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日本酒ベンチャーが挑む、「プレミアム」から「ラグジュアリー」への転換

#日本酒  #ベンチャー  #ブランド秘話

2020年8月3日 11時00分 株式会社Clear


心を満たし、人生を彩る―

優れた味わいという機能的価値だけでなく、お客様の心の豊かさや、社会的な充足までをブランドの提供価値と捉え、創業から2年でリブランディングを実施した「SAKE HUNDRED(サケハンドレッド)」。ラグジュアリーを標榜し、進化を続ける日本酒ブランドの変革について、ブランドオーナー生駒龍史自らが語ります。

 

Clear Inc.代表 / SAKE HUNDRED Brand Owner

生駒龍史

1986年東京生まれ。2014年に日本酒メディア「SAKETIMES」をリリース。現在は国内最大規模となる。18年6月に老舗酒屋有限会社川勇商店のM&Aを実施し、酒販免許を獲得。7月より日本酒ブランド「SAKE100(サケハンドレッド)」を創業。これまで累計3.5億円の資金調達を実施し、日本酒事業のグローバル展開を目指す。20年8月3日より「SAKE HUNDRED」としてリブランディングを実施。

これまでの事業運営で見えたもの。

生駒:なぜ、日本酒ブランド「SAKE HUNDRED」(※「SAKE100」から2020年8月3日に名称変更)が、生まれたのか。そして、どんな未来を実現したいのか。そこには、これまでの事業で見えてきたことが背景にあります。


僕は2014年に日本酒メディア「SAKETIMES(サケタイムズ)」を始めて以来、自ら各地の酒蔵や、世界の日本酒販売の現場をひたすら回ってきました。売上数百億円の大きい蔵のところから、売上数千万規模の家族経営の小さな酒蔵まで、たくさんの現場に足を運びました。 海外の酒蔵や現場も見ていて、事業に取り組みながら、同時に、日本酒を知っていく旅路じゃないですけど、すごく地道な長いフィールドワークがあったんですね。

このフィールドワークを通して一番感じたことは、「日本酒はすごい」と。美味しいし、おもしろいし、興味深い。なんて素敵なプロダクトなんだと、なんて可能性があるんだと強く感じて、その想いは日に日に強くなるばかりでした。


2015年。菊正宗酒造の小島名誉杜氏、渋谷杜氏(当時)と。


日本酒のポテンシャルを強く感じるようになったと表現しているのですが、心から「日本酒、すごいな、まだまだできるよな」と思っていったわけです。


しかし反面、業界のさまざまな課題にも気付かされました。そのひとつが、価格幅が少なく、多くの日本酒が”安すぎる”ということ。日常酒として、大量生産・消費を前提に成り立っていたビジネスモデルが、アルコール離れ・日本酒離れによって消費量が減っていにもかかわらず、売るものは変わらず薄利商品が多く流通している状況です。安くて美味しい酒があることは企業努力の賜物ですし、素晴らしいことです。しかし、パラダイムシフトが起こっている中で、業界が対応しきれていないことによって、酒蔵が追い込まれている。これは、なんとかしなきゃいけないという課題意識が強くありました。


この課題を解決するためには、シンプルにふたつの方法しかないと思っています。もっと飲んでもらうか、単価をあげるか。ビジネス的に捉えると、このふたつだけです。


僕は、飲酒量が減ったこと自体は、社会全体にとってはポジティブなことだと捉えています。お酒だけが暮らしの楽しみとしてある世界よりも、スポーツも音楽も映画もTwitterもおもしろい、食べるもの・飲むものの選択肢もたくさんある世界のほうが豊かですよね。数ある楽しみのひとつがお酒だという世界のほうが、社会的に成熟していて健全だと思います。

 

ですから、飲まなくなったこと自体はいいことなんだから、無理に「たくさん飲みましょう」と引き戻すことはやめましょう、と。飲む量が1/3になったんだったら、3倍の値段でも買っていただけるいいお酒をつくればいいし、日本酒ならそれができると、とてもシンプルなこと考えているわけです。


そこにもうひとつ大事な要素として、海外における高単価日本酒のニーズの高まりも大きかったですね。


2017年。カリフォルニア州フォルサムの米国月桂冠にて


僕も各国の日本酒の現場に足を運びましたが、その中で、世界のニーズの高まりを体感してきました。たとえば香港では、人気銘柄は2000ドル、3000ドル、4000ドルといった価格で売られている。日本ではまず考えられませんが、海外ではそれほどに高い価格で日本酒を買うお客様が実在するんだという、マーケットニーズを確信しました。


僕が感じている日本酒そのものの大きなポテンシャルと、業界の課題、そしてグローバルレベルでのマーケットニーズ、すべてが全部つながって、「高品質・高価格な日本酒ブランド」という事業構想が見えてきたのです。


世界のニーズを満たして、業界の課題を解決し、僕の信じてる日本酒の一番ポテンシャルを花開かせる取り組みは、高い価値をもつ日本酒をつくり、販売することじゃないかというのが、バチっとはまったんですよね。

「ブランド」の創業に至るまで。

ここまでで「高品質で、高い日本酒を売っていこう」と決めはしたものの、それは言うほど簡単ではないともちろん思っていました。はじめは、高価格な日本酒だけ仕入れて売ろうか…とも考えていました。以前よりも高価格な商品はちらほら出ていましたから。


でも、それらも数はあまり多くない。また海外に出ていくことを考えると、そもそも日本酒に馴染みのない人たちに「何十銘柄持ってきました」と言ってもわからないですよね。高単価な日本酒を売っていこうと思うと、いま見えているマーケットを狙っていくことは、僕はうまくいかないと思ったんです。成熟した日本酒産業は、コモディティ化が進んでおり、安くていい商品が簡単に手に入るマーケットですから。そこに無理に高価格な商品を押し込んでもニーズがない。

 

であれば、違うマーケットを見なければならない。それはラグジュアリーブランドだったり、アートだったり、あるいはワイン・ウィスキーなどより嗜好性の高い市場です。日本酒も、そこを目指していかなければならないと考えました。


リブランディング前の「百光(びゃっこう)」ボトルデザイン


そうなると、当然そのカテゴリの消費者の多くは、基本的に日本酒のことを知らないことが前提になります。だからコミュニケーションの難易度を下げないといけない。「ここは○○県どこどこ町の…」「純米大吟醸直汲みで…」「どこどこ山脈の伏流水を使った…」といったことでは伝わらないよ、と。伝える順番が違うわけです。

 

ひとつ、アイコンがあればいいと思ったんです。ひとつ覚えてもらえばいい。それは「ブランドネーム」だと思ったんです。ブランドが価値を持って、お客様ともコミュニケーションをブランドが背負ってくれればすべてが解決するのではないかと。

 

こうして「SAKE100」というブランド事業が生まれました。SAKE100のお酒だということ自体に説得力があれば、お客様は信頼して買ってくださると思ったんです。お酒のそのものも、目指す世界観も、ストーリーも、すべてブランドに持たせよう。ブランドを価値の中心に据え、育てていこう。これが我々がやるべき、世界のニーズを満たし、業界の課題を解決して、僕たちの信じている日本酒のポテンシャルを開かせる事業だと確信したのです。


2018年リリース当初のSAKE100ブランドサイト


事業の目的として、最初の段階ではやはり「業界課題を解決したい」「自分たちの信じてる可能性を証明したい」そして「海外ニーズに応え、広げていきたい」と思っていました。それは今も同じですね。ただ、ブランドを展開するなかで当時よりもより、われわれがやるべきことが明確に見えてきています。


先ほどの話には、実はお客様が不在なんです。 

「世界のニーズ」などは、もちろんお客様ではあるんですが、どっちかというとマーケット全体の潮流を相手にしているような感じで。自分たち対業界、のような。

 

ですが、実際に SAKE100 でブランド事業を2年間運営するなかで、お客様の体験価値を上げていくこと、お客様に素晴らしい体験をしてもらうことが、ブランドの存在意義だと感じるようになりました。



僕たちは高い日本酒、付加価値のある日本酒と言っていますが、それがお客様にとっての価値にならないと続かないわけですよね。僕たちは美味しいお酒だと思っていても、それを買って飲んでくださるお客様が「実際そうでもないな」と思ったら、絶対続かないと思ってるんです。

 

ですから、自分たちのブランドを続けて、広げて、お客様にとっての価値、お客様の体験を向上していかなればダメだと思うようになりました。そのためには、ただ「美味しい」だけでは足りないのではないかと。商品が優れていて美味しいことは前提で、それ以外の世界観だったり、パッケージだったり、サービスだったり、私たち自身の想いやストーリーだったり。そういう”グラスの外”も含めて、トータルで「このブランド、素敵だね」と感じていただければならないと、実際にブランドをはじめてから気づいたんです。

ブランドパーパス―『心を満たし、人生を彩る』

こういった気づきのうえで、ブランドを立ち上げてから1年ほどのタイミングで、ブランドの「パーパス = 存在意義」を言語化しようということになりました。そこで生まれたのが『心を満たし、人生を彩る』という言葉です。


“彩られる”ってブランドとしてとても美しいと思っていて。いわばモノクロの映画に色が着くようなものですよね。すごくきれいな海をみても、それが白黒だったら「あぁ海か……」ってなりますけど、それに色が着いて、海の青さがあって、空の青さがあって、太陽の光があって…っていうだけで、まったく体験の価値が、感情の動きが違うと思うんです。


ですから、「美味しい」で満足するのではなく、お客様の心に、そして人生に作用するような体験を提供すべきだと。「美味しい酒を売るぞ」みたいな気持ちだったところから、さらに奥にある、自分たちの”あり方”に意識が向いた瞬間だったんですよね。


我々は日本酒を売るために事業をしているんじゃなくて、『心を満たし、人生を彩る』という体験のために日本酒をつくり、販売しているんだと。そのために当然、商品が素晴らしいものであるのは前提です。ですが、この2年間で、自分たちの目的が売ることじゃなくなった。視点が完全に切り替わったんですよね。いわば「美味しい」という機能的価値の提供から、『心を満たし、人生を彩る』ような情緒的価値を追求するブランドであるべきだと変化しました。



また、これまでは「非日常の体験」を提供したいと思ってたんですけど、そうじゃないのかなとも感じてきました。日本酒の素晴らしさを通じて、当たり前

の日常がより美しく感じられるようになったいいなと思って。


たとえば、 エルメスの腕時計を着けた瞬間に、日常が非日常になるわけじゃない。でも、その時計をしているだけで、ちょっと気持ちが前向きになったり、新しいことに挑戦してみようと思ったり、勇気をだしてデート誘ってみたり……。それって非日常ではなく、日常が美しくなることだと思うんですよね。

 

なぜかというと、お客様の心が満たされてるからですよね。心が満たされるから、人生が彩られてるような体験になる。腕時計でも「時間を見る」という機能だけではそうはいきません。作用すべきなのは、お客様の心の有りようだと思うんです。それを提供するのが、SAKE100の価値なんだなと思い至ったんです。



「プレミアム」から「ラグジュアリー」へ

ブランドパーパスを定めてから、いままで以上に「我々は何者であるか」を掘り下げていきました。そのなかでひとつの気付きとして、機能価値を追い求めていくのが「プレミアム」で、情緒価値を追い求めていくのは「ラグジュアリー」の価値軸ではないか、という話があがりました。


SAKE100はあるときまで「プレミアム日本酒ブランド」と称していたのですが、実は「ラグジュアリー」も立ち上げのときにちらっと出てた言葉なんです。けれどそのときは、「ラグジュアリー」という言葉への解像度が低く、いわゆる「豪華絢爛」みたいなイメージしかなかったんですね。ですが、社内でディスカッションしたり、学習をしていったときに、原価の積みあげで機能を売るものではなく、もっと心に作用して、精神的な付加価値を提供していくことが「ラグジュアリーの本質」だよねという話が出てきて、とても腹落ちしたんです。


それから、これまで使っていた「プレミアム日本酒ブランド」ということをまったく言わなくなって、社内的にも「我々が目指すシーンはラグジュアリーである」ということを標榜し始めました。


それはブランドパーパスの『心を満たし、人生を彩る』に表現されていたのですが、この言葉は外に向けたものではなく、あくまで自分たちの在り方を言葉にしたものでした。ですから、僕らが目指すブランドが「プレミアムではなくラグジュアリーだ」明確になってから、ブランドの装いやコミュニケーションも、そこに合わせていく必要性を感じていました。また商品の価格も、より提供価値にふさわしいものでなければならない。その点、これまでの価格は、「安すぎた」という反省がありました。ブランドの全面的なリニューアルをすべきと考えるようになりました。



今回のリブランディングでは、 ロゴマーク、ラベル、ボトル、ウェブサイトのデザインから言葉選びまで、 あらゆる面をお客様へ情緒的価値を提供するためにあるべき装いに変えていきました。商品価格も提供する価値に見合うプライスに見直しています。同時に、 ブランド名も、算数字の”100”をアルファベットとし、「SAKE HUNDRED」へ変更しました。


SAKE HUNDREDは、一歩ずつ「満たす」ブランドへ

2020年8月3日より、新たなブランドサイトを公開し、「SAKE HUNDRED」としてのスタートを迎えました。


これまで僕たちは、美味しいお酒こそ届けていましたが、これからは、その先にある心の豊かさ、社会的な充足までを価値として提供できるブランドへ歩みを進めていきます。 


一歩一歩にはなりますが、新たなスタートを切ったSAKE HUNDREDに、どうぞご期待ください。



SAKE HUNDRED|そのすべてが満ちていく。


リブランディングに関するプレスリリースはこちらからご覧くださいませ。

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