一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会（通称：SAKE女の会）代表理事の友田晶子です。ソムリエ&トータル飲料コンサルタントを30年にわたり行うなかで、シャンパンに並ぶ、日本ならではの乾杯酒の必要性を痛感。「日本のイベントなら日本のお酒で乾杯すべき！」という思いに、SAKE女の会賛助会員で東京最古の酒舗、慶長元年（1596年）創業の豊島屋本店様より賛同いただき、世界で唯一無二の東京産スパークリング日本酒【TOKYO PREMIUM SPARKLING SAKE  心　-Shin-】(通称：シン・スパークリング)をコラボ開発しました。開発秘話と初リリース後コロナ禍での奮闘の様子をお話します。

◆日本のイベントなら、日本産酒で乾杯したい！◆

私は1989年にソムリエの資格を取得以降、日本で働くソムリエならば日本産酒のことがわかっていなければという思いで、すべてのお酒を取り扱うトータル飲料コンサルタントという肩書で活動をしています。2016年、日本産酒のPRとお酒でおもてなしができる人を増やすことを目的に（一社）SAKE女の会を発足しました。現在、約2000名の会員、約80社の賛助会員で構成されています。

33年間のソムリエ人生の中で、「日本のイベントの乾杯はシャンパン、晩餐会はワイン。どうして、日本のイベントなのに日本産酒を使わないのか」と感じていました。

理由は、使わないではなく使えない。それに適したプレミアムなお酒が少なく、結果、外国人にもわかりやすいシャンパンやワインになってしまっていたのです。ちなみに、現在全国のスーパーで売られている日本酒１本の平均価格は957円。焼酎は1,573円です。安いから悪いわけではないですが、国家レベルのおもてなしの席にはやはり向きません。

日本のイベントで乾杯に使えるプレミアムなお酒が必要だ。できれば日本酒。日本ワインもいいけれど、瑞穂の瑞穂の国の代表酒なら米のお酒。それも乾杯に見合うスパークリング酒。シャンパンに並ぶようなプレミアム・スパークリング日本酒を造りたいという思いが募っていました。

もちろん、ワンランク上の贈り物として、海外への日本のお土産として、和食や世界の料理とも楽しめる食中酒として選ばれる日本酒が目標です。そんな時、このPR TIMESの「4月1日に“夢”を語るApril Dreamプロジェクト」にて「夢」を発信させていただき、まずはイメージを膨らませることができました。

◆江戸酵母の酸っぱい日本酒がスパークリングにぴったり◆

しかし、どうしたらいいのか。

下がる日本酒消費のなかでも、愛好家垂涎の人気銘柄や海外でも注目されるブランド、手軽に買えるスパークリング日本酒も市場に増えている。だけど、乾杯酒ならば、もう一つ、もう二つ、今までにないなにか特徴が必要。そのうえでプレミアム感のある商品でなければならないと感じていました。

そんななか触発されたのは「SAKE HUNDRED」シリーズです。プレミアムの上をいく“ラグジュアリー”カテゴリーと表現したまったく新しい戦略の日本酒です。同シリーズ人気の「百光」は720㎖で27,500円にもかかわらず予約販売で完売です。

さらに、元ドン・ペリニヨン最高醸造責任者リシャール・ジョフロワ氏がアッサンブラージュして生まれた「IWA５」（720㎖14,700円）も刺激になりました。

アッサンブラージュとは現代美術用語で、異なる素材を組み合わせあらたな作品を創造する技法のこと。ワインやシャンパン製造でも使われ、ヴィンテージ違い、畑違い、品種違い、タンク違いを絶妙にアッサンブラージュすることで、より複雑で立体的な魅力を構築します。日本酒もアッサンブラージュすべきだと感じました。

思いが高まるなか出会ったのが、東京で400年以上の歴史を誇る豊島屋本店「純米吟醸　江戸酒王子」でした。江戸時代以降消滅してしまった「江戸酵母」を蘇らせ、それをベースに、東京産の米と水を使い、醸造地も東京のオール東京産という素晴らしい個性を持っていました。

そしてもう一つ大きな特徴は、とにかくものすごく酸っぱいこと。日本酒としてはちょっと異質です。しかし、そもそも酸味が少ないという日本酒の特徴が、酸味豊かなワインやシャンパンファンから敬遠される理由であることを感じていました。「江戸酒王子」を飲むほどに「シャンパンも強烈な酸があってこそバランスがとれている」「これだ！　この酸だ！」とひらめき、豊島屋本店吉村俊之16代当主に相談しました。すると「シャンパン製法はやったことがないけれど、やってみましょう！」と快諾いただいたのです。

さらにアッサンブラージュも可能とのこと。ドン・ペリニヨン…とはいきませんが、SAKE女の会精鋭メンバーで試行錯誤のアッサンブラージュを行いました。出来上がった原酒は、古酒の深みとコクに新酒のフレッシュさがまじりあい、素晴らしいバランスとなりました。これを瓶内二次発酵させナチュラルな泡が生まれれば、乾杯にも食事にも合うスパークリング酒ができる！と浮き立ちました。

◆泡が生まれない？　ボトルが割れる！◆

本当に泡が生まれるのか？　豊島屋酒造は、瓶内二次発酵は未経験。暴れん坊のわりには生命力の弱い「江戸酵母」がしっかり瓶の中で二次発酵してくれるのかわかりません。

経験豊富な豊島屋酒造、石井治幸杜氏が、毎日瓶詰めしたボトルを観察し、瓶詰一月後あたりに、サンプルボトルからシュワッとかすかに泡が生まれているのを確認。「やった、二次発酵している！」。

その後、3気圧まで泡が生成されました。6気圧のシャンパンに比べればかよわい泡です。それでもしっかりと炭酸が感じられとてもフレッシュでむしろ日本酒に適した気圧だと感じました。

次の問題は、日持ちするのかどうか。輸出も視野に入れるとなると「火入れ」（熱処理）が必須。シャンパンにはない「火入れ」を試しますが、気圧のかかるボトルを温めると爆発してしまいます。ケガがなかったのが幸いですが、それでもなんとか火入れのコツも習得し、泡とフレッシュ感を保ったまま火入れ（＝日持ちする）商品製造に成功しました。

本数は500本。超限定です。

裏ラベルには私が手書きでナンバリングしました。商品名はそのままズバリ「TOKYO　PREMIUM　SPARKLING SAKE　心　-Shin-」です。「心」は「シン」。「シン・スパークリング」です。ラベルの「心」の文字は大妻女子大学書道部の作品です。いろいろな思いを込め価格は、730㎖、18,000円（税別）。

現在はこの初リリース2021年ヴィンテージの販売を行っていますが、実は次の心配が熟成です。500本のうち100本は熟成させ数年後に販売したいのです。「シン・スパークリング」は熟成してもおいしい状態を保てるのかは未知です。

また、豊島屋酒造が心配するのは熟成による色の変化です。通常の日本酒なら黄色や茶色の色がついているとクレームになりますが、そこはソムリエ歴33年の私が、そのクレームを一手に引き受けると約束しました。シャンパンもワインも熟成して価値を上げる商品です。もちろん管理はしっかり行いますが、「それが価値の証拠です」と説明するつもりです。

もう一つの心配は、SAKE女の会に営業力がないことです。「シン・スパークリング」を販売するために2021年度にSAKE女の会で酒販免許を取得していました（SAKE女ストア）。はれて、お酒の販売ができると意気込みましたが、そもそも営業力も商品の知名度もありません。そのうえ、コロナで限られた試飲会しかできない。製造から現在まで約10か月。毎日悩む日々が続いています。

◆地道な営業で、大切に育てたい◆

小さな試飲発表会を含め、この10か月、地道な営業活動を行っています。コンラッド東京（取引が始まっています）、星のや東京、帝国ホテル、ホテルオークラ、パレスホテルなど都内の名だたるホテルや星付きレストランから少しずつお声がかかっています。インバウンドが戻ってきたときに向けて免税店へも仕掛けています。

昨年12月にはSAKE女のメンバーが運営する、アメリカ、カリフォルニア、NAPAにある「Hal Yamashita NAPA」からも注文をいただきました。これが初の輸出になります。少しずつではありますが、着実に手ごたえを感じています。

今うれしいことは、飲んだ方が「おいしくてびっくりした！」「すごくバランスがいい」「こんな日本酒あったんだ」と驚き、喜んでくださることです。それらを励みに、早くはないけど丁寧な営業を続けていこうと思っています。

数年後にヴィンテージ・シン・スパークリングは、日本のイベントの乾杯酒として、たくさんのお祝いの席を彩る日本産酒になっているはずです。

無謀な依頼を受け止めてくださった吉村社長やアッサンブラージュメンバー、大妻女子大書道部の皆さんと乾杯して喜びを分かち合いたい。これが次の目標です。

今年もこの4月に第2期のアッサンブラージュを行います。今年は都内有名ホテルのソムリエからも参加希望をいただいています。アッサンブラージュにご興味ございます方は、ぜひ、お声がけください。ご見学やお味見は可能です。お待ちしております！

商品の紹介ページはこちらです。

商品購入ページ「SAKE女ストア」はこちらです。

東京発、スパークリング日本酒　「心-shin-」

• 商品名 ／TOKYO PREMIUM SPARKLING SAKE　心 -Shin-(シン）
• 品目 ／日本酒・純米酒
• 原材料名／ 米・米麹（東京八王子産キヌヒカリ）・酵母（江戸酵母）・炭酸ガス
• 精米歩合 ／65％
• 製造 ／シャンパーニュ方式（瓶内二次発酵）
• 内容量／ 730㎖（720㎖ではありません！）
• アルコール含有量／ 13度
• 保存方法／直射日光を避け、冷暗所に保存してください
• 製造者／豊島屋酒造株式会社
• 販売者／株式会社豊島屋本店
• 企画・監修／一般社団法人日本のSAKEとWINEを愛する女性の会
• 数量限定販売／500本（シリアルナンバー入り）
• 価格／19,800円（税込）