宝水さんが登壇し、ご自身の実務や視点を解説。ここからは、IR担当者が「投資家やアナリストに届く情報発信」を考えるうえでのヒントをレポートします。

株式会社SBI証券 経済企業調査部 シニアアナリスト

宝水 裕圭里(Housui Yukari)

2009年4月、準大手証券入社。事業法人部、機関投資家営業部(株式)にて8年間営業として従事。その後、東海東京調査センター(現:東海東京インテリジェンス・ラボ)にてセルサイドアナリストとして活動。日本国内の放送・広告・インターネット関連企業等18社を担当する。2022年11月よりSBI証券にてセルサイドアナリスト業務に従事し、日本国内の放送・広告・通信関連企業28社を担当する。

市場の変化によって問われる「IRの伝え方」

冒頭で宝水さんが語ったのは、アナリストを取り巻く市場環境の変化でした。国内の上場企業数は年々増加しており、2013年以降は年間約50社ペースで推移。その結果、アナリストひとりあたりが担当する企業数も増え、限られた時間の中で多くの企業をカバーしなければならない状況が続いているといいます。

さらに、上場企業の増加に伴い決算発表のタイミングも特定日に集中しやすくなっています。例えば直近では、2025年2月14日は決算発表が744件、8月8日は840件。発表の時間帯は15時30分以降に集中するケースが多かったそうです。

こうした集中日においては説明会の開催も重なりやすく、宝水さん自身も複数社の決算を確認した後、夕方から夜まで説明会が続くことがあるといいます。

このような中で、IR担当者に求められるのは「限られた時間でも理解が進む情報開示」です。以下のような工夫が、アナリストや投資家の理解を助け、結果として市場での評価にもつながるのではないでしょうか。

  • 要点がひと目で把握できる資料構成
  • 数値をそのまま分析に使えるデータ提供
  • 見通しや背景を簡潔に伝えるメッセージ

アナリストは決算情報をどう見ているのか

では、実際に担当企業が決算発表した場合、アナリストはどのような動きをするのでしょうか。さまざまな公開情報を段階的に活用しているという宝水さんのケースを紹介します。

【アナリストのスケジュール(宝水さんの場合)】

  • 決算当日:開示された数値を業績モデルに反映し、速報レポートを作成。決算説明会が開催される場合には出席し、その場で得られる情報も即座に整理。
  • 決算翌日:朝会に参加し、営業や投資家向けに決算のインプリケーションを共有。スモールミーティングやコメント対応を行いながら、業績モデルをより詳細に更新。
  • 翌日以降:業績モデルを再度更新したうえで、更新レポートを発行。業績モデルは四半期ごとに作成し、それらを積み上げて通期予想を算出。あわせて社内や投資家からの問い合わせなどに対応。

【確認する情報と主なポイント(宝水さんの場合)】

速報段階の情報収集

四半期業績や業績修正の有無、資本政策に関するアクションといったポイントを中心に確認。定量情報については、市場コンセンサスや自社予想と比較しながら評価します。たとえ当初の計画を上振れる結果であっても、市場の期待がさらに高ければ「期待未達」と受け取られる可能性があるため、その差分を重視して見ているのだそう。

また、過去の実績だけでなく今後の見通しも重要。仮に決算内容が弱く株価が下落した場合でも、次の四半期以降の改善が見込めるのであれば、「下がったところが買い場」と判断されるケースもあるためです。

決算発表の情報収集

取材を通じて非財務情報を確認します。統合報告書については、初回取材時には必ず目を通し、継続的に担当している企業の場合は、社長やCFOのメッセージ、技術など関心のある部分を中心に確認するほか、必要に応じて辞書的に参照。

このように、宝水さんは開示された数値の背景や意味づけを行い、競合企業との比較や市場コンセンサスとの差分を整理したうえで、現在の株価水準や投資タイミングについての考え方を提示。その視点をもとに、営業担当者や投資家との間で議論が行われます。

議論の中心となるのは、将来の利益がどこから生まれるのか、現在の株価はどのように評価すべきか、競争環境や業界構造、資本政策はどうなっているのかといったテーマです。こうした議論を積み重ねたうえで、最終的には、成長ストーリーに基づいて算出した将来の企業価値と現在の株価を照らし合わせ、投資判断の材料として株価水準を見極めていきます。

「投資家がファンになるIR活動」をテーマとしたユーザー会03

「開示資料」が株価に影響することも

限られた時間の中で企業を分析するアナリストにとって、決算日当日の開示情報は非常に重要。説明会が開催されない場合も、開示資料で疑問点が解消できれば、IR担当者に問い合わせることなく分析を進めることができます。一方、開示情報が十分でない場合には、プレスリリースや企業のWebサイトなど開示資料以外を参照して補完せざるを得ないケースもあるといいます。

決算発表が集中する局面では、追加の情報収集に時間を割く余裕がないのも事実です。そのため、「要点が整理され、メッセージが直感的に伝わる資料」ほどユーザーフレンドリーだといえるでしょう。

特に決算が重なる場合、当日から翌朝にかけて複数社の情報を短時間で処理する必要があり、理解に時間を要する資料は不利になってしまうことも。反対に、直感的に把握できる開示資料は、アナリストの理解を早めるだけでなく、市場参加者の見方を揃えやすくする効果もあり、結果として翌日の株価形成に影響を与える可能性もあると宝水さんは指摘しました。

IRと広報PRを連動。背景やストーリーを補完する

それぞれ役割が異なるIRと広報PR。宝水さんは、事実や数値といった骨子となる情報を確認するための一次情報をIRから取得し、その背景や文脈を補足する肉付けの情報はプレスリリースやブログなどから取得することが多いといいます。

また、近年の上場企業の傾向として、IRと広報PRを連動させて情報を届けているケースも増えていると感じているそう。以下のように、複数のチャネルを組み合わせ、公式開示だけでは伝えきれない背景やストーリーを補完することが、投資家やアナリストの理解を深められるのではないかといいます。

  • 決算発表の際に決算短信や説明資料に加え、補足説明を行う
  • 社長交代時は適時開示に加え、旧社長・新社長がそれぞれの思いや経緯をコメントする
  • メディア向け説明会に市場関係者も招き、IR、広報PRそれぞれからの情報を横断的に共有する
  • 適時開示資料に、関連するプレスリリースへのリンクを付与する

また、企業がメディア向けに配信したプレスリリースが、投資判断の材料として活用されるケースもあります。宝水さんが挙げた具体例を見てみましょう。

  • 大型施策やイベントの発信:告知された施策の内容から、想定される業績へのプラス効果を読み取り、将来の業績予想を検討する材料として活用
  • 事業の成長性を示す重要KPIの発信:事業の進捗を測るうえで重要なKPIが、IRサイトとプレスリリースの双方で発信されており、会員基盤や事業の伸びを把握するうえで有効

さらに、プレスリリースの情報が主要な経済メディアに取り上げられることで、議論のきっかけになることも。取り上げられた内容をもとに「既存の開示内容の延長線上なのか、それとも新たな動きなのか」「業績や企業価値にどの程度影響するのか」といった観点で議論が深まることがあるそうです。

投資家の評価は一貫性のあるメッセージ

では、こうした情報を発信するうえで、企業側はどのような点に気をつけたらよいのでしょうか。宝水さんは、投資家から評価されやすいポイントとして以下の2点を挙げました。

  • 対話で得られた意見をマネジメントに共有し、経営施策に反映していること
  • 情報開示に一貫性があること

決算後の取材や質疑応答も突き詰めれば「人と人との対話」です。投資家からの改善提案が次の四半期や決算で反映されていると、企業とのコミュニケーションに前向きな手応えを感じ、信頼感が高まるのだといいます。

一方で、過去に継続して開示されていた情報が突然なくなったり、説明のトーンが大きく変わったりすると、その差分が目立ちやすいのも事実です。だからこそ、開示姿勢やメッセージの一貫性が、長期的な評価につながりやすいのだと指摘しました。

加えて、時価総額や流動性といった企業のフェーズに応じて、IRの内容やアプローチを段階的にアップデートしていくことが重要なポイントとなるでしょう。

「投資家がファンになるIR活動」をテーマとしたユーザー会04

【質疑応答】参加者からの質問に、救仁郷さんと宝水さんが回答

ここからは、当日セミナー会場で寄せられた質問の一部を抜粋し、お二人の回答と合わせてご紹介します。

──Sansan株式会社では、IRと広報PRは同じ部署でしょうか。また海外IRはほかの部署と連携されていますか。

救仁郷さん(以下、敬称略):当社では、IRと広報PRは別チームとして運営しています。
IRはサステナビリティと同じ部門に属しており、広報PRはコーポレートブランディング室の中にあります。

海外IRについては、私たちIR部門が担当していますが、社内だけで完結させているわけではなく、証券会社の方々に海外投資家の動向などを伺いながら進め方を設計しています。

最小限の人数でIR活動をしていたり、広報PRや経営企画と兼務されていたりするケースも多いと思いますが、そうした状況では、社外の方も含めて相談相手を増やすことも、ひとつの方法だと感じています。

──決算説明会の動画を適時公開しているものの、視聴数が伸び悩んでいます。より多くの方に視聴してもらうためには、どのような取り組みをすればよいと思いますか。

救仁郷:決算説明会の動画については、当社もそれほど視聴数が伸びているとは感じていません。基本的な考え方としては「掲載する箇所を増やすしかない」と思っています。

例えば当社の場合、広報PRの部署で運営しているSNSに動画を掲載しています。また、これまで対話してきた投資家の方宛にご案内することもあります。

ひとつチャネルに頼るのではなく、複数のチャネルを使って届けていくのがよいのではないでしょうか。

──機関投資家や個人投資家から厳しい意見を受けた際、コミュニケーションのうえで大切にしていることを教えてください。

救仁郷:当社では四半期あたり約100件の対話を行う中で、30件程度は投資家のみなさんからフィードバックをいただくことを意識しています。投資スタイルはさまざまで、意見も多様です。そうした声をポジティブとネガティブの両面から整理し、四半期ごとにまとめたうえで、「次の決算ストーリーにどう活かすか」社内でもしっかり議論を重ねるようにしています。

宝水さん(以下、敬称略):セルサイドの立場からお答えすると、同じ基準で継続的に開示していただけることは、非常にありがたいです。業績が悪化したり株価が低迷したタイミングで、急に開示基準が変わってしまうと、どうしても不安につながります。

同じKPIを開示し続け、その中で厳しいフィードバックをマネジメントに伝え、次回以降の開示に反映していただけている企業は、その変化が外部にも伝わってきます。結果的にそうした積み重ねが、コミュニケーションの深まりにつながっていくのではないでしょうか。

また、株価が低迷している局面は、セルサイドの視点では「次に業績が改善したときのチャンス」でもあります。だからこそ、短期的な評価に振り回されるのではなく、丁寧に信頼を積み重ねていくコミュニケーションを大切にしていただきたいと思います。

──業界がニッチだったり、あるいは事業内容が理解されにくい場合、魅力的に感じてもらうための効果的な指針はありますか。

救仁郷:事業理解を深めていただく機会はとても大切ですが、特に「誰が話すのか」によって聞き手の受け取り方は大きく変わると感じています。

例えば、当社では年4回実施している四半期決算説明会のうち、2回はCEOが登壇し、残りの2回はCFOがメインで説明する構成になっています。CEOが登壇する回では、成長戦略や、その時点で特に理解を深めてほしい事業のポイントを整理したうえで、成長ストーリーとして語ることも意識していることのひとつです。

──宝水さんは、ニッチな業界の情報を集める際、どのような観点を重視されているのでしょうか。

宝水:ひとつは、決算説明会や書き起こし記事、スポンサードレポートなどを参考にしています。説明会の案内メールを多くいただくのですが、その際に社名だけでなく、どのような事業をしているのか、最近の業績のポイントなどが簡潔に書かれていると参加する確率が高くなると感じています。

また、いわゆる「噂」も参考にしていることのひとつです。投資家の方々とお話する中で、「最近この会社がおもしろい」といったヒントをいただくことも多く、そうした情報をきっかけに実際に取材をさせていただくケースもあります。もちろん、企業側から直接メールでご連絡をいただいてお伺いすることもあります。

──Sansanさんの対話件数の多さに驚きました。リクエストが多いのですか。それとも、会社側からアナリストや機関投資家への働きかけを積極的に行っているのでしょうか。

救仁郷:対話については、投資家の方からリクエストをいただいたものに対応する、という形がベースになっています。ただ、当社はまだ成長フェーズにあり、時価総額の段階等によって接点を持てる投資家層も変わってきます。

そのため、受け身だけではなく、「もっとお話ししたい投資家層はどこか」という視点で、戦略的に対話の機会を設計しています。例えば、欧州の投資家との接点が少ないという課題があれば、ヨーロッパでのIR企画を実施する。投資家の中にもさまざまな層がありますので、どこにアクセスできていないのかを意識しながら、対話の設計を行っています。

──個人投資家向け説明会を年2回開催されているとのことですが、地場証券会社やIRサポート会社、個人投資家向け勉強会などさまざまな手法がある中で、どのようなメリットを考えて、どの形式で開催されているのでしょうか。

救仁郷:証券会社主催の個人向け説明会も、普段お会いできない方々と直接話せる貴重な機会だとは感じていますが、IR担当者が現地に出向いて対応するとなると、どうしても時間や工数がかかってしまいます。そのため当社では、効率性を重視してオンライン開催を中心に取り組んでいます。

オンラインであれば、実施時間や人数の制限がなく、例えば開催時間を18時や19時など、会社帰りの方でも参加しやすい時間帯に設定することができますし、参加してもらえた人数もひとつのKPIとして設計できるからです。

「投資家がファンになるIR活動」をテーマとしたユーザー会05

まとめ:投資家の企業理解を深めることを意識した情報発信を

今回のセミナーでは、IR優良企業として評価されているSansan株式会社の実践と、SBI証券 セルサイドアナリストの視点から、「投資家に届く情報発信とは何か」のヒントが得られました。

印象的だったのは、Sansan株式会社の開示の工夫や、対話で得た声を次に活かす姿勢、そしてIRと広報PRを分断せず、一貫したメッセージとして届けている点。そうした日々の試行錯誤の積み重ねが、投資家との信頼関係につながっているのでしょう。

また宝水さんの話からは、アナリストがいかに限られた時間の中で企業理解をしなければならないのかという現実も伝わりました。だからこそ、「どれだけ多くの情報を出すか」ではなく、「適切に整理し、どのように伝えるか」が、企業への理解度を深める重要な要素になります。

IRも広報PRも正解がある取り組みではありません。それぞれの企業フェーズや体制に合わせながら、少しずつ工夫を重ねていく。その過程こそが、投資家との対話を深め、企業への信頼を育てていくのではないでしょうか。

今回のセミナーが、自社のIRや情報発信を見直すひとつのヒントになれば幸いです。

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PR TIMES MAGAZINE執筆担当

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