全国210を超える支社のネットワークを武器に、引越業界で11年連続売上高No.1という実績を誇る、株式会社サカイ引越センター。まごころパンダくんでおなじみのテレビCMは、誰もが一度は目にしたことがあるのではないでしょうか。
「引越し」という人生の転機に寄り添うことを信条にサービスを展開する同社。近年ではグループ企業の立ち上げなど多角的に事業を展開し、「サカイ=引越しだけ」という既存イメージからの脱却を目指しています。全国210以上の支社と連携する体制づくり、産学連携や地域貢献を通じたブランド価値の向上など、社内外を巻き込みながら自社の「これから」を形づくる広報PR活動とは──。
本記事では、広報課の藤田祥雄さん、中西宣子さん、大西惇さんにインタビュー。会社の成長とともに柔軟に変化していく広報PR活動についてお話を伺いました。
株式会社サカイ引越センター(大阪府堺市):最新プレスリリースはこちら

株式会社サカイ引越センター 総務部次長
2001年4月大学卒業後、サカイ引越センターに入社。入社から一貫して管理部門に従事し、人事部、総務部の責任者を経て、2022年10月より広報の責任者も兼務する。現在は、広報全体の舵取りに加え投資家とのIRも担当し、さらにカーボンニュートラルや人的資本経営などサステナビリティ経営に関する取り組みの推進も行う。

株式会社サカイ引越センター 総務部広報課
大阪府大阪市出身。2014年4月サカイ引越センターに新卒入社。法人営業職として受注獲得、顧客対応を経験。2018年1月に総務部広報課に異動。社内広報の担当から、現在は広報全般を担当し、プレスリリースの作成も担当。広報課発足時の原点を守りつつ、時代の変化に合った広報戦略を探求中。

株式会社サカイ引越センター 総務部広報課
大学在学中から課外活動を通した組織連携事業に興味を持ち、足で稼ぐ泥臭い折衝能力を磨く。サカイ引越センターに新卒入社後、人事採用部門を経て企画部門へ異動。様々な領域のアライアンス事業に取り組んだ後、2024年11月に広報担当として現部門へ。自由な発想を武器に新たなコミュニケーションの在り方を模索する。
全国210支社超、各エリアの広報員と連携した情報発信
──本日はよろしくお願いいたします。早速ですが、サカイ引越センターさんの広報PRの体制について教えてください。
藤田さん(以下、敬称略):当社は総務部の中に広報課があり、現在は私を含めて4人のメンバーで広報PR活動全般を担っています。主な業務は、CMをはじめとする広告出稿の調整や取材対応、プレスリリースの作成といった社外広報と、社内報の作成や当社の取り組みを従業員に周知する社内広報です。
──多くの支社が全国にありますが、4人で広報PR活動全般に対応するのはなかなか大変ではないですか。
藤田:そうですね。特に広報課は守備範囲が広く、広報PR活動以外のさまざまな業務も頼まれることが多いんです。私自身も総務の責任者を兼務しており、従業員の社会保険の手続きや株主総会の運営、IRや投資家との面談、サステナビリティ関連の業務など、幅広い業務に対応しています。
そのような状況の中で、4人ですべての依頼を引き受けるのが難しい場面があるのも事実です。われわれとしては、せっかく頼ってきてくれたのに「忙しいからできません」と断るのも心苦しい。今後はできるだけ早い段階で、広報課として「やる仕事」と「やらない仕事」を整理し、社内の要望に応えていきたいと思っています。
──中西さんは広報課に配属されて8年だそうですが、事業がどんどん成長する中で苦労されたこともあったのではないでしょうか。
中西さん(以下、敬称略):私はもともと社内広報をメインで担当していましたが、全国に210以上ある支社すべての情報を集めたり、すべての支社の方に情報を行き渡らせたりするのは難しかったですね。そこで、2018年頃からエリアごとに「ブロック広報員」という広報の役割を担ってくれる担当者を1名ずつ配置し、各エリアの情報を教えてもらいながら、私たち広報課からの情報を全社に広められるよう体制を整えました。
今では、私たち広報課が目指していることや、やりたいことをブロック広報員の方々が理解し、各エリアに落とし込んでくれるようになり、情報が全支社に浸透する一助になったと思います。また、社内向けだけでなく、テレビ取材などが入ったときも対応を任せられるようになりましたね。取材対応のために私が全国を飛び回っていた当初と比べると、かなり余裕ができました。その分、広報課として新しい発信に力を入れたり、新しいネタの収集に注力できたりするのはありがたいです。

産学・地域連携も、社内活性化も。取り組みの浸透を後押し
テーマは社員のエンゲージメント向上
──先月には、ユニフォームリニューアルの記者発表会を実施されていましたが、そちらも広報課が担当されていたのでしょうか。
藤田:そうなんです。約20年ぶりとなるユニフォームのリニューアルは、当社にとっても大きな転換点になると考え、記者発表会を行うことにしました。社外へのアピールというよりも、当初の狙いは社内向け。従業員のみなさんに「会社のユニフォームが変わることにはどういう意味があるのか」「そのニュースを世間がどれだけ注目してくれているのか」を伝えたかったんです。
ところが、ユニフォームリニューアルのプロジェクトチームは1年半前から立ち上がっていたものの、昨年末までは、今年1月1日から新しくなったCMの制作に追われていて、実際に記者発表会に向けて動き出したのは今年に入ってからです。4ヵ月間は記者発表会のために、フルで駆け抜けた感じでしたね。タレントの方や会場の手配など、わからないことばかりで、途中で心が折れそうになったこともありましたが、なんとか走り切ることができました。
スケジュール調整など反省点はあるものの、メディアにも多数取り上げていただき、記者発表を実現できてよかったと思います。

参考:イベントレポート【武井壮】引越現場に“帰還”!新ユニフォームで魅せた本気の3本勝負!サカイ引越センターでのアルバイトで得た”百獣の王”の心得とは
学生たちとの距離を縮めた「産学連携」
──ほかにも印象に残っている取り組みはありますか。
中西:最近の取り組みの中では、近畿大学さんと共同で実施した「ラッピングトラック」が印象に残っています。当社は今、産学連携に力を入れていて、学生さんたちと積極的にコミュニケーションを図ろうと取り組んでいるところです。その中で、近畿大学とのラッピングトラックは、目に見えて大きな成果につながった事例のひとつだと思いますね。
大西さん(以下、敬称略):この取り組みは、当初は採用活動の一環で近畿大学さんを訪問したことがスタートでした。当時、私たちは「サカイ引越センターは引越しだけではない」ということを伝えていきたいと考えていましたが、どうしても「サカイ=引越しだけ」という強い既存イメージが勝ってしまいます。その企業課題をお伝えしたところ、グラフィックアートを学ぶ文芸学部の安起瑩先生を紹介いただき、ゼミの学生たちと一緒に、全国を走るサカイ引越センターのトラックのラッピングデザインを行うことになりました。

参考:サカイ引越センター×近畿大学文芸学部 全国を走るトラックのラッピングデザインを共同研究
大西:学生たちからは「サカイは引越しだけじゃないんだ」という声をたくさんいただきました。
また、ラッピングトラックの取り組みを進めるにあたっては、お皿の梱包や引越しトラックの乗車などの体験をしていただいたり、現場で活躍している従業員に引越しのストーリーを語ってもらったりもしました。当社についての知見を深めていただくだけでなく、引越しとは人生の重要なタイミングに携わる大切な仕事であることを感じてもらえたと思います。これまで引越しを経験したことがない学生たちにとっては、引越しを模擬的に経験することで、サカイ引越センターとの距離が縮まったのではないでしょうか。「引越しって奥深いんだ」という声もいただき、うれしかったですね。
もともとは採用を主な目的としていたのですが、現在では、ラッピングトラックを見つけてSNSに投稿するとクーポンが当たるキャンペーンなど、マーケティング面でも新たな提案ができ、多角的なメリットを感じる取り組みだったと思います。

地元への感謝を、今できるかたちで
──御社は産学連携だけでなく、自治体との連携や地域貢献にも注力されているそうですね。
藤田:はい。堺市とは防災協定を結んでいて、大きな災害が発生した際には、緊急物資の輸送などを当社で対応することになっています。また、クラシックコンサートの開催をはじめ、地域のイベントに参加したり、定期的に意見交換をさせていただいたり、堺市とは密に連携を取っています。
サカイ引越センターは堺市に育てていただいた会社なので、会社が大きく成長したからといって利便性の高い都市部に出ていくのではなく、育ててくれた地元にしっかりと恩返しをしていく。そうした企業姿勢は、自治体との連携や地域貢献などを通じて、きちんと示していかなければならないと思っています。
プレスリリースはニュースの大小にかかわらず配信
──ここからは、プレスリリースについて詳しく伺えればと思います。プレスリリースを配信する機会が増えていると思いますが、配信するニュース・しないニュースについて、具体的な決まりごとはあるのでしょうか。
中西:配信するニュースごとに「誰に届けるのか」という部分については、正直なところ、まだしっかりと定まっていませんが、まずは会社の取り組みを多くの方に知っていただくことを重視しています。サカイ引越センターは、「引越ししかしていない会社」と思っている方がまだまだ多いと思うので、それ以外の事業も行っているということを広く周知するために、情報発信の回数を増やしているところなんです。
配信機会についても、以前は新しいCMが完成したときに自社ホームページへPDFを掲載したり、お付き合いのある業界紙の担当者にメールで送ったりする程度でした。しかし今は、小さなことから大きなことまで、すべてをプレスリリースで配信しています。会社としての取り組みが増えていることで、発信できる内容もますます多くなっているんです。
──プレスリリースの配信頻度が高くなっていく中で、心境の変化などはありましたか。
藤田:当社ではもともと、特定の企業に偏ってお付き合いをするのは良くないという考えがあり、どこかの企業と連携して何かに取り組んだ内容についても、プレスリリースでは配信しないことが多かったんです。しかし現在は、良い取り組みは積極的に発信していくべきだという方針に変わりました。
私たちのプレスリリースを見て、ほかの企業が同じような取り組みをするかもしれませんし、「一緒に何かしましょう」とアプローチをいただけるかもしれません。そういったチャンスを逃さないためにも、配信の機会を増やしています。
──4月9日には、大阪市中央公会堂で行われた入社式のプレスリリースも配信されていましたね。入社式のプレスリリースを出そうと思ったのには、どのような狙いがあったのでしょうか。
中西:当社の入社式は例年、2ヵ所に分けて実施していたのですが、今年は初めて大卒の新入社員全員が全国から大阪に集まりました。初の試みとしてTikTokの撮影も行ったので、それであれば会社として公式に発信しようと考え、プレスリリースの配信を決めたんです。
藤田:新入社員にとっても、200人もの仲間がいることを実感できて、勇気づけられたのではないでしょうか。それがプレスリリースを通じてメディアに掲載されれば、広く世の中に届いていきます。自分たちの入社式の様子が、インターネットをはじめさまざまな場所で紹介されることは、誇らしい気持ちになるでしょうし、ご家族にも見ていただけるという期待もありました。また、今後のリクルート活動においても、入社式の様子を発信していくことは、学生に安心してもらえるポイントにもなると思います。
これからも、小さなことから大きなことまでプレスリリースで配信することで、働いている従業員自身が「自分が働いている会社はこんなに注目されているんだ」と実感できるようにしていきたいですね。
参考:サカイ引越センターグループ入社式を大阪市中央公会堂で行いました

「サカイ=引越しだけ」からの脱却を目指したい
──最後に、これから新たに取り組んでいくこと、目指していくことについてお聞かせください。
藤田:私たちが引越業界のトップになってから10年が経ちました。売り上げも1,000億円を超え、新たなフェーズに入ったと実感しています。今後は、これまで当社が得意としてきたファミリー層の引越しに加え、学生や単身者向けに必要最低限の品質とコストのバランスを重視した、無駄のないプランを用意していく予定です。また、法人向けのオフィス移転や、自治体など行政レベルの引越しにも積極的に関わっていき、日本国内で発生するあらゆる引越しに、何らかの形で携わっていきたいと考えています。
私たちはこれまで、1回の引越しに全力を尽くし、「一期一会」の精神で最高のサービスを提供してきました。おかげさまで、引越し後のアンケートでは9割以上のお客さまから高評価をいただいていますが、今後はさらに、引越しが終わったあともお客さまの新生活を支えられるような、ワンストップサービスを提供していきたいと考えています。例えば、ハウスクリーニングや家電の買い替えサポートなど、さまざまなサービスを通じて、「暮らしの中にもっと“SAKAI”を!」というコンセプトを実現できたら嬉しいですね。
──そのために、広報PRとしてどのように関わっていこうとお考えですか。
藤田:当社は昔から、インパクトのあるテレビCMを継続して放映しており、「サカイ引越センター」の名前を知らない方は少ないと感じています。それが営業活動において大きなアドバンテージになっているのも事実です。
しかし、最近は若い世代を中心にテレビを見ない方、テレビを持たない方も増えてきました。そのため、これまでのようなテレビCMだけではリーチしきれない層が出てきているという課題も感じています。そうした若年層にどうアプローチしていくかは、現在当社が取り組んでいる大きなテーマのひとつです。「サカイ引越センター=引越し会社」というイメージが定着しているのは喜ばしいことですが、今後は「引越しだけではない会社」であることも、広報PR活動を通じてしっかりと訴求していきたいと思っています。

まとめ:自社の成長を後押しするサカイ引越センターの広報PR
引越し会社という枠にとどまらず、産学連携や地域貢献、従業員や学生たちとのコミュニケーションを通じて新たな価値の創出を目指す、株式会社サカイ引越センター。藤田祥雄さん、中西宣子さん、大西惇さんのお話からは、全国210を超える支社を束ねるためにどのように広報PRの体制を整えたのか、そして若い世代への新たなアプローチをどう図ろうとしているのか、次なるフェーズへ向けて成長を続ける事業に広報PRとして取り組む様子が伝わってきました。
- 業務の幅が広くなりがちな広報部門では「やる仕事/やらない仕事」を明確にする
- エリアごとにブロック広報員を設置し、全国210支社超の情報を収集する・浸透させる体制を構築
- 記者発表会は社外向けだけでなく、社内エンゲージメントの強化にもつなげる
- 産学連携や自治体との防災協定、地域イベントへの協賛などを通じて、地域密着の企業姿勢を進める
- プレスリリースは内容の大小にかかわらず積極的に配信し、メディア露出の機会を最大化する
引越しの先にある「新しい暮らしの提案」を目指し、事業成長を続ける同社の広報PR活動に今後も注目です。
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