「なんでよりによってアフリカ？」

アフリカへ行こうとする日本人なら、一度は言われたであろうこのセリフ。

東アフリカ・ケニアでマイクロファイナンス企業HAKKI AFRICAを立ち上げた時も、何度も言われてきた。

ケニアに移住し、会社を創り、社員を雇い、資金調達をした。その間に、アフリカでの起業を志し、道半ばで断念した人を何人も見てきた。

アフリカスタートアップの一番の壁は、資金調達の難しさにある。

アフリカのスタートアップに投資する日本企業は、片手で数えるほどしかない。個人投資家から資金を集めてスタートアップに投資するVC（ベンチャーキャピタル）は、アフリカスタートアップの持つ可能性を認識していても、今度は個人投資家から「なんでよりによってアフリカ？」と言われてしまう。VCは個人投資家の要望に反した投資をすることは基本的にできない。やっとアフリカスタートアップが少しずつ理解されはじめたとはいえ、まだまだ資金を得るハードルは高い。

実は、欧米からアフリカへの投資は近年右肩上がりに伸びている。日本と欧米の投資傾向が分かれる要因は複雑で、これが最大の理由、と断言することは難しい。地理的な遠さ、言語の違い、アクセスできる情報量の違い…挙げればキリがない。この要因の中で、我々スタートアップの力で改善できることは、情報量を増やすことだ。スタートアップだけでなく、アフリカの生活、経済、ビジネス…日本語でアクセスできる情報は本当に限られている。アフリカで起こっていること、これから起こそうとすることを日本人投資家に対して可視化すればするほど、投資家のリスク因子は減り、資金を得るチャンスは広がる。

ただ、欧米からの投資が急増しているとはいえ、まだまだアフリカで起業する外国人に投資が集まっているのが現状だ。資金調達に成功したスタートアップのホームページを見ると、大抵の場合、創業メンバーの半数、もしくはそれ以上がアメリカやヨーロッパの出身だ。メンバーの全員がアフリカ出身者で構成されるスタートアップは、資金調達に苦戦している。

アフリカ出身で、すぐれた才能やアイデアを持っている若者はたくさんいる。最近では海外に留学した若者がそのまま進学先で就職するのではなく、出身国に帰ろう、そこでビジネスを興そうという動きが活発になってきている。しかし、残念ながら彼らには投資家の信用を勝ち取り、シード期に資金を得るための実績や信用情報が存在しない。

HAKKI AFRICAは今年、第三者割当増資による資金調達を行った。賛否両論あるかもしれないが、これが成功したのは「HAKKI AFRICAの代表が日本人だから」とも言うことができる。もしもケニア人社員がCEOとしてホームページに掲載されていたら、日本語での情報発信が皆無だったら、HAKKI AFRICAは資金調達に成功していただろうか？

我々は、日本人起業家として、このケニアの地でHAKKI AFRICAを経営していくことで、3つの方法で新たな可能性を生み出すことができると考えている。

1つ目は、前述のように情報発信を積極的に行うことで、アフリカで起業したいと考えている日本人がより理解を得やすい土壌を作ること。

2つ目は、HAKKI AFRICAのマイクロファイナンスで、信用情報を持たない層にも融資を行い、返済までサポートすることで返済実績を積んでもらい、彼らの信用情報を創出すること。

3つ目。ホームページにも記載しているが、HAKKI AFRICAは社員に対して「事を成したい人にとって、最も成長できる企業であることを約束します」という誓いを立てている。HAKKI AFRICAはケニア人社員にとって、他のどこで働くよりも圧倒的に成長できる環境を提供し、彼らがいつか「自分でビジネスを立ち上げたい」と思った時にHAKKI AFRICAの一員であったことが信用情報の1つになるような会社であり続けること。

外国人だからこそ、日本人だからこそできることがあるのなら、それを最大限利用して、このケニアの地・アフリカの地にプラスになる文化を根付かていくのが、HAKKI AFRICAの戦い方だ。