PR TIMES MAGAZINEでは、広報PR活動に課題を感じている企業・団体向けに、日本全国の地域ごとにサービス導入の成功事例を紹介するインタビューを実施。
本記事では、岐阜県美濃加茂市に本社を置く若尾製菓株式会社の広報PR担当、髙井裕子さんに、同社の広報PRの姿勢と成果、またPR TIMESの活用法などについてお話を伺いました。
若尾製菓株式会社(岐阜県美濃加茂市):最新のプレスリリースはこちら
若尾製菓株式会社 営業部企画課
大学卒業後、印刷会社のデザイン部、環境コンサルティング会社を経て、2016年に若尾製菓株式会社に入社。現在は菓子の商品企画、広報PR戦略の企画立案、SNSアカウントの運営、WEBマーケティング、ECサイト運用などを担当する。
菓子卸から始まり、岐阜県でBtoBメーカーに
──若尾製菓について教えてください。
1934年に創業者の若尾秀雄が名古屋市内に菓子卸業を創業しました。しばらく後に「地域の皆様に美味しいお菓子を食べてもらいたい」との想いから、岐阜県美濃加茂市にて手作業で焼き上げるせんべいや飴菓子の製造を開始したのがメーカーとしての出発点。その後、観光土産の業界に参入し、業界のお客様の要望に応えつつ商品を提供し続けてきました。
そして現在では、OEM、観光業界における土産菓子製造を主軸としつつ、ギフト菓子や独自ブランドまでの事業を展開し、「和優創造(いやしと優しさを通じて幸せを創造する)」の経営理念のもと、企業活動を行っています。
OEMなので詳細はお伝えできませんが、サクサクとしたクランチ、クッキー、パイの製造に強みがあります。多くの生活者が知っているであろうチョコレートクランチやチョコバーのヒット商品の中にも、実は弊社が関わっているものがたくさんあるんです。
──広報PRの体制や発信の流れは、どのようなものでしょうか。
広報の専任部署はなく、営業部のメンバー4人で公式SNSの投稿やそのほかの広報PRを分担しています。しっかりとした広報PRの決まりごとは設けていませんが、広報メンバー間はもちろん、社内・他部署との情報を共有することを何よりも大切にしており、保育園、小学校の子を持つママも多いため、誰かが急な休みでもフォローできる体制をとっています。
また、ECサイトで販売している商品は約70種類もあり、キャンペーンなどの内容もさまざま。プレスリリースの作成・配信、オンラインストア内の情報更新、SNS配信をするメンバーが異なる場合もあるため、その時々に最適なPR方法や時期を逃さないためにも、常に情報を共有し、メンバー間で内容をチェックしています。成果を図るうえでは、オンラインストアの流入数と、メディアへの掲載数を目安にしています。
新型コロナで観光業界に打撃。BtoCのブランド構築に挑む
──OEMが主軸でありながら、プレスリリースでBtoC商品の配信に力を入れはじめたきっかけを教えてください。
大きなきっかけとなったのは、コロナ禍で観光業界が打撃を受けたことです。土産物の需要が落ち込んだため、弊社への影響も少なからずありました。このような状況で、製品のラインナップについても見直しが行われ、BtoCの自社ブランドを立ち上げるということが喫緊のミッションとなったんです。
2020年に生活者向けのオンラインストアを立ち上げ、21年から、直販ブランドの広報PRを積極的にするようになりました。広報PRに関しての知識がない中でのスタートだったため、「まずはできることから始めてみよう」とPR TIMESでのプレスリリース配信をスタートさせた経緯があります。
──生活者向けの発信で気を配っていること、今までの広報PRのあり方から変えた部分などはありますか。
OEMで培った商品力をより良く伝えるために、直感的に読み手が食べたい、買いたいと思ってもらえるような発信を心がけています。一般向けに広く訴求する必要がありますので、プレスリリースのメイン読者は、Webメディアでトレンドのスイーツについて記事を掲載している編集者を想定して書いています。画像は、新商品をオンラインストアに載せるときに撮り下ろしたシズル感のあるものを使用しているのがポイントです。
例えば「たんど~るのバウム ダブルショコラ」のプレスリリースは、美味しそうな見た目と商品コンセプトを体現したビジュアルにするため、直感的に「チョコをかける写真を載せよう」と決めました。
もちろん、メディアで取り上げられるだけではなく、最終的にはその先のお客さまにも伝わるのが理想です。そのため、プレスリリース配信と並行してInstagramなどのSNSで、生活者にダイレクトに魅力を伝える場を作っています。バウムクーヘンに溶けたチョコレートをかけるリールはけっこう再生されて、「いいね!」を300件以上いただきましたね。
──バレンタインデーなど、季節性を意識した商品のプレスリリース配信タイミングはどのように決めていますか。
暑い夏には冷たいスイーツを提案する、母の日など記念日ならではの包装に変えた商品を展開するなど、季節のイベントになぞらえたキャンペーンは随時行っています。Instagramでの発信も含め「世の中のニーズに合った時期に、合った商品を」と心がけていますね。特に2月14日のバレンタインデーは、遅くとも1ヵ月前の1月から配信するのがポイント。バレンタインに注目する生活者の方って、1月から「何を買おうかな」と情報を追っているので。
あとは東海地方ならではなのですが、名古屋市の高島屋で開催されるショコラのイベントがとても有名なんです。何とショコラ関連だけで1日約1億円と、国内トップレベルの売り上げを誇っていて、地域の方は前年の12月頃からショコラ関連の情報にアンテナを立てている印象です。地元で大きく盛り上がるイベントの機会を逃さないためにも、発信する時期や商品には気を配っていますね。
配信の効果を実感したプレスリリース
髙井さんに、実際の配信後に手ごたえを感じたプレスリリースについてお聞きしました。
事例1.クラウドファンディングの成果とともに新製品を訴求
参考:【クラウドファンディング688%達成】本物のバニラを使用した新スイーツブランド「バニラージュ」誕生。
BtoCの新ブランド「バニラージュ」についてのプレスリリースでは、「688%達成」というクラウドファンディングの成果を前面に出した発信をしました。実はこちらのバニラージュ、当社としては初めて「百貨店で販売されるブランドに育てたい」という目標があったんです。
そのため、テストマーケティングも兼ねてまずはクラウドファンディングで目標を達成しました。そのうえで具体的な数値の成果と見た目を訴求すれば、売り込みやすいかなと。クラウドファンディングで生活者の方からも、「こんなスイーツ初めて」「感動した」といった口コミをいただいて、うれしかったですね。
こうしたクラウドファンディングの成果に加え、高級なマダガスカル産のバニラビーンズをふんだんに使った商品コンセプトを紹介。定量的な数字とストーリーを丁寧に伝えました。
ブランド全体がローンチされる前のティザープロモーションとしての役割を果たしつつ、その後の営業活動で利用できる配信にこだわっています。バニラージュについては、こうした内容の配信を積み重ねた結果、2023年の5月にJR東京駅の大丸東京店での催事販売につなげることができました。地元を飛び出し、初の全国出店です。
その後のJR大阪駅の大丸梅田店での催事販売にもつながり、TVで紹介された「リコ・カタラーナ」は連日午前中で完売するなど、ブランドの露出と、大きな売り上げにつなげることができました。
事例2.BEAMS JAPAN × 美濃加茂市とのふるさと納税コラボがWebメディアのトップに掲載
参考:BEAMS JAPAN監修!希少な烏骨鶏卵使用の台湾カステラ「シルクロッシュ」の特別なセットを岐阜県美濃加茂市「ふるさと納税」として取扱いスタート!
BEAMS JAPANがふるさと納税を監修するプロジェクトに美濃加茂市の地元企業の一員としてお声がけいただき、配信したプレスリリースがこちらです。商品は「台湾カステラ」というジャンルなのですが、ふるさと納税限定バージョンとして、美濃加茂市の藤井養蜂のはちみつを原材料に加えました。できる限り地元の魅力が詰まった返礼品になるよう、市内の業者とやり取りをしてオリジナルのナイフやカッティングボードを作成した、渾身の返礼品セットです。
コラボレーションの話が持ち上がったのは、配信の4カ月ほど前でした。急ピッチで進む商品開発と、同時並行でプレスリリースの準備に追われたのを覚えています。プレスリリース配信時は、美濃加茂市の担当者とやり取りしながら、同じタイミングで配信。BEAMS JAPANとのコラボで関心が高まった部分もありますが、AdverTimes.(アドタイ)でTOP記事として取り上げられ、取引先の業者様などからも「こんな取り組みをされているんですね」とお声がけいただくなど、反響を感じました。
脇役だけど信頼できる「黒子」の持ち味を伝えたい
──今後の「広報PR活動」に関する目標を教えてください。
OEMを主軸としてきた若尾製菓は、ずっと「黒子」のメーカーでした。あくまで取引先第一で、広報PRや広告で生活者に魅力を伝えるという概念が社内になかったんですね。そうした中で「まず自社を知ってもらいたい」と、SNSをスタートさせたり、オンラインストア・自社ブランドを立ち上げたりしてきました。
試行錯誤を続けながらも、生活者向けに広報PRを続けることで、結果的にOEMの信頼感も高まると思っています。例えば、自社ブランドを知ってくださった生活者の方が、巡り巡ってOEM商品のパッケージの裏に「若尾製菓」と書いてあるのを見つけてくれるかもしれません。「このお菓子、若尾製菓だったんだ」。そう思って信頼していただけるタッチポイントを増やすための広報PR活動を、今後も目指していきたいですね。
今回の事例ポイント
美濃加茂市の老舗洋菓子メーカーとして、高品質な商品が持つストーリーをプレスリリースに盛り込み続けている若尾製菓株式会社。発信の舞台裏には、営業部の皆さんが生活者とのタッチポイントを増やすために試行錯誤する姿がありました。
- 「食べたくなる」シズル感あふれる写真を活用する
- 季節のイベント商品は、1ヵ月以上前に配信のタイミングを図る
- クラウドファンディングとの合わせ技で、営業にも使えるプレスリリースを作る
BtoBメーカーの広報PRや、新規ブランド立ち上げに携わる担当者の方にもヒントとなる「黒子の魅力」についても語っていただきました。新規ブランド立ち上げや百貨店を含めた販路開拓など、さまざまな挑戦を続ける若尾製菓の取り組みから、今後も目が離せません。
なおPR TIMES MAGAZINEでは、顧客に寄り添った発信を行うノウハウやペルソナなどについての記事も公開しています。こちらもぜひ参考にしてみてくださいね。
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